FAQとは、「Frequently Asked Questions」の略語であり、「頻繁に尋ねられる質問」のことです。ホームページにある「よくあるご質問(FAQ)」には、製品やサービスのユーザーから尋ねられることが想定される質問に対する回答がまとめられています。
この記事では、企業がFAQを活用すべき理由や活用するためのポイント、活用事例について解説します。
FAQを活用したほうが良い理由
FAQはカスタマーサポートやコールセンター、ヘルプデスクといった対外業務の業務効率化のために導入されるケースが多いです。一方、社内向けのFAQも導入されることがあります。最初に、FAQを活用したほうが良い4つの理由とメリットについて説明します。
問い合わせ件数の削減につながる
FAQを活用したほうが良い1つ目の理由は、問い合わせ件数の削減につながるということです。多くのユーザーが製品やサービスに関するトラブルにぶつかると、手っ取り早い解決方法としてサポートセンターへ電話することが考えられます。しかし、ユーザーの共通する質問に対して個別のスタッフが回答しなければならないと、多くの人的資源を費やさなければなりません。また、スタッフ数に対して問い合わせが多いと、電話も繋がりにくくなり、顧客満足度も低下するおそれがあります。
そこで課題になるのが「問い合わせ件数の削減」ですが、FAQページを用意しておくことで、ユーザーを自己解決に導くことが可能になります。自己解決できる件数が増えれば自然と問い合わせ件数も減り、ユーザーの手間も省けるため顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
ただし、問い合わせ件数を実質的に削減するためには、顧客の行動やフィードバックを元に改善を続けなければなりません。それがFAQの更新、改善につながり「より効果的な問い合わせ対応」ができるようになります。
サービス品質の向上が期待できる
FAQを活用したほうが良い2つ目の理由は、サービス品質の向上が期待できる点です。FAQは顧客が知りたい質問のうち特にニーズが高いものをリスト化したものです。つまり、FAQを改善するプロセスで企業は顧客ニーズや課題を高い精度で把握しなければなりません。具体的には、問い合わせに関するデータを蓄積し、FAQに反映させることでサービスを改善していきます。そしてサービス品質が上がれば、顧客満足度の向上も期待できます。
担当部署の業務負担の軽減につながる
FAQを活用したほうが良い3つ目の理由は、担当部署の業務負担の軽減につながる点です。
ユーザーがFAQを活用することで自己解決にいたれば、サポートセンターに問い合わせる必要はなくなります。その結果、担当部署は個別対応が本当に必要なトラブルに関してのみ注意を集中することができるようになり、業務負担が軽減します。
社内にナレッジの蓄積ができる
FAQには、社内FAQも含まれます。個々のスタッフの問い合わせ内容やノウハウなどを社内ナレッジとして蓄積することで、それは資産へと変化します。属人化しがちな知識やスキル、知見を体系化できれば、より効率的な顧客対応に繋がり、生産性も向上します。
このような会社組織のマネジメント層からバックオフィス部門、営業部門といった部署を横断した担当者レベルの社員まで、幅広いノウハウを蓄積する環境を構築するシステムのことを「ナレッジベース」といいます。集約したナレッジ共有による組織運用体制・手法を「ナレッジマネジメント」ということも覚えておきましょう。ITツールを適切に導入してナレッジマネジメントの運用体制を整備できれば、業務効率化だけでなく教育コストの削減など幅広いメリットを得られます。
FAQを有効活用するためのポイント
ここでは、FAQを有効活用する3つのポイントについて説明します。
わかりやすいところに設置する
FAQを有効活用するための1つ目のポイントは、わかりやすいところに設置することです。顧客ニーズを分析して作り上げたFAQをユーザーが見つけられず、活用されないままで終わってしまうのでは意味がありません。
わかりやすいところに設置するだけでなく、FAQへの導線も確保しておきましょう。例えば、お問い合わせページやチャットボットなどと連携することで、問い合わせの前にFAQを見る流れを作ることができ、利用率の向上を見込めるはずです。
問い合わせ内容を分析してFAQを更新する
FAQを有効活用するための2つ目のポイントは、問い合わせ内容を分析してFAQを更新することです。
ユーザーがせっかくFAQにたどりついてもその中に自分が必要としている情報が載せられていないと感じるなら、利用率は下がります。ユーザーの利用率を高めるためには、ニーズに合わせて最適化することが必要です。問い合わせ内容や解決率などを分析し、FAQに反映させましょう。
有人対応やチャットボットと連携する
FAQを有効活用するための3つ目のポイントは、有人対応やチャットボットと連携させることです。
FAQで知りたかった質問に対する答えが得られず、そのほかのオプションがなければ、顧客満足度は低下してしまいます。ユーザーの立場からすれば、解決できなかった問題を解決するための導線を準備しておいてほしいと願うはずです。具体的には、オペレーターによる有人対応、チャットボットなどをセカンドオプションとして設置しておきましょう。
FAQの活用事例
ここでは、FAQの活用事例を5つ紹介します。
FAQの導入で受電数50%減を実現(株式会社工進)
株式会社工進は、農業・工業・土木の現場で利用されるポンプの製造販売を手がけてきた企業です。近年は個人向けの園芸機器や小型発電機にも着手しており、専門家のみならず一般家庭のお客様まで幅広い対応が求められます。
コールセンターへの1日の問い合わせ件数は平均で400件、ピーク時は900件にも及び、コールセンターの放棄呼の改善と社内のナレッジ共有が課題となっていました。FAQ作成時に工夫を重ねた結果、顧客を自己解決に促すことができ、コール数は対前年比で50%減を実現しました。
株式会社工進:カスタマーサポートと社内情報共有の両面でフル活用。「わかりやすい」にこだわった自己解決のツールで受電数50%減を実現!
FAQの活用で顧客対応時間外のサポートを実現(コンビ株式会社)
コンビ株式会社は、「お母さん(育児をする全ての人)と赤ちゃん」のコンビを応援する企業です。従来、顧客とのコミュニケーション手段は電話、手紙、FAXでしたが、FAQを活用することで、オペレーターの生産性・効率性・顧客満足度を底上げしたいと考えました。
実際にFAQを導入することで、部品販売についての問い合わせが3ヶ月間で約35%から25%に低下しました。また、24時間365日のセルフヘルプが可能になり、顧客満足度を向上させることができました。
コンビ株式会社:FAQとメール問い合わせでお客様対応時間外の対応を実現
FAQ運用で顧客の「知りたい」をスピーディーに解決(ジュピターショップチャンネル株式会社)
ジュピターショップチャンネル株式会社は、ケーブルテレビや衛星放送、インターネット、カタログ等の通じた通信販売を展開しています。1日の問い合わせ件数は約1500件で、そのうち約7割が商品に関する問い合わせであり、オペレーターがスムーズに回答できるようにする必要がありました。
そのためにオペレーター向けのFAQを導入、複数の顧客から問い合わせが予測される質問とその回答を記載するようにしました。顧客の声やオペレーターの経験から必要になると思われるFAQを検討し、品質管理部門と検討し、決定しています。優れたFAQを作るために、質問は顧客が使う言葉と同じようにし、回答は分かりやすい言葉で記載、図や画像なども用いるようにしています。
ジュピターショップチャンネル株式会社:1日のコール数、約7万件 オペレーター向けFAQ運用事例
FAQに合わせてコンタクトセンター業務を見直し(集英社FLAGSHOP)
集英社が運営するFLAGSHOP(フラッグショップ)は同社の女性ファッション誌上で紹介する衣服を販売しています。サービスの特性上、商品の返品、交換、キャンセルの問い合わせが約半分を占めます。従来からFAQはあったものの、そもそも数が少ない、問い合わせ履歴を蓄積できないなど、FAQはあまり充実しておらず、改善の余地がありました。
現在、月10個以上のペースでQ&A数を増やし、顧客ニーズを反映したものにした結果、アクセス数は2.5倍に増加しました。また、オペレーターは顧客向けのFAQ、社内FAQ両方を活用し、回答の質を高めることができています。
株式会社集英社PKSHA FAQに合わせてコンタクトセンター業務を見直し。FAQ・お問い合わせ管理効率化の取り組み
FAQで問い合わせ対応時間33%減を実現(株式会社森永乳業ビジネスサービス)
同社は森永乳業株式会社より労務関連業務について業務委託を受け、一括対応を行っています。FAQ導入前、業務工数を分析した結果、問い合わせ対応にかかる工数が全体の20%近くを占め、年間1,700時間にものぼることが明らかになりました。
そこで、2018年に社員が労務に関する疑問や困りごとを自ら解決できるツールとしてFAQを導入した結果、月間アクセスは2,500を超え、高い社員満足度を誇っています。2019年に工数は13%減少、2020年には当初の33%まで減らすことができました。
株式会社森永乳業ビジネスサービス:問い合わせ対応の工数減を目指したFAQで対応時間33%削減を実現!自己解決率向上&担当外対応の可能化で効率化
FAQによってECユーザーとのコミュニケーションをスムーズに(オルビス株式会社)
同社では現在全体の7割が通販による売上、さらにそのうち7割がEC利用で、顧客との関係性の希薄化に課題を感じていました。その中で重要なのは、自己解決と即時解決がしやすいUIとコンテンツを充実させ、本当に必要な顧客が個別のサポートを得られる仕組みです。
そこで同社は急増した問い合わせなどが上部に表示されるなど、検索性の高いFAQシステムを導入しました。それにより、顧客ニーズに合わせたサポートが実現しました。
オルビス株式会社:ECユーザーの「ここちよさ」を支えるCSにFAQを活用!快適さを重視したカスタマーサポートの実現を強力サポート
FAQを活用することで顧客満足度が向上
FAQは単に工数を減らし、従業員の負担を減らすためのツールではありません。目指すべきなのは、顧客満足度の向上です。内容が充実した、質の高いFAQを作り上げることで、多くの顧客がFAQにアクセスしたいと思うようになれば、自ら工数も減り、生産性も向上していくことが期待できます。