株式会社PKSHA Communicationは2024年11月7日、PKSHA AI Suite for Contact Centerを利用いただいているコンタクトセンターのリーダー層の方に向けたイベント「PKSHA Communication Users’ Conference for Leaders」を東京・半蔵門で開催いたしました。
イベントではPKSHA Communicationの下沢将啓事業戦略開発本部本部長が、生成AIの最新動向と、PKSHA AI Suite for Contact Centerのプロダクトロードマップなどについて講演しました。
下沢は顧客接点領域に関わる生成AIの最新動向について、ここ半年間での大きなトピックを3つ挙げました。
1つ目は米OpenAIが2024年5月にリリースしたマルチモーダルモデルのLLM(大規模言語モデル)「GPT-4o」です。マルチモーダルモデルについて下沢は、「画像やテキストなど、様々な形式の入力データや出力データを同時に扱うことができるのが特徴です」と説明しました。
これにより例えば、企業内の業務フローの図をアップロードし、その流れをGPT-4oに読み込ませ、テキストで解説してもらう、といったことが可能になりました。
続いて紹介したのが米Anthropicが開発したAIアシスタント「Computer Use」です。下沢はその特徴を「対話的な指示が可能になったことです」と説明しました。
例えば、AIアシスタントに対し「Aのサイトに行って、Bに関連する商品の情報をいくつかあつめてくれ」と指示を出します。するとAIアシスタントが実際にWebブラウザからサイトにアクセスし、ログインなどの必要な操作をした上で、商品情報を取得します。
下沢は「AIが本当に皆様と同じ流れで、PCを操作します」と解説しました。目標が上手く達成できない場合は、やり方を変更して試行錯誤します。下沢は「とても柔軟なRPAのようなシステムを、対話形式で扱えるようになったのが大きな点です」と語りました。
3つ目は、これもOpenAIがリリースした「Realtime API」です。従来、AIが顧客と音声で対話する場合、顧客が話した音声を1度テキスト化し、そのテキストから必要な判断を下し、返答をテキストで用意した後、音声を合成して返答するのが一般的な流れでした。
しかし、Realtime APIは音声を受け取った際、テキスト化などの過程を経ず、ダイレクトに音声を合成して返答します。下沢は「非常にレスポンスが高速で、同時通訳なども実現できるようになりました」と話しました。
これまでの生成AIはテキストの要約や原稿のドラフト作成、チャットへの回答といった用途に使われてきました。これからの生成AIについて下沢は「コンタクトセンターの業務をより直接的に支援する形で進化していきます」と指摘し、「顧客とのコミュニケーション支援やアフターコールワークにおける文章生成、お客様の声の分析など様々なところに生成AIを介在させていく未来が、すぐそこまで来ています」と強調しました。
このようにAIを介して様々なデータ活用が可能になってきたことを踏まえながら、PKSHAはPKSHA AI Suite for Contact Centerのロードマップを描いています。
下沢は企業におけるデータ活用について「現在は個人や業務、部署にデータが滞留しています。これを全社で循環させ、AIで価値を出していくことが重要です」と話しました。データが循環すると、「お客様の体験が向上したり、コンタクトセンターの生産性が向上したり、コストが削減したりといった様々なメリットがあります」(下沢)。
次に、PKSHA AI SaaSの最近のリリースやアップデートについて紹介しました。最初はFAQ作成を支援する「PKSHA Knowledge Stream」です。PDFのドキュメントや、通話やメールのログからFAQを自動作成することができます。
新規のFAQが既存FAQと重複していないかをチェックする機能や、FAQのカテゴリーを自動で分類する機能なども備えています。下沢は「新サービス・商品のリリース時のFAQ作成や、既存のFAQの日々のメンテナンスが大幅に効率化します」と説明しました。
続いてPKSHA FAQのお問い合わせフォームからのお問い合わせに対し、メールでの回答を自動生成するオプション機能です。
お問い合わせに対応する回答を作成できるよう、複数のFAQから該当箇所を検索し、文面を自動作成します。「自動でのご対応が可能なので、お問い合わせへの回答速度が大幅に向上します」(下沢)。
PKSHA Speech Insightは音声認識によってコンタクトセンターのオペレーターを支援するサービスです。通話内容を音声認識してテキスト化し、それを要約するなど、アフターコールワークで必要な形に合わせて加工します。
今回新たに、ユーザーが自由に設定した属性情報に合わせた内容を、通話から自動抽出する機能を追加しました。「お名前」「生年月日」「支店名」「お問い合わせ内容」などの設定に合わせ、通話のログからAIが該当箇所を自動抽出します。
PKSHA Analyticsは、PKSHAのプロダクト活用を支援するためのコンサルティングサービスです。例えば顧客の自己解決率を高めたい場合に、「お客様サポートのWebの動線をどう変えていけば良いか」、「どこに電話番号を表示するべきか」、「どういった内容のFAQを作っていくべきか」、といった課題を解決するためのご支援をします。
下沢は「お電話いただく理由を分析し、FAQの書き方を変えるのか、検索のパラメーターを変えるのか、FAQをもっと追加したほうが良いのか、といったことを検討し、適切な改善施策をご提案させていただきます。これによって大幅な入電数の削減に成功された企業様もいらっしゃいます」と説明しました。
下沢は「社内での質問応答や、業務に使うドラフトの作成といった用途では生成AI活用が進んでいる一方で、お客様対応の領域の活用に関してはまだ伸びしろがある状態です」と指摘しました。
顧客コミュニケーションに生成AIを導入する場合の課題として、下沢は4つを挙げました。1つ目は情報セキュリティです。「国内サーバーで完結するのか、閉域網は構築可能なのか、自社のポリシーに対応しているのか、といったことが課題になっています」(下沢)。
2点目は精度です。生成AIは「ハルシネ—ション」と呼ばれる、巧妙な嘘をもっともらしく言ってしまうという問題があります。顧客コミュニケーションにおいてハルシネーションの問題を解決するためには、「ハルシネーションを検知してすぐに有人の窓口に繋ぎ直したり、事前にハルシネーションが起きる可能性があることをご説明することなどが必要です」(下沢)。
3つ目はコストです。生成AIは主にグローバルベンダーが従量課金で提供しています。自社で想定している使い方をした場合、コストはどれくらいになるのか、しっかりコントロールできるのかといったことを事前に検討する必要があります。
4つ目はスケーラビリティです。生成AIを提供しているグローバルベンダーは「1分当たりの入出力文字数の制限を設けています。」(下沢)。この問題はPOCでは気づきにくいため、「あらかじめ十分な量を処理できるのかを検討しておくことが重要です」(同)。
続いて下沢は顧客コミュニケーションにおける生成AIの活用ポイントについて説明しました。生成AIを使う場合、どのようにして精度高く情報を提供していくかがよく話題になりますが、「実際にはそれ以外にも活用のポイントがあります。大きく3つのポイントで活用できると考えています」(下沢)。
1つ目のポイントは要件の特定です。顧客からの曖昧な説明や要求から、生成AIがその意図を理解します。
2つ目のポイントは情報の取得です。特定した用件に応じて、必要な情報を、できるだけ少ない発話数で効率的に取得します。取得する情報とは例えば、顧客の名前、住所、現在の状況などです。顧客の発話から必要とする情報を正確に抽出したり、聞き取れなかった情報を再度聞き返したりといったことが必要になります。
3つ目が情報の提供です。取得した情報を基に、FAQや社内文書から当該箇所を検索し、回答を生成します。
1つ目の用件の特定と、2つ目の情報の取得を適切に行うことで、「3つ目の情報提供において、リスクある情報の提供を避けることができます。ハルシネーションの心配も無くなります」(下沢)。
下沢は生成AI活用について「使うポイントの選択やリスクの見極めなど、幅広い視点で考えることが必要です」と指摘し、「PKSHAはそういったところも皆様と一緒に考えていけたらと思っています」と続けました。
下沢は「最近の生成AIの活用の広がりや機能の充実により、顧客コミュニケーションでの実用化が可能となりました。当社では、この分野でしっかりとしたご支援を提供できる体制が整っております」と話しました。
PKSHAは、企業様が現在の顧客コミュニケーションを生成AIでどのように置き換えるか、置き換えた場合にどういったことが起こるか、といったことをデモや検証サービスを通じてご案内しています。下沢は「皆様の事業やサービスの方向に沿った顧客コミュニケーションの進化について、一緒に考えさせていただき、ご支援させていただけたらと思います」と話しました。
▼過去開催イベントのレポートはこちら
PKSHA Communication Users’ Conference 2022
PKSHA Communication Users’ Conference 2023 in 大阪