アビームコンサルティング株式会社
7,500名の問合せをAI ヘルプデスクで9割自動化
自社の改革から顧客のAI BPR実現へ
導入サービス | PKSHA AIヘルプデスク |
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業種 | コンサルティング |
活用対象 | 社員、BPO・BPR |
導入目的 | 問合せ業務の効率化 |

西岡 千尋 様 アビームコンサルティング株式会社 執行役員・AI Leapセクター長
小栗 寛丈 様 アビームシステムズ株式会社 会計ソリューショングループ Manager
水野 隆宏 様 アビームシステムズ株式会社 会計ソリューショングループ Senior Specialist
会社、ご担当者様の紹介
まず、皆様のお役回りについて教えてください。
西岡様:私はアビームコンサルティングのデジタルテクノロジービジネスユニットAI Leapセクターで、AIを活用したお客様の業務変革や社会課題解決を推進する組織のセクター長を務めています。クライアントワークに加え、社内業務においてもAI技術を活用し、コンサルタントの働き方改善やスタッフ部門の生産性向上を目指す活動も行っております。今回のAI ヘルプデスク導入もその一環です。我々の組織では、リソースの約20%をこうした社内改革を含む投資活動に充てています。
小栗様:私はアビームコンサルティングのグループ会社であるアビームシステムズに所属し、企業の経理や人事といったコーポレート領域のBPOサービス提供や、業務最適化、デジタル化推進を担当しています。アビームコンサルティングのコーポレート領域に対してもサービスを提供しており、私自身は経理チームのマネージャーとして業務改善に取り組んでいます。
社内でAI ヘルプデスクのようなツールを活用し生産性が向上した知見は、お客様への提案にも応用できると考えています。今回の取り組みも、将来的な社外展開を視野に入れた事例の一つと位置づけています。
水野様:私は小栗と同じ経理チームで、主に経費精算と請求業務を担当しています。利用者からの問合わせをメインで担当しており、導入したAIヘルプデスクを活用し業務を効率化させていく役割を担っています。
月100件の問合せとナレッジ共有の壁
導入前の状況について具体的に教えてください。
西岡様:以前は、月に約100件程度の問合せが、主にメールで寄せられていました。中でもコンサルタントの生産性向上という観点では、経費精算の問合せ対応が課題でした。出張などで精算業務が発生する際、経験の浅いメンバーは手順が分からず手間取ることがあります。「誰に聞けばいいのか…」という状況は、本業に集中する上で妨げになります。一方で、コーポレート部門から見ても同様の問合せが多数寄せられ、業務を圧迫していました。
小栗様:私の所属する経理チームでは、これらの問合せに3、4名で対応していました。しかし、各々が主業務を抱えながらの対応となるため、回答までに時間を要したり、FAQなどのナレッジ共有をタイムリーに行えなかったりと、様々な課題がありました。
また、一部派遣スタッフの方にもご担当いただいていたので、一般会計知識では回答できない社内ルールについてチーム内での確認が発生することもありました。そういった当社ならではの暗黙知もナレッジ化していく必要性を感じていました。
AI ヘルプデスクが実現した問合せ対応プロセス9割削減とナレッジ循環
AI ヘルプデスク導入後、状況はどのように変化しましたか?
小栗様:現在、「AI ヘルプデスク【経理部門】」という名称で、アビームコンサルティングのコンサルタント約7,500名を対象に稼働しており、問合せの対応やAI ヘルプデスクの運用を現在は水野が一人で担当しています。
対象人数に対して、運用担当者お一人というのは、効率化が進んでいる印象を受けます。問合せ件数や対応状況について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか。
小栗様:AI ヘルプデスクへの月間の問合せ総数は、以前のメールを中心とした運用時と比較して約1.5倍の150~200件となっています。一方で、そのうち約9割はAIによる自動応答で解決されており、人による対応が必要な件数は月に20~30件程度です。
水野様:現在、問合せはAI ヘルプデスク経由が中心となっており、メールでの問合せは大幅に減少しました。メールで問合せがあった場合も、AI ヘルプデスクの利用を案内するようにしています。
西岡様:結果として、コーポレート部門の問合せ対応工数は、以前と比較して大きく削減されています。またAI ヘルプデスクは、Microsoft Teams上で気軽に聞ける仕組みのため、コンサルタントの利用がスムーズに進みました。結果として、これまで質問せずにいた社員も利用するようになり、問合せ件数が増加したのだと思います。
ドキュメント検索の活用状況についても教えてください。
水野様:現在は、経費精算のマニュアルや勘定科目はどれを選んだらいいかといった資料を10件程度入れています。
西岡様: ダッシュボードを見ると、FAQだけで解決したものが約97%、ドキュメント検索で解決したものが約83%とすでに高い解決率が出ています。
水野様:システムの操作マニュアルなどは1ファイルにつき100ページ近くになることもあり、これだけだとソースを確認するのも手間ということで、FAQや個別資料などを付属でつけている状態です。そのため、どんどんドキュメントを増やしていこうというよりは、既存の資料を整理しながら対象とするファイルを検討していきたいと考えています。
小栗様:これまでは、問合せ対応の履歴やノウハウが担当者の感覚に依存しがちで、組織的なナレッジとして蓄積・活用することが難しい面がありました。FAQやマニュアルの作成はメイン業務がある中では片手間になりがちでしたが、AI ヘルプデスクの導入により、問合せと回答のデータが蓄積され、FAQの改善や新たなナレッジ作成といった継続的なサイクルを確立できるようになりました。
高い自動応答率を支える継続的改善とユーザー視点
自動応答率が9割というのは高い水準ですが、この精度を維持、向上させるためにどのような取り組みをされていますか?
水野様:AI ヘルプデスクの機能の一つである、AIによるFAQ作成提案を活用しています。提案があった都度、内容を確認しFAQとして追加を行っています。また、対話ログの分析と、それに基づく振り分け設定の見直しといった改善作業も週に1回程度の頻度で行っています。これらの作業は Microsoft Teams 上で完結できるため、効率的に進められています。
小栗様:導入初期は特に、ユーザーがAIの回答で疑問を解決できないと、ツールの利用意向が低下する可能性を考慮しました。そのため、ユーザー体験を重視し、水野を中心にFAQの整備や対話内容の改善に集中的に取り組みました。この初期の対応が、現在の自動解決率に貢献していると考えています。
西岡様:以前、別の業務領域で一般的なチャットボットを利用した経験では、回答精度が低いと利用者に敬遠されがちでした。PKSHA社のAI ヘルプデスクはFAQの改善提案機能がある点や、AIで解決しなかった場合に有人対応へスムーズに連携できる点が、利用者にとって利便性が高いと感じています。複数の窓口を経由することなく、単一のインターフェースで問合せが完結する点は、ユーザー体験の観点から見て重要です。
社内での定着化については、どのような施策を実施されましたか?
西岡様:全社向けのニュースレターや、社内勉強会「デジタルテックユニバーシティ」を通じて、AI ヘルプデスクの利用を周知しました。ニュースレターは、経費精算機能のリリース時や、業者支払い関連など特定のFAQを追加した際など、主要な機能アップデートのタイミングで配信しています。
小栗様:メールで問合せをしてきた社員に対して、AI ヘルプデスクの利用を個別に案内することも継続しています。
西岡様:また、中途入社者や新入社員向けのオンボーディング資料にもAI ヘルプデスクの利用案内を盛り込み、入社初期から利用しやすい環境を整えています。ツールを導入するだけでなく、実際の業務の中でいかに定着させるかが重要だと認識しており、利用状況を可視化するためのダッシュボードを独自に作成するなどの取り組みも行っています。
従業員のみなさまからはどのような反応がありますか?
小栗様:問合せ総数が増加していることから、利用者にとって質問しやすい環境が提供できているのではないかと考えています。対応側としては、有人対応件数が減少しているため実感しにくい部分もありますが、データ上は利用が拡大していることが確認できます。
西岡様:導入後に新たに入社した社員にとっては、AI ヘルプデスクが既に整備された環境の一部となっているため、大きな変化として意識されにくいかもしれませんが、それも定着の一つの形と捉えています。
AI ヘルプデスクの名称を「AI ヘルプデスク【経理部門】」とされていることには、どのような意図があるのでしょうか?
西岡様:対象領域を明示することで、利用者の期待値を適切に設定し、経理関連以外の問合せが集中することを避ける意図があります。これが結果として、問合せ内容の適切性を高め、自動解決率の維持にも寄与している可能性があります。
またアビームコンサルティングでは日常的にMicrosoft Teamsを利用しているため、Teams上で稼働するAI ヘルプデスクとの親和性が高かったことも、導入と定着が比較的スムーズに進んだ要因の一つかもしれません。
「業務特性への適合性」と「品質・導入期間のバランス」を評価
AI ヘルプデスク導入にあたり、他のサービスとの比較検討はされましたか?選定の主な理由について教えてください。
西岡様:当時、生成AIの活用が注目され始めた時期であり、社内でもナレッジ活用に関する複数のプロジェクトが検討されていました。特に経費精算のようなヘルプデスク業務は、最終的に解決しない場合、担当部門への確認が不可欠となる特性があります。このような領域では、独自システムを開発するよりも、PKSHA社のような実績のあるサービスを導入する方が、品質と導入期間のバランスが良いと判断しました。
一方で、例えば社内のプロジェクト事例検索のように、よりリサーチ要素が強く、グローバルでの多言語対応といった複雑な要件が伴う業務については、内製でシステムを構築しています。業務の特性や要件に応じて、最適なソリューションを選択するという方針です。
部門横断も視野に、さらなる活用へ
AI ヘルプデスクの社内活用について、どのような展望をお持ちですか?
水野様:まず運用面では、ドキュメント検索の回答精度をより向上させ、有人対応を更に減らしていきたいと考えています。
小栗様:現在は経理部門の業務が中心ですが、今後は総務領域など、個別事象より一般的な問合せが多く、FAQでの対応が比較的容易な部門への展開も検討しています。実際に、他のチームから「使ってみてどう?」とAI ヘルプデスクの利用状況について関心が寄せられることもあり、社内での横展開を推進していきたいと考えています。
PKSHAとの協業、未来への期待
アビームコンサルティング様はPKSHAのパートナーでもいらっしゃいます。どのような部分で連携強化を進められるか聞かせてください。
西岡様:我々アビームコンサルティングは、顧客の業務改革における手段の一つとしてAIを組み込むBPR(※1)コンサルティングを強みとしています。PKSHA社とは、私たちが策定した業務改革構想の実行手段としてAI ヘルプデスクを位置づける形や、PKSHA社に直接相談があった顧客に対し、私たちの導入事例を基に業務定着化支援を共同で実施するといった連携を進めています。労働生産性の向上は多くの顧客にとって重要な経営課題であり、業務コンサルティングとの組み合わせで具体的な価値提供に取り組んでいます。
※1 BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング): 企業の業務プロセスを根本的に見直し、再設計することで、コスト削減、品質向上、時間短縮などを達成する経営手法
また、昨今の技術トレンドとして、RAGからより能動的に業務を支援するAIエージェントへと関心が移り変わってきています。AI ヘルプデスクにおいては、各業務に特化した状態からさらに広がり、最終的には社内の総合窓口のような役割を担う、あるいは社員からの依頼を受けて実際に業務を遂行してくれるAIエージェントのような形に進化していく可能性を期待しています。そのためにも、他のシステムとの連携なども見据えて協業を深めていければと考えています。
小栗様:ユーザー視点も踏まえると、すでにサービス提供されているところではあるのですが、FAQの作成支援など、導入時のハードルを下げていってほしいです。いろいろ準備しないと最初の回答精度が低くて使われなくなる、といった懸念もあるのかなと想像しているので、そこを踏み込みやすく、ハードルを下げるような取り組みがあると良いと思っています。
西岡様:その観点では、生成AIを活用したFAQ作成支援と、導入コンサルティングを組み合わせた提供形態も考えられるかもしれませんね。例えば、一定期間当社のコンサルタントも連携しながら導入初期の品質を担保した上で顧客に活用を促すといったモデルです。
AIエージェントの活用について貴社での具体的な取り組みは進んでいますか?
西岡様: はい、複数のプロジェクトが進行中です。資料作成の自動化、ナレッジ検索機能の強化、RFP(提案依頼書)からの提案書作成支援、法務関連の契約書におけるリスクチェック支援など、社内の様々な部門からAI活用の相談があり、20件以上のプロジェクトが検討・進行段階にあります。これらを個別に具体化していくことと同時に、類似した取り組みを連携させることで、単なる業務効率化に留まらない、より複合的な価値創出を目指しています。
そういった内製や個別開発といった領域と、SaaS領域との取り組みについてはどのようにバランスを取っていくのでしょうか。
西岡様:大前提として、全てを自社で内製することが最善とは考えていません。特に開発のスピード感を考慮すると、外部の優れたソリューションも積極的に活用していく方針です。例えば、調査、提案、営業資料作成といった業務は、多くの企業が共通して抱える課題であり、こうした領域において互いにメリットのある形で連携しながら、顧客の課題解決に繋げていければと考えています。
最後に、自社でのAI ヘルプデスク活用経験が、顧客への提案活動にどのような影響を与えているか教えてください。
西岡様:自社での活用実績は、顧客提案時の説得力を高める上で有効です。「私たち自身もこのサービスを社内で活用し、具体的な成果を得ています」と示すことができるのは大きな強みです。Teams上のAI ヘルプデスクアイコンは自社特有のものに変更することができますが、あえてデフォルトのまま使っているのも狙ってのことです。普段からこれがPKSHAのサービスなんだと認知して現場のコンサルタントに実際に利用してもらい、その有用性を理解した上で、BPRの一環としてAI ヘルプデスク活用を提案できる体制を目指していきます。
ユーザー・パートナー両視点からの貴重なお話、ありがとうございました。
2025年6月27日時点の情報です。

企業名 | アビームコンサルティング株式会社 |
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業種 | コンサルティング |
設立 | 1981年(昭和56年)4月1日 |
社員数 | 8,816名 (2025年4月1日現在 連結) |
URL | https://www.abeam.com/jp/ja/ |