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ボイスボットとは?IVRとの違いや活用シーン、メリット・デメリット - CXジャーナル

作成者: CXジャーナル編集部|Aug 9, 2022 3:00:00 PM

ボイスボットとは、AIを活用した自動応答サービスであり、電話業務にかかる手間を削減します。コールセンターやコンタクトセンターに導入すれば、人手不足の解消、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。

本記事では、ボイスボットの概要やIVRとの違い、メリット・デメリットなどを解説します。自社に合ったボイスボットの選び方や運用のポイントも紹介するので、ボイスボットについて情報収集中の方は、ぜひご確認ください。

 

ボイスボットとは

ボイスボットの導入は、コールセンターの業務効率化につながります。まずはボイスボットの概要と仕組みを確認しましょう。

 ボイスボットの概要

ボイスボットとは、人工知能(AI)を実装した、自動音声応対システムのことを指します。コールセンターでの顧客対応業務を、AIによる音声対話エンジンが代行してくれるというものです。音声合成技術を活用しているため、人と会話をしているような自然な発声が可能です。

主にボイスボットの種類には、AIが完全に自動応対する対話型や、お問い合わせ内容を解析して担当の有人対応へ転送するタイプがあります。

ボイスボットの仕組み

ボイスボットは、音声認識や音声合成技術などを活用して、顧客の問い合わせに回答します。具体的なフローは以下の通りです。

①入電(利用者が発話)

②音声認識AIが発話内容を解析してテキスト化

③ テキスト化されたデータを自然言語処理システムが処理し、回答文を作成

④ 音声合成技術で回答文を読み上げて会話を進める

① 音声を受信 ……(繰り返し)

その後は、1〜4の手順を繰り返して応対します。

 

ボイスボットとIVRやチャットボットとの違い

顧客とのコミュニケーションを自動化するツールは、ボイスボットだけではありません。ここではIVR・チャットボットとの違いを解説します。

IVRとの違い

IVR(Interactive Voice Response)とは、自動音声応答システムのことです。IVRは、顧客が案内を聞いて該当するボタンをプッシュ操作することで、あらかじめ録音してある音声が自動再生されます。宅急便の再配達、サービスの受付や解約の申し込みなどによく利用されます。

IVRでは企業が用意した限られた選択肢を顧客が選択するため、企業にとってはボイスボットよりもシナリオを把握・管理しやすいと感じるでしょう。

しかし、顧客にとっては、必要の有無に関わらず流れる音声ガイダンスを最後まで聞く必要があり、良い顧客体験とは言えないでしょう。加えて、IVR上での操作を間違えると最初からやり直しになるという点は、ストレスの原因となりえます。

一方のボイスボットは、顧客の発話内容に合わせて適切なシナリオで会話を進めていくため、相対的に見てユーザーフレンドリーといえるでしょう。

IVRとは?コールセンターに導入するメリットとデメリット、費用の目安

チャットボットとの違い

チャットボットは、自動会話プログラムです。ボイスボットと同様にAIを実装しているケースも多いですが、ボイスボットが発話音声のやりとりであるのに対し、チャットボットはテキストでやりとりを行います。

つまり、チャットボットとボイスボットとでは、顧客の利用チャネルが異なります。PCやスマホを通してテキストで情報を求める顧客にとっては、チャットボットでのコミュニケーションが適していることが多いでしょう。

一方で、電話で急いで問い合わせたい、もしくはPCやスマホでのテキスト入力が得意ではない、といった顧客にとっては、ボイスボットでの音声コミュニケーションが適しているといえるでしょう。

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ボイスボットが活用されているシーン

顧客対応をスムーズにするボイスボットですが、どのような場面で使われているのでしょうか。ここではボイスボットの活用シーンを3つ紹介します。

 (1) 金融・保険、通信サービスでのコールセンターの各種受付

FAQやチャットボットといったノンボイスツールの活用が一般化している金融や通信サービスの領域ですが、未だに電話でのお問い合わせニーズは高く存在します。

そこで、「24時間365日稼働のコールセンター」を実現すべくボイスボットの導入も増えています。

(2) EC・通信販売での注文等の申し込み受付

EC・通信販売を運営するサービスでは、注文に関わるコミュニケーションはスピーディーに、解約に関わるコミュニケーションには丁寧に行うことが重要とされています。

そこで、スピーディーに行うべき注文手続きをボイスボットに任せ、丁寧に行うべき解約対応にコールセンタースタッフの有人対応リソースを割く、という形を採用する企業が増えています。

 (3) 飲食店やホテルの予約・受付

飲食店やホテルの予約・受付でもボイスボットの導入が進んでいます。昨今のボイスボットは精度が高く、顧客の音声を正確に聞き取れるうえ、ツールによっては多言語に対応するものもあります。そのため、各方面から寄せられる予約や受付に関するお問い合わせ対応を自動でこなすことができるのです。

ボイスボットを導入する6つのメリット

続いて、ボイスボット導入後に期待できる6つのメリットを見ていきましょう。

(1) 「あふれ呼」や「放棄呼」による機会損失を回避できる

ボイスボットを導入すれば、オペレーターが不在の場合にも顧客からの問い合わせに対応できます。これにより、顧客は自分のタイミングでアクションを起こすことができ、機会損失への対策になります。また、顧客はプッシュボタンの操作や人との会話をする必要がないため、問い合わせのハードルも下がるでしょう。

 (2) 夜間や営業時間外の対応が可能になる

オペレーターによる有人対応では、対応できる時間に限界があります。そのため顧客が問い合わせしたい時間にいつでも応対できるわけではありません。

ある調査によると、50%以上もの顧客が「夜間や深夜」でのカスタマーサポート対応を第一に望んでいる、という結果が出ています。顧客ニーズが最も大きい時間帯に事業会社側がカスタマーサポートを提供できていない、というのは由々しき事態といえます。



その点、ボイスボットであれば24時間365日いつでも電話でのお問い合わせに対応できるため、夜間や営業時間外でもカスタマーサポートを提供できるのです。

(3) オペレーターの負担軽減につながる

ボイスボットは自動応答で顧客の問題を解決するため、オペレーターが直接対応する案件が大幅に減少します。シンプルな問い合わせはボイスボットだけで完結するようになり、オペレーターの負荷は軽減するでしょう。また、複雑な問い合わせに対しても、ボイスボットが初期対応を代行してくれるため、オペレーターは顧客の用件を理解した上で対応に移れるようになります。

(4) オペレーター業務の効率化につながる

ボイスボットは、電話をかけた顧客から自動でヒアリングを行います。その際に顧客へ適切な回答をして解決させる、または適切なお問い合わせ先に繋げることもできます。頻繁に受ける質問への対応をボイスボットに任せれば、オペレーターの業務効率向上に繋がります。

また、ボイスボットによっては既存のクラウドPBXとも連携できます。チャットボットやクラウドPBXをボイスボットと連携させれば、テレワークにおけるお問い合わせ対応業務もかなりの効率化が見込めるでしょう。

 (5) 人材の定着に貢献する

コールセンター業務のネガティブな特徴として、精神的負荷が大きいことが挙げられます。受電数の多さなどにストレスを感じるオペレーターも多く、人手不足や離職率の高さが問題となっています。

これに対して、ボイスボットで業務フローや労働環境を改善すれば、オペレーターの定着率向上はもちろん、採用・教育コストの削減にもつながるでしょう。

(6) 顧客満足度の向上を図ることができる

ボイスボットを既存の社内ツールや顧客データと連携することで、顧客満足度の向上を図ることができます。

例えば、ECサイトを運営して顧客データを持っている場合、ボイスボットと顧客データを連携させて、定期便の配送頻度の変更等をボイスボットで受け付けることが可能になります。

ボイスボットの3つのデメリット

ボイスボットはコールセンター業務を効率化しますが、苦手な作業もあります。導入前に、以下の3つのデメリットを押さえておきましょう。

 (1) IVRに比べて精度が劣る場合がある

ボイスボットは、音声認識の精度が課題とされています。顧客自らが番号入力する従来のIVRと比較すると、誤認識が生じるリスクがあります。しかし、対応回数を重ねれば機械学習により対話の精度は向上が見込めます。

(2) 複雑な問い合わせ内容が正確に把握できないことがある

複雑な問い合わせ内容に対して、臨機応変な対応ができない場合があります。ボイスボットは、人間の複雑な心理や文章構造を読み取ることを苦手としているからです。例えば、ボイスボットが向いていない場面として、以下が挙げられます。

  • クレーム対応
  • カウンセリング
  • 相談


その他、雑音などが原因で顧客の発話内容を聞き取るのが困難な場合もあります。対策としては、顧客の発話内容を繰り返す設定を行い、認識ミスを防ぐのが一般的です。

 (3) 常に精度やシナリオ改善が必要となる

ボイスボットは、導入する段階でもある程度の性能はあるものの、人間の心理や複雑な会話構造が重なった音声情報の処理は困難です。そのため、ボイスボットに何度も対応を繰り返して学習させ、お客様窓口としての精度を上げる必要があります。

自社に合ったボイスボットの選び方のポイント

ここでは、自社に合ったボイスボットを選ぶための6つのポイントを説明します。

他システムとの連携の可否

現在使用している他の既存システムと連携できると、業務の効率化につながります。以下は効率化の具体例です。

  • 顧客とのやり取りをテキスト化し、自社の問い合わせシステムや顧客のSMSへ転送
  • 問い合わせ内容をチャットツールや外部のCRMに自動入力する

 

ボイスボット選びでは、自社で使用している各種システムとの相性を見るのも重要です。

会話内容を確認できる機能の有無

先述したように、AIの認識精度は100%ではありません。そのため、認識ミスを防止して顧客の安心感を高めるには、フォローアップ機能が付いた製品を選ぶのがおすすめです。具体的には、受付内容をSMS・メールなどで顧客に送信する機能があるかを確認しましょう。通話後のフォローアップがあれば、顧客は自身の要望が伝わっているかを判断できます。

自動学習機能の有無

ボイスボットに自動学習機能が付いていれば、自動的にAIの精度が向上します。メンテナンスの手間を削減できるのがメリットで、大手企業で採用されています。ただし、初期費用が比較的高く、回答の精度は完璧ではありません。

一方、自動学習機能がなく手動でチューニングするタイプでは、管理者が直接会話データを分析・管理します。AIが間違った回答をするリスクは軽減しますが、管理工数が増えるのがデメリットです。

サポート体制の充実度

導入後に手厚いサポートを受けたい場合、サポート体制の充実したボイスボットがおすすめです。専門家のアドバイスやチューニングのサポートを受けることが可能で、疑問点があれば迅速に解消できます。また、トラブルが発生したときに備え、相談窓口の有無も確認しておきましょう。

同時接続できる件数

同時接続できる件数とは、ボイスボットが同時に対応できる顧客の数です。同時接続できる件数に対して架電が多すぎると、「あふれ呼」が発生します。顧客満足度を下げないためにも、コールセンターの稼働状況やボイスボットのキャパシティには注意しましょう。

管理画面の使いやすさ

管理画面がわかりやすく、誰でも運用できることは重要です。特にエンジニアが足りない企業の場合は、直感的に操作できるようなボイスボットを選んだほうが良いでしょう。製品によっては、管理画面から簡単に会話パターンやシナリオを設定できます。

ボイスボットを活用するためのポイント

ボイスボットの効果を最大化するには、いくつかのポイントがあります。導入後のスムーズな運用につなげるため、事前に把握しておきましょう。

有人対応との連携を行う

ボイスボットで対応できない複雑な問い合わせは、オペレーターにつなげるようにしましょう。有人対応との連携を高めることで、サービス品質や顧客満足度の向上が期待できます。そのためには事前にオペレーターへの導線を構築するのも大切ですし、ボイスボットを選ぶ段階で「有人対応との連携が可能なシステムなのか」を確認したほうが良いでしょう。

蓄積した音声データを使用して改善を行う

ボイスボットの運用では、音声データを音声認識技術でテキスト化して、問い合わせ内容を分析する作業が必要です。この作業を継続的に行い、ボイスボットの精度の改善や顧客ニーズの把握をします。

なお、顧客に最後まで電話対応していただけたか(完了率)をチェックし、完了率の向上を図ることは特に重要です。

定期的なメンテナンスを行う

ボイスボットには誤認識や誤回答をするリスクがあります。そのため、AIの精度を向上させるためには、チューニング(メンテナンス)が欠かせません。具体的な作業例としては、認識ミスが生じやすい箇所を特定し、会話の流れやシナリオなどを見直します。自動学習機能の有無に関わらず、人の手によって定期的なチューニングを行わなければなりません。

ボイスボットの活用事例4選

事例1:株式会社NTTドコモ



▼企業概要
〔業種〕 IT・通信
〔事業内容〕 通信事業
〔導入目的〕 カスタマーサポートの自動化比率向上、応答率の改善

▼課題
● 既存のFAQシステムの利用率が上がらない
● 自然災害やコロナ禍に対するBCP対策

▼効果
● 自動応答化比率20%超えを実現
● 70〜80%の問い合わせの自動振り分けに成功
● 約60%の顧客がボイスボットにて用件受付を完結
 
NTTドコモの取り組みを詳しく知りたい方はこちら
「サポートへの入電のうち20%以上をボイスボットで自動応答化」

 

事例2:三井住友海上あいおい生命保険株式会社



▼企業概要
〔業種〕 金融(生命保険)
〔事業内容〕 生命保険業
〔導入目的〕 応答率向上とBCP対策強化

▼課題
● 受電件数の増加による応答率の低下
● 自然災害やコロナ禍に対するBCP対策

▼効果
● 応答率の改善
● 入電数の1割を自動応答化
● コロナ禍の電話急増の影響を抑制
 
三井住友海上あいおい生命の取り組みを詳しく知りたい方はこちら
「給付金請求お申出受付を自動化しBCP対策強化と応答率改善を実現」
 
 

事例3:株式会社ハルメク・ビジネスソリューションズ



▼企業概要
〔業種〕 通信販売
〔事業内容〕 コールセンター、フルフィルメントセンターの受託
〔導入目的〕 注文受付の放棄呼削減

▼課題
● 事業拡大に比例した入電数増により放棄率上昇
● 注文の電話を逃すことによる機会損失

▼効果
● 月間1万件を超える注文受付の自動応答化
● 放棄率を10〜20%改善
● 自動応答した注文のハンドリングタイムを25%削減

ハルメクの取り組みを詳しく知りたい方はこちら
「通販の注文電話を自動応答化、放棄率を約20%改善し機会損失を縮小」

ボイスボット活用で、カスタマーサービスをアップデートしよう

ボイスボットを活用することで、コールセンター業務の効率化や顧客満足度の向上など、さまざまなメリットが期待できます。人手不足に悩んでいるコールセンター管理者の方などは、導入を検討してみてください。

一方で、ボイスボットのデメリットや選び方のポイントを把握するのも大切です。自社の課題を解決するために必要な機能を備えているか、しっかりと確認することをおすすめします。

記事内の事例で使っているボイスボットについて詳しく知りたい方は、こちらから資料ダウンロードいただけます。