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コールセンターがChatGPTを活用することで現時点で期待できる効果
ハイレベルな自然言語処理技術が使われているChatGPTでは、違和感のないコミュニケーションが叶います。
質問から回答までの時間も短く、待機するストレスも少ないため、コールセンターにおいて抜群の効果を発揮するといえるでしょう。
現ChatGPTの性能を考慮すると、コールセンターがChatGPTを活用することで期待できるのは、以下の点です。
- ACWの短縮やVOC活用に役立ち顧客満足度の向上につながる
- 生産性が向上しコストカットをすることができる
将来的にはより幅広く活用できる可能性も十分に考えられます。
まずは、現状メリットとなり得る上記2点について、詳しく見ていきましょう。
ACWの短縮やVOC活用に役立ち顧客満足度の向上につながる
ACW(平均後処理時間)とは、コールセンターにおいて、電話応対終了後にオペレーターが通話内容記録をシステム入力するなど後処理にかかる時間を指します。またVOCとは、「顧客の声」です。コールセンターにおいては、お客様から寄せられた意見や要望、クレームなどが該当します。
コールログをChatGPTに要約させることにより、ACWの短縮が期待できます。ChatGPTは、製品改善のためにVOCを活用することも、容易にしてくれるでしょう。
コールログを要約するプロセスやVOC活用のプロセスを省略できるため、顧客対応にかける時間を大幅に増やせます。より多くの顧客に対応できるようになるので、顧客満足度の向上や、クレームの削減にもつながるのです。
生産性が向上しコストカットをすることができる
これまでオペレーターがおこなっていた業務の一部をChatGPTが担うことで、生産性の向上が期待できます。
どんなに優秀なオペレーターであっても、人間がおこなう作業にはやはり限界があるものです。その点、ChatGPTを併用すれば、能率は格段に上がります。
生産性が向上することによって今までよりも少ないリソースで運営をおこなえるため、コストカットにもつながるでしょう。
コールセンターがChatGPTを活用するシーン5選
ここからは、コールセンターにおいて、ChatGPTを賢く活用できるシーンをご紹介していきます。
コールセンターでChatGPTが効力を発揮するのは、主に以下の5つのシーンです。
- FAQ自動作成
- コールログの要約支援
- AIチャットボット学習支援
- オペレーター回答支援
- 教育支援
それぞれ詳しく解説していきます。
FAQ自動作成
ChatGPTは、FAQの作成を作成する際に活用することができます。
FAQを作成するには、過去のコールログやお問い合わせ内容などを分析したものを元に、作成するため、非常に工数がかかってしまうでしょう。
その点、ChatGPTは言語を扱う能力に長けており、過去のコールログや製品資料からFAQのドラフトを自動作成させることで、工数の大幅削減が見込めます。
ChatGPTが作成したドラフトをもとにして人間が最終的な手を加えれば、工数の削減のみでなく、品質の担保にも期待できるでしょう。
コールログの要約支援
ChatGPTのような生成型AIは、文章の要約も得意です。
コールログをAI音声認識ツールで文字起こしし、ChatGPTで要約生成させることができます。先述のとおり、コールログをChatGPTにて要約することで、ACWの大幅削減が可能となるのです。
ACWの改善ができれば、オペレーターのリソースにも余裕ができ、より多くの顧客対応をすることができます。。今までよりも顧客の声に幅広く耳を傾けられるようになるため、顧客エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。
AIチャットボット学習支援
AIチャットボットにおける正答率の向上を図るためには、さまざまな言い回しをAIにインプットし学習させる必要があります。
ただし、学習させるためのさまざまな言い回しを考え、一つひとつインプットしていくには、手間や時間が非常にかかってしまうことが難点です。
言語能力に優れたChatGPTを活用すれば、あらゆる言い回しを大量に生成でき、工数の大幅削減にもなるでしょう。
オペレーター回答支援
ChatGPTに、文字起こしされたお客様の声やチャットログをインプットすることで、回答を生成させることができます。
オペレーターはその回答をもとに顧客対応をおこなえるため、業務の能率が上がるでしょう。また、対応メールの作成や、電話対応のトークスクリプトの作成をその場ででき、リアルタイムでの支援が可能となります。
教育支援
ChatGPTにマニュアルを学習させることで、質問集や教材などの作成も可能となり、それらをオペレーターの教育に活用できます。
オペレーターの新人教育では、相当の期間と工数がかかってしまうものです。教育する側の負担も決して少なくありません。ChatGPTの力を借りることで新人教育にかかる手間や工数を削減できれば、SVの負担軽減にもつながり、コア業務に集中できます。
また、自己学習型AIであるChatGPTは、新人オペレーターのレベル感やニーズに沿った教育プログラムのカスタマイズも可能です。オペレーターに伝わりやすい言葉で回答を生成してくれるので、よりスムーズな新人教育にもつながるでしょう。
コールセンターがChatGPTを活用する際に直面する課題
コールセンターがChatGPTを活用するにあたっては、メリットばかりではありません。
現状「課題」ともいえる項目は、主に以下の3点です。
- 情報セキュリティ
- 応対スピード
- 回答の正確性
ChatGPTを賢く使うためにも、しっかりと確認しておきましょう。
情報セキュリティ
ChatGPTは、ユーザーが入力した内容や出力結果を学習することで、パフォーマンスの向上に役立てています。
裏を返せば、自身が入力した内容が学習データとして使用される可能性を秘めているということです。
自社が入力した情報がほかのユーザーの回答へと活用され、意図せず情報漏洩してしまう可能性も否めません。
応対スピード
基本的には数秒以内に回答してくれるChatGPTですが、時として応対スピードにも注意が必要です。
複雑な質問に対しては、処理に時間を要してしまう場合があります。日本語で使用している場合は、英語での使用と比較して一般的に応対スピードが遅くなりがちです。
ユーザーのアクセスが集中している場合にも、応対に時間がかかってしまうことがあるでしょう。とくに無料版のChatGPTは、有料版と比較しさまざまな制限が設けられているため、その傾向が顕著です。
回答の正確性
回答の正確性に関しても、全幅の信頼を寄せるのは望ましくありません。
現在のChatGPTでは必ずしも正しい回答が得られるとも限らず、誤った回答をしたり、情報の不足した回答をしたり、ということが少なからずあります。
ChatGPTはあくまでも文脈を理解し自然な文章を生成することに優れたものであり、事実の忠実性に重きが置かれているわけではありません。
文脈・トーンなどを重んじた結果、正確性に欠ける文章が生成されてしまうことがあるのです。ユーザーの質問の仕方次第では、ChatGPTの正答率も変わってしまいます。
また、ChatGPTが学習した膨大なデータの中に、事実に反する内容や偏った内容が含まれていた場合、出力される文章も事実とは異なる内容・偏った内容となる可能性は否めません。
回答の根拠がブラックボックス化しているため、本当に正しい情報なのか判別できない危うさを孕んでいます。
コールセンターがChatGPTを活用する際のポイント
コールセンターがChatGPTを活用するには、まだまだ課題もあることがわかりました。
では、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
- ChatGPTに丸投げではなく人間の目でも確認する
- 最新技術の動向をチェックし導入する
- 入力データを活用されないようにオプトアウトする
上記3点のポイントについて解説していきます。
ChatGPTに丸投げではなく人間の目でも確認する
先述したとおり、ChatGPTは必ずしも正しい回答をしてくれるわけではありません。
人間の目で「虚偽の情報ではないか」の最終確認が必要となります。ChatGPTを活用する際には、必ずオペレーターを介在させましょう。
ChatGPTはあくまでも人間がおこなう業務の一部をサポートしてくれる「補助ツール」である、という認識を持ち、運用していくことが大切です。
ChatGPTに依存するような運用では、早い段階でのミスやインシデントにもつながりかねません。
最新技術の動向をチェックし導入する
ChatGPTは2022年11月に公開されて以来、日進月歩の勢いで急速な進化を遂げています。
最近では2023年3月、ChatGPTにプラグインが実装されたことによって、学習データに含まれていない最新の情報やクローズドな情報を参照し、回答できるようになりました。
公開からまだ日も浅いChatGPTは、今後もさらなる進化を遂げていく可能性を多く秘めています。ChatGPTが現在抱えている課題も、近い将来解消され、より幅広く活用できることも見込まれるでしょう。
そのため、ChatGPTを活用する上では、常に最新の技術動向にアンテナを張り、チェックしていくことが重要です。
入力データを活用されないようにオプトアウトする
前項で、ChatGPTの課題として、セキュリティ面に不安があることをお伝えしました。
繰り返しになりますが、ChatGPTでは、自社が入力した内容を他のユーザーの回答に使用されることがあり、情報漏洩につながってしまう可能性を含んでいます。
情報セキュリティ・プライバシー対策としては、オプトアウトが有効です。入力情報をオプトアウトすることで、学習データとして使用されず、情報漏洩を防げます。
プラグインを使用する場合には、プラグイン提供ベンダーの規約も忘れず確認するようにしましょう。
ChatGPTを導入したコールセンターの事例
ChatGPTを導入することで、コールセンター業務の効率は格段にアップします。ただし、先述したような課題もあるため、賢く取り入れることが大切です。
1つの参考として、ChatGPTを導入している企業例を2例ご紹介します。
- JR西日本カスタマーリレーションズ
- PKSHA Communication
それぞれ見ていきましょう。
JR西日本カスタマーリレーションズ
JR西日本グループにおいて顧客対応業務を担っている「JR西日本カスタマーリレーションズ」では、2023年3月、ChatGPTを活用した顧客対応業務の半自動化を実現しました。
JR西日本グループでは、同社運営の「JR西日本お客様センター」に集まる顧客の声を業務改善に役立てています。JR西日本お客様センターの1日の応対件数は、メール・電話・チャットを合わせて6,000件にものぼります。
そこで、ChatGPTを導入することで、割当草案の作成や回答草案の作成から、要約、レポート作成まで自動化を図りました。オペレーターは、主にチェックや修正をおこないます。そうすることで、品質の担保と業務効率化の並存につながっているようです。
JR西日本カスタマーリレーションズでは今後も、ChatGPTと国産言語AIそれぞれのメリットを最大に享受できるよう業務に応じた使い分けをおこない、幅広く実装していく方針を打ち出しています。
参考:言語AIのELYZA、JR西日本グループのDXを推進。”二刀流”でGPT/国産AIを使い分け多領域で高速DX推進。顧客対応業務の半自動化に成功。|PR TIMES
PKSHA Communication
PKSHA Communicationでは、2023年5月、国内シェアNo.1を誇るFAQシステム「PKSHA FAQ(パークシャエフエーキュー)」において、ChatGPTAPIを用いたオペレーター支援機能の提供開始を宣言しました。
ChatGPTAPIを活用することで、以下の業務効率化が図れます。
- 要約された回答文の自動作成
- FAQ検索用の類義語生成
- 問い合わせ対応履歴をもとにFAQ作成
- 問い合わせ回答文の誤字脱字チェック
- 英語での問い合わせ内容を和訳
ChatGPTが業務の一部を担ってくれるため、オペレーターがコア業務に専念できる環境を作れます。
PKSHA Communicatioでは今後も、「PKSHA FAQ」に留まらず、ユーザーとAIソフトウェアとが共に関わり合いながら進化していく新たな価値・関係性の実現を目指し、企業のDX推進を支援していく方針です。
参考:PKSHA FAQ「ChatGPT」の APIを活用したオペレータ支援機能の実装へ|PKSHA TECHNOLOGY
これまでの業務運営と上手く併用しながら品質向上と効率化の両立を目指そう
ChatGPTが登場してからの歴史はまだまだ浅いものの、連日ニュースの話題にのぼるなど、その注目度は郡を抜いています。自然言語処理に長けているChatGPTを活用することで、企業においても大きな業務効率の改善が望めるでしょう。
お客様との対話が業務の中心となるコールセンターも例外ではありません。とはいえ、導入する際には、ChatGPTが抱える課題にもしっかりと留意し、ポイントを押さえた運用が求められます。
ChatGPTにすべてを委ねるのではなく、これまでの業務運営と上手く併用しながら、品質向上と効率化の両立を目指しましょう。