公開日/2022.8.22 最終更新日/2022.09.09
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リテンションマーケティングとは?手法の種類とメリット・注意点

リテンションマーケティングってなに?

目次

事業成長の方法論を考えるとき、新規顧客獲得(アクイジション)の議論になりがちですが、既存顧客の維持と関係強化も事業成長において非常に重要です。
約20%の優良顧客が企業における売上の約80%を占めるともいわれています。

当記事では、リテンションマーケティングが重要視されている背景やメリット、取り組み手法等について解説していきます。

リテンションマーケティングとは

(1) リテンションマーケティングの定義

リテンションマーケティングとは、既存顧客と良好な関係を維持するための取り組みのことをいいます。
リテンション(retention)には保持や維持という意味があり、新規顧客開拓ではなく、既存顧客へ向けたマーケティング活動になります。

製品・サービスのリピート率向上や他の製品も購入してもらうよう促し(アップセル・クロスセル)、顧客単価ひいてはLTVを向上します。

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(2) リテンションマーケティングが注目されている背景

リテンションマーケティングを重視すべき背景には、新規顧客の獲得が困難になっていることやSNSを含むインターネットでの情報発信が容易になったことが挙げられます。

① 新規顧客の獲得が難しくなっている

市場が成熟して商品・サービスがコモディティ化している場合や競合他社が多い業種では、差別化が困難になります。
価格競争が起こり、得られる収益は小さくなっていくと、必然と新規顧客を獲得するためのコスト(CAC:Customer Acquisition Cost)も捻出が困難になっていきます。

こうした事態が様々な業界業種で顕在化してきており、既存顧客へのアプローチとしてリテンションマーケティングが注目されています。

② SNSの浸透により顧客が情報発信するようになった

SNSが広く普及したことで、誰でも簡単に情報を発信できるようになりました。顧客と良好な関係性を築くことで、自社の公式アカウントをフォローしてくれるでしょう。
また自社の製品・サービスについてポジティブな内容を発信してくれる可能性があります。

それに対し、企業側から積極的にお礼のコメントを返すことで、顧客に特別感を与えてよりよい関係が築けます。さらにSNSは無料で利用できるため、広告予算を抑えて㏚活動ができます。

リテンションマーケティングの4つのメリット・注意点

(1) リテンションマーケティングを実施するメリット

① LTVの向上に繋がる

LTVとは顧客生涯価値といい、顧客一人から生涯にわたって得られる利益のことです。新規顧客の獲得は、既存顧客の維持よりも5倍のコストがかかるといわれており、利益率が少ない傾向があります。
そのため現在のマーケティング業界では、新規顧客の獲得以上に既存顧客の維持・関係構築に注目が集まっています。

② 優良顧客の育成・関係構築ができる

イタリアの経済学者ビルフレッド・パレートが提唱したパレートの法則(2:8の法則)があります。多くの企業で、顧客全体の約20%の優良顧客が売上の約80%を占める傾向にあるという法則です。優良顧客は、企業の売上を支える大きな存在です。高い頻度で自社の製品・サービスを購入し、なかには高単価の商品を購入して愛着を持ってくれる人もいるでしょう。

また、顧客のなかには、積極的にSNSなどで自社の製品・サービスを紹介してくれる、いわゆる「アンバサダー」と呼ばれる人もいます。このような優良顧客の育成が、売上向上には欠かせません。

③ 休眠顧客の掘り起こしができる

休眠顧客とは、一回以上自社の製品・サービスを利用してから一定期間やりとりのない顧客のことです。
リテンションマーケティングで休眠顧客に再び製品・サービスを案内すれば、再び自社とやりとりしてくれる可能性があります。

④ 既存顧客からのフィードバックを活用できる

リテンションマーケティングの実施は、自社製品・サービスへ対する顧客からのフィードバックを積極的に受けて分析できます。
具体的には、SNSに記載された顧客からの感想の閲覧、コンタクトセンターで顧客から質問や気づいた点が寄せられるなどがあります。既存顧客からのフィードバックは自社製品・サービスの利便性向上や開発に役立ちます。

(2) リテンションマーケティングの4つの注意点

リテンションマーケティングは、顧客と接する機会が多く得られます。
そのためやり方を誤ると、顧客が不信感や反感を持ってしまい、離脱するリスクがあります。

① 顧客に対するアプローチ方法を明確にする

顧客のニーズに沿わないリテンションマーケティングは、既存顧客の維持につながらない場合があります。
顧客に対するアプローチ方法、アプローチを受けた顧客にして欲しい行動や感じて欲しいことを明確にしましょう。

② メールマガジンの配信頻度に注意する

メールマガジンの配信は、自社製品・サービスの販売を促進し、顧客との接点が持てるなど、既存顧客の維持に役立つツールです。
しかし配信頻度に注意しなければ、顧客にとって煩わしいサービスと捉えられてしまい、配信停止または解約する可能性があります。また顧客が利用しているメールサービスによってはスパムメールとして扱われ、配信されない場合もあります。

③ 顧客のニーズとマッチしていない広告を配信しない

顧客は、自身のニーズに沿わない広告は、煩わしいものとして認識してしまう傾向にあります。そのため同じ広告をすべての顧客に一斉配信するのはあまり望ましくありません。
顧客の属性や購入した商品、よく閲覧する製品やサービスを把握し、顧客ごとに興味をひく広告を配信・提供(パーソナライズ)をする必要があるでしょう。

④ SNSにおける自社公式アカウントの取扱いに注意する

SNSで自社の公式アカウントを作成し運用する際は、取扱に十分気をつけましょう。SNSを利用する際のマナー遵守はもちろんのこと、情報漏洩や言葉遣いにも注意が必要です。
堅苦しい言葉遣いでは人を遠ざける可能性がありますが、企業のイメージに沿わないフランクな言葉遣いもふさわしくありません。
また絵文字や顔文字を使用する際は、企業イメージや使い所を配慮する必要があるでしょう。

リテンションマーケティングの8つの手法

リテンションマーケティングは、ほぼインターネットのツールを用いて行います。種類が多いため、自社に適した手法を見極める必要があります。

(1) メルマガ配信

既存顧客に対してメールを配信するリテンションマーケティングです。メルマガの内容は、主に割引やキャンペーン情報、商品・サービスの使い方、新商品の情報などです。

メルマガは顧客リストへ一斉に配信できるため、企業と既存顧客との接点を簡単に作れます。また資料請求日の数日後や商品を購入した数日後などに、段階的にメールを送信するステップメールを組めば、優良顧客の育成にもつながります。

(2) レコメンド

顧客に対しほかのおすすめ製品やサービスを紹介することです。顧客層ごとのニーズに沿った製品またはサービスを紹介し再び購入してもらうことで、顧客単価の向上につながります。

(3) SNS

SNSは、情報発信や顧客へのコメントが気軽にかつ無料で利用できるツールです。企業としての公式アカウントを作成し運用すれば、無料で宣伝ができます。また自社製品やサービスについて口コミを残している顧客へ、お礼のコメントや回答ができます。企業からコメントが来るという意外性から企業への関心度が高まり、既存顧客の維持につながります。

(4) キャンペーン配信

既存顧客または休眠顧客へ、自社で行われるお得な情報を配信し、商品またはサービスの販売促進につなげます。キャンペーン情報とは、例えば割引クーポンの添付やセール情報、新商品やサービスの紹介などがあります。

(5) プッシュ通知

パソコンやスマートフォンに通知設定をすると、アプリにお得な情報がある場合、画面上部に通知が出ます。プッシュ通知は、休眠顧客が再び企業とのやりとりを再開するきっかけにもなるでしょう。ただしプッシュ通知設定をOFFにしている顧客には届かないため、設定をONにしてくれる仕組みづくりが必要です。

(6) リテンション広告

リテンション広告とは、既存顧客に自社製品やサービスをさらに利用してもらう、休眠顧客に再び利用してもらうことを目的として提示する広告全般を指します。例えばサイトの下部や側面に表示される広告や、動画の合間に流れる広告などがあり、プッシュ通知の設定をOFFにしている顧客にも有効です。

(7) カスタマーサポート

顧客から寄せられた質問や要望を受け付ける窓口で、多くの企業が公式サイトにお問い合わせフォームを設けています。しかし最近ではお問合せのハードルを下げるため、LINEなどのSNSを用いたお問い合わせ窓口や、スタッフとのコミュニケーションを簡単にするチャットボットが利用されています。

(8) カスタマーサクセス

顧客が抱える疑問や悩みを解決し成功へ導くサポートのことで、カスタマーマーケティングとも呼ばれます。カスタマーサポートとの違いは、顧客に対して能動的か受動的かにあります。

カスタマーサポートは、顧客から寄せられた声に対して回答を返し、受動的に課題解決に努めます。一方でカスタマーサクセスは、顧客との面談や定期的なデータ分析などを行い、能動的に顧客の課題解決に努めます。以下の記事で、カスタマーサクセスの概要と導入までの手順や注意点について解説しています。併せてご覧ください。
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リテンションマーケティングを成功させるための6つのポイント

(1) 顧客データを収集・分析して顧客を深く知る

効果のある施策を選択するため、既存顧客について深く知りましょう。既存顧客を属性ごとに分類(セグメンテーション)して分析します。
顧客の属性(年齢層や目的など)により効果のある施策は異なるため、まず顧客の年齢や家族構成、購入頻度などわかりやすい箇所から分析するとよいでしょう。

(2) 成果指標(KPI)を明確にする

顧客の分析には成果指標(KPI)の明確化が一般的です。
マーケティングで分析対象として用いられるKPIには、売上高や購入日・購入回数・利用金額をまとめたRFMなど多くの種類があります。リテンションマーケティングでは、リテンションレートとユニットエコノミクスのKPIが役立ちます。

リテンションレート 既存顧客維持率ともいい、企業が獲得した新規顧客数のうち、既存顧客の割合がどれほどかを表す指標です。
以下の数式で算出できます。

継続顧客数 ÷ 新規顧客数 × 100

例えば、先月獲得した新規顧客数が1,000人おり、そのなかで継続顧客数が300人いた場合、リテンションレートは30%です。

リテンションレートを毎月または毎年算出し比較すれば、実施しているリテンションマーケティングが適切かどうかがわかります。

ユニットエコノミクス LTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得単価)を組み合わせた指標です。

LTVとは、顧客が企業と取引を始めてから終わるまでにどれだけの価値や利益を企業にもたらしたかを表しています。
また、CACとは広告費など顧客を一人獲得するためにかかったすべての費用を指します。ユニットエコノミクスは以下の数式で算出できます。

LTV ÷ CAC

(3) セグメントに合わせた訴求方法でアプローチを行う

すべての顧客に対して一律のアプローチをするのは好ましくありません。顧客セグメントごとに、ニーズに沿ったアプローチ方法を用いる必要があります。

一度サービスを利用した顧客には、リピーターになってもらうためにクーポンを発行する、休眠顧客には、目玉商品や割引が適用されるお得情報を配信するなど、顧客をセグメント化しアプローチ方法を使い分けるべきです。また顧客の購入履歴や購入頻度を把握してニーズを探るのも効果的でしょう。

(4) CRM支援ツールを活用する

CRM支援ツールは、企業と顧客のコミュニケーションを見える化し、顧客のニーズを見逃さず良好な関係を築くためのシステムです。
例えば、多くのCRMツールには以下のような機能があります。

・年齢や購入履歴など、顧客一人ひとりの情報管理
・顧客がメッセージを打ち込めるチャットボットなどのカスタマーサポート
・設定したKPIの算出および目標までの達成状況について一目で把握
・今後実施する予定および実施した営業活動の可視化

大量の顧客を管理したい場合や数値を分析したい場合には、特に役立ちます。
また、マーケティング活動を仕組み化し、手間や時間を削減するMA(マーケティングオートメーション)が構築できる可能性があります。

(5) ロイヤルカスタマーを育成・維持する

顧客単価を向上させるには、自社製品・サービスをできるだけ継続利用してもらう必要があります。そのためには顧客ロイヤリティを高めるための施策が必要です。

顧客ロイヤリティとは顧客の、企業や製品・サービスに対する愛着度を表しています。
顧客満足度と似ていますが、顧客満足度が高くても企業とのやりとりが継続されなければ顧客単価は上がりません。顧客ロイヤリティを上げるには、CRM支援ツールを用いた顧客データの把握と分析、また製品・サービスの利用後に対する手厚いサポートなど、顧客体験による特別感を感じてもらう方法が効果的です。

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(6) 効果測定と検証・改善を繰り返す

データは、現状における課題や施策に対する結果を可視化してくれます。
課題解決のための施策を計画して実行、効果を検証し改善策を提案して実行し、PDCAサイクルを早く回します。データの収集や分析にはCRMツールを活用しましょう。

リテンションマーケティングで既存顧客の維持と育成を図る

中長期的な利益の大半は、新規顧客よりも既存顧客がもたらしてくれる場合がほとんどです。既存顧客の維持および育成に努めるならば、良好な顧客関係を築くためのリテンションマーケティングが欠かせません。

効果的なリテンションマーケティング施策を考えるには、顧客情報の把握やKPIの設定とデータ分析を継続的に行うことが大切です。

リテンションマーケティングを理解し、既存顧客の維持と顧客ロイヤリティの向上に努めることが、事業成長のカギといえます。

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この記事の執筆者

CXジャーナル編集部

「顧客と向き合うすべての人の“よりどころ“」というタグラインのもと、顧客とのコミュニケーション・カスタマーサービスに関するあらゆる問いにお答えしていくことをミッションにしています。 (運営元:株式会社 PKSHA Communication)

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