株式会社ドリコム

PKSHAとドリコムの
業務提携はなぜ実現したか
ゲーム開発者向けの
チャットボットの効果とは

導入サービス PKSHA Chatbot for Games
業種 エンターテインメント事業
活用対象 ゲーム開発者、一般ユーザー
導入目的 AI SaaSプラットフォーム「ai and(アイアンド)」のサービスの1つとして、ユーザーサポート用のチャットボット機能提供のための業務提携
1

株式会社ドリコム AI部 部長 國安 雄 様
株式会社PKSHA Communication Chatbot事業部 部長 中川 岳

モバイルゲームを中心に出版・映像などのエンターテインメント事業を総合的に手掛ける株式会社ドリコム。同社は2024年11月にゲーム開発者向けAI SaaSプラットフォーム「ai and(アイアンド)」をリリースしました。
ai andはサービスの1つとしてユーザーサポートのためのチャットボット機能を提供しており、今回同機能をPKSHA Communicationとの業務提携によって実現しました。

提携の背景や、両社が見据える今後の展開などについて、ドリコムの國安雄AI部部長と、PKSHA Communicationの中川岳Chatbot事業部部長が対談しました。

 

事業内容と現在担当する業務について

自己紹介をお願いします。

國安様:ドリコムでAI部の部長をしている國安です。これまで様々な企業で、エンジニアやコンサルの立場で、事業の推進や新規事業の立ち上げに関わってきました。
ドリコムには2023年に入社しました。2024年4月にAI部が新規に設立され、そのタイミングで事業責任者になりました。

AI部は、AIをゲームを中心としたエンターテインメントにどのように活用していくか、社内の業務効率化にどう使っていくかの両方を考え、実行する役割を担っています。AIを活用したプロダクトの導入だけでなく、AIを安心して使ってもらうための啓蒙活動なども我々の部署の仕事です。_72A7139

中川:PKSHA CommunicationでChatbot事業部の部長をしております中川です。
もともとコンピュータシステムの研究開発に従事していましたが、現場のリアルな課題に向き合い、より実践的な価値を提供したいと思い立ち、Webエンジニアとしてキャリアチェンジしました。その後、いくつかのSaaSプロジェクトに携わり、技術とビジネスの両面からソリューションを形にする経験を積んできました。

現在の役割は、Chatbot事業の運用責任者として、製品の企画立案から開発、提供までの全工程に責任を持ち、事業全体を統括しています。お客様のニーズを深く理解し、それをプロダクトに反映させることで、最適なソリューションを提供することに注力しています。

_72A7141

ドリコムの事業内容を教えてください。

國安様:当社は「with entertainment~人々の期待を超える~」というミッションを掲げており、エンターテインメントと一緒に進化し、新しいものづくりにチャレンジをし続けています。中期戦略として、IP×テクノロジーを軸にエンターテインメント・コンテンツをグローバルに提供する企業を目指しています。

IPの育て方にもいろいろな方向性があります。例えばIPをマルチメディアに展開することです。ドリコムは、2022年に出版・映像事業に参入し、同年にライトノベルレーベルを創刊、2023年にはコミックレーベルを創刊しています。また、グッズを展開するマーチャンダイジングについても力を入れています。

IPの多角的な展開の一例として、ウィザードリィ関連の取り組みがあります。ウィザードリィは1980年代にアメリカでリリースされて人気になり、その後シリーズ化されたタイトルです。当社は、2020年にウィザードリィの著作権の一部と国内外の商標権を取得し、自社IPとして育成を行っています。2024年10月に、スマートフォン向け3DダンジョンRPG『Wizardry Variants Daphne(ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ)』をリリースしました。同じく2024年10月に、ウィザードリィの世界観で繰り広げられるライトノベル『ブレイド&バスタード』のアニメ化も発表しました。これ以外にもウィザードリィに関する様々な展開をしています。

中期戦略では、「IP×テクノロジー」という言葉も掲げています。テクノロジーという土台があり、それがIPを支えるという考え方です。テクノロジーとしては、ドリコムが元々育てていたゲームのインフラや、最初期から関わっているWeb3関連のテクノロジー、位置情報ゲームに関するテクノロジーなどがあり、最近はここにAIが加わりました。

AIのプラットフォームを使ってIPを育てる取り組みとして、2024年11月にゲーム開発者向けAI SaaSプラットフォーム「ai and(アイアンド)」をリリースしました。ai andはAI活用の形として、人が中心となり、それをAIがサポートしていく世界を目指しています。

_72A7168


生成AIに関する6つのサービスを提供

改めてai andのサービスの概要を教えてください。

國安様:ai andは、ゲーム開発専用のプラットフォームで、生成AIを使ってゲーム開発における多様なワークシーンでの業務を支援します。元々当社がゲーム開発を効率化するために使っていたプラットフォームを、他社様にもご提供するために、ai andという形でリリースしました。

「生成AIは怖い」「どう使ったら良いか分からない」という、多くの方が抱えている課題を解消するため、すぐに使える6つのサービスをご用意しています。いずれも開発者の方がルーティンワークを効率化しつつ、よりクリエイティブな作業に集中できる環境を実現するためのものです。

それぞれのサービスは、当社が実装した部分と、パートナー様にご協力いただいて開発した部分があります。6つのメニューのうちの1つである「ai and チャット」は、PKSHA Chatbot for Gamesをベースに開発したサービスです。

ai andイメージ

「ai and(アイアンド)」https://www.aiand.drecom.co.jp/

ai and チャット以外にはどのようなサービスがあるのでしょうか。

國安様:「ai and シナリオ」や「ai and 翻訳」がサービス内容をご理解いただきやすいと思います。

ai and シナリオは既存のデータを参照し、繰り返し作成する簡単なシナリオや文章を自動生成するサービスです。ゲーム開発においては、ゲーム内で使用する膨大な文章を作成する必要があります。これを人が0から作ると大変な負荷がかかるので、8割までAIに作ってもらい、最後に人間が、ニュアンスを足してクオリティを高める、という形で使っていただくことを想定しています。

ai and 翻訳は、文章を正確に翻訳することに加え、例えば「日本語ではこのアイテムの名前は○○、英語では●●」という具合に、一般の翻訳とは異なる、そのゲーム会社特有の翻訳に対応しています。各ゲーム会社が日本語と英語、日本語と韓国語など、特有の翻訳についてのデータを持っています。そういったデータを学習すると共に、生成AIを使って各言語の単語の使い方を考慮した形で文書を生成し、利用者に提案します。

 

業務提携の背景とパートナーシップを選んだ理由

今回、ai andの技術基盤としてPKSHA Chatbot for Gamesを採用し、業務提携のパートナーとしてPKSHA Communicationを選んだ理由を改めて教えてください。

國安様:オンラインゲームにおけるカスタマーサポートで最も重要なことは、ユーザーの方が分からないことがあった場合に、すぐにそれに対応できる即時性だと考えています。そのため24時間365日、即時で対応が可能なPKSHA Chatbot for Gamesは最適だと考えました。

もう1つ、PKSHA Chatbot for Gamesに期待しているのが、お客様からのご要望の集約です。お客様からは、お困りごとだけでなくご要望をご連絡いただく機会が多くあります。そのご要望をPKSHA Chatbot for Gamesを使って集約し、当社が開発したユーザーインサイト分析のための「ai and インサイト」とも連携することで、改善のアクションにつなげていきます。

_72A7103

PKSHA Chatbot for Gamesはどのような特徴があるツールなのでしょうか。

中川:当社は以前から、PKSHA Chatbotを様々な規模・業種の企業様に提供しており、機能改善や性能改善を重ねてきました。そのため、ゲーム会社様で必要とされる、リリース直後やアップデート直後にアクセスが急増するという状況に対応できることや、先ほど國安様にご紹介いただいた24時間365日の即時対応などの性能・機能は、元々PKSHA Chatbotが備えていたものです。

しかしながら、今回導入に向けてドリコム様とお話をする中で、ゲーム会社様特有のニーズや利用傾向があることを知りました。例えば、ゲームの世界観を反映させたUIデザインへの要望が強いこと、ゲームタイトルによっては複数言語への対応が求められること、単純な質問だけでなく、ユーザーごとに固有のゲーム状態に関する問い合わせや、フィードバックも多く寄せられることなどです。

こういったゲーム会社様向けの利用シーンに特化した形で、PKSHA Chatbotのカスタマイズや必須オプションのパッケージ化を行い、新たに『PKSHA Chatbot for Games』を開発しました。導入支援においても、ゲーム業界特有の課題に対応するため、FAQ構成のテンプレート化やデザインのカスタマイズ支援といったオンボーディングプロセスを整備しています。単なるチャットボットではなく、トータルでCSの向上を支援するサービスとして進化を遂げています。

 

両社のビジョンが一致し、短期間で導入

PKSHA Chatbot for Gamesを導入するきっかけは何だったのでしょうか。

國安様:2023年7月に当社がAI×エンターテインメントをテーマにしたクローズドなイベントを開き、そこで元々知り合いだった2社の代表を通して両社が具体的に話したことがきっかけです。

中川:今お話をうかがっていても、人とAIのインタラクションでIPを育てる、といった世界観は当社とかなり近いと感じます。代表同士が意気投合したのも、そういった部分が強く関係しているのだと思います。トップ同士の繋がりで始まる取り組みは、現場から遠い分、上手くいかないこともあるかと思うのですが、今回は両社のビジョンが一致していることもあってか、非常にスムーズに進みました。


國安様:実際に導入に向けた動きを具体化したのは2023年12月で、そこからさらに詳細を詰め、実際に導入したのは2024年2月です。

現場で話し合いを重ねられる中で、ドリコムから見たPKSHAの印象はどうでしたか。

國安様:ゲーム業界は他の業界と異なり、非常にユニークなビジネスモデルを持っています。例えば、リリースしたゲームは大ヒットか、逆にあまり注目されないかといった極端な結果になりがちで、将来を予測するのが難しい側面があります。
また、これが業界のクリエイティビティを担っているのですが、業務やプロセスの中には言葉で説明しきれない部分も多く、それが業界ならではの複雑さを形作っています。

こうした中で、ゲーム開発会社としてはユーザーの方の満足度向上や、開発者の業務効率化を常に追求しています。
そのため、AI活用については期待と課題の両面を感じつつも、上手く活用することで新たな成果が生み出せるのではないか、という前向きな姿勢を持っています。

今回、私たちのそうした思いをPKSHAの方にしっかり汲み取って、理解いただけたことが、プロジェクトが上手く進んだ要因だと感じます。

中川:当社は、ツールやソリューションをご提供することだけでなく、まずはお客様の課題を深く理解することを重視しているので、そのようにご評価いただけてとても嬉しいです。今回は、現場での具体的な課題について丁寧にお話を伺いながら進められたことが、短期間での導入成功につながったと考えています。

_72A7114

 

即時対応によるユーザーの満足度向上に期待

PKSHA Chatbot for Gamesを2024年2月に導入した、ということは正式リリースより前の導入になります。これは先行導入という形なのでしょうか。

中川:先ほどお話しさせていただいた通り、当初からPKSHA Chatbot for Gamesという名前やソリューションがあった訳ではありません。我々はゲーム会社様にツールをご提供するのが初めてだったので、ドリコム様と議論を重ねるうちにいろいろな気づきがありました。

2024年2月の導入前までは、ご要望いただいたことに既存機能のカスタマイズでご対応したり、オプション機能を使うことで実現する、といったことを進めました。

導入後もドリコム様と継続的に意見交換を行い、特に多言語対応を含むゲーム業界特有の要件に合わせて、カスタマイズや新たなオプション機能を追加しました。これにより、ゲーム会社様のニーズに応じた柔軟な対応が可能な『PKSHA Chatbot for Games』として形を整えることができました。

 

PKSHA Chatbot for Gamesの導入以降はどのような成果が出ていますか。

國安様:目立った成果としては、チャットボットを使ってご質問やご相談をいただいたユーザー様の自己解決率が、50%を超えました。自己解決の仕組み自体が初めての導入でしたが、期待した成果が出せているのではないかと考えています。

中川:これは他の事例と比較してもかなり良い数字だと思います。

國安様:キャンペーンを展開する際などにはアクセスが急激に増え、それに伴いお問い合わせも増えるのですが、そういった際にも安定した運用と高い自己解決率を維持できています。

従来は、ユーザーの方からのお問い合わせはメールでいただいていました。そのメールに対して、オペレーターが24時間以内にご回答するという形で対応していました。PKSHA Chatbot for Gamesの導入後は、即時にご対応できるケースが増えていますので、そういった面でもユーザー様の満足度向上に繋がっているのではないかと考えています。

 

人間のクリエイティビティを支えるためにAIを使う

ユーザーサポートへのAI活用や両社の協業について、今後の展望を教えてください。

國安様:ゲーム業界は、日本を代表する成長産業のひとつであり、海外でさらに売り上げを伸ばせる可能性を秘めています。しかし他の業種と同様に、人材が不足しています。

十分な人材を確保できない中でもビジネスを拡大していくためには、クリエイティビティが求められないルーティンワークを可能な限りAIに任せ、人がどんどんクリエイティブなことに焦点を当てることが必要です。当社はai andを使って、そうしたことを実現していきたいと考えています。

よく、「AIが人間の仕事を奪うのではないか」と言われますが、実際にそんなことはないと思いますし、当社が目指している世界もそれとは異なります。AIに音楽や画像などを作らせようとは思っていません。そうでなく、クリエイターがクリエイティビティを発揮するための支援にAIを活用します。あくまで主役は人で、AIはサポートです。

_72A7144

中川:そういった視点は当社ととても通じるものがあります。我々はAIを「人とソフトウェアの共進化」というビジョンのもと、人間を支援し、その可能性を引き出すための手段として活用しようと考えています。AIは人間を征服したり対立したりするものではなく、共に成長するパートナーであるべきだと信じています。

先ほどお話した、PKSHA Chatbot for Gamesのヒアリング機能により、これまでどういった質問をいただいて、どのような回答をしたかを全てデータとして残しています。このデータからインサイトを得て、今後のサービス発展に繋げていくことを考えています。

例えば、特定のキャンペーンについての問い合わせが多かった場合に、チャットボットの回答のフローを変えて、「今こういう問題が起きています」と最初にお伝えすることで、問題をいちはやく解決できるケースがあると思います。将来的には、こうした動的なカスタマーサポートを展開しやすいツールに成長させていけたら、と考えています。

さらに先になると思いますが、ゲームのプレイ状況のデータも取り入れることで、PKSHA Chatbot for Gamesがお客様の質問内容をより正確に把握し、適切な対応を採れるようにできたらと展望しています。それが可能になれば、仮に質問をするのが苦手なユーザーの方からのお問い合わせであっても、ご満足いただけるご対応が可能になると思うのです。

國安様:今後もPKSHAの皆様にご協力いただき、ai andというプラットフォームを成長させていきたいと考えています。いろいろな展開を考えているので、是非ご期待ください。

_72A7135


貴重なお話、ありがとうございました!

 

 企業名  株式会社ドリコム
 業種 

ゲーム事業、出版・映像事業
物販・イベント事業
テクノロジーソリューション事業

 社員数  369名(※2024年3月31日現在)
 URL   https://drecom.co.jp/

この事例でご利用いただいている製品はこちら!