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コールセンター自動化に失敗しない実践ガイド。5つの手法と導入のポイント - CXジャーナル

作成者: CXジャーナル編集部|Jul 17, 2025 8:13:10 AM

「オペレーターの負荷が増え続け、離職率の高さに悩んでいる」「慢性的な人手不足により、応答率や顧客満足度がなかなか改善しない」、こうした課題を抱えるコールセンターは多いのではないでしょうか。
コールセンター自動化は、これらの課題解決に有効な手段として注目を集めています。
ただし、適切な手法選択と計画的な導入が成功の前提となり、やみくもに進めても期待した効果は得られません。本記事では、コールセンター自動化で使われる5つの手法から、導入を成功させるためのポイントまで詳しく解説していきます。

コールセンター自動化の5つの手法

コールセンターの自動化技術は急速に進歩しており、それぞれ異なる強みを持つ手法が確立されています。現在主流となっているのは、IVR(自動音声応答システム)、AI音声認識・音声解析、チャットボット、ボイスボット、FAQシステムの5つです。

 IVR(自動音声応答システム)

IVRは「Interactive Voice Response」の略で、顧客が電話をかけた際に自動音声で案内し、適切な部署や情報に振り分けるシステムです。

IVRが適用できる業務には、営業時間や店舗情報の案内、サービス受付の振り分け、簡単な手続きの受付などがあります。とくに、問い合わせ内容が明確に分類できる業務において高い効果を発揮します。

導入によって、オペレーターが対応する前の段階で顧客の要望を整理できるため、通話時間の短縮と対応品質の向上が実現できます。また、営業時間外でも基本的な情報提供が可能になり、顧客の利便性向上にもつながります。多くの企業では、このシステムにより初期対応の効率化を図っています。

AI音声認識・音声解析

AI音声認識技術は、オペレーターと顧客の会話をリアルタイムでテキスト化し、通話内容を自動で記録・分析するシステムです。従来、オペレーターが手作業で行っていた通話メモの作成を大幅に効率化できます。

この技術により、通話内容の自動書き起こし、重要キーワードの抽出、感情分析などが可能になります。さらに、過去の通話データを蓄積・分析することで、よくある質問の傾向把握や応対品質の改善にも活用可能です。

平均後処理時間(ACW)の削減効果はとくに顕著で、当社製品の導入事例では50%の短縮を実現したケースもあります。

チャットボット

チャットボットは、Webサイトやアプリケーションのチャット機能を通じて、顧客からの問い合わせに自動で回答するシステムです。テキストベースでの対話により、電話以外のサポートチャネルを提供できます。

チャットボットを導入することで、よくある質問への即座の回答、商品情報の提供、簡単な手続きのガイドなどが24時間365日対応可能になります。また、これらの定型的な問い合わせを自動処理することで、オペレーターはより複雑で専門性の高い案件に専念できる点もメリットです。

当社のお客様では、定型的な問い合わせへの対応において受電数50%減を実現した企業もあります。

 

ボイスボット(AI音声対話)

ボイスボットは電話での音声対話を自動化するシステムで、従来のIVRよりも自然な会話形式で顧客と対話できる点が特徴です。音声認識と音声合成技術を組み合わせることで、AIとの音声対話で用件を済ませることができます。

これにより、予約受付、配送状況確認、簡単な問い合わせ対応などを完全に自動化することが可能です。顧客は番号入力ではなく、自然な話し言葉で要件を伝えることができるため、利便性が大幅に向上します。

また、定型的な問い合わせに対しては高い対話完結率を実現でき、オペレーターの対応件数削減に大きく貢献します。

当社の実際の導入事例では、問い合わせの約80%を自動応答で対応し、完結率85%を達成したケースもあります。とくに、営業時間の確認や配送状況の問い合わせなど、パターンが決まった案件では効果的な自動化が期待できます。

 

FAQシステム

FAQシステムは、よくある質問とその回答を体系的に管理し、顧客の自己解決を促進するシステムです。問い合わせ削減(自己解決)と顧客満足度の向上を同時に実現できます。

FAQページをWebサイトやアプリに設置することで、顧客は電話やメールで問い合わせをする前に、自分で情報を検索し問題を解決することができます。顧客にとっても即座に解決策を得られるメリットがあり、企業側も問い合わせ対応の負荷軽減につながります。
当社のお客様では、実際に問い合わせ数50%減を実現した企業もあります。

さらに、FAQシステムは顧客の検索キーワードや閲覧パターンを分析することで、新たなFAQコンテンツの必要性を把握でき、継続的な改善が可能です。蓄積されたナレッジベースは、新人オペレーターの教育資料としても活用できるため、組織全体の対応品質向上にもつながります。

 

コールセンター自動化のメリット

自動化投資を検討するうえで、期待できる効果を正確に把握することは重要です。単純なコスト削減だけでなく、組織全体にもたらされる変化を広く理解しておきましょう。

 生産性の向上

定型的な問い合わせを自動化することで、必要なオペレーター数を削減でき、人件費の大幅な圧縮が可能になります。とくに大量の問い合わせを処理するコールセンターでは、その効果は顕著に現れます。

さらに、24時間対応コストの削減も重要な要素といえるでしょう。従来、夜間や休日の対応には割増賃金が必要でしたが、自動化システムであれば追加コストなしで24時間365日の対応が実現できます。緊急性の低い問い合わせは自動化で対応し、重要案件のみを有人対応にエスカレーションする体制にすることで、効率的な運営が可能になります。

 

 顧客満足度の向上

自動化により定型的な問い合わせが即座に処理されるため、電話がつながらない状況や長時間の待ち時間が大幅に減少します。これは顧客にとって最も実感しやすいメリットの一つです。

また、24時間対応の実現により、顧客の都合の良い時間帯でのサポート利用が可能になります。平日の営業時間内に電話をかけられない顧客にとって、いつでもサポートを受けられる環境は大きな価値となります。

さらに、オペレーターのスキルや経験にばらつきがあっても、自動化システムであれば常に同じ品質で対応できます。定型的な問い合わせに対して一貫した回答を提供することで、応対品質のムラを解消することが可能です。

 

 オペレーター業務の質の向上

音声認識システムが自動で通話内容を記録・要約することで、オペレーターは通話後の手作業でのメモや報告書作成の負担が軽減され、事務作業時間を大幅に短縮できます。

さらに、定型的な問い合わせは自動化システムが処理することで、オペレーターはクレーム対応や技術的な相談など、人の判断や専門知識が必要な案件により多くの時間を割けるようになります。
こうしてオペレーターが付加価値の高い業務に専念できるようになることで、組織全体の対応品質向上も期待できるでしょう。

 

コールセンターの自動化で失敗しないための注意点

自動化プロジェクトを成功に導くためには、事前の計画と適切な進め方が重要です。効果を最大化するために押さえるべきポイントを紹介します。

コールリーズン分析と自動化範囲の設定

自動化を成功させるためには、まず現在の問い合わせ内容を正確に把握することが不可欠です。多くのコールセンターでは、問い合わせ内容の詳細な分析ができていないため、どの業務を自動化すべきかが明確になっていません。
コールリーズン(問い合わせ理由)分析では、過去の通話データを詳細に分析し、問い合わせの種類、頻度、解決にかかる時間などを数値化します。AIを活用することで、大量の音声データから自動的にパターンを抽出し、人手では見つけにくい傾向や課題も発見できます。
営業時間の案内、配送状況確認、パスワードリセット手順などの定型業務は自動化に適していますが、クレーム対応や個別事情を考慮した相談は人的対応が必要です。一般的に、数分で解決でき、回答パターンが決まっている問い合わせは自動化対象の候補として適しています。

人とAIの最適な役割分担を設計するには、段階的なエスカレーション体制構築が欠かせません。まず自動化システムが対応し、解決できない場合は人が引き継ぐ流れを作ることで、効率性と品質を両立できます。

段階的な導入計画

全体の10~20%程度の問い合わせから自動化を始め、システムの精度や顧客の反応を確認してから段階的に拡大することで、リスクを最小化しながら効果を確認できます。

週次・月次で対応品質、完結率、顧客満足度を測定し、問題があれば迅速に調整する体制を整えることが重要です。導入前には十分な説明と研修を実施し、スタッフの不安を解消することも忘れてはいけません。

効果測定とROI管理

現在の対応件数、処理時間、コストを正確に把握し、これらの数値を基準として自動化後の改善効果を定量的に測定できる体制を整えます。データに基づいた判断ができる環境を作ることが成功の鍵となります。

適切なKPI設定と測定方法として、自動化率、完結率、顧客満足度、コスト削減額などの指標を設定しましょう。これらの数値を定期的に監視し、目標達成度を評価することで、改善点を明確にできます。

また、導入コストと運営コスト削減効果を比較したROI(投資収益率)を継続的に測定し、長期的な視点で投資効果を判断することが重要です。短期的な費用増加に惑わされず、継続的な効果測定を行いましょう。

まとめ

コールセンターの自動化は、IVRAI音声認識、チャットボット、ボイスボット、FAQシステムの5つの手法を適切に組み合わせることで、運営効率と対応品質の両立を実現できます。重要なのは、コールリーズン分析によって自動化範囲を適切に設定し、段階的に導入を進めることです。

定型業務は自動化で効率化し、複雑な案件は人が対応するという役割分担により、コスト削減と顧客満足度向上を同時に達成できます。まずは現状の問い合わせ内容を分析し、自動化に適した業務から着手することをおすすめします。

PKSHAでは、音声認識・解析(PKSHA Speech Insight)、電話自動応答(PKSHA Voicebot)、チャット自動応答(PKSHA Chatbot)、FAQ(PKSHA FAQにより、コールセンター自動化を包括的に支援しています。各ツールの連携により、音声・電話・チャットの全チャネルで一貫した自動化を実現し、業務変革をサポートします。
コールセンターの自動化をご検討の際は、ぜひご相談ください。