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公開日/2022.10.5
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カスタマーサクセスで重要な12のKPI|設定する理由やポイント

カスタマーサクセスで重要な12のKPI|設定する理由やポイント

近年、既存顧客の自社サービスを通した成功体験をサポートする「カスタマーサクセス」に取り組む企業が増えています。カスタマーサクセスで成果を上げるためには、多種多様なKPI・指標を用いたうえで適切にKGIを追求していく必要があります。

そこで本記事では、カスタマーサクセスの基礎知識と、関連する12のKPIについて解説します。

カスタマーサクセスとは

(1) カスタマーサクセスの意味

カスタマーサクセスとは自社の商品・サービスを利用している顧客に対し、そのプロダクトを有効活用して成功体験へ導く活動や戦略、考え方のことです。
カスタマーサクセス(Customer Success)は、直訳すると「顧客の成功」という意味になり、ただ商品・サービスを提供するだけでなく、顧客のビジネスモデルや目標を理解したうえでプロダクトを利用する「課題」や「目的」に寄り添ったサポートが必要です。

カスタマーサクセスを適切に実施できれば、自社の商品やサービスに対する「満足度」や「ロイヤリティ」が高まり、LTV(ライフタイムバリュー)の向上にもつながります。カスタマーサクセスを行わない場合と比べ、より長期的な収益の向上を実現するための取り組みといえるでしょう。

(2) カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサポートとは、顧客が自社の商品・サービスに対して課題や問題点を抱えたときに、適切に対処することで問題解決に繋げることを指します。
故障や不具合といったトラブルのように発生した問題に対してアプローチするため、カスタマーサクセスに比べると顧客との関係性は短期で断続的なものになるケースがほとんどです。

また、主な目的が「自社のプロダクトに関する課題解決」であることも「顧客の成功体験の実現」が狙いであるカスタマーサクセスとの大きな違いの一つです。

(3) カスタマーサクセスでKPIを設定するべき理由

カスタマーサクセスを適切に実施し、業務内容の見直しや改善を継続的に行うためにはKPIの設定が欠かせません。

カスタマーサクセスにおいては、KPIを適切に設定できれば担当者が変わっても一貫性のある支援を行えますし、KPIを軸とした体制を整えることで定量的な数値を元にカスタマーサクセスに関わる業務の改善も図りやすくなるでしょう。その結果、顧客の成功の支援や顧客満足度の向上に繋がりやすくなります。

カスタマーサクセスで重要な12のKPI(指標)

カスタマーサクセスにおける重要なKPIは多種多様であり、提供する商品・サービスの種類や支援の段階などによって正しく設定する必要があります。その代表的な12のKPIについて紹介します。

(1) 解約率(チャーンレート)

解約率(チャーンレート)とは、顧客が契約中のサービスを解約した割合のことです。

解約率(チャーンレート) = 解約者数 ÷ 総顧客数 × 100

上記の計算式で求めることができます。
例えば、総顧客数が1,000人で1カ月の解約者が50人だった場合、50人÷1,000人×100=解約率5%となります。解約率はSaaSやサブスクリプション型などのビジネスにおいては非常に重要な指標です。

また、他のビジネスにおいても新規顧客の獲得は既存顧客の維持よりもコストがかかるという「1:5の法則」が定説のため、解約率を下げて売上の向上につなげることは大切なカスタマーサクセスの戦略の一つといえるでしょう。

(2) 顧客維持率(リテンションレート)

顧客維持率(リテンションレート)とは、一定期間中に契約している顧客の割合を示す指標で「顧客定着率」や「CRR」とも称されます。

顧客維持率 = (期間終了時の顧客数 - 期間中の獲得顧客数) ÷ 期間開始時の顧客 × 100

例えば、期間開始時の顧客数が100人で期間中に獲得した顧客数が20人、期間終了時の顧客数が110人だった場合の顧客維持率は、(110-20)÷100×100=90%となります。

解約率とは相対関係にあるため、顧客維持率が高ければ解約率は低くなることも覚えておきましょう。

(3) オンボーディング完了率

オンボーディングとは、顧客がサービスを導入・運用を始めてから定着するまでの期間を指します。
オンボーディングとなる状態は、各サービスなどによって異なりますが「初期設定が完了した段階」などが代表的です。

オンボーディング完了率 = オンボーディングが完了した企業数 ÷ オンボーディング期間の全企業数× 100

オンボーディングが完了した企業が20社、オンボーディング期間の全企業数が100社だった場合、オンボーディング率は20÷100×100=20%となります。オンボーディングが完了していない顧客は、完了した顧客と比べると「解約率が高くなる」という傾向があるため丁寧な支援の必要性が高いといえるでしょう。

(4) アップセル・クロスセル率

アップセルとは、見込み顧客が現在購入を検討中もしくは利用中の商品やサービスよりも高額で上位の商品・サービスに乗り換えてもらうことを指します。
また、同じ状況の顧客に対し、関連商品やサービスも併せて購入してもらうことをクロスセルといいます。

アップセル・クロスセル率が高まれば、顧客単価が増加してサブスクリプション型などのビジネスであればLTVも向上します。
ただし、顧客が支払った金額に対して期待する成果などが上げられなかった場合、解約されてしまうリスクもあるためアップセル・クロスセルに成功した顧客に対してはより手厚いカスタマーサクセスが求められるでしょう。

(5) LTV(顧客生涯価値)

LTVは「Life Time Value(ライフ タイム バリュー)」で、一人もしくは一社の個々の顧客が生涯(顧客ライフサイクル)で自社にもたらす利益を算出した指標です。
LTVの計算方法はさまざまですが、基本的な計算式は以下のとおりです。

LTV = 平均顧客単価 × 収益率 × 購買頻度 × 継続期間

平均顧客単価が50万円、収益率が20%、購入頻度が年間5回、継続期間が5年の場合、LTV=50万円×0.2×5×5=250万円ということが分かります。
一般的に顧客ロイヤリティが高い顧客ほどLTVも向上する傾向があるため、顧客ロイヤリティと関わりが深いカスタマーサクセスの成果を図る指標として用いられることが多いのです。

(6) NRR(売上継続率)

「Net Retention Rate」の略で、売上継続率やネットリベニューリテンションレートと同義です。
現在の既存顧客の売上と前年度と比べた際の増減の程度から、翌年度の売上を推測するために用いられます。

NRR = 前年度の顧客の今月のMRR ÷ 前年度の顧客の同月のMRR × 100

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは、毎月繰り返し得られる利益のことで「月次計上収益」ともいいます。上記の計算の結果、NRRが100%を超えていれば継続的な売上が見込めると判断でき、逆に下回っている場合は「新規顧客の獲得不足」や「解約する顧客の増加」などが懸念されます。
カスタマーサクセスを強化することで、解約する顧客を減少されることも有効な施策の1つです。

(7) NPS®(顧客推奨度)

NPS®はNet Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)の略語で「顧客推奨度」や「正味推奨者比率」という意味を持ちます。顧客ロイヤルティを数値化するための指標で、アンケート調査で数値を算出することが一般的です。

・評価のポイント:0~10点の11段階で評価してもらう
・点数を付けた理由:回答した理由を自由に回答してもらう

上記の2点を記入してもらい、集計した結果を3区分に分類します。

・0~6点を付けた人:批判者
・7~8点を付けた人:中立者
・9~10点を付けた人:推奨者

それぞれの分類のうち、推奨者の割合から批判者の割合を引いた差がNPS®となります。

※NPS®はベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

(8) CSAT(顧客満足度)

Customer Satisfactionの略称で特に感情面にフォーカスして、自社の商品やサービスを利用した顧客の満足度を表します。
一般的にアンケート調査などで「非常に満足」「満足」「普通」「不満」「非常に不満」の5段階のデータを収集します。この結果を集計して数値化したものを「CSATスコア」といいます。

(9) CSQL(Customer Success Qualify Lead)

CSQLは「Customer Success Qualify Lead」の略です。その定義は明確には定まっていないものの、「カスタマーサクセス活動によって生み出されて精査されたリード」と捉えることが多いです。

また、CSQLにおけるカスタマーサクセスとはアップセルやクロスセルを狙う「エクスパンション(Expansion)活動」を指すと解釈されることが多いです。

日本においてはまだCSQLがカスタマーサクセスの指標に設定されるケースは珍しいものの、注目しておいて損はないでしょう。

(10) アクティブユーザー数

アクティブユーザー(AU)は、サービスをアクティブに利用しているユーザーの総数のことです。
アクティブでないユーザーはサービスを解約するリスクが大きいため、よりたくさんのユーザーをアクティブな状態にすることが求められます。
特にSaaSやWebサービスにおいては重要性が高く、ツールを導入・活用して計測することが一般的です。

(11) セッション時間

SaaSなどのクラウドサービスで重要になるのが「セッション時間」です。
セッション時間とは「サービスを利用している時間」のことです。基本的にはアクティブユーザー数と同じく、セッション時間が短いほど解約リスクが高くなります。逆に長ければサービスの依存度が高いため、満足度が高くロイヤルカスタマー化も図りやすいと考えられます。

(12) 口コミ・レビューサイトでの投稿獲得数

インターネットが普及したことで消費者行動が変化し、BtoBのサービスやニッチな商品でであっても、問い合わせまでに見込み顧客が業界や商材についてある程度リサーチすることが当たり前になっています。

そのため、比較メディアサイトなどの口コミ・レビューサイトでの投稿の獲得数も重要な指標だと考えられます。
カスタマーサクセスの活動によって、自社サービスや商品を活用した成功体験を既存顧客が各サイトで発信してくれることで、間接的に他社製品への優位性や見込み顧客の好印象の獲得につながり、問い合わせ数の増加などが図れます。

カスタマーサクセスのKPIを活用する5つのポイント

カスタマーサクセスのKPIを設定する際の気をつけるべき5つのポイントについて紹介します。

(1) 評価をKPIだけに頼らない

KPIを絶対的な判断材料にすることは避けましょう。
KPIはあくまでも指標の1つであり、全ての目標としてしまうと他の指標に悪影響を与えてしまう可能性があります。KPIを参考にしつつ、現場の声や顧客の意見を取り入れた柔軟な対応が大切です。

(2) 自社に合ったKPIを選択する

KPIは自社の業界や商品・サービスに対して適切なものを設定する必要があります。
もし、実態から乖離したKPIを設定してしまうと仮に良い数値を出したとしてもKGIには繋がりにくい可能性が高まります。KPIは管理しやすく、PDCAを回しやすいものを設定するのが大切なポイントです。

(3) KPIの内容は定期的に見直し、改善を行う

KPIの内容は定期的に見直して改善を行いましょう。
KPIは1カ月、半年、1年などのサイクルで振り返り、柔軟に軌道修正することで常に変化するビジネス環境や顧客の状況に最適化できます。KPIを見直すタイミングやその設定方法など、あらかじめブラッシュアップするためのルールを設けておくことで、円滑に見直しを進めることが可能です。

(4) 達成できないKPIを設定しない

KPIは実現可能性が十分にある数値を設定することが大前提です。
達成が不可能なKPIを設定してしまうと、目標の形骸化の恐れがあるほか、無理なカスタマーサクセスの活動によって顧客にとって逆効果になるリスクも高まります。

(5) KPIに対する評価を実施する

KPIは設定するだけでは意味はありません。達成・未達成のKPIを評価してその改善まで実施する必要があります。
計画、実行、評価、改善の「PDCAサイクル」は継続的に回し続けなければならないため、カスタマーサクセスにKPIを設定する時点で円滑に運用できる体制づくりまで考慮しましょう。

カスタマーサクセスのKPIを正しく設定しよう

カスタマーサクセスの活動にKPIを設定する目的と、代表的なKPIについて解説しました。事業の拡大に直結するKPIを設定し、PDCAサイクルを回しやすい運用体制を構築できればカスタマーサクセスの活動の成果をより上げやすくなります。
特にKPIとなる指標の数はたくさんあるので、しっかりと現状分析を行ったうえで適切なものを設定し、状況に応じて観測指標を変更していく運用を心がけましょう。

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