株式会社アーレスティ
RAG活用で1,500名のナレッジ探索を効率化
製造業における未来のナレッジマネジメント実現へ
導入サービス | PKSHA AI ヘルプデスク・PKSHA ナレッジベース・PKSHA FAQ |
---|---|
業種 | 製造業 |
活用対象 | 社員 |
導入目的 | 問合せ業務の効率化 |

加藤 文敏 様 ITシステム部 情報システム課長
藤井 祐江 様 ITシステム部 情報システム課 兼 ダイバーシティ推進室
会社、ご担当者様の紹介
まず、お二人のお役回りについて教えてください。
加藤様:私たちが所属しているのは、管理本部内のITシステム部です。部内は情報システム課と戦略・統轄課の2課で構成されており、私たち情報システム課は、アーレスティ国内の共通インフラ基盤の維持管理を主な役割としています。ネットワーク機器やメール、Microsoft Teamsといったアプリケーションの導入から運用保守までを幅広く対応しています。
藤井様:情報システム課の業務は大きく分けて、加藤が先程申し上げた共通インフラ関係と、基幹業務システム系の運用保守の2つがあります。私は主にインフラ関係の業務を担当しており、今回のAI ヘルプデスクも、インフラ基盤の中のアプリケーションという位置づけで担当しています。
加藤様:ITシステム部全体では17名体制で、アーレスティ単体ですと約1,000名、関係会社を含めAI ヘルプデスクを利用する可能性のある人ですと約1,500名の従業員をサポートしています。
私たちの部門のミッションは、ITを活用して従業員の業務効率を向上させ、より付加価値の高い業務に集中できる環境を整えることです。AI ヘルプデスクも、従業員が働きやすくなるために必要なシステム=「インフラ」の一部と捉えて導入を進めました。
Excel管理から始まった問合せ対応。問合せの集約から潜在ニーズが明らかに
AI ヘルプデスク導入前の課題についてお伺いします。段階的にツールを導入されてきたと伺っていますが、どのような経緯があったのでしょうか。
藤井様:PKSHAのツールを入れる前は、電話やメールでの問合せが月に160件ほどありました。最初は専用の問合せ対応ツールがなく、来たものを地道にExcelに一件ずつ記録していました。しかし担当者に直接電話での問い合わせが来てしまうと、やり取りの履歴が残らないだけでなく、担当者が不在の場合には緊急の案件にも気づけないという問題もありました。
加藤様:Excelからデータベースツールへ移行して問合せを管理していた時期もありました。コロナ禍でテレワークが普及することを見越し、問い合わせ情報を一元管理する必要性が高まったことが、移行のきっかけです。
藤井様:そのデータベースは、私たちがノウハウを蓄積するという点では良かったのですが、ユーザーにとっては検索機能が十分ではなく、問合せのやり取りも1往復しかできませんでした。そのため、意図が伝わらず結局メールで詳細を確認するなど、効率的とは言えませんでした。
そこで、ユーザーが自ら検索できるFAQサイトの導入に至ったのですね。
藤井様:はい。この問合せ件数を減らしたいという思いから、まずはPKSHA FAQを導入しました。しっかりとしたFAQサイトを構築してまずは自分で検索してもらい、それでも解決しなければ問合せしてもらう、という運用に切り替えていきました。ところが、これまで電話やメールでバラバラに来ていた問合せが集約されたことに加え、「今までどこに聞けばいいか分からなかった」と問合せを諦めていた潜在層からの問合せも集まったことで、有人対応の件数は月間236件にまで増加していました。そして、この増加した有人対応をいかに削減するかが、次の大きな課題となりました。
ドキュメント検索とアクションフローを活用し、有人対応50%削減を実現

AI ヘルプデスク導入後、RAG活用のリリースからわずか2ヶ月で増加した有人対応を50%以上削減されたと伺いました。どのようにして実現されたのでしょうか。
藤井様:PKSHA FAQの機能を拡張したいという考えで、「有人対応に到達しないようにできないか」と相談したのが始まりです。当初は PKSHA Chatbot を検討していましたが、ご紹介いただいたAI ヘルプデスクの方が私たちの要件を満たしていました。既存の400件以上のFAQを再作成する負担なく、そのまま連携できる点もメリットでした。
有人対応の削減については、 AI ヘルプデスクの「チャットボットによる自動応答」によりユーザーの質問にあったFAQが自動で提案されることと、「ドキュメント検索(RAG)機能」で社内の規程や各種マニュアルといったドキュメントを読み込ませ、問合せ対応に活用できるのが大きなポイントでした。PKSHAのカスタマーサクセス担当の方からアドバイスいただいたログの振り分け作業などを地道に続けたことに加え、「アクションフロー」の機能を活用したのも大きく貢献しています。
ユーザーの条件や問合せ時の選択に応じてレスポンスを変えることができる「アクションフロー」を、どのようにご利用されているのでしょうか。
藤井様:私たちの部署には、例えば「名刺の注文方法」といった他部署の管轄の質問も多く寄せられます。他部署のFAQは用意されていないため、そのままだと有人対応が必要になります。いかに不要な有人対応を生まないかという視点で、問合せに対して適切な担当部署を案内するフローを数多く作成し、不要な有人対応を生まないよう対処しました。また、PCの不具合といった問合せでは、調査に必要なコンピュータ名やエラーメッセージなどの情報をあらかじめ入力してもらうフローを組むことで、その後のやり取りの往復をなくし、対応時間を短縮できるようにしました。 現在、登録している約480件のFAQのうち、70件ほどに何かしらのアクションフローが組み込まれています。私の方で簡単な手順書を作成し、部内に共有することで、各システムの担当者が必要だと思ったら誰でも自分で作れる体制を整えています。
ドキュメント検索(RAG)機能の活用はいかがでしょうか。製造業では複雑なマニュアルや規程要領も多いかと思います。
藤井様:まさにその点で効果を感じています。弊社には規程要領、各種マニュアルといったドキュメントが数多く存在します。私たちが作るマニュアルは10ページ程度ですが、規程要領、メーカー作成の正規マニュアルは何十ページにも及びます。その内容をすべて把握するのは困難です。AI ヘルプデスクにこれらのドキュメントを読み込ませることで、AIが必要な箇所を抜き出し、箇条書きのように要約して提示してくれるようになりました。また、欲しい情報が載っているドキュメントやドキュメント内の記載箇所が分かるのはとても便利だと感じます。
個人的な感想ですが、AIが分かりやすく要約を提示してくれることで、「こういうことが書いてあるなら、元の資料も読んでみよう」という気持ちになり、ドキュメントに対する心理的なハードルを下げてくれていると感じます。
付加価値業務へのシフトを実現。AIヘルプデスク活用の現在地と、さらなる進化への期待
AI ヘルプデスクの導入は、どのように社内に周知されたのでしょうか。大きな混乱はありませんでしたか。
藤井様:元々、社内ポータルにPKSHA FAQへのリンクを「問合せはこちら」として設置していました。AI ヘルプデスクに切り替えるタイミングで、そのリンク先をすべて新しいURLに変更する、という強制的な切り替えを行いました。ユーザーからすれば「気づいたら問合せ先がTeamsに変わっていた」という形です。
切り替えの1週間ほど前に、社内ポータルにユーザー用の利用マニュアルを公開し周知もしていましたので大きな混乱はありませんでした。
「AIではなく人と話したい」という意見も1件だけありましたが、むしろ「相手が人ではないので、時間を気にせず気軽に聞けるようになった」という声の方が多くあります。当初は「有人対応に繋がった後、返事が来るまでずっと画面の前で待っていないといけないのでは」という勘違いをされている方や、PKSHA FAQでのFAQ検索の癖でチャットボットへの質問が「接続できない」など単語だけで会話が成立していない方もいました。そのため、質問例や注意点については社内ポータルやユーザー用の利用マニュアルを更新することで周知をしています。
問合せ対応時間の削減によって生まれた時間を、どのような業務に充てられていますか。
加藤様:問合せ対応はある意味ルーチンワークです。私たちは、その時間をいかに削減し、各々が担当する新規システムの導入や改善活動といった、より付加価値の高い業務に注力できるかを重視しています。以前は、同じような質問に同じように回答しているケースが散見され、本来注力すべき業務よりも問合せ対応に追われるという本末転倒な状況もありました。AI ヘルプデスクの導入で有人対応が減り、社員が本来やるべき付加価値業務にシフトできている点で、非常に効果を実感しています。
今後の取り組みや、プロダクトへの期待についてお聞かせください。
藤井様:課題としてあるのは、大規模な障害発生時の対応と個別相談など本来FAQを介す必要のない問合せの対応です。障害発生時は多くの人から同じ問合せが一気に来てしまいます。ポータルサイトで案内はするのですが、それより早く問合せが来てしまうこともあり、障害発生時などの緊急性の高い問合せに、迅速に対処できないかと考えているところです。
また、個別相談などの本来FAQを介す必要のない問合せについては、現在はチャットボットが一次回答した後に有人連携するルートをデフォルトにしているため、ユーザー体験の低下や意図しない自己解決率の低下に影響していると考えています。一方で、ユーザー心理を考えると、いきなり有人につながるルートがある場合、有人対応が増えてしまう懸念もあります。そのため、ルート構成の検討が必要だと考えているところです。
今後の取り組みとしては、2つ検討しています。ひとつはドキュメント検索のさらなる精度向上です。メーカーのマニュアルなどは私たちが修正できないため、今後はドキュメントの回答で不十分だったものを参考にFAQを作成し、そちらで解決できる流れを作っていくのが建設的だと考えています。もうひとつは、FAQの陳腐化を防ぐ仕組みづくりです。以前のFAQサイトでは、情報の鮮度を保つために公開期限を1年に設定し、見直し後に再公開するという運用をしていました。AI ヘルプデスク上でも、そうした古いFAQのメンテナンス機能があるといいなと期待しています。
加藤様:加えて、社内の各種システムとのデータ連携にも大きな期待を寄せています。現在は「PKSHAナレッジベース」のSharePoint Online連携機能を活用し、SharePoint Online上のドキュメントを検索対象としていますが、社内には他にも多くのシステムにドキュメントが格納されており、それらと直接連携できれば、ナレッジ活用の幅が一層広がると考えています。
また、問合せが解決した場合、ユーザーからの返信がないケースも多く、解決済みとしてよいか判断に迷う保留案件が増加する傾向にあります。一定期間が経過した問合せを自動的にクローズする機能があれば、管理面で非常に有効だと考えています。
全社的なナレッジマネジメントの実現へ
最後に、他部門への展開や、全社的なナレッジマネジメントの展望についてお聞かせください。
藤井様:これから総務、人事、経理、経営企画、製造本部、設計といった部門に説明会を行う予定です。中でも設計部門からは、CADの使い方など専門的な問合せも多いようで「ぜひうちでもやりたい」という声がすでに上がっています。総務や人事、経理はユーザーが多い部門なので、年度内にはそういった2、3部門で導入を進め、全社的に役に立つシステムとしての位置づけを強めていきたいです。
加藤様:問合せ業務はIT部門に限らず、全社のさまざまな部署で発生しています。これらを会社全体で一元的に管理し、本社で蓄積したナレッジを関係会社にも展開できるようになれば、さらなる相乗効果が期待できます。全社的な取り組みによって、より多くの従業員が付加価値の高い業務に集中できるようになり、その効果は何倍にも広がっていくはずです。それが、私たちが目指す「未来のナレッジマネジメント」の姿ですね。
ITシステム部が主導した社内でのAI活用は、無料版「Microsoft Copilot」の導入から始まり、このAI ヘルプデスクが本格的な活用事例の第一歩という側面もあります。まだ試行錯誤の段階ではありますが、多様な社員が円滑にコミュニケーションを図れるツールの一つとしても、その役割を期待しています。
貴重なお話をありがとうございました。
2025年7月25日時点の情報です。

企業名 |
株式会社アーレスティ |
---|---|
業種 | 製造業 |
設立 | 1943年11月2日(創業1938年6月22日) |
社員数 | 単体 846名(2025年3月31日現在) 連結 5,259名(2025年3月31日現在) |
URL | https://www.ahresty.co.jp/ |