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コールセンターの問い合わせ対応を効率化するには?課題から成功事例まで解説- CXジャーナル

作成者: CXジャーナル編集部|Apr 28, 2023 6:26:00 AM

 問い合わせ対応の効率化は、単なるコスト削減ではなく、顧客満足度やロイヤリティを高め、競合との差別化につながる重要な取り組みです。しかし実際には「件数増加で対応が追いつかない」「ACWが長くオペレーターの負担が大きい」「対応品質にばらつきがある」といった課題を多くの企業が抱えています。
本記事では、問い合わせ対応を効率化するための基本施策から、効果的な選定基準、さらに実際に成果を上げた企業事例まで解説します。問い合わせ業務を改善したい担当者の方に、すぐに役立つ実践的な情報をお届けします 。

 なぜ問い合わせ対応を効率化する必要があるのか 

 問い合わせ対応の効率化は、単なるコスト削減ではありません。現状の課題を解決しつつ、顧客満足度の向上と企業競争力の強化を同時に目指す重要な取り組みです 。

 問い合わせ対応における主な課題 

 まず、多くの企業が直面している問い合わせ対応の具体的な課題を見ていきましょう 。

問い合わせ件数の増加による対応限界

問い合わせ件数が増えると、既存のリソースでは対応が追いつかなくなり、業務が逼迫します。その結果、電話がつながりにくくなったり、メール返信が遅延したりと、顧客満足度の低下につながります。

実際に、PKSHA TechnologyMMD研究所の「ユーザーが語る、カスタマーサポートの不満と解決策(2025年)」では、問い合わせ時の不満内容として「電話・チャットの待ち時間が長い・つながらない」が59.4%と最も多く、問い合わせ増加に既存リソースが対応しきれていない状況が顧客の不満に直結していることが分かります。

対応時間の長時間化と生産性低下

商品・サービスの複雑化に伴い、1件あたりの対応時間(ACW:平均後処理時間を含む)は長くなる傾向にあります。複数の部署への確認が必要なケースも増え、顧客を待たせる時間が伸びてしまいます。
同調査では、問い合わせにおいて「対応の早さ」を重視する人が46.1%、「解決までの早さ」を重視する人が44.7%にのぼりました。さらに、最も重視する点として「解決までの早さ」が28.3%でトップとなっており、顧客がスピーディな対応を求めていることが明らかとなっています。

オペレータースキルのばらつき

オペレーターのスキルや経験の差により、同じ問い合わせでも対応内容や所要時間にばらつきが生じます。新人オペレーターは商品知識が不足しているため確認に時間を要し、ベテランであっても専門外の分野では適切な回答ができないケースがあります。
その結果、顧客は「前回と違う回答をされた」「同じ説明を何度も繰り返させられた」といった一貫性のない対応を受け、企業への信頼を損なう要因となります。さらに、対応に時間がかかるオペレーターがいることで全体の応対効率が低下し、他の顧客の待ち時間増加にもつながります。

問い合わせ対応の効率化によるメリット

 問い合わせに関する課題を解決し、効率化することで得られるメリットを解説します 。

顧客満足度向上とロイヤリティ強化

迅速で的確な回答により、顧客は安心感を得られ、継続利用や再購入の意欲が高まります。とくにサブスクリプション型ビジネスでは、優れたカスタマーサポートが解約率の低下に直結するため、長期的な収益向上に貢献します。
問い合わせ対応は、顧客が商品・サービスを知り、購入し、利用継続するまでの一連の体験(カスタマージャーニー)において重要な接点です。購入後のサポート品質が顧客満足度を左右し、ブランドへの愛着心(ロイヤリティ)形成に大きく影響します。

逆に、PKSHA Technology・MMD研究所の調査では、問い合わせ対応への不満から実際にサービスを離脱した経験がある人は、対人対応が原因の場合は34.2%、非対人対応が原因の場合は50.8%に上っており、問い合わせ対応を効率化し顧客満足度を向上させることで、離脱を防ぎ、ロイヤリティ強化につながることを示しています。

競合他社との差別化を実現

商品やサービスの機能だけでの差別化が難しくなる中、顧客が企業を選ぶ決め手は「問い合わせ対応を含むカスタマーエクスペリエンスの質」に移りつつあります。
たとえば、同じ料金・同じサービス内容であれば、顧客は迅速かつ親身な対応が受けられる企業を選びます。逆に、応答が遅く不親切な対応が続けば、他社に切り替えられてしまいます。
問い合わせ対応の効率化は、単なる業務改善にとどまらず、顧客に選ばれる理由をつくる競争優位性の確立につながるといえるでしょう。

 Tayoriが行ったカスタマーサポート調査2025では、「問い合わせを検討したが、実際には問い合わせなかった」という経験を持つ人が43.7%にのぼっており、「返信や待ち時間が長すぎると判断して諦めた」「必要な情報を探すのが手間だった」といった理由が挙げられています。つまり、優れたサポート体制を整えることで、他社が取りこぼした顧客を獲得できる可能性もあります。 

商品・サービス改善のデータ活用

問い合わせ対応を効率化することで、商品・サービス改善に役立つ"使えるデータ"が蓄積されます。
従来の対応では、履歴が属人的・断片的に管理されていたため、課題の傾向把握に多大な工数が必要でした。しかし、効率化施策により、FAQやチャットボットのログ、音声認識データなどが構造化され、問い合わせの傾向や改善ポイントを迅速に把握できるようになります。これは単なる業務効率化にとどまらず、継続的な改善サイクルの構築にもつながる基盤です。

問い合わせ対応を効率化する方法

自社の課題や予算に応じて、最適な組み合わせを選択することが重要です。

ナレッジ整備とマニュアルの運用

問い合わせ対応の効率化においてもっとも基本的かつ効果的な方法が、ナレッジ(FAQ)や社内マニュアルの整備・運用です。よくある質問をFAQ化し、オペレーターや顧客が迅速に正確な情報へアクセスできる環境を整えることで、対応件数の削減と対応品質の均一化が可能になります。

 FAQ作成の具体的な手順や作成時のポイントについては、以下の記事をご参考ください 。

FAQとは?Q&Aとの違いや導入効果、作り方の手順とポイント

自動応答ツール(チャットボット/ボイスボット)の活用

FAQでカバーしきれない定型的な問い合わせや、オペレーターの負担が大きい業務には、自動応答ツールの活用が有効です。チャットボットはWebサイトやLINEなどでユーザーと対話しながら解決へ導く施策であり、シナリオ設計やFAQとの連携によって対応範囲を広げられます。
また、電話対応にはボイスボットが有効で、夜間や繁忙期のあふれ呼対策にも活躍します。これらのツールは24時間対応が可能で、営業時間外の問い合わせにも対応できます。

チャットボットとFAQシステムの使い分けや連携については、以下の記事で詳細を解説しています。

チャットボットとFAQシステムの違いは?特徴を考慮して導入の選択を

問い合わせ管理システム(CRM)の導入

対応品質の属人化や情報共有の手間を解消するには、問い合わせ管理システム(CRM)の導入が有効です。顧客情報や対応履歴を一元管理できるため、どの担当者が対応してもスムーズな引き継ぎが可能になります。
また、電話・メール・チャットなどのマルチチャネル対応が求められる現在では、CRMを活用してすべての対応履歴を一元化し、業務効率を高める運用が主流です。顧客情報の事前把握により、よりパーソナライズされた対応も可能になります。

音声認識・文字起こしによるACW削減

ACW(平均後処理時間)の短縮は生産性向上の重要なポイントです。AI音声認識技術を活用し、通話内容の文字起こしや要約を自動化することで、オペレーターの後処理工数を大幅に削減できます。
リアルタイムでの自動文字起こしや要約により、メモ作成の手間が省け、対応件数の増加と品質の維持が同時に可能になります。

ACWについては以下の記事で詳しく解説しています。

平均後処理時間(ACW)とは?長くなる原因と短縮するための改善方法 

最適な効率化対策の選び方

自社にとって最適な施策を選定するには、現状分析と課題の優先順位づけが不可欠です。

問い合わせの種類・内容による選択

定型的な質問が多い場合

ナレッジ整備、FAQシステム、AIチャットボットの導入が効果的です。料金や手続き方法など、定型的な内容は自動化による効率化が見込め、顧客も24時間いつでも回答を得られるため、満足度向上につながります。
さらに、生成AIによるQA自動生成を活用すれば、製品マニュアルや通話ログから効率的にFAQコンテンツを作成できます。従来は人手で行っていた問い合わせ分析やQ&A作成作業を大幅に省力化でき、新製品情報や法改正にも素早く対応することが可能になります。

複雑なやり取りが必要な場合

AIチャットボットや熟練オペレーターによる対応が適しています。技術的なトラブルシューティングや個別状況に応じた提案が必要な場合は柔軟な対話能力が求められますが、AIチャットボットであれば段階的な質問による絞り込みで適切な解決策を提示できます。

クレーム・重要顧客対応が多い場合

CRMシステムによる情報管理の強化が効果的です。過去の対応履歴や顧客情報を即座に確認できることで、スムーズで的確な対応が可能となり、信頼関係の維持にも貢献します。

問い合わせ件数・チャネルによる選択

電話対応の比率が高い場合

ボイスボットやACW削減ツールの導入が有効です。ボイスボットは受付や予約など定型的な問い合わせを自動化し、ユーザーがすぐに自己解決できる環境を整えることで、コールセンターの余力を生み出し、待ち呼の削減につながります。さらに、ACW削減ツールを活用することで、通話中のナレッジ検索や通話結果の入力を効率化し、オペレーターの負担を軽減するとともに顧客の待ち時間を短縮できます。
これらを組み合わせることで、電話対応全体の効率化と顧客満足度の向上を同時に実現できます。

複数チャネルで対応している場合

チャットボットとCRMの連携によって、顧客情報を一元的に管理し、すべてのチャネルで一貫した対応を提供できます。電話、メール、チャット、SNSなど複数の窓口がある場合でも、チャネルをまたいだスムーズな対応が可能になります。

導入コストや体制に応じた選択

低コスト・短期間で始めたい場合

ナレッジ整備、ACW削減ツールから着手するのがおすすめです。既存の問い合わせデータを活用したFAQ作成や、音声認識ツールの導入であれば、比較的短期間かつ少ないコストで効果を実感できます。
また、生成AIによるQA自動生成もおすすめです。既存の製品マニュアルや通話ログをもとにFAQを自動作成できるため、新たな人員配置や大規模なシステム投資を行わずにナレッジ整備を効率化できます。従来は数週間かかっていたFAQ作成作業を数日程度に短縮できるため、導入直後から効果を実感しやすい点も大きな魅力です。

継続的な運用・改善体制がある場合

チャットボットやボイスボットなど、高度な施策への挑戦が可能です。これらのツールは導入後のチューニングが効果を左右するため、専任の担当者の配置が可能で、改善サイクルを回す体制がある企業に向いています。適切に運用すれば、長期的な投資対効果が期待できます。

 効率化に成功した企業事例3 

実際にPKSHAが支援した企業の成功事例を通じて、具体的な改善効果と導入のポイントを確認しましょう。

NTTドコモ様|ボイスボットで自己解決率83%、運用工数92%削減

ボイスボットを活用し、入電の約20%を自動応答で完結させています。7080%の用件を自動振り分けすることで、対応精度を維持しながらオペレーターの負荷を軽減し、さらなる自動化拡大を目指しています。

詳細はこちら 

 マネーフォワードケッサイ様|音声認識によりACW50%削減 

通話録音の自動文字起こしと生成要約を導入し、オペレーターによるメモ作成などの後処理工数を大幅に省力化しました。その結果、ACWを約50%削減し、対応品質向上にも寄与しています。

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アート引越センター様|ボイスボットで問い合わせの30%を自動応答

10日間の試験導入で、問い合わせの約30%をAIボイスボットで自動対応しました。その結果、あふれ呼を約30%削減する成果を上げたことで全国拠点への本格導入が決定し、応対品質と効率性の両立を図っています。

詳細はこちら

まとめ

問い合わせ対応の効率化は、コスト削減だけでなく、顧客満足度向上や企業競争力強化にも直結する施策です。

効率化には、FAQ整備からAI技術を活用したチャットボットやボイスボットまで、多様な手法が存在します。自社の課題と状況に応じた適切な施策を選び、段階的に導入・改善を進めることで、小さな成功を積み重ねながら継続的な改善サイクルを築いていくことが重要です。

PKSHAでは、FAQチャットボットボイスボットAI音声認識など、問い合わせ対応効率化に必要な機能を統合的に提供しています。現状分析から最適施策の選定、導入後の運用改善まで、専門チームが伴走支援いたします。まずはお気軽にご相談ください。デモのご依頼もお待ちしております。