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チャットボットの選び方:種類比較から目的別の検討ポイントまで解説- CXジャーナル

作成者: CXジャーナル編集部|Sep 30, 2025 2:27:11 AM

企業のデジタル化が進む中で、チャットボットは顧客サポートや社内業務効率化を実現する重要なツールとして注目されています。

AI型、シナリオ型、RAG型などさまざまな技術が登場する一方、自社に最適なタイプの選び方がわからず導入に踏み切れない企業もあるのではないでしょうか。最適なチャットボットを選定するには、自社の課題や目的を明確にしたうえで、技術的な特性や運用体制を総合的に判断する必要があります。

本記事では、チャットボットの基本知識に加え、選定時に検討すべき5つのポイント、目的別の選び方、導入の注意点まで広く解説します。

 

チャットボットとは?定義と導入効果について

チャットボット選定を始める前に、まずはチャットボットの基本的な定義と導入によって期待できる効果を理解しておきましょう。

 チャットボットとは?

チャットボットとは、人工知能や事前に設定されたルールに基づいて、ユーザーとテキストベースで自動的に会話を行うプログラムのことです。「Chat(チャット)」と「Bot(ロボット)」を組み合わせた造語で、人間に代わって質問への回答や案内を行う自動化ツールとして機能します。

近年はLLMの進化により、より人間らしい自然な対話が可能になったことで、カスタマーサポート、営業支援、社内業務の効率化など、さまざまな分野で活用が進んでいます。

チャットボットの主な活用シーンと導入効果

チャットボットの主な活用シーンには、カスタマーサポートでのFAQ自動回答、ECサイトでの商品案内、社内ヘルプデスクでの問い合わせ対応などが挙げられます。
これら場面にチャットボットを導入することで、24時間365日の自動対応が可能になり、顧客の待ち時間短縮とオペレーターの業務負荷軽減を両立できます。また、定型的な問い合わせの自動化により、人的コストの削減と対応品質の向上も期待できます。

とくに定型的な質問が多い業務では、大幅な業務効率化が見込まれます。実際に、問い合わせ件数の大幅削減や初回解決率の向上による顧客満足度の改善を実現している企業も増えています。

チャットボットの選び方|基本的な検討ポイント

 チャットボットを導入する際は、単に機能面だけでなく、運用体制や費用、社内リソースとの相性も含めて総合的に検討する必要があります。 

導入目的の設定

まず重要なのは、チャットボットを導入する目的を明確にすることです。問い合わせ件数の削減を目的とするのか、顧客満足度の向上を目指すのか、あるいは営業支援や社内問い合わせの効率化を図るのかによって、適したチャットボットのタイプや機能が変わってきます。

種類別の特徴

導入目的が明確になったら、その目的に合ったチャットボットの種類を選定します。ここでは、代表的な3つのタイプの特徴を比較して解説します。

AI型チャットボット

AI型は自然言語処理技術により、単語の組み合わせではなく自然言語で質問ができるため、複雑な問い合わせにも柔軟に対応できます。

メリットとしては、表現の違いを理解できること、学習により精度が向上すること、それによりユーザー体験が大幅に向上することが挙げられます。一方でデメリットは、初期コストが高いこと、学習データの準備が必要なこと、誤回答を修正して再学習させるコストがかかることです。

上記の理由から、多様な表現での問い合わせが想定される場面や、継続的な改善投資が可能な環境での活用に適しています。

シナリオ型チャットボット

シナリオ型はあらかじめ設計された会話フローに沿って動作し、確実な案内が可能です。

メリットは回答精度が高いこと、比較的低コストで導入できること、運用が安定していることです。一方、デメリットは、自由な質問に対応できないこと、柔軟性に欠けること、シナリオが複雑化すると一部の変更や追加に伴って調整コストが大きく増えることです

ただし、定型的な問い合わせが多い業務や、正確性を重視する場面では、AI型よりも確実性の高い対応を実現できるという強みがあります。

RAG型チャットボット

RAGRetrieval-Augmented Generation)型は、既存の文書やFAQデータベースから関連情報を検索し、その情報を基にして回答を生成する新しいタイプのチャットボットです。

メリットは、既存の文書資産を有効活用できること、専門的な内容にも正確に回答できること、継続的な学習により精度向上が期待できることです。一方でデメリットは、ハルシネーション(誤情報の生成)のリスクがあること、導入・運用コストが高いこと、プロンプトインジェクション(ユーザーがプロンプトに不正な入力を行い、出力されるべきでない情報を引き出す攻撃)によって意図しない情報が引き出されるリスクがあることです。

これらのリスクをコントロールしやすいという理由から、RAG型を導入する際はまず社内利用から始めるのがおすすめです。社内ヘルプデスクや業務マニュアルの検索・案内など、既存の文書資産が豊富にある環境での活用がとくに効果的でしょう。

また、チャットボットの種類については以下の記事でも解説しています。

チャットボットの8つの種類|特徴や仕組み、導入時の注意点

チャットボットのシナリオとは?AI型との違いや作り方、設計のポイント

機能と運用体制

チャット機能の基本性能に加えて、FAQとの連携、有⼈チャットへの切り替え、外部システムとの連携、分析・レポート機能など、自社にとって必要な機能を事前に整理しておくことが重要です。とくに、有⼈対応へのスムーズな切り替えは、複雑な問い合わせへの対応に不可⽋であり、顧客満⾜度に直結します。さらに、導⼊後の改善活動に必要な分析データをどの程度取得できるかも重要なチェックポイントです。

あわせて、運⽤体制についても検討が必要です。導⼊時の初期設定サポートや、シナリオ作成の⽀援、継続的な改善提案など、ベンダーがどこまで対応してくれるかを確認しましょう。社内に専任の運⽤担当がいない場合は、サポート体制の充実したサービスを選ぶのがおすすめです。

料金体系

チャットボットの料金体系には、月額固定型と従量課金型があります。月額固定型はコスト予測がしやすく、利用量を気にせず運用できます。一方、従量課金型は利用量に応じた柔軟なコスト管理が可能です。

導入時には、初期費用、基本料金、ユーザー数や会話数による追加料金、サポート費など、トータルのコストを把握することが重要です。とくに、機能追加やカスタマイズに伴う追加費用には注意が必要です。将来的なスケールアップを見据え、コストの透明性が高く、段階的に機能拡張できるサービスを選ぶとよいでしょう。

費用相場については、こちらの記事で解説しています。

チャットボットの費用相場と品質の関係性

対応チャネル

チャットボットを設置するチャネルは、顧客接点に直結するため、重要な検討ポイントです。Webサイト上のポップアップ型、LINEやFacebook Messenger、Slackなど、複数のプラットフォームに対応しているかを確認しましょう。

BtoB企業ではWebサイトでの対応が、BtoC企業ではSNSやモバイルアプリでの連携が効果的です。複数チャネルでの運用を予定している場合は、一元管理が可能なサービスを選ぶことで、運用効率とユーザー体験の一貫性を両立できます。

 チャットボットの選び方|目的別の検討ポイント 

チャットボットの導入目的によって、重視すべき機能や選定基準は大きく異なります。ここでは代表的な3つの活用目的から、選び方のポイントを解説します。

カスタマーサポート向け

カスタマーサポート用途では、FAQ自動回答機能と有人チャットへのスムーズな切り替えができることがとくに重要です。AI型を選ぶ場合は、業界特有の専門用語や表現を学習できるかを確認しましょう。
既存のFAQシステムやCRM(顧客管理システム)と連携できる機能も有効です。顧客情報を参照しながら個別対応できると、サポートの質が向上します。24時間対応を目指す場合は、夜間や休日の問い合わせ傾向を分析し、よくある質問を事前に学習させておくと高い初回解決率を実現できます。

マーケティング・営業支援向け

マーケティング用途では、リード獲得や育成につながる機能が重要です。Webサイト訪問者の行動データと連携し、適切なタイミングでチャットを起動できる仕組みがあると良いでしょう。
加えて、顧客の属性や興味をヒアリングする機能や、CRM・MAツールと連携して見込み客情報を自動登録する機能は必須です。A/Bテストで会話シナリオを継続的に改善することで、コンバージョン率を高められます。営業チームとの連携を重視する場合は、有望な見込み客を自動で担当者に引き継ぐ機能の有無も確認しましょう。
さらに、チャット履歴を分析し、顧客の関心に基づいたパーソナライズ提案ができる機能があれば、リード育成の効果を一層高められます。

社内問い合わせ向け

社内ヘルプデスク用途では、人事・総務・ITなど複数部署の問い合わせに対応できる機能が求められます。
パターン化された問い合わせや社内ドキュメントへの誘導が中心であればシナリオ型で十分対応可能です。FAQとしてナレッジ化されている情報の検索にはAI型(ベクター検索)が適しています。一方、ナレッジ化されていない情報も含めて探索する必要がある場合は、社内規程や手続きマニュアルを学習データとして活用できるRAG型がとくに適しており、既存文書を有効活用しながら正確な回答を提供できます。
また、SlackやMicrosoft Teamsといったビジネスチャットツールとの連携ができるかどうかも重要なポイントです。従業員が普段使う環境で利用できれば、導入ハードルを下げられます。さらに、部署別の利用状況や頻出質問を分析できる機能があれば、社内業務改善にもつながります。
RAG型の場合、社内利用ならハルシネーションのリスクも低く、段階的に対応範囲を拡大できるでしょう。

チャットボット導入の注意点

チャットボットは導入して終わりではなく、継続的な改善があって初めて効果を発揮します。ここではよくある失敗例と、成功のために意識すべき改善ポイントを整理します。

 よくある失敗パターンと回避策 

最も多い失敗は、導入目的が曖昧なまま機能を重視して選んでしまうケースです。たとえば「とりあえずAI型を導入すれば万能」という考え方は危険です。シンプルなFAQ対応ならシナリオ型の方が適しており、コストも抑えられる場合があります。

また、シナリオ設計の甘さもよくある失敗の一因です。ユーザーの質問パターンを十分に分析せずにシナリオを組むと、的外れな回答が増え、かえって満足度を下げる結果になりかねません。導入前に過去の問い合わせをしっかりと分析し、頻出質問と回答を整理しておくことが重要です。初期段階では対応範囲を絞り、段階的に拡大していくアプローチも有効です。

導入後の運用改善ポイント

チャットボットの効果を最大化するには、導入後の改善が欠かせません。会話ログを分析し、対応できなかった質問や低評価の回答を定期的に見直して、シナリオやFAQを更新しましょう。

ユーザーアンケートや満足度調査を通じたフィードバックの収集も効果的です。有人対応に切り替わった内容を分析し、チャットで対応できる範囲を徐々に広げることも改善につながります。月次で効果測定と施策を繰り返すことで、導入効果を持続的に高められます。

また、こうした効果測定を行うためには、あらかじめ効果測定の指標を設定してくことが重要です。たとえば、「月間問い合わせ件数の削減率」「初回解決率」「チャット利用後のNPS(顧客推奨度)」など、数値で把握できる指標をあらかじめ定めておくことで、導入効果の検証や改善活動がスムーズに進みます。

チャットボットの運用でつまずいている方はこちらの記事も参考になります。

チャットボットは役に立たない?活用できていない場合の原因と改善策 

 まとめ 

チャットボットの選定において、まず導入目的の明確化、適切な種類の選択、必要機能の整理、運用体制の確認、コスト把握の5つが重要です。AI型、シナリオ型、RAG型の特徴を理解し、自社の課題や体制に合わせて選びましょう。

とくにRAG型は既存文書を活用できる新しい選択肢として注目されていますが、まずは社内利用から始めてリスクを管理するのが安心です。活用目的ごとに選定基準を設定し、導入後はPDCAを回して改善を続けることで、効果を最大化できます。

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