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業務効率化に貢献する優秀なツールとして、「チャットボット」が注目されています。チャットボットとは、顧客や社員からの問い合わせに対してロボットが会話形式で自動回答するプログラムのことで、既に多くの業界で導入されています。
そこで今回は、チャットボットの導入で期待できる効果や導入手順、コスト、活用のポイントなどについて、成功事例を交えつつ解説します。チャットボット導入を検討中のコールセンター・カスタマーサポートのマネジメント担当者様などは、ぜひご確認ください。
まずは、チャットボットの導入で期待できるメリットを2つご紹介します。
FAQページにチャットボットを設置することで、顧客が求める情報を提供しやすくなります。余計なページ遷移や画面スクロールを回避できるため、顧客の負担が軽減するのです。顧客自身のニーズに合う情報を見つけやすくなることで、電話よりも気軽に質問することが可能になります。
また、チャットボットを導入することで営業時間外でも顧客対応が行えるようになるのもメリットです。好きなタイミングで質問できるので、顧客はスムーズに課題解決することができます。
顧客満足度(CS)については、以下の記事で詳しく解説しています。
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チャットボットを導入すれば、簡単な質問や頻出の質問にはチャットボットで対応できるようになります。問い合わせ対応への業務時間は軽減され、コスト削減につながるでしょう。
また、社内問い合わせ用にチャットボットを活用するのも効果的です。現在はリモートワークの普及でナレッジ・ノウハウが属人化する傾向がありますが、チャットボット経由で業務マニュアルにアクセスできればナレッジ共有をしやすくなります。
次に、チャットボットを導入する具体的な手順を解説します。以下の5ステップを参考にしてみてください。
まずは、なぜチャットボットが必要なのか、どのようなことにチャットボットを活用するのかをはっきりさせましょう。自社の課題が明確でないまま導入すると、選定したチャットボットツールの機能と自社が求める機能にミスマッチが生まれる可能性があるためです。狙った成果を出すためには、以下のような目標設定をすることが重要です。
・問い合わせの自動化をしたい
・問い合わせのハードルを下げたい
・サイト回遊率を上げたい など
次に、自社の課題や目的が明確化した上で、チャットボットをどのようなチャネルに設定するのかを決めましょう。チャットボット導入の目的や用途、利用する顧客に応じて設定場所を選びます。チャネルの具体例には、Webサイト、ECサイト、アプリ、SNSなどがあります。
導入の目的や活用場所(チャネル)に合ったチャットボットを選びましょう。チャットボットの種類にはシナリオ型やAI型などがあります。
いずれも有人対応の工数を削減する効果がありますが、シナリオ型は導入コストの安さが魅力です。一方、AI型は複雑で広範囲な質問に対応可能で、学習機能に優れています。チャットボットの種類によって備えている機能や導入時のコストなども異なるため、予算も踏まえて選定するのが良いでしょう。
また、ベンダーによって提供しているサービスが異なるため、複数のベンダーを比較検討するのもおすすめです。無料トライアルに申し込んだり資料請求をしたりすることで、使用感を確認できます。
チャットボットの種類については、以下の記事で詳しく解説しています。
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チャットボットはインプットした情報の範囲内でしか回答できないため、チャットボットの運用担当者などを決めましょう。具体的には、チャットボットのみでは対応できなかった問い合わせについてどのように対処するか、どのように有人対応と切り替えるかなどを検討します。電話・メールなど、別口で対応できる体制を整備しておきましょう。
また、チャットボットの機能(例:回答精度や欠陥の有無など)を検証するチームを用意して、適宜内容を修正できるようにしておきましょう。
自社あるいはベンダー側で、チャットボットの初期設定を行います。自社だけで初期設定する場合は、チャットボットや製品に対するノウハウが必須なので注意してください。設定に時間がかかったり、予期せぬ動作に戸惑ったりするケースが考えられます。
具体的な作業としては、過去の問い合わせ内容や顧客情報を分析しましょう。チャットボットを動かすにあたって必要な情報や反応する単語などのデータをインプットするためです。また、シナリオ型チャットボットを導入する場合は、「FAQ(想定される質問)」を作る必要があります。顧客の質問を起点にチャットボットが想定通りの回答にたどり着くよう、調整しておきましょう。
設計したシナリオが問題ないか、運用前にテストを行いましょう。テストで確認する項目例としては以下があげられます。
・質問に対して的確に回答できているか
・シナリオの流れに不自然なところはないか
・顧客に誤解を与える回答になっていないか など
同じ質問でも伝え方を変えてみるなどして、チャットボットの回答精度を確認してください。クリック形式・自由入力形式の両方で試してみて、回答精度が悪い箇所があれば設定を見直しましょう。もしも自社だけで初期設定や運用テストを行うのが難しければ、外注するのも選択肢の1つです。
チャットボット導入を成功させるために、4つのポイントを意識しましょう。
チャットボットは導入して終わりではありません。チャットボットの効果を最大化するには、収集したデータを活かすことが重要だからです。活用例としては、以下あげられます。
・顧客ニーズの把握による新商品開発やサービスの改善
・質問や回答(FAQ)の追加や修正 など
導入自体が目的になってしまうと期待した効果は得られないため、運用体制を整備しておきましょう。
顧客のニーズや自社の課題を明確にした上で、顧客体験・顧客満足度を高めるために活用しましょう。対策の例は以下の通りです。
・顧客の質問に素早く回答する
・商品やサービスの検索を容易にする
・24時間対応(営業時間外の対応)
・コールセンターの応答率向上 など
顧客サポートを強化することが、企業への信頼感につながります。
チャットボットが適切な回答できなかったときの対策を用意しましょう。二次対応の案内がなければ、チャットボットの価値は下がってしまいます。回避策としては以下のようなものがあります。
・オペレーターにつなぐ
・FAQを案内する
・質問の再入力を促す など
なお、定型的な質問だけをチャットボットが担い、個別対応だけをオペレーターが担当するといった活用方法も有効です。
電話応対ではできない情報については、視覚に訴える方法もあります。チャットボットは文章のやりとりというイメージが強いかもしれませんが、説明に画像や図、チャートなどを用いることも可能なのです。導入予定のチャットボットに画像回答機能がついているか、あらかじめ確認することをおすすめします。
チャットボットの導入費用や内訳、ランニングコストなどを解説します。チャットボットの費用は導入するチャットボットの種類によって異なるため、目安としてご確認ください。
導入費用とは、チャットボットの利用環境の構築費として発生する費用です。チャットボットの種類や機能性に応じて、料金システムは大きく異なります。例えば、簡単なチャットボットでは費用が安い傾向にあり、無料〜数万円程度が相場とされています。
反対にカスタマイズ性の高いチャットボットやAI搭載型のチャットボットは、高額(15万円~50万円程度)に設定されていることが一般的です。運用までの準備に工数がかかりますし、ベンダーとの密なコミュニケーションが必要になるためです。
チャットボットはクラウドサービスで提供されることが多いため、月額の利用料金が発生します。導入費用と同様に、チャットボットの種類に応じて利用料金は異なるため、導入前には十分にご確認ください。利用料金の目安は以下の通りです。
・AI非搭載型のチャットボットは月額5万円以下
・AI搭載型かつカスタマイズ不可能なチャットボットは月額10万円から30万円程度
・AI搭載型かつカスタマイズ可能なチャットボットは月額30万円から100万円程度
ランニングコストとして毎月発生する費用なので、自社に必要な機能を把握した上で、チャットボットを選ぶようにしましょう。
導入するチャットボットの種類によっては、FAQ作成・初期学習サポート費用がかかります。FAQ作成や初期学習のサポートには専門的な知識が求められるためです。
例えば、AI搭載型のチャットボットであれば、「AIが正しく機械学習できる環境」を整える必要があります。AI搭載型のチャットボットは、事前に学習させたデータなどを基に、統計的に適切だと判断される回答を表示するからです。ユーザーが自由入力で打ち込む質問にも対応できるよう、さまざまな表現を学習させなければなりません。
また、ベンダーにFAQの作成をサポートしてもらう場合にも費用が発生します。FAQ作成はAIを搭載していないシナリオ型チャットボットにも重要なものなので、FAQ作成サポートの有無や費用を考慮してベンダーを選ぶのが良いでしょう。
チャットボットは、導入した後に適切に運用を行う必要があります。成果を出すためには、学習データやFAQを継続的に追加・編集することが重要だからです。自社内で運用を適切に行うのが難しい場合は、開発元にコンサルティングを依頼することになるでしょう。知識・経験が豊富な専門家から、運用改善に向けたアドバイスなどを受けられます。
なお、ベンダーや相談内容によりますが、コンサルティングには別途費用がかかるケースが多いです。
チャットボットに機能を追加する場合は費用がかかることが多いです。カスタマイズできる機能例として、以下があげられます。
・分析を行うレポート機能
・スタッフが手動で回答するチャット機能
・CRMやSNSとの連携
・会話画面のデザイン変更
・有人対応への切り替え機能 など
費用相場は企業によってさまざまです。また、カスタマイズできる範囲もサービスごとに異なるので、デザインにこだわりなどがある場合には、事前に確認しておきましょう。
最後に、弊社のPKSHA Chatbotを導入した企業様の成功事例を紹介します。自社における活用イメージの参考にしてみてください。
株式会社クレディセゾン様は、顧客・取引先にさまざまな価値を提供することをミッションとする、日本のクレジットカード会社です。元々は有人対応を得意とする企業様ですが、コロナ禍でスタッフの出勤が難しくなったことなどを機に、Webサイトの各ページにチャットボットを導入しました。
導入後は顧客の自己解決率が12%向上し、57%を記録しています。自己解決率とは、チャットボットの完了時に表示される「お役に立ちましたか?」という質問に、「はい」と回答した割合のことです。チャットボット経由でさまざまなデジタルチャネルを案内することで、コールセンターの呼量を減少させることに成功しました。
ANA X株式会社様は、ANAグループの顧客マーケティングを担う企業様で、旅行事業や航空セールス事業などを展開されています。予約センターではオペレーターが顧客応対を行いますが、電話着信数の多さや顧客の利便性が課題となっており、チャットボットが導入されることになりました。
チャットボットの利用件数は右肩上がりとなっており、その分オペレーターの心理的負担が軽減しているようです。実際にメール問い合わせが約20%減少するなど、顧客の自己解決率は向上しています。
損害保険ジャパン株式会社様は、国内トップクラスの市場シェアを有する損害保険会社です。カスタマーセンターの目標は顧客体験の向上ですが、以前は営業時間外の問い合わせに対応できない状態でした。また、既に対話エンジンは活用されていましたが、メンテナンスにかかる負荷や利用数の少なさなどが課題だったため、PKSHA Chatbotの導入を決定されました。
導入の効果に関しては、24時間365日の顧客対応が可能になり、有人チャットの総コンタクト数が半減しました。また、オペレーターは対話エンジンを育成する業務に携わることになり、新たな活躍の機会が生まれています。
株式会社NTTドコモ様は、日本最大手の移動体通信事業者です。PKSHA Chatbot導入前には、以下のような課題を抱えていました。
・既存チャットボットでは必要とするFAQ数を満たせない
・FAQ数を一定以上増やすと、回答精度が低下する
・FAQのメンテナンスで工数が増える
・電話で問い合わせをする顧客が大半だった
PKSHA Chatbot導入後には、自己解決率が当初のKPI(50%)を大きく超え、83%まで向上しています。運用工数に関しても、PKSHA Chatbotのメンテナンス支援機能によって、チューニング工数を92%削減することに成功しました。
資生堂ジャパン株式会社様は、国内外で化粧品事業などを展開する資生堂グループの日本地域本社です。事業の一環として、「LINEで美容相談」という美容相談サービスを提供しており、社内のコンサルタントが顧客の相談に対応します。本サービスの利便性をさらに高めるため、2018年にPKSHA Chatbotが導入されました。
導入直後の3ヶ月間は、チューニング期間として夜間だけ公開し、4ヶ月目からは日中の営業時間でも活用し始めました。主に得られた成果は以下の通りです。
・顧客から寄せられる相談の約80%を自動応答で対応
・コンサルタントの業務時間が約20%削減
・チャットログの分析作業で、ユーザーの意見を把握できるようになった
・FAQ数が導入当初の2倍ほどになった
日本PCサービス株式会社様は、パソコン・スマートフォン・デジタル家電など、さまざまなIT関連機器の設定やトラブルに即日対応するサービスを提供しています。訪問サポート(訪問修理事業)が伸びている影響で、月間1万件におよぶ入電・架電数が課題となっており、約15%には対応できていなかったようです。そのため、人手不足や顧客満足度低下などの諸問題を解決するべく、PKSHA Chatbotが導入されました。
日本PCサービス株式会社様に関しては、これからチャットボット導入の成果が現れる段階です。想定では月間1万件の電話対応の約半数が自動化され、月に300万ほどのコストを削減できる見込みです。
今回はチャットボットの導入がもたらすメリットや、具体的な導入手順などを解説しました。先述した成功させるためのポイントを押さえていれば、顧客満足度の向上はもちろん、コールセンタースタッフの業務負担を軽減できる可能性があります。
一方、自社の課題や導入の目的がイメージできていないと、期待した効果は得られません。また、自社に合ったチャットボット選びや、導入後の分析・改善も重要なので、本記事で紹介した導入手順や活用事例をご参考ください。