ユーザーからの問い合わせに自動応答するチャットボットは、従業員の負担軽減、人件費削減などに役立つツールです。しかし、チャットボットが効果を発揮するには、顧客目線で配置やデザイン、応答内容を工夫して利用率を高めることが重要になります。
この記事では、チャットボットの利用率の数値が低い原因を明らかにするとともに、向上させる方法も詳しく解説していきます。チャットボットの利用率を高めることにより顧客満足度の向上を見込める上に業務の効率化にもつながります。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
チャットボットの利用率が低い状態の問題点
チャットボットの利用率が低い状態を放置しておくと、導入や運用に伴うコストが無駄になるだけではありません。自動応答に任せて自社の業務効率化のほか、顧客からの問い合わせを基にプロダクトを改善したりする機会も失うという問題があります。1つずつ確認していきましょう。
(1)コールセンターの業務効率化が進みにくい
チャットボット導入の目的の1つに、コールセンターにおけるオペレーターの業務効率化や業務負担の軽減があります。しかし、導入したチャットボットが適切に利用されなければ、従来通りのメールや電話対応が発生するため、オペレーターの負担軽減にはつながりません。一方、負担を減らすことができれば、ほかの業務にリソースを割り当ててコア業務を強化できるほか、人的コストを削減も実現できます。
(2)顧客データの分析がしづらい
顧客データの分析がしづらくなるのも大きな課題の1つです。問い合わせに対する応答実績を重ねることで会話ログを蓄積できるのも、チャットボット導入の利点です。繰り返し顧客からの問い合わせに対応することで、満足している点や不満な点を把握できるため、回答の精度向上につながります。
また、当初は想定しなかった不満点を把握できる可能性も高まり、それをきっかけとしたサービスや商品の大きな参考にもなり得ます。チャットボットが利用されない場合はデータが蓄積されないため、ニーズ分析が難しくなります。利用率の低迷は現場が抱える課題改善の機会を逸することになるのです。
チャットボットの利用率が向上しない場合の主な原因
チャットボットの利用率を高めるには、利用率が向上しない原因を押さえることが大切です。ここでは主な原因を4つに分けて解説します。
(1)導入後の運用やメンテナンスを行っていない
チャットボットの利用率が向上しない原因の1つに、導入後の運用やメンテナンスを行っていないことが挙げられます。チャットボットは導入するだけでなく、利用状態を把握した上で適切な運用やメンテナンスを行う必要があります。
チャットボットを導入しても利用に合わせた見直しを行わないままでは、利用率の向上は期待できません。実際の利用率、問い合わせの内容、利用が多い時間などのKPIを分析し、顧客の利用動向に合わせて運用の仕方を調整することが重要です。
(2)回答の量を重視した運用を行っている
回答の量を重視した運用を行っていることも、チャットボットの利用率が向上しない原因となるケースがあります。さまざまな顧客からの問い合わせに答えることを想定すると、「量」に目を向けがちになります。
しかし、問い合わせに対して解決につながる質の高い回答を用意しないままでは、チャットボットの導入化を十分に得ることは困難といえるでしょう。回答精度が低ければ利用率は下がります。結果として業務効率化は期待できなくなるで。できるだけ多くの顧客の悩みを解消することを目指せば回答の量を重視することは大切ですが、まずは、問い合わせ件数が多い内容に対する回答の質を高め、顧客満足度を高めていくことが重要です。
(3)想定外の問い合わせへの対策を行っていない
想定外の問い合わせに対する対策をしていない場合、納得できる回答を得られなかったユーザーの満足度が下がり、チャットボットの利用率低迷につながるリスクもあります。
仮に量・質ともに充実した回答を用意していても、想定していない問い合わせがくるケースでは意味がありません。想定しない問い合わせがあったときはすぐにオペレーターにつながるようにしたり、別の問い合わせ窓口を案内したりする対策が必要です。
チャットボットは運用開始後も質問内容などの利用状況を都度、チェックしながら回答項目の見直しや追加、想定外の質問があったときの対策などに努めることが大切です。
(4)チャットボットの存在がユーザーに周知されていない
仮に疑問を的確に解決する機能を用意していても、チャットボットの存在がユーザーに周知されていなければ利用率向上は困難です。
ユーザーはサービス提供者に確認したい内容が出てきた場合、ホームページや説明書などを参照して問い合わせをします。チャットボットの情報がわかりやすく表示されていれば利用率が向上する可能性が高まります。
社内向け、社外向けを含めてチャットボットの認知度が低くなっていないかをしっかり確認しておくことが大切です。
チャットボットの利用率を上げる方法
ここからはチャットボットの利用率を上げる方法を解説します。配置や見た目などユーザーへのちょっとした配慮で利用が増える場合がありますので、ぜひ参考にしてください。
(1)ユーザー目線で適切な場所に設置する
チャットボットの利用率を上げるため重要なのは、問い合わせのためにサイトを訪問したユーザーをすぐに誘導できるよう、お問い合わせページの最初に目に入る場所(ファーストビュー)に導線を設置することが望ましいです。
また、チャットボットを設置する際には、サイト本来のコンテンツを邪魔しないように配慮しましょう。
(2)チャットボットでできることを記載する
チャットボットで何ができるのかを記載することも、利用率向上につながります。存在は知っているものの、使い方がわからないユーザーの背中を押してあげることも大切だからです。
例えば「チャットボットを利用すると、お問い合わせやアカウント情報の確認、修理の手配などが可能です」といった記載があると、ユーザーは使う意味をイメージしやすくなるでしょう。チャットボットでできることを明確に記載することで、ユーザーがチャットボットは役立つものだと理解できます。
(3)利用したくなるようなデザインにする
チャットボットの利用率を上げるため、利用したくなるようなデザインにすることも有効です。ユーザーが直感的に利用できるよう、ユーザーとの接点(UI=ユーザー・インターフェース)やユーザー体験(UX=ユーザー・エクスペリエンス)の改善を検討しましょう。例えば、ユーザーにとって視認性の良いフォントやカラー、使いやすいレイアウトを意識することなどが考えられます。
使いにくさを解決すると利用率向上につながります。当社(PKSHA Communication)の調べでは、チャットボットを中央埋込型にするのと、右下に配置するタイプでは、中央埋込型のほうが利用者数は10倍多くなる場合もありました。チャットボットをクリックしたくなるようなデザインにしたり、チャットボットとWebサイトのデザインを合わせたりするなどの工夫も必要です。
ChatbotのUIについては、以下の記事で詳しく解説しています。
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(4)自由記述ではなく選択肢や入力例を表示する
ユーザーが疑問点を尋ねる場合、自由記述ではなく選択肢や入力例を表示しておくことでチャットボットの回答が的確になり、利用率が向上する可能性が高まります。
自由記述の問い合わせに対しては、チャットボットが常にユーザーが期待する通りに答えられるとは限りません。あらかじめ選択肢や入力例をユーザーがわかるように示しておくことで、回答まで導きやすくなるメリットがあります。
例えば「商品の交換方法」に関する問い合わせの場合、自由記述で「商品がイメージと違いました」という場合と、選択肢を用意して「商品を交換してほしい」との回答を選んでもらう場合を比較すると、後者の方が正確な回答を示せる可能性が高くなります。
(5)問い合わせへの応答精度を向上させる
チャットボットの応答精度が低いとユーザーは不満に感じ、使用意欲が下がります。このため、応答精度を向上させることが、チャットボットの利用率を上げる不可欠な要素です。
過去の顧客データ、コールセンターでのやり取りなどの情報を収集して分析し、応答に反映させることで、今後の問い合わせに的確に答えられるチャットボットに成長させられます。
回答にたどりつくまでにユーザーが離脱するのを防ぐよう、質問がスタートしてから回答までの間に関係が薄い話を挟まないなど、シナリオに改善を重ねることも大切です。
(6)問い合わせの多い内容はFAQとして整備する
チャットボットの利用率を上げるため、問い合わせの多い内容はFAQとして整備することも大切です。FAQは「Frequently Asked Questions」を略した言葉で、「よくある質問」を指します。FAQを整備することで回答の速度が向上し、顧客サポートの業務効率も向上します。
対応件数が多い回答をFAQとして整備したうえでチャットボットにFAQへのリンクを設置することで、利用率を上げることが可能です。
FAQについては、以下の記事で詳しく解説しています。
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(7)有人チャットやコールセンターとの連携を行う
有人チャットやコールセンターとの連携も、チャットボットの利用率を高める重要なポイントです。チャットボットを通して必要な回答を得られない場合に有人対応にスムーズに切り替えることができれば、顧客は迅速なサポートを受けられるため、満足度の向上につながります。
問い合わせが多い簡単な質問や営業時間外の問い合せはチャットボットに任せ、対応が難しい複雑な質問はオペレーターが回答を引き継ぐことで、業務負荷軽減とユーザー側の利用率向上の両立を見込めます。
チャットボットの利用率を高めて業務効率化を
チャットボットを導入すればコールセンター社員の業務効率化に加え、顧客データ分析を通じた製品やサービスの満足度向上につなげられる可能性があります。
ただし、利用率が低くなってしまうとその効果も見込めなくなるのが課題です。配置やデザイン、質問欄の工夫などでユーザーに気軽に利用してもらうようにすることで、応答精度が高まり、利用率の向上とともに利便性アップも期待できます。
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