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LTVの意味と計算方法|顧客生涯価値を向上させる3つのポイント - CXジャーナル

作成者: CXジャーナル編集部|Jun 12, 2022 3:00:00 PM

企業が売り上げを増加させる方法は、大きく分けると新規顧客の開拓か既存顧客からさらなる利益を上げるかのいずれかです。

LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)とは、1人または1社の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益を意味し、LTVは既存顧客からさらなる利益をあげるための考え方です。
顧客の嗜好や購買行動が多様化し、人口減により新規顧客開拓の難易度が上がり続けている現代では必須の考え方といえます。

本記事では、LTVの定義から具体的な活用方法まで解説します。

LTV(ライフタイムバリュー)とは

まずは、LTVの定義について説明します。既存顧客に目を向けたLTVという考え方は、企業の長期的な成長に欠かせないものになりつつあります。

(1) LTVの概要

LTVは、Life Time Value(ライフタイムバリュー)の略語で、日本語に訳すと「顧客生涯価値」となります。1人の顧客または1社との取引開始から終了までの間に得られるトータルの利益を指します。

LTVを高める方法は、主に2つあります。

● 商品やサービスの提供期間を延ばす
● 商品やサービスの購入頻度を増やす

商品やサービスを定期購入する「サブスク」は、サービス期間を伸ばしてLTVを高める施策です。また、買い切り型の商品やサービスであれば、購入頻度を増やしてもらうことでLTVを高められます。

ここで注意したいのが、顧客が商品やサービスに満足しなければリピートには繋がらず、LTVを高めるのは難しいという点です。
企業目線で利益を増やそうとするのではなく、顧客満足度を高めることが重要です。

このように、LTVとは、1人の顧客に対して自社がいかに多くの価値を提供し、その対価として得られる利益を増やせるかを考えることといえます。顧客視点が出発点であることを忘れないようにしましょう。

(2) LTVの計算方法

LTVの一般的な計算方法は次の通りです。

LTV = 平均顧客単価 × 収益率 × 購買頻度 × 継続期間

子ども向けの学習塾を例に挙げて考えてみましょう。
ある子どもが小学3年生から小学校卒業まで学習塾に通った場合のLTVを計算します。

LTV = 1コマ5,000円 × 収益率60% × 週2コマ × 53週間(年)× 継続期間3年 → 95万4,000円

なお、顧客1人または1社にかかる新規獲得のコストと維持コストを加えてLTVを計算するケースもあります。その場合、先ほどの例を当てはめると計算式は次のようになります。

LTV = 95万4,000円 -(新規獲得コスト5万円 + 維持コスト5万円 × 3年) → 75万4,000円

(3) LTVが重要視される理由

LTVが重要視されるようになった背景に、企業が新規顧客の獲得に苦戦していることが挙げられます。

新規顧客の開拓には、既存顧客を維持する場合と比較して5倍の時間と費用が発生するといわれています。これを「1:5の法則」といい、新規顧客の開拓で顧客と接点を生み出して売上に結びつけるまでには、膨大なコストと時間がかかります。

日本では人口減少の影響もあり、新規顧客を獲得する難易度は上がっているといえます。そのため、既存顧客をファン化して取り込むための施策を打てるかどうかが、長期的に見て経営に大きな影響を与えます。

LTVの向上に繋がる3つの指標

ここからは、LTVの向上につながる3つの指標について説明します。指標を参考にしながら中長期的な目標を定め、できることからはじめていきましょう。

(1) 顧客単価

顧客単価とは1回の取引当たりに支払われる売上のことです。顧客からの単価が上がればLTVは増加します。顧客単価の上げ方としては、アップセルとクロスセルの2種類が代表的です。

アップセルとは、より高額な商品やサービスの販売を図り、利益を向上させることです。

一方でクロスセルとは、セット販売のように、他の商品やサービスを追加購入してもらうことです。学習塾の場合、夏休みや冬休みの追加講習や塾主催の模試などがクロスセルにあたります。

(2) 契約期間

契約期間が延びれば、企業が得られる利益も増えます。サブスクリプションやBtoBにおける保守点検など、定期契約の事業において特に重要性が高い指標といえます。

(3) 顧客ロイヤルティ

「ロイヤルティ」は「忠誠心」を意味し、顧客ロイヤルティとは、自社のサービスや商品に対する顧客の愛着や信頼のことです。顧客ロイヤルティを高めることで、リピート率の向上や単価アップなどが見込めます。

さらに、顧客ロイヤルティを高めることは新規顧客の開拓にもつながります。人間の心理として、自身が使ってみて気に入った商品やサービスは、親しい人に紹介したくなるものです。それにより、口コミによる集客・宣伝効果が見込めます。

(4) 解約率(サービス離脱率)

解約率とは、サービスを利用した顧客が再びサービスを購入することなく離脱する割合のことです。主に、サブスクリプション型などの定期的に課金が発生するビジネスモデルでLTVを算出するときに加味する要素です。解約率を下げることでLTVが高まります。

LTVの向上施策

ここからは、LTVを向上させるための施策を説明します。

(1) 値上げや商品点数の増加

商品やサービスを値上げすることで、購入頻度が同じでも顧客単価が向上します。
ただし、値上げは顧客離れにもつながるため、慎重かつ顧客の理解を得られるように進めることが大切です。
他業界まで含めて、各企業が値上げを行なっているタイミングなどを調べてみましょう。

例えば、テーマパーク業界では、新しいアトラクションを追加したタイミングで値上げをするケースがあります。
商品点数を増やせばクロスセルの提案がしやすくなります。商品点数を増やすためには、顧客の課題解決につながる商品やサービスの創造が不可欠です。自社の既存顧客がどのような課題を抱えているのかを知ることから始めましょう。

顧客の問題解決について考える際は、顧客のさらなる利便性を意識すると良いでしょう。
例えば、財務管理のソフトを契約している企業がオプションを追加すると、今は手作業で行っていることが自動化できるという具合です。

(2) 生産効率の向上

生産性を改善し、売上に対する原価を減らすことで、LTVの向上を図れます。原料費や人件費の削減なども、同様にLTVの向上につながります。他にも、人材育成により業務の習熟度を上げ、生産性を上げる方法も有効です。

改善によって最も高い効果が見込める分野から着手していきましょう。短期的な効果に加えて、長期的な効果を同時に考えることも大切です。

(3) One to Oneマーケティングの実施

One to Oneマーケティングとは、従来の画一的なマーケティング手法とは異なり、一人ひとりの顧客への適切なアプローチにより、顧客との良好な関係を築くためのマーケティング手法です。

顧客ロイヤリティの向上に密接に関わる重要な考え方で、具体的な方法としては、適切なタイミングでの提案や、メルマガによる継続的なコミュニケーションなどが挙げられます。

継続的なアプローチがうまくいくと、顧客が週次メルマガを楽しみにしてくれたり、街中で自社の店舗や広告が目に入ったときに友人に紹介してくれたりということが起こります。この状態が、顧客ロイヤルティが上がった状態です。

One to Oneマーケティングを実施していくためには、顧客の情報を適切に管理して施策に反映する仕組みが必要です。顧客情報を集約、分析できるCRM(顧客関係管理)などのツールの導入も検討しましょう。

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LTVの向上は顧客への価値提供が必要不可欠

企業や顧客を取り巻く環境は変化のスピードが早まり、予想がつきにくい時代といわれています。しかし、企業が優先して取り組むべきことは顧客への価値提供です。それは、今も昔も変わりません。

顧客への価値提供を続けていくことでファン化につながり、やがて顧客への貢献がLTVの向上という形で企業に返ってくるでしょう。

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