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コールセンターの電話応対は、いま大きな転換期を迎えています。ボイスボットやFAQの整備が進み、定型的な問い合わせの自動化が広がる一方で、有人オペレーターが担う案件の難易度は上がり続けています。「自動化すれば解決する」という時代から、「自動化と有人対応をどう組み合わせるか」を設計する時代へ。
本シリーズでは、電話応対業務の最適化をテーマに、AI導入の優先順位から現場の稼働改善、受電フローの設計まで、3回にわたって解説します。
- 第1回:ボイスボットの前にやること──AI導入の優先順位のつけ方
- 【今回の記事】
第2回:ボイスボットと有人対応を無理なく共存させる受電フロー設計 - 第3回:ACW削減で、オペレーターが複雑な案件に集中できる環境をつくる
第2回は、受電フローの設計について考えます。「100%の自動化」を目指すのではなく、ボイスボットと有人対応がそれぞれの強みを活かせる現実的な共存の形をどう設計するか。受電フローの最適化を軸に解説します。
「100%の自動化」を目標に掲げるコールセンターが増えています。
しかし現実には、すべての入電をボイスボットで完結させることは難しく、自動化を進めるほど有人対応に残る案件の難易度が上がるという課題に直面するケースも少なくありません。
目指すべきは、完全自動化ではなく、ボイスボットと有人オペレーターがそれぞれの強みを活かせる「ハイブリッド運営」ではないでしょうか。本記事では、受電フローの最適化によって自動化と有人対応を無理なく共存させる運用の考え方と、そのポイントを解説します。
なぜ「100%自動化」は現実的でないのか
ボイスボットによる自動化が進むにつれて、定型的な受電──営業時間の確認、配送状況の問い合わせ、簡単な手続き案内──は着実に削減されます。これはコスト削減と応答速度の向上という点で、大きな成果です。
しかし、入電のすべてがパターン化された案件とは限りません。
- 複数の事情が絡み合い、ボイスボットの選択肢では用件を伝えきれない案件
- 強い感情を伴うクレームや、個別の事情を考慮した例外対応が必要な案件
- 顧客自身が何を相談したいのか言語化できていない案件
これらは、AIがいかに高精度になっても、人の判断と対話が不可欠な領域です。自動化の比率を上げることで「残った有人案件」の難易度が上がるのは、ある意味で必然といえます。
「完全自動化」を追い続けることより、「自動化できる範囲を最大化しつつ、人が担う領域で高い品質を維持する」という現実的な目標設定のほうが、センター全体のパフォーマンス向上につながります。
ハイブリッド運営の基本設計──AIが選別し、人が解決する
ハイブリッド運営の核心は、「どの案件をボイスボットで完結させ、どの案件を有人に転送するか」という振り分けの設計にあります。
この設計を精度高く行うためには、まず自社の入電をコールリーズン別に把握することが出発点になります。どのような用件がどの程度の割合で入電しているか、そのうち自動応答で完結できる案件はどれかを、データに基づいて整理します。
一般的に自動化に適した案件の特徴は以下の通りです。
- 回答パターンが決まっており、例外が少ない
- 顧客が必要な情報を明確に持っている
- 感情的なケアを必要としない
逆に、有人対応に残すべき案件は、複雑な判断・感情的なケア・例外対応が求められるものです。この「振り分けの基準」を明文化しておくことが、ボイスボットの設計精度と有人オペレーターの準備体制の両方に影響します。
有人対応への引き継ぎをスムーズにする「引き継ぎ設計」
ボイスボットから有人への転送時に、オペレーターが「また最初から聞き直し」という状況を生むと、顧客の不満につながります。転送の瞬間こそ、ハイブリッド運営の品質が問われる場面です。
有人転送をスムーズにするための設計ポイントは3つです。
分岐ログの活用
ボイスボットが顧客と対話した内容──どの選択肢を選んだか、どの時点で有人転送になったか──は、分岐ログとして記録されます。このログをオペレーターが転送前に確認できる仕組みを整えることで、「すでに自動応答で確認済みの用件」を重複して聞く手間がなくなります。
顧客にとっては「話が通じている」という安心感につながり、オペレーターにとっては「解決の準備を整えた状態で受電できる」という利点があります。
転送時の用件サマリー
転送のタイミングで、ボイスボットが収集した顧客情報や用件の概要をオペレーターの画面に表示する仕組みも有効です。顧客を待たせる時間を短縮しながら、オペレーターが最初のひと言から的確な対応を始められます。
転送先の最適化
「どのオペレーターに転送するか」も設計の対象です。用件の種類に応じて専門性の高い担当者やチームに振り分けることで、解決率と顧客満足度の向上が期待できます。
受電フローの設計や、ボイスボットの具体的な活用イメージは製品ページもご参考にしてください。
→ PKSHA VoiceAgent(電話自動応答)
音声認識・文字起こしで、有人応対の品質を継続管理する
ボイスボットによる自動化が進むと、有人オペレーターが担う案件は高難度のものに集中します。これらの応対は1件1件の中身が複雑で、管理者がすべてをリアルタイムで把握することが難しくなります。
ここで重要になるのが、音声認識・文字起こしによる通話の可視化です。
全通話を自動でテキスト化することで、SVや管理者は対応内容を後から確認・分析できます。すべての通話を聴き直す必要がなくなり、課題のある応対に絞ったフィードバックが可能になります。
また、有人対応の傾向を継続的に分析することで、次のような運用改善にもつながります。
- 頻出する高難度案件の把握:繰り返し発生している複雑な問い合わせを特定し、対応フローやトークスクリプトを整備する
- エスカレーション判断の精度向上:どのような案件がSVへのエスカレーションにつながっているかを可視化し、判断基準を明確にする
- 品質評価の均質化:主観に頼らず、テキストデータに基づいた客観的な品質評価が可能になる
自動化が進んだセンターほど、「残った有人応対の品質管理」が競争力の源泉になります。音声認識・文字起こしは、その管理を現実的に実現するための手段です。
ナレッジをハイブリッド運営に活かす
ハイブリッド運営を安定させるために、もう一つ欠かせない要素がナレッジの整備と継承です。
ボイスボットが選別した後に有人対応へ回ってくる案件は、難易度が高いものが中心です。こうした案件への対応品質は、オペレーター個人の経験や知識に依存しやすく、属人化が起きやすい領域でもあります。
音声認識・文字起こしで蓄積された通話データは、ナレッジ整備の材料として活用できます。上位オペレーターの応対パターンを分析し、「高難度案件に対する解決のアプローチ」を組織のナレッジとして定着させることで、経験の浅いオペレーターでも一定の品質で対応できる体制が整います。
また、ボイスボットの応対ログと有人対応のデータを組み合わせることで、「自動化の境界線」も継続的に見直せます。以前は有人対応が必要だった案件が、ナレッジの蓄積によってボイスボットで対応可能になるケースも生まれます。さらに、ベテランオペレーターの応対パターンをボイスボットのシナリオ改善に還元することで、自動化の精度自体も高めていけます。ハイブリッド運営は一度設計して終わりではなく、人とAIが互いに学び合いながら継続的に進化していくものです。
まとめ
「100%の自動化」を目指すのではなく、ボイスボットが定型案件を選別し、人が高難度案件を解決するハイブリッド運営の設計が、現実的なコールセンター改善の方向性です。
有人転送時の引き継ぎ設計、音声認識・文字起こしによる品質の継続管理、ナレッジの整備と継承──この3つを組み合わせることで、自動化率を高めながら有人応対の品質も維持できる体制が整います。
電話応対のハイブリッド運営に関心のある方は、PKSHAの製品・導入事例もご参考にしてください。
- 第1回:ボイスボットの前にやること──AI導入の優先順位のつけ方
- 【今回の記事】
第2回:ボイスボットと有人対応を無理なく共存させる受電フロー設計 - 第3回:ACW削減で、オペレーターが複雑な案件に集中できる環境をつくる
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→ PKSHA Speech Insight 製品ページを見る
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