CXジャーナル - 顧客と向き合うすべての人の“よりどころ“

コールセンターの業務改善で重要なKPI一覧|算出方法や目安 - CXジャーナル

作成者: CXジャーナル編集部|Nov 27, 2022 3:00:00 PM

コールセンター業務を日々管理していく中で、欠かせないのが事業の評価基準であるKPIです。
KPIを設定しモニタリングすることで、チームの業務効率や成果を正確に測ることができます。

本記事では、コールセンターで活用できる13個のKPIをご紹介します。後半ではKPIを設定・活用する際のポイントも説明するので、最後までご覧ください。

コールセンターにおけるKPIとは?

(1) 改めて、KPIとは

KPIとは、組織の目標達成や事業の業績を管理するために重要な指標のことです。「Key Performance Indicator」の略語で「重要業績評価指標」とも訳されます。
ビジネスやプロジェクトにおいては、実現したい目標を明確にし、その達成度合いを評価することが重要です。そこで、ゴールとなる最終的な目標とそこに至るプロセスにおいて、評価指標を作成します。

最終目標に対する評価指標をKGI(Key Goal Indicatorの略で「重要目標達成指標」)、プロセスにおける中間目標に対する評価指標をKPIと呼びます。

コールセンターにおいては、顧客に対する応答品質や生産性、オペレーターのマネジメントに対してKPIが設定されることが多い傾向にあります。

(2) コールセンターでKPIを設定する重要性

KPIを導入するメリットは、組織や成果の管理がしやすくなることです。
目標達成までのプロセスを具体的な数値で管理し、分析することで、目標設定までの達成度や成果・課題や問題点を可視化することができます。

現状の問題やその原因をデータで把握し、改善策を立てることができることから、コールセンターやコンタクトセンター運営に携わる人間にとって、代表的なKPIを知っておくことは大切です。

コールセンターのKPI・指標一覧、算出方法、目安

それでは、コールセンターで利用できる代表的なKPI13個を、大きく4つに分類して紹介します。

・応答品質に関するKPI
・生産性や収益性に関するKPI
・顧客満足度に関するKPI
・従業員のマネジメントに関するKPI

まずは、13個のKPIの概要を見ていきましょう。

KPI 概要 計算式
応答率 顧客からコールセンターにかかってきた問い合わせにオペレーターが対応できた割合 (応対件数(件)÷入電件数(件))×100=応答率(%)
放棄呼率(放棄率) 全体のコール数の内、対応できなかったコールの割合 放棄呼数÷着信件数×100=放棄呼率(%)
平均応答速度(ASA) コールに応答するまでにかかった平均時間 応答までにかかった時間の合計÷コールの総数=平均応答速度(秒)
サービスレベル(SL) 設定した目標時間内に応答できた件数の割合 設定した目標時間内に応答できた件数 ÷コールの総数 × 100=サービスレベル(%)
稼働率 給料支払い時間におけるオペレーターの稼働時間の割合 (入電待機時間+通話時間+後処理時間)÷給与支払い時間=稼働率(%)
平均通話時間(ATT) オペレーターが顧客と通話している平均時間 (総通話時間+総後処理時間)÷総コール数=平均処理時間(秒)
平均後処理時間(ACW) 通話終了後にオペレーターが後処理にかかった平均時間 総後処理時間÷総コール数=平均後処理時間(秒)
平均処理時間(AHT) 顧客一人あたりを最後まで処理するのにかかった平均時間 (総通話時間+総後処理時間)÷総コール数=平均処理時間(秒)
コスト・パー・コール(CPC) 1コールあたりにいくらの費用が発生しているのかの金額 総コール数÷総コスト=コスト・パー・コール(円)
顧客満足度(CS) 顧客の自社のサービスや商品に対する満足度を示す指標
NPS® 企業が提供する商品やサービスを他人へどれだけ推薦してくれるかを示す指標
欠勤率 勤務を予定している時間に占める欠勤した時間の割合 (欠勤日数÷予定勤務日数)×100=欠勤率(%)

(1) コールセンターの応答品質に関するKPI

① 応答率

応答率とは、顧客からコールセンターにかかってきた問い合わせにオペレーターが応答できた対応件数の割合を指します。
応答率の算出方法は以下の通りです。

応対件数 ÷ 入電件数 × 100 = 応答率(%)

例えば、入電件数が120件、応対件数が110件だった場合、応答率は(110÷120)×100=91.6%となります。
応対率の目標は、90%以上を目安にする企業が一般的です。この応答率が目標より高いということは、問い合わせに対して十分な人員が確保できており、業務フローも適正であることが分かります。

② 放棄呼率(放棄率)

放棄呼率とは、全体のコール数の内、オペレーターに繋がる前に顧客が電話を切った、もしくはシステムが自動で切断したコール(これらを放棄呼と言います。)の割合を指します。
放棄呼率の算出方法は以下の通りです。

放棄呼数÷着信件数×100=放棄呼率(%)

例えば、100件の入電があり、5件に対応できなかった場合、放棄呼率は5%となります。
放棄呼率の目標は、0%を目安にする企業が一般的です。放棄呼率が高いということは、オペレーター不足や対応効率が悪いことなどが考えられ、放っておくと機会損失の発生や顧客満足度の低下に繋がってしまいます。

放棄呼率については、以下の記事で詳しく解説しています。
▼関連する記事

 

③ 平均応答速度(ASA)

平均応答速度(ASA)とは、「Average Speed of Answer」を訳したもので、コールに応答するまでにかかった平均時間(秒)を指します。
平均応答速度の算出方法は以下の通りです。

応答までにかかった時間の合計 ÷ コールの総数 = 平均応答速度(秒)

例えば、応答までにかかった時間の合計が10時間、コール総数が2,400件の場合、平均応答速度は15秒となります。
平均応答速度の目標は、20秒を目安にする企業が一般的です。平均応答速度が短いほど、顧客を待たせずに電話対応が出来ていることを示しています。

④ サービスレベル(SL)

サービスレベルとは、設定した目標時間内に電話を取ることができた割合を指します。
サービスレベルの算出方法は以下の通りです。

設定時間内に応答できた件数 ÷コールの総数 × 100=サービスレベル(%)

例えば、応答時間10秒を目標にしている企業において、10秒以内に応答できた割合が100件中70件だった場合、サービスレベルは70%ということになります。
サービスレベルの目標は「20秒以内に80%応答する」というように設定する企業が一般的です。

(2) コールセンターの生産性や収益性に関するKPI

① 稼働率

稼働率とは、給料支払い時間において、オペレーターがオペレーター業務に割いた時間(稼働時間)の割合のことを指します。
オペレーター業務に割いた時間とは通話時間だけでなく、入電を待機している時間や通話後の後処理をしている時間も含まれます。
一方、休憩や会議、研修などの離席時間は稼働時間に含まれません。
稼働率の算出方法は以下の通りです。

(入電待機時間 + 通話時間 + 後処理時間)÷ 給与支払い時間 = 稼働率(%)

例えば、8時間勤務において、入電待機時間1時間、通話時間5時間、後処理時間1時間の場合、稼働率は(1+5+1)÷8=87.5%となります。
適正な稼働率の目安は、80~85%とする企業が一般的です。稼働率が90%以上の場合はオペレーターが不足しており、・反対に80%未満の場合はオペレーターが過剰である可能性があります。

② 平均通話時間(ATT)

平均通話時間(ATT)とは「Average Talk Timer」を訳したもので、オペレーターが顧客と通話している平均時間を指します。
平均通話時間(ATT)の算出方法は以下の通りです。

総通話時間 ÷ 総コール数 = 平均通話時間(秒)

例えば、総通話時間が100時間、総コール数が1,000件の場合、平均通話時間は6分となります。平均通話時間(ATT)の目標は、企業の取り扱う商品やサービスにより異なります。
ただし、問い合わせ対応などのインバウンド業務であれば、平均通話時間が短いほど効率的に対応し、より多くの処理件数をこなしていることになります。

マニュアルやFAQの作成、オペレーターの研修などを実施することで、平均通話時間(ATT)の短縮を試みましょう。

③ 平均後処理時間(ACW)

平均後処理時間(ACW)とは、「After Call Work」を訳したもので、通話終了後にオペレーターが後処理にかかった時間の平均を指します。
平均後処理時間(ACW)の算出方法は以下の通りです。

総後処理時間 ÷ 総コール数 = 平均後処理時間(秒)

例えば、総後処理時間が50時間、総コール数が1,000件の場合、平均後処理時間は3分となります。
平均通話時間(ATT)と同じく、平均後処理時間の目標は短ければ短いほどよいとされています。

④ 平均処理時間(AHT)

平均処理時間(AHT)とは「Average Handling Time」を訳したもので、前述の平均通話時間(ATT)と平均後処理時間(ACW)を足したものです。
つまり、顧客一人あたりを最後まで処理するのにかかった平均時間を指します。
平均処理時間(AHT)の算出方法は以下の通りです。

(総通話時間 + 総後処理時間)÷ 総コール数 = 平均処理時間(秒)

例えば、総コール数が300件で、総通話時間が3,000分、後処理時間が500分だったとしたら、合計時間(3,000分+500分)÷300件=11分が平均処理時間(AHT)となります。
平均処理時間(AHT)の目標も企業により異なります。ただし、平均処理時間(AHT)が6分の場合、そのコールセンターでは1人あたり1時間で10件の対応をできることができると分かります。コールセンターが受電する件数に合わせて、適切な目標値を設定することが重要です。

⑤ コスト・パー・コール(CPC)

コスト・パー・コール(CPC)は、1コールあたりにいくらの費用が発生しているのかを指します。この費用には、人件費や家賃など、コールセンターの運営にかかる全ての費用を含みます。
CPCの算出方法は以下の通りです。

総コール数÷総コスト=コスト・パー・コール(円)

例えば、月間2,000件のコールがあるカスタマーサポートの運営に150万円がかかっていた場合、150万円÷2,000件=750円がCPCとなります。
CPCの目標も、企業により異なります。ただし、CPCは低いほど効率化できていると言えるため、オペレーター一人あたりの処理件数を増加させたり、運営にかかる諸経費を圧縮させたりすることで改善することができます。

(3) コールセンターの顧客満足度に関するKPI

① 顧客満足度(CS)

顧客満足度とは「Customer Satisfaction」を訳したもので、顧客がコールセンターの対応にどれだけ満足したかを示します。コールセンターにおいては、電話応対で顧客の問題を解決することそのものが、評価される顧客へのサービスとなります。

CSは、アンケートを実施することで集計できます。
例えば、顧客の電話番号にSMSでアンケートを送り、オペレーターの対応を5段階で評価してもらうなどの方法が挙げられます。

顧客満足度については、以下の記事で詳しく解説しています。
▼関連する記事

 

② NPS®※

NPS®とは、「Net Promoter Score」の頭文字を取った用語で、「顧客推奨度」や「正味推奨者比率」と訳されます。企業が提供する商品やサービスに対して「他人へどれだけ推薦してくれるか?」というロイヤリティを数値化した指標です。
NPS®は、顧客へ「当社のサービス(商品)を家族や友人にどの程度すすめたいか」というアンケートを実施することで集計できます。

0~10点の11段階で評価してもらい、回答別に顧客を分類し、ポジティブな回答を行った「推奨者」から、ネガティブな回答を行った「批判者」を減じた値がNPS®となります。

・ 0~6点:「批判者」商品やサービスに良くない感情を持つ顧客
・7~8点:「中立者」どちらとも言えず、競合に移りやすい特徴を持つ顧客
・ 9~10点:「推奨者」商品やサービスに満足し、周囲にすすめる可能性が高い顧客

例えば、推奨者が70%、批判者が20%の場合は「70(推奨者)-20(批判者)=50(NPS®)」となります。日本はNPS®が低く出る傾向にあることから、絶対目標を決めるのではなく、定期的な計測で推移を確認するのがおすすめです。

NPS®については、以下の記事で詳しく解説しています。
▼関連する記事

 

※「NPS®」は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE社)の登録商標です。

(4) コールセンターの従業員(オペレーター)のマネジメントに関するKPI

① 欠勤率

欠勤率は、勤務予定日数に対して欠勤した日数の割合を指します。
欠勤率の算出方法は以下の通りです。

(欠勤日数÷予定勤務日数)×100=欠勤率(%)

例えば、予定勤務日数が20日、欠勤日数が1日だった場合は、(1÷20)×100=5%となります。
欠勤率は0%に近づけることが目標となります。職場環境の悪化や心身の不調を崩しやすい時期には、欠勤率は増加する傾向にあります。欠勤率が増加している原因を突き止め、改善することが必要です。

コールセンターの欠勤率については、以下の記事で詳しく解説しています。
▼関連する記事


 

② 離職率

離職率とは、一定期間においてどれくらい離職者数が発生したのかの割合を指します。
離職率の計算方法は企業により異なるものの、厚生労働省の雇用動向調査では以下の通りとなっています。

1月1日を起算日とする1年間の離職者数 ÷ 1月1日の常用労働者数 × 100 = 離職率(%)

例えば、1月1日の常用労働者数が100人で、この1年間に10人が退職した場合、離職率は10%となります。
厚生労働省の雇用動向調査によると、2020年の一般労働者における離職率は10.7%でした。離職率が高いということは人材が定着しておらず、従業員のモチベーションが上がりづらい要因になります。待遇や職場環境などの改善を図りましょう。

コールセンターでKPIを設定・活用する際のポイント

KPIを13個紹介しましたが、どれを設定すれば良いのでしょうか。ここからは、適切なKPIを検討する上でのポイントを説明します。

(1) 自社の業務や目的に合わせたKPIを選択・設定する

コールセンターの業務形態によって、必要なKPIや目標数値は異なります。自社の業務や目的に合ったKPIを設定しましょう。

例えば、コールセンターには、オペレーターが自ら電話を掛ける「アウトバウンド」と受信した電話に対応する「インバウンド」の2つがあります。
アウトバウンド業務では自社商品・サービスを売り上げることが目的となることが多くなるため、オペレーターの稼働率が重要となります。

一方、インバウンド業務では顧客の問題を素早く解決することが目的となることが多くなるため、平均応答速度(ASA)や平均処理時間(AHT)が重要となります。

(2) 現実的に達成可能な目標を設定する

KPIの種類を決定したのちは、現実的に達成可能な目標を設定するようにしましょう。そのために必要なのは現状把握です。
まずは自社の現在の状況を計測し、そこから現実的な目標を設定しましょう。その際、同業種の水準を参考にするのも良いでしょう。

(3) KPIは設定するだけではなく改善や調整を行う

KPIは一度設定してお終いというものではありません。設定したKPIを定期的にスコアリングし、PDCAサイクルを回しながら改善していきましょう。
その際には、改善状況をオペレーターにも共有することが重要です。オペレーターと目標を共有することで、自然と改善への協力関係を作ることが可能です。

KPIを設定してコールセンターを見える化しよう

紹介したKPIはいずれもコールセンターの業務を見える化することができるものです。普段の業務を数値化し、定期的に計測することで、業務の改善に努めましょう。
適切なKPIは、企業の業務や目標により異なります。実際にそのKPIを達成するオペレーターの意見も取り入れながら、目標達成に適切なKPIを設定しましょう。