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会社という組織で事業やプロジェクトを動かしていくためには、いかにチームを機能させるか、メンバーに動いてもらうか、という話になります。そして、その手段となるのがコミュニケーション。
ただ、コミュニケーションにはコストがかかっていることを忘れてはいけません。
この記事に辿り着いた方は、日頃から仕事の中で
「人に聞かれたり/自分が聞いたりで、なかなか作業が進まない」
「なんでこんなに意思決定が遅いんだろう?」
といったことを感じることが多いのではないでしょうか。
本記事では、コミュニケーションコストの意味・考え方から、個人・組織で生じるコミュニケーションコストが高いケース、それらの改善方法までをご紹介していきます。
コミュニケーションコストとは、「情報伝達・意思疎通にかかる時間や労力」のことをいいます。
つまり、コミュニケーションコストが低ければ低いほど、複数人で取り組む仕事がスピーディーに進みます。
では逆に、「コミュニケーションコストが高い状態」というと、どのようなケースがあるでしょうか?
社内で情報が公開・共有されていないことが原因で生じるコミュニケーションコストです。
・●●についてのデータ・ファイルってどこかに格納されてるんだっけ?
・社内でどこの部署がどこまでを管轄してるのかな?
・その部署の上長・窓口は誰なんだっけ?
・直接相談していいのか、それとも上長を通した方がいいのか?
etc.
新入社員が必ずと言っていいほど直面するケースですが、これは必ずしも新入社員にとってだけの話ではありません。皆さんも日々の業務の中で、「どこだっけ?」「誰だっけ?」と他のメンバーへ聞いた経験があるのではないでしょうか。
社内申請や業務フロー、社内規定などのルールについて最新の情報が集約されていない、もしくは情報の露出場所が適切でないことが原因で生じるコミュニケーションコストです。
財務経理や法務、人事など、経営管理部門の方々にとってはとくに、悩ましい課題の一つでしょう。
情報を伝達するときの記載方法や使用文言が、伝達対象のメンバーにとって分かりづらいことが原因で生じるコミュニケーションコストです。
他の部署とコミュニケーションする際に使う言葉に気をつける方は多いと思いますが、同じチーム内であっても十分気にかける必要があります。当然ですが、リテラシーは人それぞれです。
コミュニケーションコストの高い状態が続くと、どのようなリスクがあるのでしょうか。
代表的な4つの問題をご紹介します。
社内でのコミュニケーションに時間や労力を使いすぎてしまうと、本来進めるべき生産的な作業のリソースが奪われていきます。
言い換えるならば、社内に「時間泥棒」を増やしていくことになるといえるでしょう。そしてそれに伴い、業務効率はどんどん低下していきます。
こうした「時間泥棒」が社内のいたる部署で蔓延ってしまうと、非常に深刻な経営リスクとなってしまいます。
コミュニケーションコストが高いと、部署間での調整やチーム内での連携にもムダな時間や労力がかかってしまいます。
よくある話ですが、
「会社として既に導入しているツールがあるにも関わらず、他部署が同様ツールの新規導入を検討している…。」
というのも、縦割りでコミュニケーションコストが高いが故に生じているといえます。
組織の意思決定は、各現場での状況を鑑みたうえで行われますが、コミュニケーションコストが高いとまず現状の把握に時間がかかります。
また、部署間での意思疎通にも必然と時間を要することになり、最終的な意思決定のスピードが遅くなってしまいます。
スポーツで例えるならば、サッカーやバスケットボールでパスばかりを回していて、なかなかゴールできないような状態といえます。そうなると、ゲームの制限時間内に決められるゴールの数は必然と少なくなってしまいます。
仕事でも同じように、1日や1週間という限られた時間の中で下せる意思決定の数が制限されてしまい、事業・プロジェクトの進捗に大きく影響してしまいます。
想像に難くないと思いますが、コミュニケーションコストは時間や労力だけでなく、精神面の疲弊にも影響してしまいます。
これは、副次的に業務全体に対するモチベーションの低下等にも繋がります。
コミュニケーションコストにまつわるプロジェクトマネジメントの法則に、『ブルックスの法則』というものがあります。
人員の投下は、チーム内のコミュニケーションコストを増大させる。プロジェクトを進めるうえで、プロジェクトチームは、協力して同じ課題に取り組む必要がある。しかし、これを実現するには、調整のためのコストがかかる。一般に、 n人が協調して仕事を進めるためには、 n(n-1)のコミュニケーションチャンネルを調整する必要がある。したがって、プロジェクトの人員に対してコミュニケーションコストは、 n²のオーダーで増加することになる。単純にいえば、開発メンバーを2倍に増やしたチームは、それに伴って4倍のコミュニケーションコストを負担するのである。
※引用元:wikipedia
要するに、「チームは人員が増えれば増えるほどにコミュニケーションのボールパスが増えていき、結果としてプロジェクトの進捗を遅らせていく」ということです。
さらに具体的な話として、人員を2倍にしたときのコミュニケーションコストは4倍になるとされています。
つまり、組織が大きくなればなるほど、コミュニケーションコストが経営に与えるインパクトは大きくなっていくのです。
ここまでの内容をお読みいただくと、
「自分ってコミュニケーションコスト高いと思われてるのかな…?」
「誰かの“時間泥棒”になってないか気になり始めた」
と考える方もいるでしょう。
安心してください。コミュニケーションコストは一人ひとりの意識から改善していくことができます。
まずは、コミュニケーションコストが高い人の3要素をご紹介します。
「組織内での役割を理解できていない」というのは、コミュニケーションを図るうえで前提条件を理解できていないということになるので、致命的です。
例えば、組織が大きくなり各部門での役割が細分化してくると、どこの部署がどこまでの業務範囲を所管しているのかが見えにくくなってきます。管理職レイヤーの間ではスコープ範囲の線引きを理解できていても、現場の実務者は理解できていないというケースも多いでしょう。
とくに、高頻度で組織変更を実施するベンチャー気質の強い企業では、こうした課題はより顕著なはずです。
ご自身で思い当たる方は、改めて確認・整理してみるといいでしょう。
当然ですが、情報の処理に時間がかかるタイプの人は、コミュニケーションコストが高くなりやすいです。
ただ、テキスト情報を目で見て理解するのが得意な方もいれば、口頭で説明を受けて耳で聞く方が理解しやすい方もいます。自分のタイプを理解したうえでコミュニケーションを図れるといいでしょう。
相手の話をさえぎって自分の意見や話を始めてしまったり、相手が聞きたいことではなく自分が言いたいことを話してしまう人はコミュニケーションコストが高いといえます。
業務上のコミュニケーションでは常に目的があるので、その目的の達成に最短で向かえるように質問や回答には気をつけるといいでしょう。
続けてコミュニケーションコストが高い組織についてです。組織の場合、共通する要素は2つとシンプルです。
土台となる知識・リテラシーが異なる場合、コミュニケーションコストが高くなるのは必然です。
リテラシーのギャップを解消するためには、研修やOJT、1on1などギャップを解消していくための社内教育を仕組みとして設ける必要があります。
社内でナレッジマネジメントの仕組みを構築・運用できていない組織は、総じてコミュニケーションコストが高いといえるでしょう。
ナレッジマネジメントの仕組みというと、代表的なのは「FAQシステム」の活用です。
組織図や社内申請ルール、業務フロー、共有システムへのアクセス情報など、社内のありとあらゆる情報・ナレッジを集約して管理していくことができます。
まだ仕組みができていない組織は、こうしたナレッジマネジメントシステムの活用から考えてみるといいでしょう。
「個人」と「組織」とでそれぞれ、コミュニケーションコストを削減する方法をご紹介します。
当然のことではありますが、自分の所属するチームの所管範囲がどこまでなのかを理解したうえで、その一員である自分の担当領域を明確にしておくことが重要です。
また、自分の担当領域やミッションが何なのか、ということをチームメンバーやプロジェクトメンバーに事前共有しておくといいでしょう。
コミュニケーションの無駄なラリーをなくすためには、まず相手の話に耳を傾けることが重要です。
必要に応じて質問を投げかけながら、相手が伝えたいことをなるべく的確に理解したうえで、自分なりの回答を返すようにしましょう。
相手の話をヒアリングする際に、5W1H(誰が、なぜ、何を、いつ、どこで、どのようにして)の項目を頭の中に描きながら情報整理すると、相手が伝えようとしている情報を理解しやすくなります。
会社という組織の中には複数の部署が存在しますが、それぞれの部署の担当範囲を明確にし、かつ棲み分けの情報を従業員が誰でも簡単に確認できるようにしておく必要があります。
部署ごとの線引きができていても、その情報に従業員がアクセスできなければ意味がありません。
具体的には、FAQシステムのようなナレッジマネジメントシステムを活用して、従業員が簡単にアクセスできる社内FAQサイト上にデータベースを構築していくことが有効的です。
これは、できるだけコミュニケーションをクローズドにしない、ということです。
多くの企業でテレワークが一般化し、ChatworkやSlack、Miicrosoft Teamsのようなチャットコミュニケーションツールが普及するようになりましたが、皆さんは個別チャットばかりしていませんでしょうか?
もちろん、プライバシーやセキュリティー、デリカシーの面で個別チャットが適しているケースもあります。ただ、業務効率やマネジメントの観点でいうと、オープンな場所でコミュニケーションをとった方が圧倒的に効率的といえます。
例えば、業務で何か知りたいことがあり、チームメンバーに聞いてみるとします。
●まず、Aさんに個別チャットで聞いてみたところ、Aさんは情報を持っていなかった。
●次に、Bさんに聞いてみたが、Bさんも情報は持っていなかった…。
●ダメもとでCさんに聞いてみたところ、Cさんが情報を持っていた!
この場合、はじめからチーム内の共有ルームで「誰か知っていませんか?」と投げかければ1ラリーの時間と労力で済んだ話です。
組織として、“見えるところ”でコミュニケーションをとる風土づくりは意識的に進めていくべきでしょう。
前述でも触れたリテラシーギャップの解消には、やはり研修やOJTなどの社内教育が欠かせません。
また、社内教育を進める際には、「どこまでのナレッジを身に着けてもらうか」というスコープ設定が予め必要です。
一般的な業務スキルやリテラシーが対象なのか、具体的な専門知識なのか、それともそれら両方なのか。必要なナレッジを棚卸しして、対象(スコープ)を定めてから進めましょう。
これまでに触れた組織の情報公開・共有や社内教育など、一通りの取り組みを進めていくうえで肝になるのがナレッジマネジメントシステム(FAQシステム)の活用です。
とくにFAQシステムは、ナレッジの検索性やシステム自体の運用性が高いことが特徴です。
ただあくまでもツールなので、導入するだけでいきなりコミュニケーションコストが激減するわけではありません。日々の運用が非常に重要になります。
そのため、FAQシステムを導入する際には、ベンダー側の導入後・運用サポートの手厚さを必ず比較項目に入れるようにしましょう。
コミュニケーションコストは個々人の意識から改善していけるものではありますが、組織としてその風土づくりを進めていくことがやはり重要です。
そして、組織内で風土・カルチャーを醸成していくためには、システム・ツールの活用が欠かせません。
ナレッジマネジメントを機能させていくことで、コミュニケーションコストの削減と生産性の向上を実現しましょう。
なお、FAQシステムを活用したフレームワーク資料『組織の生産性を高める、ナレッジ体系化のフレームワーク ~6つのステップで“型”をつくる~』も以下ご用意していますので、ぜひ活用ください。