商品・サービスの開発・改善やプロモーション施策を行う際に、顧客のターゲット層についての理解は大切です。
さらに、顧客のターゲット層が商品・サービスを利用するまでの思考や行動を時系列に沿って予測することはより重要であるといえます。
というのも、顧客と商品・サービスとの接点は年々多様化しており、従来のようなマーケティング戦略では通用しづらくなっているためです。
そこで「カスタマージャーニー」という、顧客のターゲット層がとるであろう行動や思考を時系列に沿って予測する方法が存在します。
カスタマージャーニーを利用すれば、商品・サービス開発および改善にも役立つでしょう。
カスタマージャーニーの概要
顧客と企業や商品・サービスが接する場面は年々多様化しています。よりよい商品・サービスを提供するには、顧客が普段どのような行動をとり、どのようなことを考えるのか予想しなければなりません。
そこで、企業の商品・サービス開発および改善に役立つのが「カスタマージャーニー」です。
(1) カスタマージャーニーとは
「カスタマージャーニー」とは、顧客の行動・思考・感情を「見える化」することを指します。
「見える化」することで、顧客目線に立った考え方ができるようになり、これまで見えなかった課題点を新しい発想で浮かび上がらせることができます。
(2) カスタマージャーニーが認知され始めた背景
SNSを含むインターネットの普及に伴い、顧客と商品・サービスをつなげる媒体が年々多様化しています。
媒体が多様化するほど顧客の行動や思考を予測するのが難しくなります。そんな背景から顧客の行動・思考・感情を整理する必要性が生まれ、「カスタマージャーニー」が登場しました。
(3) カスタマージャーニーマップとは
商品・サービスを利用するまで、顧客がとる行動の流れを予測して時系列に並べたものを「カスタマージャーニーマップ」といいます。
カスタマージャーニーマップには、顧客がとる行動のほかに思考や感情も盛り込みます。例としてカスタマージャーニーマップを一つ下記に掲載します。
カスタマージャーニーマップを作成するメリット
カスタマージャーニーマップを作成すると、新しい商品・サービス開発および適切な改善を行いやすくなります。
(1) 顧客のニーズがわかる
カスタマージャーニーは顧客の思考や行動を時系列で予測するため、顧客のニーズを読み取りやすくなります。
また顧客が企業やサービスへ抱いているイメージも予測できるようになるでしょう。さらに商品・サービスと顧客の思考や行動との関連性を見極め、マーケティング戦略で活用させることもできます。
(2) 顧客目線で商品やサービスの見直しができる
顧客目線に立てば、顧客が商品・サービスへ抱いている不安や不満が予測しやすくなります。
予測できるようになれば、顧客の意に反する商品開発やサービスの提供が減るうえ、すでに提供してしまっている商品・サービスにおいても改善につながります。
(3) 的確なマーケティング施策を行える
カスタマージャーニーマップという視覚的にもわかりやすい図表があれば、従業員同士で顧客の行動・思考・感情を時系列で共通認識しやすくなります。共通認識ができれば、商品およびサービス開発にブレが生じにくくなるでしょう。
(4) KPI(重要業績評価指標)を設定しやすい
あらかじめ顧客の行動・思考・感情を洗い出し時系列に整理しているため、「KPI(重要業績評価指標)」を設定しやすくなります。
「KPI(重要業績評価指標)」とは、目標へ近づいている度合いが一目で見てわかる指標のことです。KPIの例としては購入した顧客数、企業の公式サイトの閲覧数などが挙げられます。
(5) 顧客体験の質が向上する
顧客目線で考えた商品・サービスは、顧客体験の質の向上につながります。
顧客にとって最適なタイミングを見極めて商品・サービスを提供するということは、顧客体験のマネジメントができているということです。顧客側も、必要としているタイミングで商品・サービスが利用できるため、大きな価値を実感してくれます。
カスタマージャーニーマップの作成方法
カスタマージャーニーマップは企業によって作りやすい方法が異なる場合があります。一般的なカスタマージャーニーマップの作成方法を説明しますが、何度も作成して自社にあった方法を見つけてみてください。
(1) 目標を定める
まず戦略を立てるために、対象の商品・サービスで成し遂げたい目標を定めます。
言い換えれば現在取り組んでいるマーケティングの目標を定めるということです。目標を定めなければ、この後カスタマージャーニーマップの作成のために実施する戦略立てや情報の洗い出しの段階でブレが生じるおそれがあります。
(2) 顧客のペルソナを設定する
顧客のペルソナを設定すると、顧客のニーズが鮮明になります。
「ペルソナ」とは、企業が商品やサービスを提供したいと考える顧客モデルのことです。注意しなければならないのは、主観や思い込みだけでペルソナを設定してはいけないということです。
例えば、新しいヘッドホンを販売するため、ヘッドホンを購入するペルソナを考えるとします。ここで、ヘッドホンを購入するペルソナは屋外で音楽を頻繁に聴く10〜20代だと思い込んではいけません。通話機能付きのヘッドホンもあるため、在宅ワークをする10〜20代以外の方にも需要があることを考慮する必要があります。
このように、できるだけ実在していそうなペルソナを設定しましょう。定めるペルソナの内容は、年齢・性別・住所・趣味などです。
(3) カスタマージャーニーマップのスタートとゴールを設定する
スタートとゴールを設定すると、取り組んでいるマーケティング戦略で押さえるべき範囲が明確になります。
スタートは、定めたペルソナ像が発すると思われる言葉や考えそうな思考を定め、ゴールは、商品またはサービスを利用して終了か利用した後に設定するのかを定めます。
【「期間限定のアイスクリーム」のカスタマージャーニーマップを作成する場合】
■スタートの例: お弁当を買うついでにデザートとして買って食べてみようかな
■ゴールの例: パッケージデザインが可愛いためSNS上にアップしてたくさん「イイネ」をもらいたい(商品・サービスを利用した後に設定)
(4) テンプレートを活用してカスタマージャーニーマップの全体工程を作成する
ペルソナがたどる道順を把握するため、スタート地点からゴール地点まで全体工程を作成しましょう。
定める道順は、ペルソナがとるであろう行動や思考にできるだけ近づけるようにします。全体工程に含める内容は、主に顧客の行動・思考・競合他社の存在などです。
ネット上に無料で公開されている「テンプレート」を利用して作成したほうが効率的です。
下記のサイトはテンプレートが無料でダウンロードできるうえ、使い方もていねいに解説されています。
【テンプレートを無料公開しているサイト】
● Hubspot
● Lucidchart
● innova
(5) 顧客とのタッチポイントを洗い出す
現在取り組んでいるマーケティング戦略で、十分または不十分なポイントを把握するために顧客との「タッチポイント」を洗い出します。
「タッチポイント」とは顧客と商品やサービスとの接点のことです。タッチポイントにおいて不十分なポイントがわかれば、商品・サービスを利用しない顧客がどの工程で留まっているかわかるため、マーケティング戦略の課題がつかみやすくなります。
各工程の課題がわかれば、マーケティング戦略の見直しができます。
「カスタマージャーニー」で顧客目線に立った商品・サービス開発を実現する
顧客が真に望む商品・サービスを提供するには、顧客目線に立つという考えが不可欠です。
「カスタマージャーニー」は、顧客目線に立って商品・サービス開発および改善するために非常に役立つ方法です。
また顧客の行動・思考を時系列で表した図表を「カスタマージャーニーマップ」といい、記号や図で表現するため、従業員同士で課題点を見つけて共有しやすいという利点があります。
「カスタマージャーニー」を利用すれば、顧客の思考や行動を時系列に沿って考えやすくなります。
それに伴い新しい発見や課題点が浮かびやすくなるため、よりよい商品・サービスを手掛けるきっかけとしましょう。