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カスタマーサポート業務において、KPIの設定は重要です。各種KPIを設定することで、自社の業務効率やサービスレベルが可視化され、解決すべき課題などを明確にできます。ただし、必要な指標は業界や業態によって違いがあるため、どのKPIを活用するか適切に判断しなければなりません。
そこで本記事では、カスタマーサポートにおけるKPIの重要性や設定すべき指標、設定時の注意点を解説します。KPI設定について理解したい方は、ぜひご確認ください。
カスタマーサポートがKPIを設定する重要性
まずは、KPIの定義とカスタマーサポートにおける重要性について解説します。
KPI(Key Performance Indicator)とは、企業や組織の最終目標に向けて、適切なプロセスを踏んでいるか判断するための指標です。業務目標の達成度合いを定量的に測ることができるため、オペレーターなどの従業員一人ひとりが、自身の役割や目標を明確に意識できます。チーム全体の方針が定まることで、組織力の強化にもつながるのです。
また、KPIを定期的にモニタリングすることで、業務効率化やサービス品質の改善などに活かせます。
カスタマーサポートで設定すべきKPI
次に、カスタマーサポートで設定されやすいKPIに関して、用語の意味と計算式を解説します。
KPI |
概要 |
算出方法 |
解決率 |
顧客から受けた問い合わせを解決できた割合 |
解決数÷問い合わせ件数 |
平均通話時間(ATT) |
電話で問い合わせを解決するのにかかった平均時間 |
総通話時間÷総コール数 |
平均後処理時間(ACW) |
電話応対後の作業にかかった平均時間 |
後処理時間の合計÷対応件数 |
一次応答時間 |
問い合わせを受けて最初に応答するまでの時間 |
最初の応答までにかけた合計時間÷問い合わせ件数 |
応答率 |
問い合わせに応答した割合 |
応答件数÷着信数×100 |
顧客満足度 |
商品・サービスに顧客がどの程度満足しているかを表す |
「満足」と回答した数÷アンケートの全回答数×100 |
顧客とのやりとりの回数 |
課題解決にするまでに顧客とやり取りした平均回数 |
顧客とやり取りした数の合計÷問い合わせ件数 |
エスカレーションの回数 |
上司や他部署などにエスカレーションを行った平均回数 |
総エスカレーション回数÷ 問い合わせ件数 |
解決率
解決率とは、顧客から受けた問い合わせを解決できた割合のことです。
解決率 = 解決数 ÷ 問い合わせ件数
カスタマーサポートの目的は顧客の問題解決なので、数ある指標の中でも特に重視すべきです。解決率の目標は100%に設定して、未解決が発生しないようにしましょう。
また、解決率にはいくつかの種類があり、一般的に一時解決率(1回の問い合わせで解決できた割合)やワンコール解決率(他部署への転送などを経て解決できた割合)を設定することが効果的だと言われています。
平均通話時間(ATT)
平均通話時間(ATT)とは「Average Talk Time」の略称で、顧客からの問い合わせ内容の解決までにかかった平均時間を指します。
平均通話時間(ATT) = 総通話時間 ÷ 総コール数
平均通話時間の短縮は、オペレーター業務の効率化や顧客満足度の向上につながるため、継続的に取り組む必要があります。
ただし、複雑な問い合わせやクレームなど、ゆっくりと話すべき場面も多いため、電話応対の時間を短くすることだけが目的になるのは望ましくありません。
平均後処理時間(ACW)
平均後処理時間(ACW)とは「After Call Work」の略称で、電話応対後の作業(後処理)にかかった時間のことです。後処理とは、顧客との通話内容を記録する作業を指します。
平均通話時間(ATT) = 総通話時間 ÷ 総コール数
平均後処理時間(ACW)を短縮することは、生産性の向上に直結するため重要です。また、後処理の速さはオペレーターのスキルや業務フローに依存するため、短縮しやすい部分でもあります。
CRM(顧客関係管理)や入力補助ツールを利用して、入力作業を簡略化するのも良いでしょう。
一次応答時間
一次応答時間とは、問い合わせを受けて最初に応答するまでの時間です。
一次応答時間 = 最初の応答までにかけた合計時間 ÷ 問い合わせ件数
一次応答時間を短くすることは、顧客満足度の向上につながります。具体的な回答ができない場合でも、一定時間内に何らかの応答をすることが重要です。例えば、オペレーターから折り返し連絡する旨を伝えるだけでも、顧客からの印象は良くなります。
応答率
応答率とは、着信数に対して応答した件数の割合のことです。
応答率 = 応答件数 ÷ 着信数 × 100
応答率が悪いと、顧客は電話がつながらない状態が長く続き、相談を諦めてしまうケースもあります。応答率を改善するには、サービスレベル(サービスを提供する速さ)や平均応答速度(着信にオペレーターが応答するまでの時間)などの応答率に関連する指標を設定するのがおすすめです。
顧客満足度
CSAT(顧客満足度)とはCustomer Satisfactionの略称で、企業が顧客に提供するサービスや商品に対して、顧客がどの程度満足したかを測る指標のことです。アンケート調査を実施することが一般的な手法で、具体的には「非常に満足」「満足」「普通」「不満」「非常に不満」の5段階評価で回答を得て、以下の計算式で算出します。
顧客満足度 = 「満足」と回答した数 ÷ アンケートの全回答数 × 100
他の計測方法としては、顧客とのメールのやり取りの中で、感謝の言葉をどれだけいただけたかカウントするものもあります。
顧客とのやりとりの回数
課題解決するまでに、顧客とやり取りした回数です。オペレーターが顧客の問い合わせに対して回答できず、往復した数を計測します。
顧客とのやりとりの回数(平均) = 顧客とやり取りした数の合計 ÷ 問い合わせ件数
やり取りが増えるほど顧客のストレスになるため、お問い合わせフォームの内容を見直すなどの施策が必要となります。
エスカレーションの回数
エスカレーションとは、オペレーターだけでは問い合わせに対応できない場合に、他部署や上司に指示を仰いだり、代わりに対応をお願いしたりすることです。
エスカレーションの回数(平均) = 総エスカレーション回数 ÷ 問い合わせ件数
エスカレーションが増加すると、企業のイメージや顧客満足度の低下につながるおそれがあります。現場スタッフだけで対応できる体制を作るために、マニュアルの見直しなどを行うことが望ましいです。
カスタマーサポートでKPIを設定するときの注意点
ビジネスを成功させるにはKPIの設定方法も重要です。以下では、注意すべき3つのポイントを紹介します。
KGIを意識したKPIを設定する
KPIはKGI(重要目標達成指標)と関連性の高いものにします。つまり、KPIの数値を改善することが、そのまま企業の最終目標(ゴール)につながるようにするのが望ましいです。実際には運用する中でKPIとKGIの乖離が明らかになる場合もありますが、設定時に両者の関連性について丁寧に仮説を立てておくことで、KPIを修正する際に役立ちます。
また、現場のためだけではなく、企業全体の目標を反映させたKPI設定にすることも大切です。そうすることで、カスタマーサポート部門のモチベーションや良質な顧客対応につながります。
定量評価できる指標を設定する
KPIは定量評価できるものが望ましいです。業務の現状を数値化し計測することで、KGIの達成状況が客観的に判断できるようになります。もしも定性的な目標を立てた場合は、評価の際にマネージャーや管理者など評価者の主観が影響するおそれがあります。
そのため、まずはカスタマーサポートチームのKGIを明確にした上で、定量評価が可能なKPIを定めていくようにしてください。
達成可能な目標数値にする
KPI設定において現実的な目標数値を設定することは重要です。実現が難しい目標設定をした場合、社員のモチベーション低下につながります。結果的に、サポート担当者の応対品質が悪化するおそれもあるので、現状に即した目標を立てるようにしましょう。
また、関連部門を巻き込んだKPIは慎重に設定してください。目標を達成できなかった際の原因が特定しづらいので、KPI対象者の範囲を明確にすることも重要です。
カスタマーサポートのKPI設定は業務改善に欠かせない
カスタマーサポートの業務改善を図る上で、KPI設定は欠かせない要素です。上述した指標を定期的に測定・分析することで、業務の現状を数値化でき、問題点や必要な施策が明らかになります。
注意点としては、企業の最終目標を意識してKPIを設定することです。KGIに直結しない指標を選んだ場合、仮に数値が改善したとしても、企業全体の利益にはつながらない可能性があります。また、観測すべき指標は状況によって変化するため、柔軟に軌道修正することも大切です。