阪和興業株式会社

AI活用による従業員体験向上

AIヘルプデスク運用5年目を迎えた人事部の今

導入サービス PKSHA AI ヘルプデスク
業種 商社
活用対象 社員
導入目的 問合せ業務の効率化
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写真右から
稲野邉 芳宏 様 人事部 大阪人事・厚生課長 兼 健康経営推進課
黒木 咲歩 様  人事部 大阪人事・厚生課
青山 優馬 様  人事部 大阪人事・厚生課

会社、ご担当者様の紹介

まず、みなさまのお役回りについて教えてください。

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稲野邉様:私は、大阪人事・厚生課の課長をしております。業務としては、給与・社会保険関係から社員の健康管理まで、人事労務に関する実務全般を幅広く見ています。人事労務に関する施策の検討・構築が重要な任務ではありますが、現場で起きる問題や社員からの相談に対応するといった、より社員に寄り添った実務も相当なウエイトを占めています。

青山様:主に勤怠労務や人事評価制度の運用といった労務管理全般を担当しています。最近は社会保険関連の業務も担当するようになりました。最近、特に注力しているのは、勤怠データから過重労働の状況を分析し、改善施策を立案することです。データから傾向を掴み、必要に応じてヒアリングを重ねながら、より良い働き方を実現するために能動的に動いています。

黒木様:私は主に給与・賞与・退職金といったお金周りのことと、税務・社会保険をメインで担当しています。直近1年は、AIヘルプデスクの運用についても担当しており、社員への浸透を強化中です。

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稲野邊様:課全体では16名体制です。明確なチーム分けはありませんが、それぞれが専門領域を持っており、ミッションに応じて関係しそうなメンバーが集まってディスカッションするなど、案件ごとに動くことが多いですね。

 

変化を続ける人事施策。問合せ対応の現状

人事部門には日々さまざまなお問合せが寄せられるかと思いますが、特に多いのはどのような内容でしょうか。

青山様:やはり勤怠と、あとは研修制度についての質問が圧倒的に多いです。

黒木様:特に研修制度は、近年制度が充実したことに伴って複雑になり、問合せが増えたと感じています。当社の研修制度「阪和ビジネススクール(HKBS)」では、「必修研修」「選択必修」というカテゴリ分けがあったり、キャリアのステップアップである「職群転換」のために必須となる研修が細かに定められていたりと、かなり複雑です。そのため、「職群転換をするために、この研修はいつまでに受ける必要がありますか?」といった細かい質問が社員から多く寄せられます。

青山様: 研修の種類は豊富で、与信や法務などの実務研修もあれば、コーチング研修やリーダーシップ研修などのキャリア形成を目的としたものもあります。基本的には自社内での研修が多いですが、外部に委託している研修もいくつかありますね。

稲野邊様:研修制度自体がここ1、2年で急速に強化、充実化されており、そしてその動きはまだまだ続いております。そのため、まだ社員が制度を理解していく過程で、細かい点を確認するための問合せが増えている側面もあるかと思います。 

 

勤怠に関するお問合せはいかがでしょうか。

青山様:こちらはシステム上の操作に関するものが大半ですね。「この申請はどうすればいいですか」「申請の取り消し方法を教えてください」といった質問が多くを占めます。特にお問合せが増えるのは、前月分の勤怠を締める月初のタイミングで、一気にお問合せが来る傾向があります。

 

問合せ窓口の一元化。チャットエージェント活用の現在地

どのような方がAIヘルプデスクを利用されていますか?

黒木様:比較的若手の社員が6割くらいを占める感覚です。もちろん課長クラスの方から問合せをいただくこともあり、一概には言えませんが。部署単位で認知が広がり、口コミで利用者が増えているようにも感じます。

稲野邊様:正直なところ、AIヘルプデスク以外のメールや電話での問合せ、特に役職者が私に直接連絡してくる件数は、まだまだ多いと感じています。メールを打つより電話の方が簡単ですからね。全部署・全社員から見れば、人事部には大小含めて1日に100件近い問合せが何らかの形で来ているのではないでしょうか。その中には「前にメールで連絡したはずなのに」「自分で調べれば分かるのに」という内容も相当数を占めています。「またこの質問か」と感じることは、今も少なくありません。

 

利用率向上のために、どのような取り組みをされていますか?kuroki

黒木様:まず、新入社員研修での周知を行っています。また、実務的な取り組みとして、昨年一度、各担当者の意見を取り入れながらFAQの内容を全面的に見直しました。ただ、データとして明確な成果がまだ見えていないため、引き続き改善の余地があると感じています。

課題は、社員への周知がまだ十分でないことと、社員側の質問の仕方にあります。「人事に聞く」という意識からか、AI相手に丁寧で長い文章で質問してしまい、うまくFAQに結びつかず有人対応になってしまうケースが少なくありません。質問の仕方のコツなども、今後レクチャーしていく必要があるかもしれないと考えています。

とはいえ、同期に話を聞くと、「“こんなこと聞いてもいいのかな”というような些細な質問をしやすいのは、すごく助かる」という声がありました。給与規程の場所など、調べれば分かるようなことを人に聞くのは少し気が引ける、という場面で心理的なハードルを下げてくれているようです。私たち自身、上司に時間を割いてもらう前に、まずAIに確認しようと思うことはありますね。

青山様:そうした手軽さが口コミで少しずつ広がっている感覚はあります。

 

AIヘルプデスク導入で、問合せ対応に変化はありましたか?

黒木様:以前は問合せフォームなど窓口が分散しており、誰に聞けばいいか分からないとか、知っている人事部員にとりあえず聞いてしまう、ということが頻発していたそうです。その結果、担当者でない社員が一次受けし、担当者に繋ぐという無駄なやり取りが発生していました。AIヘルプデスクに窓口を一本化したことで、私たちが一次窓口として担当者にスムーズに振り分けられるようになり、無駄な工程が無くなったのは大きな変化です。

正直社員からすると「人事」と一括りに見えて、その中の誰が何をやっているか、みたいなところが分からないと思うんです。だから知ってる人事部員に声をかけてしまう。そこを一旦この私たちのところに集めて、適所に展開していくという流れはすごく助かっていますね。

青山様:社員にとっても、問合せ窓口が分かりやすくなったのが良かった点だと思います。

 

現在のご利用状況について、具体的な数値を教えていただけますか。

青山様:AIヘルプデスクへの問合せは月に250~300件ほどです。そのうち、自動応答で解決せず、私たちに連携されてくる有人対応の件数は月40件~70件で推移しています。異動や昇格の多い年度切り替えの3月、4月がピークで70件近く、夏場は40件あたりに落ち着くイメージです。

黒木様:ただ、ここ3年ほど、問合せの総数や有人連携の数自体に大きな変化はありません。これは、研修制度の変更など、新しい問合せが増えているためだと考えています。

青山様:問合せ対応に割く時間は、時期によって大きく変動します。夏頃であれば業務全体の1割、多くても2割程度ですが、年度の切り替わりなど問合せが増える繁忙期には、多い時で業務の5割が問合せ対応だったこともありました。

黒木様:一方で、AIヘルプデスクの管理業務に多くの時間を割けているわけではありません。私は月に1回、FAQの内容が古くなっていないか、リンク切れがないかといった定期的なメンテナンスを行うようにしています。年に一度は全体を新しく見直そうと決めており、今年も実施する予定です。

 

AIヘルプデスク以外の問合せチャネルについては、どのようにお考えでしょうか。

稲野邊様:個人的には、電話やメールでの問合せは早くやめるべきだと思っています。「今後はAIヘルプデスクでしか受け付けません」と宣言すれば、最初は難しくても、徐々にみんな必ず使えるようになります。経費精算システムを刷新した時もそうでした。特に若い世代はチャットやアプリの利用に慣れているので、変化を受け入れやすいはずです。

将来的なチャネル統合を見据えるなら、今のうちからAIヘルプデスクを整備しておくことは、会社の未来のために必要なことだと考えています。

「聞いた方が早い」文化からの脱却と、担当者のモチベーション創出

今後の取り組みや、プロダクトへの期待についてお聞かせください。

 

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青山様:まず正直に申し上げると、我々がまだシステムを使いこなせていないのが現実的な課題です。現在の自己解決率は30~40%です。平均からすると低くないようですが、FAQの精度を上げるなどシステムを使いこなし、もっと高めていきたい。そうすれば、社員のストレスも、私たちの対応工数も削減できるはずです。

また、先ほどもお話ししましたが、社員に対して「こういうシステムがある」「こう質問すると良い」といった啓発活動が必要だと感じています。 将来的には、PKSHAのRAGのサービス(ドキュメントエージェント)にも大きな可能性を感じます。FAQで解決できなければ文書を元に生成AIが回答し、それでもダメなら有人へ、という流れができれば、自己完結率は飛躍的に向上し、社員と人事の双方にとって大きなメリットがあると思います。

黒木様:当社の「聞いた方が早い」という社風を変えていく必要も感じています。自分で調べるよりも、人に聞く方が早いという文化が、問合せが増える一因になっていると思います。AI ヘルプデスクがもっと手軽に使えるツールなのだということを、うまく普及させていきたいです。

そのためにも、質問の仕方やFAQの作り方などどこを改善していけばよいのか、FAQの作り方のコツがあるのかなど、専門的な知見から気軽に相談できると嬉しいです。

 

こうした取り組みを、担当者の評価に繋げていくことの重要性についてお考えとのことですが、詳しく聞かせていただけますか。

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稲野邊様:正直に言うと、この取り組みが社員のEX向上につながるか、成果が出て担当者の評価につながるのかが可視化できていないという課題もあります。

「誰かがやるべき仕事」だが、その重要性について社内でいまいちピンときていないメンバーも多い。このAIヘルプデスクの取り組みを成功させるだけでなく、運用担当者の黒木と青山の2人が「どれだけ頑張って、会社全体の業務をどれだけ効率化したか」が、もっと目に見え、評価される方法を築きたいと考えています。

 

成果の可視化が評価に繋がるよう、我々もファクトデータでご支援していきたいと思います。

稲野邊様:そうですね、具体的な数値目標を設定し、それをクリアしたら堂々と成果を主張できるようにしたいですね。そのための根拠となるデータが必要です。取り組んだ成果が数字で見えれば、本人たちのモチベーションも間違いなく上がります。

一方で数字だけでなく、「その仕事を自分もやりたい」と周りから思われるような仕組みを作ることも、本当の意味で業務改革を進める上で不可欠だと考えています。

貴重なお話をありがとうございました。

 

2025年9月4日時点の情報です。

社名 阪和興業株式会社
事業内容 商社(鉄鋼事業、プライマリーメタル事業、リサイクルメタル事業、食品事業、エネルギー・生活資材事業、住宅資材事業、機械事業ほか)
設立 1947年(昭和22年)4月1日
URL https://www.hanwa.co.jp