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昨今、SaaSビジネスは一般ユーザーの所有から利用による価値観変化やサブスクによる課金方式を背景に市場を飛躍的に伸ばして来ました。一方で、初期コストの少ないSaaSビジネスは多くのスタートアップ企業が参入し、企業間競争が激化しています。
そんな中、SaaSビジネスを成功に導く要として注目されているのが「カスタマーサクセス」です。
当記事では、カスタマーサクセスの定義から注目される背景や重要性とその役割、業務内容を解説します。
SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスとは?
BtoB、BtoCや事業規模を問わずSaaSビジネスの成功には、カスタマーサクセスの存在を抜きに語れません。ここではSaaSビジネスの基礎となる「SaaS」と「カスタマーサクセス」の意味を説明します。
また、良く誤解されるカスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いについても解説します。
(1) SaaSとは
SaaSとは英語の「Software as a Service」の略称です。クラウドサーバー上にあるソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービスを指します。
SaaSビジネスの代表格はフリーメールサービスの「Gmail」を運営するGoogle社やチャットツールで有名な「Slack」を運営するSlack Technologies社などがあり、多くのスタートアップ企業がさまざまなプロダクトを提供しています。SaaSビジネスを理解するには、既存のパッケージ型ビジネスとの違いを理解すると分かり易いでしょう。
既存のパッケージ型ビジネスは、ソフトウェアが入ったCD-ROM等を購入してPCにインストールして利用していました。このため、ソフトウェアを購入してもCD-ROMが届くまでに配送が必要なため、すぐに利用できないのがデメリットです。さらに特定のPC以外には利用できないなどの制約がありました。
これに対してSaaSはインターネット経由でクラウドへアクセスすることで即時、ソフトウェアを利用できます。
さらにひとつのアカウントでPCだけでなく、スマホやタブレットなどの複数機器や複数人でも利用できるようになりました。
(2) カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは、直訳すると「顧客の成功」になります。簡潔にいうと顧客が自社のプロダクト・サービスを利用することで、成功や望ましい結果を出せるよう支援する役割のことを指します。
「Customer Success」の頭文字を取って「CS」と表現されることもあります。
カスタマーサクセスでは、顧客が自社のプロダクト・サービスを利用して目指すべきゴールを理解し、目的地までの道のりを支援します。
例えば、顧客の事業や実務上で生じる恐れがある問題を予測し、先回りして防止策や対策を提案します。
(3) カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは共に顧客に対する支援です。両者の違いは顧客の課題解決のプロセスが異なります。
カスタマーサクセスは、顧客に寄り添って能動的に成功まで導く役割を担いますが、一方のカスタマーサポートは、顧客が自社のプロダクト・サービスを利用して発生した不満や課題、疑問の解決がミッションです。
すなわち、カスタマーサポートは、顧客から問題点があれば受動的に解決する役割といえます。
SaaSビジネスでカスタマーサクセスが注目されている理由
(1) 解約率(チャーンレート)の抑制に繋がるため
SaaSをはじめとした月額制のサブスクリプション型サービスでは、解約率を低く抑えることが重要になります。
一定期間以上継続利用してもらうことではじめて利益になるビジネスモデルであるためです。
カスタマーサクセスが能動的に顧客のプロダクト・サービス活用を支援したり、顧客の課題解決に寄り添っていくことで、SaaSとしての付加価値が底上げされ解約(チャーン)を防ぐことが見込めます。
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(2) 既存顧客へのアップセル・クロスセルへ繋げやすいため
カスタマーサクセスの取り組みによって顧客との間に良好な関係性が構築できてくると、自社プロダクト・サービスと親和性の高い新しい課題感を見つけることが容易になります。顧客との関係性が良ければ、直接的に相談をもらえるケースも少なくないでしょう。
そうした機会に、アップセル・クロスセルの提案をしていくことができれば、顧客単価ひいてはLTV(顧客生涯価値)を向上させることができるでしょう。
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SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスの役割
(1) 解約率(チャーンレート)の抑制
解約率(チャーンレート)を分析して原因を探って改善に向けた施策を取ることが求められます。
解約率の増減をチェックことで、該当サービス自身が成長期や衰退期の把握などもしやすくなるでしょう。
(2) 顧客生涯価値(LTV)の向上
LTVを向上させることはカスタマーサクセスにとって重要なミッションです。
前述したアップセルやクロスセルを含め、LTVを向上させるためには以下の手法が一般的です。
① 顧客ロイヤルティの向上
② 平均購買単価の向上
③ 購買頻度の向上
④ 顧客獲得、維持(運営)コストの削減
⑤ 獲得顧客数の増加
⑥ 解約率(離脱率)の低下
⑦ 顧客維持率、継続期間の向上
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(3) サービスに対するフィードバックの収集
サービスの改善で正攻法なのがフィードバックの収集です。
顧客とのコミュニケーションを深めて数多くの意見を収集した後、内容を分析した結果を自社のサービスに反映します。プロセスが長くサービスに反映するまでに時間が掛かりますが確実なやり方です。
SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスの業務内容
SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスの業務内容はサービスのライフサイクルに応じて異なります。
ライフサイクルとはサービスが生まれてから消えるまでの全工程を指します。
具体的には、導入期、活用期、拡大期の3つの工程があります。
そこでここでは導入期の業務内容としてオンボーディング、活用期の業務内容としてサービス活用の支援と契約更新のバックアップ、拡大期の業務内容としてアップセル、クロスセルの提案を解説します。
(1) 導入支援(オンボーディング)
オンボーディング(導入支援)とは、自社のサービスをスムーズに顧客に利用してもらえるよう導入や仕様、操作方法をレクチャーすることです。
オンボーディングを行うことで、顧客ロイヤルティが高まり、LTVの向上に貢献し易いでしょう。
顧客に自社のサービスの便利さを実際に体験して貰うことで継続的に利用して貰える可能性を高めます。
顧客ロイヤリティとは、顧客が自社の商品やサービスに対して持つ「信頼」や「愛情」のことを指します。
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(2) サービス活用の支援
導入期を終えて次のフェーズとなる活用期は導入したサービスを定着させるため、サービス活用の支援を行います。
具体的には、顧客のサービス活用度をチェックした後、必要に応じて定期ミーティングの開催やトレーニングを実施します。
(3) 契約更新のバックアップ
活用期の業務内容として契約更新のバックアップがあります。契約更新のバックアップとは、顧客の契約更新タイミングに合わせてフォローを行うことです。
一般的に契約更新は年単位で行いますが、顧客によっては契約更新で解約するケースがあります。このようなケースに陥らないように契約更新の数ヶ月前から顧客に接触して活用状況をリサーチして契約継続のアプローチを行います。
(4) アップセル、クロスセルの提案
拡大期の業務内容はアップセルとクロスセルの提案です。活用期を終えた単一のサービスは新規の契約数を伸ばしている時期に重なります。同時にこの時期は一定の解約数も発生して全体として契約数に伸び悩んでいる状態にあります。
こうした状態を改善するために、既存顧客向けのインサイドセールスをしながら他のプロダクト・サービスを提案する等のアップセル・クロスセルが重要です。
カスタマーサクセスを導入するときの注意点
(1) 初期投資が必要になる
カスタマーサクセスを担当する部署を新規で立ち上げる時、経営層は時間とコストが掛かることを覚悟すべきです。
既存部署のメンバーがカスタマーサクセスの業務を兼任することも可能ですが、メンバーの業務負荷が大きくなるだけでなく、片手間で成功できるほど簡単ではありません。
カスタマーサクセスを正しく機能させるためには、分析能力や調査スキルがある人やヒアリング・インタビューになれた人など、適切な人材、ノウハウ、リソースが必要となります。
(2) 常に改善を続ける必要がある
顧客の要望やインサイトに合わせて機能追加やUI/UXの改善を行い、プロダクト・サービスの改善を推進することが必要不可欠です。
活動を続けるためには、CRMシステム等の管理ツールを活用し、PDCAの効率化を図るなど運用担当者の負担軽減を実現する必要があるでしょう。
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(3) 効果測定に一定の時間がかかる
カスタマーサクセスの導入には効果測定に一定の時間が掛かります。このため、短期的な売上を追い求めるスタイルには適しません。
カスタマーサクセスは、長期的な視点で時間を掛けて顧客との関係性を構築する必要があります。
SaaSというビジネスモデルは、投資した初期費用の回収までに時間がかかかります。従ってコストを掛けても成果はすぐに現れない可能性が高いため、長期的な戦略を立案して計画的に実践する周到さが求められます。
カスタマーサクセスの本質を理解してSaaSビジネスを成功に導きましょう
カスタマーサクセスの本質は、「顧客の成功ファースト」です。
顧客に成功体験を提供することで自社のサービスが支持されて新たな顧客も生む。その結果、自社の収益が複利で徐々に成長させる、というカスタマーサクセスの本質を理解しましょう。
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