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コールセンターにおけるエスカレーションの意味は?ルールや失敗例 - CXジャーナル

作成者: 西森 晃|Apr 13, 2022 3:00:00 PM

コールセンターには日々多くのお問い合わせがあり、常に適切な処理が求められます。ときにはクレームや苦情、割引要請などの無理難題、専門的な質問など、オペレーターでは対応しきれないケースも想定されます。
そうしたケースで役立つのが「エスカレーション」です。

エスカレーションとは、担当者が対応できない事案を上司などに報告し、対応を引き継ぐことを意味します。適切なエスカレーションによってオペレーターの負担を軽減し、顧客満足度の向上にも寄与します。

本記事では、コールセンターにおけるエスカレーションの定義や実施方法、注意点について分かりやすく解説します。

エスカレーションの概要

まずは、定義や必要になる状況など、エスカレーションの概要について説明します。エスカレーションについて理解を深め、オペレーターの教育に活かしましょう。

(1) エスカレーションとは

エスカレーションは英語の「escalation(段階的な上昇・拡大)」が由来で、業務の担当者が上位者に判断や指示を仰いだり、対応を要請したりすることを意味します。

従来では、顧客対応を行うコールセンター(コンタクトセンター)で用いられる言葉として一般的でしたが、現在では広くビジネスシーンで使われるようになってきています。

エスカレーションは、何らかの問題が発生した際に行われます。そのため、問題が起きた際の対処の流れをまとめた「エスカレーションフロー」をあらかじめ作成しておく必要があります。

(2) インシデントとは

コールセンター(コンタクトセンター)で発生した問題やイレギュラーなお問い合わせを「インシデント」と呼びます。インシデントは「好ましくない出来事・異変」を意味し、エスカレーションの対象となります。

インシデントに含まれるのは、顧客・ユーザーからのクレームや苦情だけではありません。値引き交渉や、Web公開しているFAQコンテンツだけではカバーしきれない専門的な内容のお問い合わせなど、「通常とは異なる問い合わせ」の総称という意味もあります。

お問い合わせ内容に対してサポートが完了するまでのサービスを「1インシデント」と数えることも覚えておきましょう。

インシデントと似た言葉に「アクシデント」がありますが、アクシデントは「災難・事故」を意味し、すでにトラブルに発展した事象を指します。インシデント(予兆)がアクシデント(事象)に発展しないよう、インシデントが起きた段階で適切に対処することが大切です。

インシデント管理については、以下の記事で詳しく解説しています。
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(3) エスカレーションフローとは

エスカレーションフローは、エスカレーションを実施する流れのことです。
コールセンターでは、オペレーターからSV(スーパーバイザー)もしくは上司に情報を伝達する流れを指します。

インシデントが発生した際の対応をあらかじめエスカレーションフローとしてまとめておくことで、エスカレーションが必要になった場合に適切な対処ができます。

エスカレーションフローのルール

インシデントが発生した際は、迅速かつ適切に対処する必要があります。あらかじめ対処方法をルール化しておくことで、不要な混乱を避けられます。

エスカレーションフローのルールを制定する際は、以下のポイントを意識しましょう。

(1) 通報者の責任は問わない

インシデントが発生すると、オペレーターは「上司に叱責されるのではないか」という不安から、自分でなんとか問題を解決しようと試みることがあります。しかし、インシデントの内容がクレームやトラブルだった場合、上司に報告しないことでかえって事態が悪化してしまう可能性があります。

発生の責任を通報者に問わないことをエスカレーションフローに明示し、オペレーターが躊躇なくエスカレーションを実施することができます。

口頭で伝えるのではなく、マニュアルに「当事者の責任を問わない」と明記することがオペレーターの安心に繋がります。
たとえエスカレーションが誤報であっても責任を問わないことも重要です。

(2) エスカレーションのレベルを分類する

コールセンターでは、クレームから専門的な問い合わせまで、日々さまざまなインシデントが発生します。インシデントを緊急性や重要度によってレベル分けし、レベルによって伝達方法や伝達先を分けておくことで適切な対処ができるようになります。

特に、高レベルのインシデントが発生した際の対処方法は情報伝達と高い役職までの報告がスムーズに進むよう、エスカレーションフローを整理しておきましょう。

(3) エスカレーションの手段を明確化する

急を要するインシデントの場合、エスカレーションが遅くなるとトラブルが拡大する可能性があります。電話やメール、チャットなど、エスカレーションの手段をマニュアルで明確化しておくことが大切です。

「何分以内にチャットへの返信がなければ電話連絡に切り替える」など、担当者にコンタクトできなかった場合の対応も考えておくと良いでしょう。

エスカレーションが失敗する理由

エスカレーションフローを定めて運用を開始しても、仕組みがうまく機能せずに対応が遅れてしまうことがあります。

エスカレーションが失敗する原因には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、原因と併せて解決策も紹介します。

(1) プロセスや基準などが未定義

エスカレーションでは、「どのようなケース」に「どのような方法」で「誰に」情報伝達するのか明確化することが大切です。エスカレーションを正しく定義し、情報共有することで、インシデントの放置や対応の遅延を防止できます。

他部署との連携が求められるケースもあるため、関係部署と連携を取り、常に最新の情報を共有することが大切です。

エスカレーションが発生した後は、「どう対応するべきだったか」というナレッジをコールセンター内で共有しておきましょう。単にオペレーターの知識が足りなかったというケースも考えられるため、ナレッジを共有することで、次に似たようなインシデントが発生した際に適切な対応が取れる可能性が高まります。

(2) 管理の不徹底と担当者の負担

インシデントが発生し、マネージャーやSVへの報告まではスムーズに進んだものの、エスカレーションされた側が状況を把握するのに時間がかかり、対応が遅れてしまうケースがあります。

インシデントが発生したことで、オペレーターには多少なりとも心理的なプレッシャーがかかります。事象をうまく説明できないこともあるため、リアルタイムで対応履歴などの状況が把握できるよう「見える化」することが重要です。

適したシステムを導入して担当者の負担を軽減し、インシデントを適切に管理する環境を整えましょう。システム導入後は、定期的にルールを見直して運用方法を改善していくことも大切です。

エスカレーションフローを整備して不測の事態に備えよう

コールセンターにとってイレギュラーな事象である「インシデント」。エスカレーションフローを整備することで、マニュアルではカバーしきれない不測の事態が発生しても適切な対応が取れるようになります。

対応が遅れたことによって新たなクレームに発展しないよう、できる限りスピーディに対応できるようなフローを考えましょう。オペレーターが迷いなくエスカレーションするためには、曖昧な定義を排除し、「どのようなケース」に「どのような方法」で「誰に」情報伝達するのか明確化することが大切です。

エスカレーションフローを活用してインシデントへの対応方法を定め、オペレーターの負担を減らしながら顧客満足度の向上を目指しましょう。

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