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近年いたるところで「DX」という言葉を目にするようになりました。とくに、コロナ禍でテレワークをはじめとしたデジタル活用が進んでいく中で、DXはどこの企業でもより一層対応を迫られるようになってきています。
ただ、そもそもDX推進とはどうすることなのでしょうか?
これまでのIT・ICT化とは何が違うのか?
「社内DX」とは、具体的に何をすればいいのか?
本記事では、上記のような疑問が解消できるように、一つずつ説明していきます。
そもそも「DX」とは?
「DX (Digital Transformation、デジタルトランスフォーメーション)」とは、「デジタル技術を活用して、仕組み(組織、働き方、ビジネスモデル等)の在り方を抜本的に変革すること」です。
デジタル化、IT・ICT化などの表現と混同されがちですが、DXはより大局的・抜本的な変革を意味します。
つまり社内DXとは、「デジタル技術を活用して、組織・働き方を抜本的に変革すること」といえます。
ただ、DXは語られる文脈によって定義が異なります。代表的な3つの文脈についてまずご紹介します。
(1) アカデミックな文脈でのDX
スウェーデンのウメオ大学 エリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念に基づく意味合いです。これが最も広義のDXといえるでしょう。
ICTが生活のいたる場面で浸透していくと、結果として産業構造や社会の在り方が大きく変化していく、という考え方です。
俯瞰して観測できる、マクロ経済的な現象として語られます。
※画像引用元:「平成30年版 情報通信白書」(総務省)
(2) ビジネスの文脈でのDX
ビジネスシーンで一般的に使用されるDXの意味合いです。
デジタル技術が発展していく中で、産業構造内の事業機会を捉えて切り開いていく、加えて社内の組織構造においても抜本的な仕組みの改善を図っていく、という考え方です。
産業構造の内側にいる、民間企業にとっての成長機会として語られます。
(3) 経済産業省が唱えるDX
3つ目の文脈は、経済産業省が唱えるDXの意味合いです。上記2つの文脈を加味したうえで、企業向けのガイドラインとして位置付けられます。
経済産業省が発表した「DX推進ガイドライン Ver.1.0(平成30年12月)」によると、DXは以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
なぜDXの推進を求められてるのか?
経済産業省の推計によると、
「IT人材の不足」と「古い基幹システム」がこのまま続くと、2025年から2030年までの間に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると言われています。
一方で、もし日本企業がいまDXを推進していくことができれば、2030年の実質GDPを130兆円押し上げることが期待できるとされているのです。
つまり、日本の経済力低下を防ぎより成長させていくために、国を挙げてDXの推進を掲げているのです。
DXに成功している企業に共通する、5つの特徴
マッキンゼー・アンド・カンパニー社の調査によると、DXに成功していると称される企業には下記5つの特徴があるといいます。
① デジタルに精通している適任のリーダーを、各部署に配置している
③ 将来の労働力の変化を見据えて、全体的な組織能力を向上させている
③ 新しい働き方を導入し、従業員の生産性を向上させている
④ 日々デジタルツールを導入するなどして、社内をアップグレードし続けている
⑤ 新しいデジタルシステムをむやみに導入せず、旧システムも見直しながら、徐々に新体制へと移行させている
※引用元:「Unlocking success in digital transformations」(McKinsey & Company, Survey | October 29, 2018)
当然のことだとは思いますが、経営層が目指すべき組織の在り方をロードマップに描き、迅速な意思決定とリソース割り当てを繰り返していくことが重要です。
経済産業省が示す、“社内DX”で直ちに取り組むべきアクション
アカデミック文脈やマッキンゼー社の調査レポートなどの内容も鑑みたうえで、経済産業省はDX推進のために民間企業が直ちに取り組むべきアクションを示しています。
※画像引用元:「DXレポート2 中間とりまとめ」(経済産業省 デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会)
(1) 業務環境のオンライン化
・テレワークシステムによる執務環境のリモートワーク対応
・オンライン会議システムによる社内外とのコミュニケーションのオンライン化
コロナ禍を契機にテレワークやオンライン会議システムを導入した企業は多いと思います。
ただ一方で、セキュリティや業務管理の面での懸念からテレワークを実現できていない企業や、一時テレワークを実施しても出社業務に戻している企業はまだまだ多いです。
もちろんテレワークが適さない業種もたくさんありますが、テレワークが可能な業態業種の場合には、何がボトルネックでテレワークが実現できないのかということに経営層は向き合って考えるべきでしょう。
(2) 業務プロセスのデジタル化
・OCR製品を用いた紙書類の電子化
・クラウドストレージを用いたペーパーレス化
・営業活動のデジタル化
・各種SaaSを用いた業務のデジタル化
・RPAを用いた定型業務の自動化
・オンラインバンキングツールの導入
紙の書類やハンコを使っていた従来の事務処理も、コロナ禍・緊急事態宣言下で各社急速に見直しがかかったのではないでしょうか。今日では様々な法人向けSaaS・クラウドサービスが展開されており、従来の手作業を効率化・自動化するツールも数多く存在します。
バックオフィス部門等でそうしたクラウドサービスの活用をまだできていない場合には、早急に現場稼動の確認や導入検討を進めるべきでしょう。
社内DXに必要な8つのツールとは?
「業務環境のオンライン化」「業務プロセスのデジタル化」など “組織を変革”させるための方法として、以下のような社内DX推進ツールの活用が一般的になってきています。
(1) 社内の“作業”をDXする4つのツール/システム
まずは、デジタル技術を活用して社内業務の“作業”をDXするツール/システムについて紹介します。
① RPAツール(業務自動化ツール)
RPA(Robotic Process Automation)ツールとは、日常的に手作業で行っているようなルーティン業務をロボットで自動化するツールになります。
▼主要ツール/システム
■「ロボオペレータ」株式会社アシリレラ
■「WinActor」株式会社NTTデータ
② 経費精算システム
経費精算システムとは、経費精算を行ううえで必要な申請書の作成、承認、申請内容の確認作業をはじめとした業務を効率化するシステムです。
▼主要ツール/システム
■「マネーフォワードクラウド経費」株式会社マネーフォワード
■「楽楽精算」株式会社ラクス
③ 会計ソフト
会計ソフトとは、収支などの会社のお金の動きを全て管理し、それを集計して決算書作りまで行えるシステムです。
▼主要ツール/システム
■「freee会計」freee株式会社
■「勘定奉行クラウド」株式会社オービックビジネスコンサルタント
④ BIツール
BI(Business Intelligence)ツールとは、企業が持つさまざまなビッグデータを分析・可視化して、経営や事業推進の意思決定に手助けするソフトウェアです。
▼主要ツール/システム
■「Yellowfin BI」Yellowfin Japan株式会社
■「Tableau」Tableau Japan 株式会社
(2) 社内の“コミュニケーション”をDXする4つのツール/システム
次に、デジタル技術を活用して社内業務の“コミュニケーション”をDXするツール/システムについて紹介します。
① オンライン会議システム
オンライン会議システムとは、各自で所有しているパソコンやスマートフォン、タブレット等のデバイスを使って会議を行うシステムのことです。
▼主要ツール/システム
■「Zoom Meeting」株式会社ズーム
■「Google Meet」グーグル株式会社
② チャットツール
チャットツールとは、PCやスマートフォンを介してリアルタイムでコミュニケーションをとることができるコミュニケーションツールです。
▼主要ツール/システム
■「Slack」Slack Japan株式会社
■「Chatwork」Chatwork株式会社
③ プロジェクト/タスク管理ツール
プロジェクト/タスク管理ツールとは、プロジェクトの進行度合いをわかりやすく管理するためのツールです。
▼主要ツール/システム
■「Trello」アトラシアン株式会社
■「Backlog」株式会社ヌーラボ
④ ナレッジマネジメントシステム
ナレッジマネジメントシステムとは、人材や部署内に蓄積されたノウハウや知識を、社内の誰もがスムーズに活用できるようにするシステムです。
▼主要ツール/システム
■「OKBIZ. for FAQ」株式会社PRAZNA
■「IBISE」株式会社PRAZNA
まとめ: DXの推進には、ナレッジマネジメントが重要
ここまで説明してきた中でご想像いただけるように、DXを推進していくということは、経営層はもちろんのこと組織を構成するメンバー一人ひとりの理解や意識、取り組んでいく姿勢が重要になります。
ただ、組織において全員が同じ解釈をもって動き続けるということは簡単な話ではありません。
そのため、ナレッジマネジメントシステム等を活用して、全体戦略や方針・ルール、個別具体的なオペレーション方法などを組織全体で認識合わせしていくことが重要になるでしょう。
なお、ナレッジマネジメントシステム(FAQシステム)を活用したフレームワーク資料『組織の生産性を高める、ナレッジ体系化のフレームワーク ~6つのステップで“型”をつくる~』も以下ご用意していますので、ぜひ活用ください。