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公開日/2022.3.14
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SECIモデルを事例で学ぶ|ナレッジマネジメントへの活用方法

SECIモデルを事例で学ぶ|ナレッジマネジメントへの活用方法

組織の業務改善や新しい事業の創造に欠かせない「ナレッジマネジメント」を適切に実現・運用するためには、SECI(セキ)モデルによるフローの実践が重要なポイントとなります。

本記事では、SECIモデルの全体像と各プロセスのほか、関連用語などもまとめて解説します。さまざまな業種や企業規模の会社で使える汎用的なモデルなので、ぜひ自社の環境を思い浮かべながら確認してみましょう。

SECI(セキ)モデルの概要

SECI(セキ)モデルの概要を解説します。また、SECIモデルを理解するうえで知っておかなければならない3つの用語もまとめました。

(1) SECI(セキ)モデルとは

SECI(セキ)モデルとは、ナレッジマネジメントを実施する際の枠組み(フロー)であり、日本の経営学者で一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が1990年代に提唱しました。

野中氏はナレッジマネジメントの第一人者でもあり、SECIモデルはナレッジマネジメントを行ううえで欠かせないフローとして日本のビジネスシーンに浸透しています。

(2) SECIモデルを理解するうえで押さえるべき用語

SECIモデルを理解するにはまず、ナレッジマネジメントと暗黙知、形式知について正しく情報を把握しておく必要があります。それぞれの特徴を以下でまとめたので確認してください。

① ナレッジマネジメント

ナレッジマネジメントとは、個々の従業員の知識(ナレッジ)を組織で共有して活用する日本発の経営手法です。
言語化されていない個々が持つ「暗黙知」を誰が見ても理解できる「形式知」に転換する方法のことで、それに必要なプロセスをまとめたものが「SECIモデル」となります。

ナレッジマネジメントを実現できれば、知識を活かした新規事業の開発、既存事業の改善、教育の効率化、会社全体の生産性向上などが図れます。

② 暗黙知

暗黙知とは個人の主観的な視点を含んだ言語化できていない知識のことです。勘や経験、イメージなどが該当し、ビジネスにおいては個々のトラブルの対処法や予防法、顧客との接し方などが挙げられます。

どんなに優れた暗黙知でも個人の知識のままだと、組織で共有できず適切に活かすことができません。有益な暗黙知を持つ従業員が退職すると、重要な知識を失ってしまうため大きな機会損失につながります。

③ 形式知

形式知(明示知)とは文章や計算式、図表などで表現できる知識のことです。ビジネスシーンではマニュアルや報告書などのことで、第三者でも理解できるようにまとめられたノウハウや経験も該当します。

SECIモデルによってナレッジマネジメントを行い、暗黙知を形式知に変換して活用することが大きな目的となります。

SECIモデルの4つのプロセス

SECIモデルの全体像は、4つのプロセスとそれぞれに該当する「場」によって構成されます。それぞれの詳細を確認してみましょう。

SECIモデルを図解したイラスト

(1) SECIモデルの全体像

SECIモデルは、共同化、表出化、結合化、内面化の4つのプロセスを経て暗黙知から形式知の転換と、共有した形式知から新たに暗黙知を生み出しまた転換するといった「スパイラル構造」で成り立っています。

また、各プロセスはそれぞれの「場」で実行されるためハード・ソフトの環境整備も求められます。つまり場を整えてプロセスを円滑に回せるようにしてSECIモデルを定着させることが、知識の洗練とナレッジマネジメントの実現に直結するのです。

(2) 共同化プロセス

共同化プロセスとは、暗黙知を他人に移転(共同化)させるプロセスのことです。
共同化プロセスはあくまで暗黙知を「個人から個人」に移転することであり、形式知に転換する前の段階です。

「熟練の職人の技能を盗む」、「先輩の顧客対応の方法を真似する」といったビジネスシーンにおいても当たり前で行われていることも、経験による知の移転に該当することを覚えておきましょう。

創発場とは

共同化プロセスは主に従業員同士のコミュニケーションの場である「創発場」で行われます。従業員同士の会話や交流、同じ業務を経験するシーンなどが該当し、ランチや喫煙所での雑談、飲み会などの場も創発場の1つです。

一人では共同化は図れないため、従業員同士の交流を活発にする場の創造が求められます

(2) 表出化プロセス

表出化は暗黙知を形式知に変換するプロセスで、個人が所有している暗黙知を言葉などで表出化させることが目的となります。

例えば、上司と部下との細かな日報のやりとりを行うほか、図や文章で知識を表現することが挙げられます。

対話場とは

SECIモデルでは表出化プロセスは主に「対話」によって創造できるとされています。
マニュアルで資料、ミーティングによる会話によって個々の暗黙知を形式知にまとめることを「対話」と置き換えており、このような場を「対話場」と表現しているのです。

(3) 結合化プロセス

表出された複数の形式知を組み合わせて「新たな知」を創造するプロセスです。

あくまで形式同士のやりとりに留まるものの、複数の個々の作業の仕方などを結合して新たに効率的な工程を創造したり、システムの導入によって効率化したりすることも実現可能です。

システム場とは

複数の形式知を組み合わせるためには、それぞれの形式知を組織内の誰もが確認しやすい形式で集約する必要があります。

また、このような形式知をまとめた場所のことを「システム場」といいます。

一般的にシステム場はオンラインでの構築が望ましいとされています。
例えば、チャットツールや掲示板、社内wiki、クラウドストレージなどに情報を集約することで不特定多数の従業員がアクセスしやすい環境の構築が可能です。

(4) 内面化プロセス

内面化プロセスは、個々の従業員が新しく形式知を暗黙知として自分のものにするプロセスです。

例えば、結合化プロセスで生まれた新しい作業工程をマニュアルなしで遂行できる状態は、形式知が内面化されて個人の暗黙知になったといえるでしょう。

内面化した暗黙知は個人の経験や思考によってさらに深化し、発展した暗黙知となります。その暗黙知をさらに共同化、表出化、結合化することで組織の発展に役立てることがSECIモデルの大きな狙いで、理想的なナレッジマネジメントの姿になります。

実践場とは

内面化プロセスは新たな形式知を従業員が継続的に実践できる「実践場」が必要不可欠です。ただ実践するだけではなく、新たに得られる経験や知識を含めて暗黙知となる場の整備が重要となるでしょう。

SECIモデルの実践事例

SECIモデルはすでに多くの企業で実践されています。
その代表的な3例の「場」と「プロセス」の整備について、ポイントをまとめたので参考にしてください。

【事例1】NTT東日本

NTT東日本法人営業部はリアルとバーチャルの2つの要素を組み合わせて、4つの場を創造しました。

・創発場:フリーアドレス制の導入
・対話場:打ち合わせスペース「クリエイティブゾーン」の新設
・システム場:日報や担当プロジェクトを記載した全社員の個人ホームページを解説
・実践場:作業に集中できる「コンセントレーション・ゾーン」の新設

【事例2】エーザイ

医薬品メーカーのエーザイもSECIモデルを実践しています。同社は各プロセスのなかでも「共同化プロセス(創発場)」を重視していることが特徴的です。また、共同化の内容も従業員や組織内だけではなく患者との交流で行うことも独創的といえるでしょう。

・創発場:介護実習や高齢者疑似体験の実施
・対話場:現場での気付きを報告・議論する場を設ける
・システム場:各部門の代表者が集まり「ベストプラクティス」を発表するイベントの実施
・実践:仕事を見つめ直す場を設ける

【事例3】富士ゼロックス

製品開発工程にSECIモデルを取り入れ、現場のエンジニアの知識と経験の深耕拡大を図っています。

・共同化:製品開発の後工程からの出戻り減少を図るため、設計段階から対話場を構築
・表出化:オンラインによる設計情報共有システム(システム場)を構築
・連結化:上記システムに優れた情報(製品仕様、特許情報など)を登録
・内面化:登録されたノウハウを「品質確立リスト」に再編集

SECIモデルを実践してナレッジ共有を実現しましょう

ナレッジを共有し、新しい暗黙知を生み出すサイクルを形成できれば、組織としての力を増大することに繋がります。プロセスの重要さや注力して構築すべき「場」は、企業によってそれぞれなのでまずは現状の把握と課題の抽出から取り掛かってみてはいかがでしょうか。

 

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