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コールセンターを運営するうえで、人材の採用と教育、そして離職は付きものです。しかし離職は、特定の水準以上で恒常化すると、人材育成が追い付かず、センター全体の対応力低下や企業のサービス品質低下にも繋がりかねません。
本記事では、コールセンターで離職が続くことによってもたらされる影響と対応方法についてご紹介いたします。
一般的なコールセンターの離職率は、どのくらいの水準なのでしょうか。
「コールセンター白書2024」(株式会社リックテレコム 刊行)の統計によりますと、採用したスタッフの約3割が1年以内に離職しているという調査結果が報告されています。
特に、入社初期の新人オペレーターの離職が起きやすく、採用してもなかなか戦力として定着しないことが、多くのセンターに共通する課題となっています。
離職の傾向としては、オンボーディング等、入社初期の教育を終えて実際のコール対応を始めるようになってから、業務に耐えられず辞めていくケースが多く見られます。
コールセンターの離職率は、年間30%を超えるようになるといよいよ黄色信号です。
正確な離職理由を把握するのはなかなか難しいものですが、採用後の教育計画に無理がないか、そもそもきちんとした教育体制が整っているのか、着台後に無理なノルマを課してはいないかといったところを良く見直す必要があります。
30%以上の離職率が常態化してくると、現場業務へはどのような影響が出てくるでしょうか?以下、業務への5つの影響をご説明します。
オペレーターの離職が発生した際にまず影響することとして、生産性の低下が挙げられます。
対応できる席数が減るのはもちろん、後任を採用しても、辞めた人材と同等のスキルに育てるには相応の時間と教育が必要です。あらかじめ人材を確保していなければ、採用にかかる時間も上乗せされます。
たとえば1日10件を対応できていたスタッフが抜けた場合、着台直後の後任が同じ水準に達するまでには数ヶ月単位のタイムラグが生じます。件数だけでなく応対品質を戻すにも教育担当者の工数がかかり、このタイムラグによる生産性の低下は無視できません。
育成中の後任オペレーターが本来の対応品質に達するまでには一定の期間がかかり、その間はセンター全体の応対品質にも影響が出ます。対応可能件数やクレーム率などを平常時と比較しておくと、影響の度合いと、品質が回復するまでにかかる期間を把握しやすくなります。
離職者が出れば、その穴を埋める人材を確保しなければなりません。
直接雇用なら求人費用が、派遣に頼るなら派遣費用がかかり、近年はコールセンター業界でも人件費が上昇傾向にあるため、採用・維持のコストは以前より重くなっています。
離職コストは、採用費のように見えやすいものばかりではありません。
大きく分けると、次の3種類のコストが発生します。
とくに教育や時間にまつわるコストは間接的で見えにくいぶん見落とされがちですが、実際には採用費以上に大きな損失になっていることも少なくありません。
後任が既定の品質を担保できるようになるまでは、丁寧なモニタリングとフィードバックが欠かせず、管理者の工数や負担も増えます。フォローにどれだけ時間がかかっているかを、チェックシートなどで可視化しておくとよいでしょう。
最後に挙げられるのが「顧客ロイヤルティの低下」です。離職するのが優秀なスタッフであるほど痛手になります。
よくある問い合わせを先回りし、顧客の心情に寄り添った応対ができる人材は、失敗も含めた長い経験のなかでしか育ちません。そうしたスタッフの離職は、応対品質を通じて顧客満足の低下に直結するリスクとなります。
そして見落としてはならないのが、これらの影響が個別に起きるのではなく、互いに連鎖するという点です。
人が抜けた分の業務は残ったオペレーターにしわ寄せされ、一人あたりの対応件数や精神的な負担が増えていきます。その負担がさらなる離職を招き、また残った人の負担が増える——という悪循環に陥りやすいのです。この連鎖を断つには、一人ひとりの負担そのものを軽くする視点が欠かせません。
ここまで離職にまつわるリスクとコストについてお話してきましたが、ではそもそもなぜコールセンターの離職率は高いのでしょうか?
離職率上昇を招く原因をいくつか挙げてみたいと思います。
上記の要素だけでなく、センターによっては他の要素もあるかと思います。センターにとってオペレーターの離職は大きなリスクです。離職されるオペレーターの中には、家庭の事情や健康問題など、やむを得ない理由で離職される方もいますので、そこは致し方ない面もあります。
一方で、そういったやむを得ない理由のないオペレーターには長く続けていただきたいものです。その為には、オペレーター本人が成長と心地よさを感じられる職場づくりが必要です。定期的な面談を重ね、コミュニケーションをとりつつ、下記のようなことにも目配せしていく必要があります。
「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、国内の全産業の離職率は15.4%となっています。これと比べると、採用したスタッフの約3割が1年以内に離職するとされるコールセンターの離職率の高さがあらためて分かります。
コールセンター業界では、オペレーターの定着について問題視されるだけでなく、人材の採用難も同様に問題視されています。オペレーターの方々に少しでも長く働いてもらえるように、職場環境や従業員同士のコミュニケーションにはこれまで以上に注力していくことが必要でしょう。
ここからは、離職率対策に取り組む各社の代表的な施策を見ていきます。
各種調査や事例で挙げられる取り組みには、たとえば次のようなものがあります。
近年では、勤怠や対応品質などのデータから離職の兆候を早期に捉え、面談やフォローを前倒しする取り組みも広がっています。また、新人が孤立しないよう、悩みや相談を気軽に共有できる場をつくって手厚くフォローすることも、定着率の向上に有効です。
これらの人事・育成面の施策に加えて、オペレーター一人ひとりの業務負荷そのものを軽くする取り組みも、離職対策として見逃せません。離職理由として挙がりやすいのは、クレーム対応のストレスだけではありません。
意外と見落とされがちなのが、通話そのものよりも「通話が終わったあとの作業」にかかる負担です。
その代表例が、後処理(ACW:After Call Work)の負担です。
1件の対応が終わるたびに、オペレーターは通話内容の記録や対応履歴の入力、要約の作成を行います。一件あたりは数分でも、次のコールに追われながらの作業が1日に何十件と積み上がれば、「記録に追われて定時に終われない」状態を生み、消耗や離職につながりかねません。
この後処理の負担は、しくみで軽くすることができます。
たとえば、通話内容を自動で文字起こしし、要約や対応履歴の下書きまで支援できれば、オペレーターはゼロから入力する必要がなくなり、内容を確認・修正するだけで済むようになります。記録にかかる時間が短くなれば、その分を顧客への丁寧な対応や、息をつくための余裕に回せます。結果として、新人がつまずきやすい「対応と記録の両立」のハードルも下がり、早期離職を防ぐことにもつながります。
ここでは、音声認識やボイスボットといったAIの活用で、オペレーターの負担軽減や新人育成に成果を上げている3社の事例を紹介します。
近畿労働金庫(近畿ろうきん)のお客さまセンターでは、以前は新任のオペレーターが最初に受けた通話のメモを見返しても内容を思い出せず、要約が作れないことがあり、そのたびに録音を聞き直してフォローする工数が発生していました。
導入後は、問い合わせ内容ごとに付けたラベルで絞り込み、テーマ別に文字起こしや要約をまとめて読めるようになったことで、過去の録音を一件ずつ聞き直す必要がなくなり、新人の習熟スピードが大きく向上したといいます。オペレーターからも「圧倒的に負担が少なくなった」という声が上がり、繁忙期に要約作業が残業になることもなくなったとのことです。
ヘルプデスク業務を手がけるデンソーエスアイでは、自動要約の活用で後処理(ACW)を約30%削減し、1件あたり最大15分かかっていた作業を5分以内に短縮。そこで生まれた時間を、オペレーターが新しい対応領域の知識習得に充てられるようになりました。
さらに、管理者がオペレーターの通話内容を文字でリアルタイムに確認し、対応に困っている場面ではチャットでアドバイスを送れるようになったことで、オペレーターの不安解消につながっているといいます。SV(スーパーバイザー)がその場でフォローに入れる環境は、経験の浅いオペレーターが孤立せずに働ける支えになります。
DtoC通販を手がけるビタブリッドジャパンでは、オペレーターが一人前になるまでに最低2か月、十分なレベルに達するには3〜4か月の研修が必要で、採用難もあって人員増だけでは入電増に追いつけない状況にありました。
そこで定型的な問い合わせ(返品・解約手続きなど)を電話の自動応答に任せたところ、応答率が改善しただけでなく、現場に余裕が生まれ、マネージャーが研修に深く関わる時間を確保できるようになったといいます。定型業務の自動化は、新人育成に人手と時間を振り向ける余地を生み出す点でも、離職対策と相性がよいといえます。
コールセンターの離職は、評価や賃金、職場環境といった人事面の課題であると同時に、日々の業務負荷という現場の課題でもあります。とくに後処理(ACW)や定型対応のくり返しといった「削れる負担」は、しくみの見直しによって着実に軽くしていけます。離職対策というと制度づくりに目が向きがちですが、オペレーターが疲弊しにくい業務のしくみを整えることも、全社で取り組むべき改善の一つです。
まずは自社の現状を把握し、人事面・業務面の両方から打てる手を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。とりわけ後処理の負担軽減は、比較的取り組みやすく効果を実感しやすいテーマです。具体的な進め方や事例を知りたい方は、関連資料もあわせてご覧ください。