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後編である今回は、そんな工夫の中から生まれたサポートという枠組みを飛び出す新しい取り組みと、今後のビッグローブが目指すサポートについて、ビッグローブ株式会社 コンシューマ事業本部 CS推進部 オムニチャネルG グループリーダーの土生香奈子氏と、同G エキスパートの竹元義美氏に伺いました。
※前回の記事はこちら: ビッグローブが語るサポート成功の条件【前編】:自己解決率向上に向けたビジュアルIVRとAIチャットボットの活用術
サポートチャットのログのサポート品質向上だけではない活用法
サポート時のログを分析することでサポート品質向上に役立てるという取り組みは、多くの企業が行っています。ビッグローブでも、2018年のV-IVRとAIチャットボットを組み合わせた自動チャットサポート開始時には、電話サポートのログから頻出の問い合せ内容を抽出し、Webで自己解決が可能な内容をFAQとして作成するといった取り組みを行いました。
そしてもちろん、V-IVR導入後もAIチャットボットや有人チャットのログは記録され、分析が行われています。ただし、その活用方法はAIチャットボットのサポート品質向上だけでなく更なる活用法があるといいます。
「チャットの問い合せログの分析は、AIチャットボットの場合は、問い合せ入力文の認識率の向上や正解率の向上に活用しています。また、有人チャットについては、AIチャットボットで本来解決すべき内容と、有人チャットで解決すべき内容とを確認し、できるだけAIチャットボットで解決できるようにする施策を考えたり、応対品質の向上施策を考えたり、といった情報として活用しています。そして今は、一歩踏み込んでトレンド分析に挑戦しているところです」と竹元氏は語ります。
その目的は、コールリーズンとなるようなトレンドキーワードをキャッチすることで、ユーザーニーズとともに障害やリスクの予測を行うことにあります。
「ある障害が発生した時、それがあきらかになる数日前からAIチャットボットのログに、できない、つながらない、というようなキーワードが入ってくることがあります。我々が障害として認知する前にその兆候をトレンド分析で察知することができれば、早めに対処することができます」と竹元氏。障害を早期発見することで影響を受けるユーザー数を減らしたいと語ります。
社内の既存ツールをサポートログのトレンド分析に転用
以前からログの確認自体は行われていましたが、基本的に目視で行われていたそうです。問い合せ件数が膨大なだけに全体的な傾向は掴めても、急上昇しているキーワード等はどうしても見つけづらくなってしまいます。そこをカバーするために利用されたのが、ビッグローブの提供するTwitterのトレンド分析サービス「ついっぷるトレンド(https://tr.twipple.jp/)」のエンジンでした。
「分析は定点でとらえるものと変化をとらえるものの2種があります。定点でとらえるものとしては、想定している内容についての問い合わせボリュームを確認し、ボリューム変化があった場合にFAQの不足はないかを確認することで改善・整備に活かします。一方、変化をとらえるものは障害の予兆を検知したり、FAQで想定していなかったものを発見したりできないかと考えています」と竹元氏。
トレンド分析の取り組みは、2019年9月から開始されており、最近変更になった料金引き落としのタイミングやポイント付与タイミングについて認知されておらず、ユーザーが不安を感じている様子や、通信量繰り越しについての確認が月初に集中して動作が十分でなかったことなどが見えてきたそうです。また、秋の大型台風発生時には関連情報の問い合せも急増していました。
「こういう分析から、告知が行き届いていなかったようだということがわかるのはもちろん、引き落としがないという問い合せがあったけれど、引き落としは本来発生しているはずだという場合には、何かおきているのではないかとわかるわけです。これはおかしいのでは、と担当者へ伝えることができます」と土生氏は活用方法を語ってくれました。
問い合せ内容を分析し、FAQで解決すべき内容ならばFAQを追加し、サービスの改善につながりそうなものならば担当者へ提案する。さらに後日の分析ではなく早期の分析とすることで、今は何がおこっているのか、おこりつつあるのかを早期発見し、大規模なリスクに発展する前段階で対策をとるために役立てようとする取り組みです。
「キーワードトレンドをとらえることで、事象を早めにキャッチするセンシングの役割が持てるようになります。事業者側では気づかないことをログから捉えたいですね。できれば毎時程度の頻度で分析をまわし、社内ダッシュボードにキーワードトレンドを公開したいと考えています。おかしなキーワードが出て来た時に担当者が気づくきっかけになればいいですね。ただ、今はまだ生ログを人手で渡して分析してもらいながら傾向を見ている段階です。キーワードをとらえるためのパラメータなどの条件を試行中で、まだ1つの階段を上ろうとしているという状態ですね」と土生氏は語りました。
費用対効果を考えながら新しい取り組みにも貪欲にチャレンジ
ビッグローブではサポートログのトレンド分析の他にも、新たな取り組みがいくつも考えられています。そのうちの1つが、電話サポートの音声応対履歴データの自動テキスト化です。
「これはやってみたいと考えながらも、費用対効果の問題が大きいと感じている部分です。どこまでチューニングをやるのか、どれだけ読めるようにできるのか。使い方でいえば、履歴を自動で残すことでオペレーターの後処理が減り、コストが下がることで人数を増やせますというのがわかりやすく、予算がつきやすいでしょう。でもそれもテキスト化しただけでは使いづらいので、テキスト化した上でざっくりと内容が確認できる要約処理が必要です。どんなツールを使えばいいのかは検討中ですね」と土生氏。
効果がありそうなこと、チャレンジできそうなことを貪欲に企画しつつ、きちんと使えるものにするという実行力を持っているのがビッグローブのサポート部門が持つ特長だと感じられます。FAQ自動生成というサポート業界のトレンドについても、即座に積極的な姿勢が出てきました。
「どういうことをやりたい、効果がありそう、というのは日々のデータやユーザーの動きを見ていればすぐに思いつきます。「あ!これやってみよう」というのをすぐにチーム内で展開し、メンバーみんなで議論しながら形作っていくという理想の体制で進めることができています。トレンド分析にはいろいろな可能性があると感じていますが、これができたのは竹元が前職でテキストマイニングを手がけていたおかげという部分があります。FAQ自動生成というのは難しそうですが、それも次の課題として取り組んでみたら面白そうですね」と土生氏は意欲を語ってくれました。
サポートは何をしても褒められる! 業界全体の向上を目指したい
サポート部門に異動するまではマーケティングや商品企画に携わってきたという土生氏は、ユーザーサポートを苦労の多い仕事ではなく、やりがいのある仕事ととらえています。
利用しているツールのユーザー会的なものだけでなく、各企業のサポート担当者が集まる場への参加も積極的。業種にかかわらず相談できるような関係のグループが構築出来ているそうです。
「一般的には同業他社には新商品情報や新サービス情報は出せないでしょうが、サポートでは私たちはこれだけやっていると話しても他社が簡単にマネをできるものではありません。体制も異なりますし、扱っている商品が違うということもあります。だから聞かれた時には言える範囲でなるべく細かく説明するようにしています。すると私が話すからなのか、先方もすごくレアなデータを見せてくれたりするのが面白いですね。メモを取りたいのに、情報が多すぎて取れないというようなことがあるほどです」と他社サポート担当者と有益な交流がはかれている様子が土生氏から語られました。
ユーザーサポートという仕事は、他社と競うタイプの業務ではありません。業種によって要求される内容や用意するFAQの複雑さには差があれども、他社事例が参考になる部分は多くあります。インタビューの中では、両氏ともそれを強く感じている様子が感じられました。
「サポートというのは一番情報が集まってくるところですから、その情報をどう活用するかがキーになると思っています。サポート業界全体が底上げされればみんなハッピーですよね。私も誰かの会社でサポートを受ける側になるかもしれないわけで、そこがよくなってくれたらハッピーじゃないですか。この業界全体が、皆で一緒にステップアップしていけたらすごくいいなと思います」と最後に土生氏は語ってくれました。