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ボイスボットとは、AIを活用した自動応答サービスであり、電話業務にかかる手間を削減します。コールセンターやコンタクトセンターに導入すれば、人手不足の解消、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
本記事では、ボイスボットの概要やIVRとの違い、メリット・デメリットなどを解説します。自社に合ったボイスボットの選び方や運用のポイントも紹介するので、ボイスボットについて情報収集中の方は、ぜひご確認ください。
ボイスボットの導入は、コールセンターの業務効率化につながります。まずはボイスボットの概要と仕組みを確認しましょう。
ボイスボットとは、人工知能(AI)を実装した、自動音声応対システムのことを指します。コールセンターでの顧客対応業務を、AIによる音声対話エンジンが代行してくれるというものです。音声合成技術を活用しているため、人と会話をしているような自然な発声が可能です。
主にボイスボットの種類には、AIが完全に自動応対する対話型や、お問い合わせ内容を解析して担当の有人対応へ転送するタイプがあります。
ボイスボットは、音声認識や音声合成技術などを活用して、顧客の問い合わせに回答します。具体的なフローは以下の通りです。
①入電(利用者が発話)
↓
②音声認識AIが発話内容を解析してテキスト化
↓
③ テキスト化されたデータを自然言語処理システムが処理し、回答文を作成
↓
④ 音声合成技術で回答文を読み上げて会話を進める
↓
① 音声を受信 ……(繰り返し)
その後は、1〜4の手順を繰り返して応対します。
顧客とのコミュニケーションを自動化するツールは、ボイスボットだけではありません。ここではIVR・チャットボットとの違いを解説します。
IVR(Interactive Voice Response)とは、自動音声応答システムのことです。IVRは、顧客が案内を聞いて該当するボタンをプッシュ操作することで、あらかじめ録音してある音声が自動再生されます。宅急便の再配達、サービスの受付や解約の申し込みなどによく利用されます。
IVRでは企業が用意した限られた選択肢を顧客が選択するため、企業にとってはボイスボットよりもシナリオを把握・管理しやすいと感じるでしょう。
しかし、顧客にとっては、必要の有無に関わらず流れる音声ガイダンスを最後まで聞く必要があり、良い顧客体験とは言えないでしょう。加えて、IVR上での操作を間違えると最初からやり直しになるという点は、ストレスの原因となりえます。
一方のボイスボットは、顧客の発話内容に合わせて適切なシナリオで会話を進めていくため、相対的に見てユーザーフレンドリーといえるでしょう。
IVRとは?コールセンターに導入するメリットとデメリット、費用の目安
チャットボットは、自動会話プログラムです。ボイスボットと同様にAIを実装しているケースも多いですが、ボイスボットが発話音声のやりとりであるのに対し、チャットボットはテキストでやりとりを行います。
つまり、チャットボットとボイスボットとでは、顧客の利用チャネルが異なります。PCやスマホを通してテキストで情報を求める顧客にとっては、チャットボットでのコミュニケーションが適していることが多いでしょう。
一方で、電話で急いで問い合わせたい、もしくはPCやスマホでのテキスト入力が得意ではない、といった顧客にとっては、ボイスボットでの音声コミュニケーションが適しているといえるでしょう。
チャットボットとは?種類や導入するメリットや注意点、基礎知識を解説
顧客対応をスムーズにするボイスボットですが、どのような場面で使われているのでしょうか。ここではボイスボットの活用シーンを3つ紹介します。
FAQやチャットボットといったノンボイスツールの活用が一般化している金融や通信サービスの領域ですが、未だに電話でのお問い合わせニーズは高く存在します。
そこで、「24時間365日稼働のコールセンター」を実現すべくボイスボットの導入も増えています。
EC・通信販売を運営するサービスでは、注文に関わるコミュニケーションはスピーディーに、解約に関わるコミュニケーションには丁寧に行うことが重要とされています。
そこで、スピーディーに行うべき注文手続きをボイスボットに任せ、丁寧に行うべき解約対応にコールセンタースタッフの有人対応リソースを割く、という形を採用する企業が増えています。
飲食店やホテルの予約・受付でもボイスボットの導入が進んでいます。昨今のボイスボットは精度が高く、顧客の音声を正確に聞き取れるうえ、ツールによっては多言語に対応するものもあります。そのため、各方面から寄せられる予約や受付に関するお問い合わせ対応を自動でこなすことができるのです。
続いて、ボイスボット導入後に期待できる6つのメリットを見ていきましょう。
ボイスボットを導入すれば、オペレーターが不在の場合にも顧客からの問い合わせに対応できます。これにより、顧客は自分のタイミングでアクションを起こすことができ、機会損失への対策になります。また、顧客はプッシュボタンの操作や人との会話をする必要がないため、問い合わせのハードルも下がるでしょう。
オペレーターによる有人対応では、対応できる時間に限界があります。そのため顧客が問い合わせしたい時間にいつでも応対できるわけではありません。
ある調査によると、50%以上もの顧客が「夜間や深夜」でのカスタマーサポート対応を第一に望んでいる、という結果が出ています。顧客ニーズが最も大きい時間帯に事業会社側がカスタマーサポートを提供できていない、というのは由々しき事態といえます。
その点、ボイスボットであれば24時間365日いつでも電話でのお問い合わせに対応できるため、夜間や営業時間外でもカスタマーサポートを提供できるのです。
ボイスボットは自動応答で顧客の問題を解決するため、オペレーターが直接対応する案件が大幅に減少します。シンプルな問い合わせはボイスボットだけで完結するようになり、オペレーターの負荷は軽減するでしょう。また、複雑な問い合わせに対しても、ボイスボットが初期対応を代行してくれるため、オペレーターは顧客の用件を理解した上で対応に移れるようになります。
ボイスボットは、電話をかけた顧客から自動でヒアリングを行います。その際に顧客へ適切な回答をして解決させる、または適切なお問い合わせ先に繋げることもできます。頻繁に受ける質問への対応をボイスボットに任せれば、オペレーターの業務効率向上に繋がります。
また、ボイスボットによっては既存のクラウドPBXとも連携できます。チャットボットやクラウドPBXをボイスボットと連携させれば、テレワークにおけるお問い合わせ対応業務もかなりの効率化が見込めるでしょう。
コールセンター業務のネガティブな特徴として、精神的負荷が大きいことが挙げられます。受電数の多さなどにストレスを感じるオペレーターも多く、人手不足や離職率の高さが問題となっています。
これに対して、ボイスボットで業務フローや労働環境を改善すれば、オペレーターの定着率向上はもちろん、採用・教育コストの削減にもつながるでしょう。
ボイスボットを既存の社内ツールや顧客データと連携することで、顧客満足度の向上を図ることができます。
例えば、ECサイトを運営して顧客データを持っている場合、ボイスボットと顧客データを連携させて、定期便の配送頻度の変更等をボイスボットで受け付けることが可能になります。
ボイスボットはコールセンター業務を効率化しますが、苦手な作業もあります。導入前に、以下の3つのデメリットを押さえておきましょう。
ボイスボットは、音声認識の精度が課題とされています。顧客自らが番号入力する従来のIVRと比較すると、誤認識が生じるリスクがあります。しかし、対応回数を重ねれば機械学習により対話の精度は向上が見込めます。
複雑な問い合わせ内容に対して、臨機応変な対応ができない場合があります。ボイスボットは、人間の複雑な心理や文章構造を読み取ることを苦手としているからです。例えば、ボイスボットが向いていない場面として、以下が挙げられます。
その他、雑音などが原因で顧客の発話内容を聞き取るのが困難な場合もあります。対策としては、顧客の発話内容を繰り返す設定を行い、認識ミスを防ぐのが一般的です。
ボイスボットは、導入する段階でもある程度の性能はあるものの、人間の心理や複雑な会話構造が重なった音声情報の処理は困難です。そのため、ボイスボットに何度も対応を繰り返して学習させ、お客様窓口としての精度を上げる必要があります。
ここでは、自社に合ったボイスボットを選ぶための6つのポイントを説明します。
現在使用している他の既存システムと連携できると、業務の効率化につながります。以下は効率化の具体例です。
ボイスボット選びでは、自社で使用している各種システムとの相性を見るのも重要です。
先述したように、AIの認識精度は100%ではありません。そのため、認識ミスを防止して顧客の安心感を高めるには、フォローアップ機能が付いた製品を選ぶのがおすすめです。具体的には、受付内容をSMS・メールなどで顧客に送信する機能があるかを確認しましょう。通話後のフォローアップがあれば、顧客は自身の要望が伝わっているかを判断できます。
ボイスボットに自動学習機能が付いていれば、自動的にAIの精度が向上します。メンテナンスの手間を削減できるのがメリットで、大手企業で採用されています。ただし、初期費用が比較的高く、回答の精度は完璧ではありません。
一方、自動学習機能がなく手動でチューニングするタイプでは、管理者が直接会話データを分析・管理します。AIが間違った回答をするリスクは軽減しますが、管理工数が増えるのがデメリットです。
導入後に手厚いサポートを受けたい場合、サポート体制の充実したボイスボットがおすすめです。専門家のアドバイスやチューニングのサポートを受けることが可能で、疑問点があれば迅速に解消できます。また、トラブルが発生したときに備え、相談窓口の有無も確認しておきましょう。
同時接続できる件数とは、ボイスボットが同時に対応できる顧客の数です。同時接続できる件数に対して架電が多すぎると、「あふれ呼」が発生します。顧客満足度を下げないためにも、コールセンターの稼働状況やボイスボットのキャパシティには注意しましょう。
管理画面がわかりやすく、誰でも運用できることは重要です。特にエンジニアが足りない企業の場合は、直感的に操作できるようなボイスボットを選んだほうが良いでしょう。製品によっては、管理画面から簡単に会話パターンやシナリオを設定できます。
ボイスボットの効果を最大化するには、いくつかのポイントがあります。導入後のスムーズな運用につなげるため、事前に把握しておきましょう。
ボイスボットで対応できない複雑な問い合わせは、オペレーターにつなげるようにしましょう。有人対応との連携を高めることで、サービス品質や顧客満足度の向上が期待できます。そのためには事前にオペレーターへの導線を構築するのも大切ですし、ボイスボットを選ぶ段階で「有人対応との連携が可能なシステムなのか」を確認したほうが良いでしょう。
ボイスボットの運用では、音声データを音声認識技術でテキスト化して、問い合わせ内容を分析する作業が必要です。この作業を継続的に行い、ボイスボットの精度の改善や顧客ニーズの把握をします。
なお、顧客に最後まで電話対応していただけたか(完了率)をチェックし、完了率の向上を図ることは特に重要です。
ボイスボットには誤認識や誤回答をするリスクがあります。そのため、AIの精度を向上させるためには、チューニング(メンテナンス)が欠かせません。具体的な作業例としては、認識ミスが生じやすい箇所を特定し、会話の流れやシナリオなどを見直します。自動学習機能の有無に関わらず、人の手によって定期的なチューニングを行わなければなりません。
ボイスボットを活用することで、コールセンター業務の効率化や顧客満足度の向上など、さまざまなメリットが期待できます。人手不足に悩んでいるコールセンター管理者の方などは、導入を検討してみてください。
一方で、ボイスボットのデメリットや選び方のポイントを把握するのも大切です。自社の課題を解決するために必要な機能を備えているか、しっかりと確認することをおすすめします。
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