CXジャーナル - 顧客と向き合うすべての人の“よりどころ“

ネガティブチャーンとは?計算方法や発生させる方法、注意点 - CXジャーナル

作成者: CXジャーナル編集部|Nov 13, 2022 3:00:00 PM

サブスクリプション型サービスの提供により毎月安定した収益が得られることから、SaaS事業が注目を集めるようになりました。
そうしたSaaS事業を展開する企業にとって、非常に重要な役割を持っているのがネガティブチャーン。

SaaS事業はユーザー数が多いほど増収に繋がりますが、解約率と収益の関係について把握するのは困難です。そこでネガティブチャーンというKPIを用いて分析することで、SaaS事業における課題や取り組むべき戦略の手掛かりとなります。

本記事では、ネガティブチャーンの計算方法や発生させる方法、注意点などについて解説していきます。

ネガティブチャーンとは

ネガティブチャーンは、SaaS事業を展開している企業にとって重要な数値です。算出方法や数値が示す意味が理解できれば、取り組むべきビジネス戦略が見えてきます。

(1) ネガティブチャーンの意味

ネガティブチャーンとは、自社サービスの解約によって減少した収益の額と、既存顧客から得た新規の収益額を比較した際、既存顧客から得た新規の収益額が上回った状態のことを言います。

既存顧客から得た新規の収益の内訳は、アップセルやクロスセル効果によるものが挙げられます。
アップセルとは、顧客一人当たりの単価を上げるための取り組みを指し、
クロスセルとは、商品のセット販売やキャンペーンなどで上乗せ販売を実現させるための取り組みを指します。

つまり、ネガティブチャーンの状態にあるときは、レベニューチャーンレートがマイナスになっている状態でもあります。

※レベニューチャーンレートとは、収益を基準に割合を算出するチャーンレート(解約率)のことです。

さらにレベニューチャーンレートは、「グロスレベニューチャーンレート」と「ネットレベニューチャーンレート」の2つに分類できます。
「グロスレベニューチャーンレート」は、解約やダウングレードによる損失額をベースに算出されるチャーンレート。
「ネットレベニューチャーンレート」は、解約やダウングレードによる損失額と、アップグレードやクロスセルによる増加分を合算した金額をベースにして産出されるチャーンレートです。
ネットレベニューチャーンレートのみマイナスの値が算出される状態がネガティブチャーンです。

▼関連する記事


(2) SaaSビジネスにおいてネガティブチャーンが重要な理由

収益拡大のためには、たとえ解約やダウングレードによる損失が出た場合も、他の収益で補填する必要があります。とはいえ新規顧客の獲得にはコストがかかります。そこでネガティブチャーンの達成を目指すことで、大きなコストをかけなくても既存顧客による収益を安定させられ、企業の成長につながります。

(3) ネガティブチャーンの計算方法

ネガティブチャーンの計算には、ネットレベニューチャーンレートの計算式を使用します。

【ネガティブチャーンを算出するための計算式】
{(当月の解約で失ったMRR – 当月のExpansion MRR)÷ 先月末時点でのMRR}×100

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは、サブスクリプションやクラウドサービスなどから毎月繰り返して得られる収益のことです。
また、Expansion MRRとは前月よりも上位のプランへアップグレードした顧客のMRRのことで、日本語では拡張月間経常利益と訳すことができます。

もう少し具体的に、計算式を利用してみます。
ある企業が展開しているSaaS事業において、一定期間、以下の状態になったとします。

・先月末時点のMRR:50万
・当月に解約によって損失したMRR:10万円
・当月にアップセルやクロスセルによって増額したMRR:15万円

計算式に当てはめると以下のような式ができあがります。

{(10-15)÷50}×100=-10%

算出された数値がマイナスということは、損失分よりも増額分が上回っていることを表しています。
つまり、ネットレベニューチャーンレートがマイナスであり、ネガティブチャーンの状態であるとわかります。

ネガティブチャーンを発生させる方法

コストをかけずにSaaS事業の収益を上げるには、新規顧客の獲得よりもネガティブチャーンの状態を作り出すことが重要です。ネガティブチャーンの状態にする方法は複数あります。

(1) 解約率を減少させる

ネガティブチャーンを発生させるためには、ベースとなる収益を減らさないよう解約率を下げることが大切です。
解約率を減らすためには、商品やサービスの品質向上、料金プランや価格の見直しなど、改善や開発に取り組む必要があるでしょう。

(2) MRRを増加させる

既存顧客からアップセルやクロスセルを獲得することでMRRを増加させれば、最終的にはレベニューチャーンレートの改善にも繋がります。

たとえば、

●既存顧客に、展開しているSaaSサービスへのアカウントを追加してもらう
●既にサービスを利用している人向けに、アップグレードの勧誘を行う

などが効果的です。

(3) 料金の値上げやオプションの有料化を行う

提供しているサービスの値上げを行うことで、既存顧客からの収益を上げます。
ただし、料金の値上げは顧客の反発を非常に買いやすく、解約に繋がりやすいです。そのため値上げをする分の追加サービスの提供や優遇措置を用意する必要があるでしょう。

(4) 顧客ロイヤルティの高いロイヤルカスタマーを育成する

新規顧客の獲得よりも、既存顧客一人あたりからのLTV(顧客生涯価値)を上げた方が、よりコストが抑えられるうえ収益に繋がります。

そのためには、カスタマーサクセスを作り、顧客ロイヤルティの高いロイヤルカスタマーの育成が不可欠です。
ロイヤルカスタマーは企業への根強いファンとなってくれるため、多少のサービスの値上げでも解約する可能性は低いです。さらに多くのサービスを利用してくれるため、企業にとって非常に心強い存在です。

ネガティブチャーンの達成を目指すときの注意点

ネガティブチャーンの達成は難易度が高いです。
ネガティブチャーンの達成のみにこだわりすぎると、既存顧客を大切にして解約率を下げ、収益を上げるという本来の目的を見失いかねません。
そのため、こだわりすぎて強引なクロスセルを行ったり大幅にサービス料金を引き上げたりすると、かえって顧客満足度が下がる恐れがあります。

ネガティブチャーンはあくまでも努力目標として、解約率の低減や顧客との関係性の構築など、顧客ベースでサービスの向上に努めることを第一優先にすべきでしょう。

ネガティブチャーンはSaaS事業の指標として活用すべし

ネガティブチャーンは、SaaS事業において、P/Lの改善やカスタマーサクセス(カスタマーセールス)、カスタマーサポートなどの改善点を導き出すために、重要視すべき数値です。
しかし他方では、顧客満足度を下げてしまうリスクも孕んでいます。

そのため、ネガティブチャーンを考える際には、顧客ロイヤルティ向上施策やアップセル/クロスセル活動をはじめとしたカスタマーサクセス戦略と十分に同期をとることが重要です。

この記事を読んだ方におすすめの資料

カスタマーハラスメントからオペレーターを守れ!

社内FAQで応対品質を上げ、離職を防ぐ方法

本資料の概要

  • 深刻化するカスタマーハラスメント、その要因とは?
  • カスタマーハラスメントから守るためには
  • オペレーターの応対品質とナレッジアップを同時に実現するFAQシステム

その問い合わせ、FAQページのせいかもしれません

お客様を迷わせないFAQ作成のポイント

本資料の概要

  • 顧客データからみるFAQページの課題
  • “自己解決できるFAQ”とは? 考慮すべき3つのポイント
  • FAQはシステム化する時代へ

そのサポート、IoT、サブスクリプション時代の顧客ニーズに対応できている?

利用者の声から分かるサポートコミュニティの新たな可能性

本資料の概要

  • コンタクトセンターが取り巻く課題
  • コンタクトセンターにおけるサポートコミュニティの活用
  • 利用者アンケートからみるサポートコミュニティの効果
  • サポートコミュニティを賢く利用するには