目次
コールセンターにおいて「放棄呼」は軽視できない問題です。
企業の機会損失や顧客満足度の低下など、重大なリスクに繋がりかねません。
本記事では、放棄呼の概要や具体的な対策を解説します。
放棄呼とは?
放棄呼とは、顧客がコールセンターに電話した際にオペレーターに繋がる前に電話を切ったコール(呼)を指します。「ほうきこ」と読み、英語ではAbandoned Calls(アバンダンコール)。
コールセンター(コンタクトセンター)等の電話を扱う部署で使用される用語です。
放棄呼は、コールセンターのサービスレベルを把握するうえで欠かせない指標です。数ある指標の中でも顧客満足度に直結するので、重要視されています。
(1) 放棄呼が生じる原因
放棄呼の原因としては、主に以下の4つが挙げられます。
① オペレーターの不足
顧客がオペレーターに繋がるまで待ちきれず、放棄呼が発生します。根本的な原因は、お問い合わせ数が電話回線数を上回ってオペレーターの人数が足りていないことでしょう。
また、電話が繋がらない状態のことを「あふれ呼」といいます。
② 対応効率が悪い
もしオペレーターの人数が十分にいたとしても、オペレーター一人ひとりの対応効率が悪い場合は平均処理時間(AHT:Average Handing Time)が長くなり、結果として放棄呼が生じてしまいます。
この場合、人員コストをかけながらも1日あたりの処理件数は制限を受けることになるので、早急にオペレーション等を改善する必要があります。
③ 顧客の感情・事情
顧客によっては、電話越しに待たされることを苦痛に感じる方も一定数いるはずです。そうした顧客の場合、オペレーターへの電話がすぐに繋がらないと、自ら電話を切ってしまうケースも多いでしょう。
④ 呼量の混雑
時間あたりの通信回線占有量である「呼量」が多く混雑しているときは、システム側が切断する場合があります。 例えば「しばらく経ってからおかけ直しください」といったアナウンスが流れ、切断されるのです。顧客にダイヤル操作の手間だけをかけてしまう可能性もあります。
(2) 放棄呼率とは?
放棄呼率とは、オペレーターに繋がる前に顧客が電話を切った、もしくはシステムが自動で切断した放棄呼の割合です。アバンダンレート(Abandon Rate)とも呼ばれます。
入電に対するコールセンターの顧客対応能力を表すため、サービスレベルを測るKPIとして使われています。
放棄呼率の計算式は、「放棄呼数÷着信件数×100」です。例えば100件の入電があり、5件に対応できなかった場合、放棄呼率は5%です。
コールセンターが放棄呼を放置することで生じる問題点
ここではコールセンターが放棄呼を放置することで生じる問題点を4つご紹介します。
顧客満足度に直結するだけでなく、企業の利益を左右しかねない課題なので、ぜひご確認ください。これらを把握したうえで後述する対策を講じることが大切です。
(1) 機会損失の発生
放棄呼がもたらす代表的なデメリットは、仕事や受注などの機会損失に繋がることです。
コールセンターは商品購入や資料請求の窓口になるため、放棄呼の放置は、購買意欲の高い顧客を逃すことを意味します。
(2) 企業や製品、サービスのイメージ低下
短期的に受注機会を失うだけでなく、企業や製品、サービス自体へのイメージが低下するおそれがあります。
とくに初めて電話をした顧客には、「連絡が取れない企業」というイメージを持たれかねません。
信用を低下させないためにも、適切な対策が重要です。
(3) 顧客満足度の低下
放棄呼が発生すると、顧客の不満やストレスが増加し、顧客満足度が低下します。
顧客に待ち時間やコールバック(かけ直し)の負担が発生するためです。顧客の問題が解決するかどうかに関わらず、企業の信用が低下することは避けられないでしょう。
顧客満足度に関連する指標にCES(Customer Effort Score:顧客努力指標)がありますが、放棄呼はこの数値を悪化させます。
(4) オペレーターの負担の増加
あふれ呼により待ち状態の顧客が発生すると、オペレーターの負担が増加する可能性があります。放棄呼やあふれ呼にストレスを感じた顧客から、クレームが寄せられるかもしれないからです。イレギュラー対応によりオペレーターの負担は増加するでしょう。
また入電数が増えてくると、コールセンターの管理者はスキルの高いオペレーターに仕事を振ります。オペレーターの不満が蓄積され、離職率が増加するおそれもあるでしょう。
コールセンターにおける放棄呼の対策方法
先述したように、放棄呼を放置しておくと様々なデメリットが発生します。企業利益が大きく損なわれるリスクがあるので、適切に対応しましょう。ここでは放棄呼の対策として5つの方法をご紹介します。
(1) オペレーターへの適切な教育
まずはオペレーターへの研修の実施やマニュアル・FAQナレッジの整備が必要です。
オペレーターの知識・経験の不足によるAHTの悪化や放棄呼の発生を防ぐためです。
例えば、自社で販売している商材への理解が不足していれば、顧客対応に必要以上の時間がかかってしまうでしょう。
また、「ATT(Average Talk Time:平均通話時間)」や「ACW(After Call Work:平均後処理時間)」など対応効率に関わる指標をオペレーターに意識してもらうことも有効です。
(2) アウトソーシングサービスの活用
アウトソーシングとは、コールセンターの業務の一部、もしくは大部分を外部に委託することです。自社での採用や教育が難しい場合に有効です。
例えば「スポット業務」として繁忙期だけアウトソーシングを活用することで、無駄な人材コストを削減しつつ放棄呼の対策ができます。
(3) IVRやビジュアルIVRの活用
IVRの導入によりオペレーターのリソース不足を解消できます。IVRとは「Interactive Voice Response」の略称で、直訳すると「自動音声応答システム」という意味です。電話業務の自動化、自動受付が可能になります。
また、IVRはACD(Automatic Call Distributor:着信呼自動分配装置)と組み合わせて使用されることがあります。
ACDは顧客の用件に適したオペレーターをマッチングする機能で、「商品に対するお問合せはダイヤルの1番」、「その他のご用件はダイヤルの3番」といったガイダンスを流すことができます。これによりスムーズな案内が可能になり、AHTの短縮に繋がります。
しかし、「音声ガイダンスの長さ」や「プッシュ操作の繰り返し」に不満の声も多いのが実情です。
そこで台頭してきたのが「ビジュアルIVR」です。
ビジュアルIVRとはスマートフォンなどの画面上にメニューを表示し、顧客がスピーディに問題解決できるシステムです。
顧客が自己解決できた場合、オペレーターの応答も必要ありません。さらに導線の分析機能を搭載した製品もあるので、会話設計やフローチャートの改善も可能です。
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(4) チャットボットの導入
簡単な質問はチャットボットだけで解決できるので、コールセンターのオペレーター負担を軽減できます。
(5) FAQの設置
WebサイトにFAQ(よくある質問)ページを設置することで、顧客が問題を自己解決できるようにします。これにより電話での問い合わせ減少が期待できます。
また、先ほどのビジュアルIVRからFAQページに誘導することも可能です。
放棄呼の対策で会社の生産性をアップさせよう
放棄呼を放置すると、企業の機会損失が発生するだけでなく、顧客満足度が低下します。
その対策として、本記事ではチャットボットやFAQ、IVR(ないしビジュアルIVR)の活用方法をご紹介しました。
ただ残念ながら、導入していても各ツールを活用しきれていない、もしくは他システムとの連携ができていないが故に機会損失となっているケースは多く見受けられます。
自社の活用についてご不安を感じられる方は、お気軽に弊社・PKSHA Communicationへお問い合わせくださいませ。
▼お問い合わせフォームはこちら
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