コンタクトセンターでは問い合わせ対応のコスト増加が深刻な課題となっています。この状況を改善するために注目されているのが、顧客自身が必要な解決法を見つけ出す「自己解決」の仕組みです。AIを活用した自己解決環境の構築により、問い合わせの削減と顧客満足度の向上を同時に実現できます。
本記事では、自己解決率が低い原因となっている課題とその解決策を、実際の成功事例とともに具体的に解説します。
自己解決率向上の重要性と現状の課題
自己解決が求められる背景
コンタクトセンターを運営する多くの企業では、「FAQを整備したが問い合わせが減らない」「顧客が必要な情報にたどり着けていない」といった問い合わせの量や質に関する課題を抱えています。デジタル化の進展により、顧客の「すぐに自分で解決したい」というニーズも高まっており、自己解決環境の整備は急務となっています。自己解決率が低いままでは、以下のような問題が深刻化します。
対応コストの増大: 電話対応には1件あたり800〜1,200円程度のコストがかかり、問い合わせ件数の増加に比例して対応コストがかかります。
顧客満足度への影響: 必要な情報にたどり着けない顧客は、結局電話での問い合わせを余儀なくされ、待ち時間や解決までの時間が長くなることで満足度が低下します。
自己解決を阻む主な課題
FAQをはじめとした自己解決環境にある問題をまとめました。この問題が企業にとっての課題につながります。
情報への到達性の問題
● 検索機能の精度が低く、顧客が使う表現とマッチしない
● カテゴリ分けが企業目線で、顧客の知りたい内容と一致しない
● モバイル対応が不十分で、外出先からの利用に支障がある
コンテンツ品質の課題
● 専門用語が多用され、一般的な表現での理解が困難
● 回答内容が不明確で、解決に至らない
● 情報の更新頻度が低く、古い情報が混在している
運用・管理体制の不備
● 部門間のナレッジ共有が不足し、情報の整合性が保てない
● 継続的な改善プロセスがなく、効果測定ができていない
このように、情報設計・コンテンツ・運用体制のそれぞれに課題があることで、FAQページ内で目的の情報が見つからないなど、顧客が自己解決の機会を逃している状況が生まれています。
自己解決を促進する手段
ここでは自己解決を促すための手段を、システム面・運用面・顧客接点の観点から解説します。
FAQシステムの最適化
高精度な検索機能の実装
FAQシステムにAIの自然言語処理(NLP)技術を組み込むことで、「壊れた」「動かない」「不具合」といった類似表現も同じ意味として認識し、関連性の高い情報を的確に提示できます。また、検索サジェスト機能により、顧客が適切なキーワードを見つけやすくなります。
多様なFAQ探索機能
キーワード検索だけでなく、カテゴリやタグを活用した検索、閲覧数ランキングや新着順ランキングなど、FAQの検索方法を豊富に備えることで、顧客が知りたい情報を発見できる確実性を高めます。
検索エンジン最適化(SEO)
FAQページに構造化データを設定し、Googleなどの検索エンジンに正しく認識・インデックスされるよう対応することで、検索エンジンからの自然流入を促進できます。また、FAQの内容が検索意図にマッチするよう、タイトルや見出しの工夫も重要です。
AI技術を活用した運用効率化
生成AIによるFAQ自動生成
社内に蓄積されたマニュアルや問い合わせ履歴などのドキュメントをもとに、生成AIがFAQを自動で作成するという仕組みです。
さらに、内容の重複チェックやカテゴリ分けといった作業もAIが担うことで、FAQの更新作業の手間を減らすことができます。
データ分析による継続的改善
検索ヒット率やカテゴリー別解決率をグラフィカルに把握し、優先的に改善すべきFAQを特定できます。どのような検索で失敗しているか、どのコンテンツで解決できていないかを可視化することができるようになります。
ナレッジの一元管理とチャネル連携
顧客向け・オペレーター向けFAQの一元管理
顧客向けFAQと社内ナレッジを一元的に管理することで、社内の誰が対応しても同じ品質の回答ができるようになります。顧客にも常に最新の情報を提供でき、情報の食い違いによるトラブルも防げます。
チャットボットとの連携
このナレッジベースをチャットボットと連携させることで、チャット上でも即時に回答することが可能になります。シンプルな質問にはその場で応答し、複雑な内容については適切なFAQページへ案内するなど、状況に応じた自己解決を支援できます。
AI活用の実践事例
PKSHAのAIソリューションである「PKSHA FAQ」を活用して成果を上げた事例を紹介します。
製造業:受電数50%減を実現した事例
株式会社工進様では、コールセンターへの1日の問い合わせ件数が平均で400件、ピーク時は900件にも及んでいました。
同社ではまず、PKSHA FAQを活用して社内のナレッジ共有を開始しました。商品情報や修理ノウハウなどの情報を集約し、サイト内検索サービス「PROBO」と連携することで、社内ポータルから一括検索できる環境を整備しました。
その後、お客様向けFAQの公開を開始。現場スタッフが情報を追加しながら、レポートを基に継続的な改善を進めました。特にシニア女性には「かんたん用語集」を提供し、イラストや写真でわかりやすさを重視しました。
その結果、誰でも同じ品質の回答が可能となり、新人の即戦力化が促進。顧客の自己解決率も向上し、コール数は前年比で50%削減されました。
育児用品メーカー:24時間サポート体制の実現
コンビ株式会社様では、従来の電話・手紙・FAXに加えてメール対応を導入し、顧客満足度の向上を目指していました。また、FAQの活用によってオペレーターの業務効率と回答品質を高めたいという課題もありました。
同社はPKSHA FAQを導入し、24時間対応のFAQを通じてセルフヘルプを促進させました。メールと組み合わせることで時間外の問い合わせにも対応可能となり、顧客から高い評価を得ました。
さらに、社内向けFAQの整備によって業務効率と対応品質の向上を両立させました。窓口にFAQを設置したことでアクセス数が増え、顧客の自己解決も進みました。
結果として、問い合わせのうち部品販売に関する比率が約35%から25%に減少し、より本質的な課題解決に注力できる体制へと進化しました。
まとめ:これからの自己解決環境構築に向けて
自己解決率を高めることは、顧客満足度の向上とオペレーターの負担軽減の両方を実現する重要な取り組みです。単にツールを導入するだけでなく、顧客の視点に立った使いやすい仕組みと、AI技術を活用した継続的な改善が成功の鍵となります。
重要なのは、現状の課題を明確にし、適切なソリューションを段階的に導入することです。実際の成功事例が示すように、適切なアプローチにより大幅な問い合わせ削減と顧客満足度向上を同時に実現できます。
PKSHA Communicationでは、自然言語処理やデータ分析などの先進的なAI技術を活用したソリューションで、お客様の自己解決率向上を支援しています。ぜひこの機会に、自社のコンタクトセンター運営の見直しを検討してみてください。

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