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FAQシステムの選び方 失敗しない4つのポイントと比較基準 - CXジャーナル

作成者: CXジャーナル編集部|Jul 17, 2025 7:37:31 AM

FAQシステムは、顧客の問い合わせ削減と自己解決率向上を実現し、カスタマーサポートの効率化と顧客満足度向上を同時に叶えるシステムです。しかし、FAQシステムの選び方を間違えると、導入後に「FAQを導入したのに問い合わせが減らない」といった課題を抱えることになりかねません。システムの機能や価格だけを重視して選定しても、FAQの効果を十分に得ることは困難です。
本記事では、FAQシステム選定で失敗しないための4つの重要ポイントと、導入の準備と進め方を解説します。

FAQシステム選定でよくある失敗パターンと成功の分かれ道

FAQシステムの選定で失敗する企業には共通する傾向がある一方で、成功する企業もまた明確な特徴を持っています。ここでは失敗パターンと成功のポイントを解説します。

よくある3つの失敗パターン

機能の豊富さだけで選んでしまう

多機能なシステムに魅力を感じて選定したものの、実際に使うのは基本機能のみで、高額な費用に見合わない結果となるケースです。
運用体制が追いつかないと、宝の持ち腐れになってしまいます。

導入目的が曖昧なまま進める

「競合他社も導入しているから」「問い合わせを減らしたいから」といった漠然とした目的で選定を開始し、具体的な成果指標や運用方針が定まらないまま導入してしまうパターンです。
その結果、適切な効果測定ができず、改善の方向性も見えないため、FAQが形骸化してしまいます。

運用体制を考慮せずに決定する

システムの機能や価格は検討するものの、誰がどのようにFAQを作成・更新・管理するのかという運用体制を十分に検討せずに決定してしまうケースです。
その結果、導入後にFAQの更新が滞り、古い情報が残ったまま放置されてしまいます。

成功する企業の共通点

課題の明確化から始める

成功する企業は、現在の問い合わせ状況を詳細に分析し、「どのような問い合わせが多いのか」「どの時間帯に集中するのか」「解決に時間がかかる問い合わせは何か」を具体的に把握しています。
この分析結果をもとに、FAQシステムで解決すべき課題を明確に定義します。

段階的な導入計画を立てる

いきなり全機能を使いこなそうとするのではなく、まずは基本的なFAQ機能から運用を開始し、徐々に高度な機能を活用していく計画を立てています。
段階的なアプローチにより、運用チームのスキル向上と組織への浸透を両立させ、導入リスクを最小化しながら確実な効果を積み上げることができます。

長期的な投資対効果を重視する

初期費用の安さだけでなく、運用コストや拡張性も含めた総所有コスト(TCO)で評価しています。また、問い合わせ削減による人件費削減効果や、顧客満足度向上による収益改善効果も定量的に試算し、投資判断の材料としています。

なお、FAQシステム選定の前に、FAQの基本概念を確認しておきたい方は、以下の記事をご参照ください。
FAQとは?Q&Aとの違いや導入効果、作り方の手順とポイント

 

FAQシステム選定における4つの重要ポイント

自社の課題と目的が明確になったら、次は具体的なシステム評価に移ります。
ここでは、FAQシステム選定でとくに重要な4つのポイントを、評価基準とともに解説します。

① 発見性の支援機能

FAQシステムの成否を決める最も重要な要素の一つは、顧客が求める情報を「見つけられる」環境です。カテゴライズ、検索機能、SEO対応など、情報の「発見」を支援する機能の充実度が重要です。

検索機能

検索機能は発見を支援する重要な要素です。部分一致検索や同義語検索機能の有無を確認しましょう。近年では、AI技術を活用した自然言語処理により、「壊れた」「動かない」「故障」といった類似表現を同じ意味として認識し、関連性の高い情報を提示できるシステムが増えています。

情報設計とカテゴリ化

顧客の立場に立った論理的なカテゴリ構成が、FAQの発見性を大きく左右します。商品別、機能別、トラブル別など、顧客の思考プロセスに沿った分類ができているかを確認しましょう。

SEO対応機能

検索エンジン最適化(SEO)対応機能があれば、GoogleYahoo!からのFAQ流入も期待できます。顧客が外部検索エンジンから直接FAQ情報にアクセスできる環境を整備することで、発見性が大幅に向上します。

② 閲覧性の支援機能

情報を見つけた後に「理解しやすく、使いやすい」環境を提供する機能群です。デザイン性やモバイル対応など、顧客の閲覧体験を向上させる要素を評価しましょう。

視覚的なわかりやすさ

アイコンやビジュアル要素を効果的に活用し、直感的に内容を理解できるデザインになっているかが重要です。文字だけでなく、色分けやアイコンで情報を整理することで、顧客は目的の情報により早くアクセスできます。

よくある質問の戦略的配置

トップページに配置する「よくある質問」は、問い合わせ削減の即効性が高い重要な要素です。実際の問い合わせデータに基づいて、最も頻度の高い質問を厳選して配置することで、多くの顧客の自己解決を促進できます。

モバイル対応

スマートフォンからのFAQ利用が増加している現在、モバイル端末での表示・操作性は必須項目です。レスポンシブデザインとタッチ操作に最適化されたUIにより、外出先でも顧客が快適にFAQを利用でき、問い合わせのタイミングを逃さずに自己解決を促進できます。

顧客の自己解決率を高める方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
自己解決を促す方法とは?FAQでよくある課題とその対策を解説
自己解決に繋がるFAQコンテンツの作り方は?ライティングやレイアウトのポイントを解説

③ 運用・管理機能

FAQシステムを継続的に活用するためには、日常的な運用業務を効率化する管理機能が不可欠です。運用負荷が高いと担当者の負担増大や運用コストの増加を招きかねません。

基本的な管理機能

FAQ作成時のテンプレート機能、画像や動画の挿入機能、プレビュー機能は基本要件です。カテゴリやタグの管理機能、関連FAQ同士のリンク機能も重要です。動画コンテンツを簡単に挿入できる機能があれば、より理解しやすいFAQの作成が可能になります。

承認ワークフロー機能

複数の担当者でFAQを管理する場合、作成者、確認者、承認者の役割分担と承認フローの設定が必要です。承認待ち、差し戻し、公開済みなどのステータス管理機能があると、現在の作業状況を把握しやすくなります。

更新作業の効率化機能

既存の問い合わせ内容からFAQを簡単に作成できる機能があると非常に便利です。AI技術を活用してFAQ作成を支援する機能を搭載しているシステムも登場しており、運用負荷の大幅な軽減が期待できます。

アクセスコントロール機能

部門別のアクセス権限設定、編集権限の細分化などが整備されているかを確認しましょう。とくに大規模組織では、詳細な権限管理機能が運用の成否を左右します。社内のみに公開するイントラネット連携や、外部公開範囲の制御も含めた包括的なアクセス管理が重要です。

④ 分析・改善機能

FAQシステムの効果を継続的に向上させるためには、利用状況を分析し、改善点を発見する機能が重要です。データに基づいた客観的な改善ができないと、FAQの価値は時間とともに低下し、投資効果を最大化できません。

利用状況の可視化機能

検索失敗キーワードの分析機能により、顧客が求めているのに存在しないFAQを発見できます。検索ヒット率やカテゴリ別の解決状況を視覚的に把握し、優先的に改善すべきFAQを特定できる機能があるかを確認しましょう。FAQ別の閲覧数や検索ログを分析できる機能も、運用改善に役立ちます。

改善提案機能

システムが自動的に改善の優先順位を提示してくれる機能があれば、運用担当者の負担を大幅に軽減できます。どのFAQの内容を見直すべきか、どのカテゴリに新しいFAQを追加すべきかといった具体的な提案機能の有無を確認しましょう。

外部システム連携機能

チャットボットや問い合わせ管理システムとの連携により、FAQ活用の幅を広げることができます。簡単な質問にはボットが自動回答し、複雑な内容は適切なFAQページに誘導する仕組みや、FAQ作成・評価・管理と問い合わせ対応をワンストップで実現する連携機能も、分析・改善サイクルの効率化に貢献します。

 

FAQシステムの評価・導入の進め方


選定ポイントを理解したら、次は実際の評価・導入プロセスに移ります。
FAQシステムの選定から導入までを成功させるための具体的な手順と、各段階でのポイントを解説します。

FAQシステム導入前の準備

自社の要望整理

現在の問い合わせ状況を分析し、必須機能と希望機能を分類して、優先順位を付けた要望をまとめた資料を作成します。予算と期間の制約も併せて整理し、現実的な要望に調整することが重要です。

ベンダー候補の絞り込み

Webサイトでの情報収集、業界レポートの参照、同業他社の導入事例調査などにより、候補を56社程度に絞り込みます。初期段階では幅広く情報収集し、自社の要望に合うかどうか、実績、サポート体制の観点から段階的に絞り込んでいきます。

評価期間の設定

各ベンダーに対して12週間程度の評価期間を設け、実際の運用を想定したテストを実施します。同じ条件でのテストを全ベンダーで実施することで、客観的な比較が可能になります。

FAQシステムの試用期間での確認ポイント

機能面

発見性・閲覧性については、実際の問い合わせ内容を使って情報へのアクセス性をテストし、直感的に目的の情報にたどり着けるかを確認します。
また、管理機能では、FAQ作成から公開までの一連の作業を実際に行い、操作の複雑さや所要時間を測定しましょう。

運用面

複数の担当者で同時にシステムを利用し、権限管理や承認フローが適切に機能するかを確認します。
想定される運用業務を実際に行い、現実的な運用が可能かを検証しましょう。

サポート体制

試用期間中に質問や問題を投げかけ、サポート対応の迅速性と専門性を評価します。
AI技術の先進性、豊富な導入実績、継続的な機能改善への取り組み姿勢なども重要な評価ポイントです。

評価結果のまとめ方

各評価項目に重み付けを行い、定量的な評価が可能な採点シートを作成します。機能要件適合度、操作性、性能、サポート品質、コストパフォーマンスなどの観点から総合的に評価し、客観的な判断材料とします。

FAQシステム導入決定後の準備と運用開始

導入決定と社内承認

経営陣への説明では、機能説明よりも投資効果とリスクを重視した資料を準備します。導入効果の定量的な予測、競合比較結果、導入スケジュールを明確に示します。

導入に向けた組織準備

FAQシステムの運用体制を正式に決定し、担当者の役割分担を明確にします。
運用ルールの策定、マニュアルの準備、関係部門への周知なども事前に完了させておきます。

データ移行とシステム設定

既存のFAQデータがある場合は、移行方法と品質チェック手順を詳細に計画します。
データクレンジング、カテゴリ再分類、重複除去などの作業も含めて、移行スケジュールを作成しましょう。

運用開始に向けたルール策定

FAQ作成のガイドライン、更新頻度、品質基準、承認基準などを明文化し、運用の属人化を防ぎます。
定期的な運用見直しのサイクルも事前に設定しておくことで、継続的な改善が可能になります。

導入後の継続的な改善については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
FAQサイトの改善方法|確認すべきポイントや取り組みの流れ

まとめ

FAQシステムの選定成功は、機能や価格だけでなく、自社の課題・目的の明確化から始まります。本記事で紹介した4つのポイント「発見性の支援機能」「閲覧性の支援機能」「運用・管理機能」「分析・改善機能」を軸に、予算や規模に応じた現実的な評価を行うことが重要です。

とくに、顧客目線での情報アクセス性とAI技術を活用した継続的な改善機能は、長期的な成功に直結します。選定プロセスでは試用期間を有効活用し、実際の運用を想定した検証を行いましょう。

適切なFAQシステムの導入は、問い合わせ削減と顧客満足度向上を同時に実現できます。PKSHA Communicationでは、AI技術を活用したFAQシステム「PKSHA FAQ」で、多くの企業様の課題解決を支援しています。本記事の選定基準を参考に、自社に最適なソリューションをぜひご検討ください。