顧客からの問い合わせ管理は多くの企業が抱えている課題です。対応漏れや担当者間の情報共有の不足は、顧客満足度の低下に直結します。こうした問題を解決するのが「問い合わせ管理システム」です。適切なシステムを導入することで、複数チャネルからの問い合わせを一元管理し、対応の迅速化と品質向上を実現できます。
本記事では、問い合わせ管理システムで解決できる課題とメリット、問い合わせ管理システムの選び方、さらに自己解決を促した事例までを解説します。
問い合わせ管理システムで解消できる課題とメリット
問い合わせ管理システムは、電話やメール、Webフォーム、SNSなど、複数チャネルから寄せられる問い合わせを一元管理し、対応の効率化や情報共有の円滑化を実現するツールです。自動振り分けや対応履歴の記録、レポート機能などを備えており、近年ではAIやチャットボットといった自動応答機能を搭載したシステムも増えています。従来は人による対応が中心でしたが、こうした機能により、より迅速かつ効率的な問い合わせ対応が可能になっています。
ここでは、問い合わせ対応業務における具体的な課題と、問い合わせ管理システムの導入によって得られるメリットについて解説します。
問い合わせ対応における主要課題
多くの企業が問い合わせ対応において直面している主な課題は以下の通りです。
対応能力の限界
電話がつながりにくくなったり、返信が遅れたりすることで、顧客の不満が高まり、満足度の低下につながります。また、オペレーターの負担が増すことでストレスが蓄積され、応対品質にも悪影響が及ぶケースも少なくありません。
顧客のたらい回し
複雑な問い合わせでは複数の部署への確認が必要となるため、対応に時間がかかり、結果として顧客をたらい回しにしてしまう状況が発生することもあります。必要な情報をすぐに得られない顧客の不満は、企業イメージの低下にも直結します。
対応品質のばらつき
同じ内容の問い合わせであっても、対応するスタッフによって回答が異なることがあり、ベテランと新人のスキル差や属人化の問題が浮き彫りになります。特定の担当者に依存するような体制では、組織全体の対応力が損なわれるおそれがあります。
こうした課題を解決し、安定した対応品質と業務効率を実現する手段として必要なのが問い合わせ管理システムです。
問い合わせ管理システム導入によるメリット
問い合わせ管理システムを導入することで、以下のようなメリットが得られます。
顧客満足度の向上
問い合わせ管理システムの導入は、対応漏れや二重対応の防止、対応のスピードと正確性の向上に大きく寄与します。また、履歴の可視化やナレッジの共有により属人化を防ぎ、誰でも一定品質の対応ができる体制を構築できます。これにより業務の効率化だけでなく、対応品質の一貫性が保たれることで、顧客満足度の向上が期待できます。
さらに、チャットボットやFAQとの連携により、初動対応の迅速化や自己解決支援が可能となり、顧客利便性の向上にもつながります。
業務効率の大幅な向上
問い合わせ内容の自動振り分けにより、適切な担当者に即時に通知され、対応漏れや二重対応といった無駄を削減できます。また、リアルタイムでの対応状況の可視化により、チーム内での進捗管理が容易になります。加えて、あらかじめ用意された「定型返信テンプレート」を活用することで、個別対応の工数も削減できます。
情報共有の円滑化
顧客情報や対応履歴をシステム上で一元管理することで、担当者の引き継ぎがスムーズになり、問い合わせ内容に即座に対応できる体制が整います。また、FAQやナレッジベースを社内で共有することで、特定の個人に依存しない体制構築が可能です。部門をまたいだ情報連携もスムーズになり、組織全体の対応力が向上します。
データ分析による継続的な改善
頻繁に寄せられる質問を可視化することで、FAQの充実や問い合わせ削減につながります。また、顧客の声からサービスや製品の改善点を抽出できるため、マーケティングや商品開発にも有益です。こうした分析をもとに改善を繰り返すことで、企業としての競争力を高めていくことが可能になります。
こうした課題を解決し、メリットを最大化するためには、自社の状況に合った問い合わせ管理システムの選定と導入が不可欠です。
関連記事:問い合わせ対応を効率化する方法|改善すべき理由や対応業務の課題
問い合わせ管理システムの7つの比較ポイント
問い合わせ管理システムを導入・検討する際には、単に機能の多さや価格だけでなく、自社の業務に合った使いやすさや将来的な拡張性など、さまざまな観点から比較・検討することが重要です。以下では、システム選定時に特に注目すべきポイントを紹介します。
操作性・UI
問い合わせ対応はスピードが求められる業務のため、直感的に操作できる画面設計かどうかは重要な判断材料です。担当者がシステムの操作に戸惑うと、対応の遅延やミスにつながりかねません。
● 管理画面が見やすく整理されているか
● 必要な情報(問い合わせ内容、顧客情報、対応履歴など)にすぐアクセスできるか
● 操作に関する教育やマニュアルが充実しているか
このような点を確認し、現場のオペレーターがストレスなく使えるかを重視しましょう。
顧客情報・履歴の管理機能
問い合わせ管理システムの基本機能の一つが、顧客情報や対応履歴を一元管理する機能です。特に重要なのは、過去の対応状況を誰でもすぐに把握できる状態をつくることです。これにより、特定の担当者の記憶や手元のメモに依存することなく、誰でもスムーズに対応を引き継ぐことができます。
● 顧客ごとに対応履歴を時系列で確認できるか
● 他部署や他担当者の対応状況も参照できるか
● 顧客情報と対応履歴を紐づけて、検索・活用しやすいか
これらの機能が充実していれば、担当者の交代や部門をまたぐ対応であっても、情報の抜け漏れなく一貫した対応が可能となり、結果として属人化の防止とチーム全体の対応力向上につながります。
チャネル対応の柔軟性
問い合わせは、メール・電話・Webフォーム・チャット・SNSなど、多様なチャネルから届きます。こうしたマルチチャネルに対応できるかどうかは、顧客接点を強化するうえで非常に重要です。
● 各チャネルからの問い合わせを一元管理できるか
● チャネルごとの対応状況をリアルタイムで把握できるか
● 将来的なチャネル追加にも対応できる柔軟性があるか
マルチチャネル対応により、顧客は自分の使いやすい手段で気軽に問い合わせができ、企業側は一貫性のある対応が可能になります。
問合せ抑制・自己解決支援
問い合わせ管理システムの導入効果をより高めるには、問い合わせの“数”そのものを抑え、担当者の負担を軽減する工夫も重要です。問い合わせ管理システムとFAQシステムを連携・統合することで、顧客が問い合わせフォームに内容を入力している際に、AIが自動的に関連するFAQや解決策を提示し、送信前に自己解決を促すことができます。
● FAQシステムとの連携機能があるかどうか
● ユーザーがどのFAQを参照したうえで問合せたかが分かるか
● 自己解決率や問い合わせ削減効果を定量的に測定・レポートできるか
こうした機能により、顧客は問い合わせを送信する前に自己解決でき、企業側は対応工数を大幅に削減できます。特に営業時間外でも24時間自己解決支援が機能するため、顧客満足度向上と業務効率化を同時に実現できる機能です。
外部ツールとの連携
問い合わせ管理システムは、他の業務システムと連携させることで、さらに利便性が向上します。たとえば、CRMやSFAと連携すれば、営業やマーケティングと連動した対応が可能になります。
● CRM、コミュニケーションツールとの連携機能があるか
● 自社で使っている基幹システムと連携できるか
● APIなどによるカスタマイズ性があるか
システム間の情報連携をスムーズにすることで、業務効率や対応の質が大きく改善されます。
セキュリティ・権限管理
問い合わせ管理システムでは顧客の個人情報や対応履歴といった機密性の高いデータを扱うため、セキュリティ対策は必須です。
● 通信の暗号化(SSL/TLS対応)やデータのバックアップ体制が整っているか
● 管理者や担当者ごとにアクセス権限を細かく設定できるか
● 外部からの不正アクセスを防ぐ機能があるか
また、個人情報保護法への対応状況やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証取得の有無も確認し、自社のセキュリティ要件を満たせるサービスかどうかを判断することが大切です。
サポート体制・導入支援
システムを導入した後、うまく使いこなせなければ意味がありません。初期設定の支援や運用中のサポート体制が整っているかどうかも重要です。
● 導入時の初期設定サポートやトレーニングがあるか
● 問い合わせに対して迅速に対応してくれるか(チャット、電話など)
● マニュアルやヘルプページが充実しているか
特にITに不慣れな現場では、こうした支援の有無が導入後の成功を左右します。
なお、問い合わせ対応の最適化を図るうえでは、問い合わせ管理システムの機能だけでなく、FAQの整備と連携も欠かせません。FAQの活用によって、顧客自身での“自己解決”が可能になれば、対応件数の削減と業務効率化に大きく貢献します。次章では、実際にFAQを活用して自己解決を促進した企業の事例をご紹介します。
自己解決を促進するFAQ活用の事例
問い合わせ対応を効率化するうえで、すべての問い合わせに個別対応するのではなく、「よくある質問」を整理・活用し、顧客自身による“自己解決”を促すことが重要です。ここでは、FAQ運用に特化したソリューション「PKSHA FAQ」を活用し、問い合わせ対応の効率化や社内業務のスムーズ化を実現した企業の事例を紹介します。
株式会社アーツ様:複数チャネルの問い合わせをFAQで効率化
そこで導入されたのが「PKSHA FAQ」です。FAQサイトの構築だけでなく、検索ログを分析して“検索しても回答が見つからない質問(=0件ヒット)”を特定し、継続的に改善しました。これにより顧客の自己解決率が向上し、オペレーターの負担が大幅に軽減されました。
また、問い合わせの可視化によって、対応状況や改善点が把握しやすくなり、社内のヘルプデスク業務全体の効率化にも貢献しています。
ネットワンパートナーズ株式会社様:ヘルプデスクオプションで問い合わせ対応を効率化
ICT機器の再販ビジネスを手掛けるネットワンパートナーズ株式会社様では、従来メールベースでの技術支援を行っていましたが、情報共有が限定的で同じ問い合わせが繰り返される非効率さが課題となっていました。また、営業担当者が技術的な問い合わせを仲介する必要があり、年間4,000〜5,000件のチケット登録による事務工数や、お客様への回答に時間がかかることが問題でした。
PKSHA FAQのヘルプデスクオプションを導入したことで、FAQサイトの問い合わせフォームから直接お問い合わせを受け付ける体制に変更しました。これにより営業担当者の工数が削減されるとともに、技術者がお客様と直接向き合って対応することが可能になりました。導入は1か月間で要件定義からサービスインまで完了し、利用者数も1,000ユーザーを超える成果を上げています。
まとめ:問い合わせ対応の最適化で顧客満足と業務効率を両立する
問い合わせ管理システムは、複数チャネルからの問い合わせを一元的に管理し、対応の迅速化と品質向上を実現するための重要なツールです。導入することにより、対応漏れの防止や情報共有の円滑化、業務効率の向上が期待できます。
一方で、よくある質問への対応を効率化し、顧客による“自己解決”を促す仕組みとして効果的なのがFAQツールです。なかでも「PKSHA FAQ」は、自己解決を促進するFAQサイトの構築・運用機能に加え、問い合わせ管理や可視化、分析までを一体化したシステムであり、社内外の問い合わせ対応を効率化する強力なサポートツールとなっています。
これらを組み合わせて活用することで、限られたリソースでも高品質な対応が可能となり、顧客満足度の向上と業務負荷の軽減を両立できます。自社の課題や運用体制に合わせて、最適な仕組みを構築していきましょう。

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