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顧客は製品・サービスを導入したものの適切に使いこなせない場合、ストレスを感じて継続的に利用してくれる可能性が低くなります。すると顧客満足度や顧客ロイヤリティが低下し、製品・サービスやその提供企業からの離脱に繋がる可能性があります。
離脱を防ぐには、顧客が自ら自社のプロダクトを使いこなせるように企業による積極的なサポート、つまり「オンボーディング」が必要です。
当記事では、カスタマーサクセスにおけるオンボーディングのポイントを紹介します。
カスタマーサクセスにおけるオンボーディングとは?
適切なオンボーディングプロセスを経てカスタマーサクセスに繋げるには、当然ですが、まずは「オンボーディング」と「カスタマーサクセス」双方の言葉の意味を理解する必要があります。
(1) カスタマーサクセスとは
自社の製品・サービスを利用している顧客を支援し、成功体験に繋げることを指します。成功体験とは、顧客が収益を上げてビジネスで成功することや、設定した目的を達成することを意味します。
カスタマーサクセスは、顧客が成功体験を得るために伴走してサポートすることで、SaaSビジネスを中心とするBtoB領域で重要視されています。
(2) オンボーディングとは
オンボーディングとは、本来は人事用語で、企業にとって有用な人材になるよう新入社員を育成するための施策やプロセスのことを指します。
一方、ビジネスにおいては、カスタマーサクセスを実現させるための施策の一つとして、顧客に対する自社サービスの導入サポートという意味で使われます。
つまり製品・サービスの導入や初期設定、機能説明、操作方法などの支援全般を指し、自社のサービスを継続して利用してもらうために重要です。
カスタマーサクセスでオンボーディングを用いるメリット
カスタマーサクセスにおいてオンボーディングは、顧客の離脱を防ぐだけでなく、顧客一人当たりの単価や企業へもたらされる利益の上昇が期待できます。
(1) カスタマーサクセスの全ての流れに影響する
オンボーディングを通して顧客との信頼関係を構築することができれば、その後のカスタマーサクセス全体の流れに良い影響を与える可能性があります。企業のことを顧客に知ってもらい、顧客ライフサイクルの基盤を作りやすくするのです。
さらに、オンボーディングでカスタマーサクセスの基盤を築くことができれば、製品・サービスの活用支援、契約更新サポート、アップセル、クロスセルなどの提案も行いやすくなるでしょう。
(2) 顧客満足度を上げることでチャーン(解約)を防止できる
顧客が、製品・サービスを自ら扱い成功体験を得れば、顧客満足度が向上して企業との関係はより良好になります。
そうなると、チャーン(解約)が防止でき、製品・サービスの継続利用に繋がります。反対に成功体験が得られず顧客に対しストレスを与えると、解約などの「離脱」に繋がる恐れがあります。
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(3) アップセルやクロスセルにより顧客単価を上げやすくなる
アップセルとは、顧客一人当たりの単価を上げるための営業手法です。例えば、より高い月額料金サービスに切り替えてもらう、より多くの製品を購入してもらうよう提案するなどがあります。
一方でクロスセルは、同時にほかの製品・サービスも利用してもらうよう営業することです。例えば、インターネットを契約してもらった顧客に対し、スマートフォンも同時に契約してもらうなどがあります。
顧客に企業への信頼感を持ってもらえれば、複数のステップを経てより高いサービスへの切り替え、他の商品・サービスの利用にも繋がるでしょう。
(4) 顧客ロイヤリティの増加に寄与してLTVの向上を期待できる
顧客ロイヤリティとは、顧客が企業や製品・サービスに対してどれだけ愛着を持っているかを表しています。またLTV(顧客生涯価値)とは、顧客が企業とのやりとりを始めてから終了するまでに得られた利益の総額を指します。
カスタマーサクセスに繋がった顧客は、顧客ロイヤリティが高くなりLTVの上昇も期待できます。
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カスタマーサクセスにおけるオンボーディングの3つの手法
オンボーディングには3つの手法があり、それぞれ顧客層や状態により使い分ける必要があります。各手法を実施する際は、実施することでどのような目標を達成したいかを定めましょう。
(1) ハイタッチ
ハイタッチとは、主には大手企業など大口顧客へ施すオンボーディング手法です。
顧客ごとに担当者を設け、企業への訪問や定期的な面談などで手厚い支援を行います。
例えば、導入フェーズにおけるサポートや定例会議、社内勉強会などがあり、個々にカスタマイズした支援体制を施して顧客体験を与え、徹底的に囲い込みを行います。
(2) ロータッチ
ロータッチとは、複数の小口顧客へ一度に施すオンボーディング手法です。
商品やサービスに関係するセミナーや勉強会などでレクチャーし、必要時に応じて個別対応をすることもあります。
ハイタッチほどコストをかけずに顧客へサポートを行います。
(3) テックタッチ
テックタッチとは、ロータッチで対応しきれないほど多くの顧客を抱えている場合に施します。
有人対応では追いつかないため、メールマガジンやチャットボットなどの自動化ツールやシステムなどで顧客をサポートします。
カスタマーサクセスにおけるオンボーディング実施の流れ
オンボーディングを実施する際は、あらかじめ計画を立てて順序よく進める必要があります。運用はPDCAサイクルを回すことが一般的ですが、その前に顧客が商品やサービスを導入し運用するまでの流れを理解する必要があります。
<Step1>導入から活用までの流れを整理する
自社のサービスが顧客のビジネスに導入され、活用に至るまでの流れを整理しましょう。
営業で顧客を得た場合は、顧客情報や購入に至った背景などを営業担当から引き継ぐ必要があります。
<Step2>オンボーディングのゴールとKPIを決定する
施策の方向性がブレて惰性にならないよう、オンボーディングで達成したいゴールとKPIを設定します。
ゴールは、例えば初期設定が完了していること、サービスのアカウント登録数が50人を超えているなど、顧客のサービス利用状況で定めるとよいでしょう。
<Step3>オンボーディングの手法を検討する
先述したオンボーディング手法のうち、どの手法で顧客へアプローチするかを定めます。
顧客一人ひとりにできるだけ手間や時間をかけてサポートをするのが望ましいですが、多額のコストがかかります。
そのため必要に応じてツールやシステムを利用し、ロータッチやテックタッチに切り替えます。
<Step4>オペレーションを実施してPDCAを回し改善する
ゴールや目標を達成するまでの計画を立てたら実行へ移します。その後、必ずその成果を確認し、結果を分析して改善策を出します。
このようにPDCAサイクルを回して少しずつ改善しましょう。PDCAサイクルを迅速に回すにはデータやKPIなど一目で状況がわかるものが必要なため、常にデータは取り続けましょう。
カスタマーサクセスにおけるオンボーディングの5つのポイント
オンボーディングでは、適切なプロセス設計とアプローチ方法を用いれば、ユーザーへ提供できるメリットを最大化できます。最初は、成功の定義やターゲット層など一つひとつの事柄を明確化することが大切です。
(1) オンボーディングの成功の定義を明確化する
導入期において何を基準に支援を行うかを明確にしましょう。
オンボーディングは顧客が、製品・サービスを使いこなしてビジネスや目標を達成することを指します。そのため定義を明確化しなければ、オンボーディングのゴール状況が曖昧になります。
曖昧なままでは、顧客に施すべきサポートがわかりづらくなり、顧客との関係構築が困難になります。
オンボーディングのゴール状況例としては以下が挙げられます。
●サービスを利用してから業務時間が2分の1に減少した
●サービスを利用したおかげでテレワーク稼働率が60%にまで上昇した
また、オンボーディングが成功し、カスタマーサクセスに繋がったことがわかる指標としては以下が挙げられます。
●解約率が減少している
●アップセル・クロスセル率が向上している
(2) 顧客の現状や抱えている課題を把握する
オンボーディングが成功しているかどうかは、顧客が抱えている課題を解決するためのニーズに沿っているかが重要です。
そのため、最初の段階で顧客の現状や抱えている課題を正しく把握できている必要があります。
(3) 顧客層ごとのLTV(顧客生涯価値)を理解する
顧客ごとに適切なアプローチ方法を実施するため、自社で抱えている顧客層を3つ、LTVごとに分類します。
3つに分けたうち、最も大きい顧客層にはハイタッチ、中間層にはロータッチ、最も低い層にはテックタッチを適用します。
適切なテックタッチを行っているうちに、最も低い層に位置していた顧客が中間層、または最も高い層へ移る場合もあります。
ただ、最も低い層にいる顧客数は多いため、取りこぼしが出ないようにCRMツールを活用した顧客管理が必須になります。
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(4) 顧客と定期的なコミュニケーションを実施する
ハイタッチなら、顧客のもとへ積極的に訪問し製品・サービスの使い心地やサポートの有無について尋ねます。またこれから製品・サービスをすすめるなら、使い方だけでなく活用方法や、使うことによって得られるメリット・デメリットもあわせて伝えましょう。
顧客とのタッチプロセスごとに、できるだけ顧客とコミュニケーションをとります。製品・サービスの導入後も放置することがないよう、サポートができる体制を整えておく必要があります。
(5) 自社とユーザーにとって適切なツールを選定する
カスタマーサクセスを成功させるためには、ユーザーのニーズや案件に沿ったツールを選定する必要があります。
例えばスマートフォンの通知をOFFに設定しているユーザーに対してプッシュ通知を送信しても意味がありませんし、ニーズに沿っていない内容のメールマガジンを配信しても読んでもらえません。
そのためユーザーの行動や購買データ等のリソースを蓄積させ、ユーザーとの適切な接点を見極めることが大切です。接点がわかれば、ユーザーの興味を惹くアプローチ方法が設計できます。
また製品・サービスの導入後も、積極的にサポートができるよう都度オンボーディングのツールを見直し、サポートの依頼先がわかるようにしておきましょう。
オンボーディングを行うには、ユーザージャーニーの理解から
カスタマーサクセスを成功させるためには、適切なオンボーディング設計が必要不可欠です。というのもオンボーディングとは、顧客が自ら自社製品・サービスを使いこなし、成功体験が得られるようサポートすることを指すためです。
せっかく導入した自社製品・サービスがうまく使いこなせない場合、顧客満足度の低下を招くどころか、離脱に繋がるでしょう。
オンボーディングを行うには、顧客が自社製品・サービスを導入してから活用するまでのフロー「ユーザージャーニー」を把握し、流れの中で適切と思われるアプローチ方法やフォロー体制を構築します。
オンボーディングの実施中は、複数のKPIを常に算出・分析し続けることが必要ですが、成功すれば顧客満足度が向上し、LTVの上昇も期待できるでしょう。
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