顧客からの質問や問い合わせに会話形式で応対するチャットボットは、オペレーターの代わりに自動で適切な回答を提示できます。チャットボットには回答内容を自由にカスタマイズできるなどさまざまな種類もあり、適切な回答を表示するにはシナリオ作りが重要です。チャットボットの導入効果を向上させ、顧客満足度を高めるには、どのようにシナリオを作成すべきでしょうか。今回はチャットボットの種類やシナリオの設計方法、作成時の注意点までご紹介します。
まずはチャットボットのシナリオとは何か、役割も含めて概要をご紹介します。
ユーザーが入力した内容に応じて返答するチャットボットですが、シナリオ型チャットボットとAI型チャットボットの主に2つの種類があります。シナリオ型チャットボットの場合は、事前に設定したシナリオに沿って会話を進めていき、顧客の求める情報を提供する仕組みです。質問の内容がある程度決まっているサービスと相性が良いといえます。
シナリオには、ユーザーの質問に対してチャットボットがどのような回答をすべきか決定づける役割があり、顧客満足度にも関わる大切な部分といえるでしょう。そのため、チャットボットの初期設定の段階で自社に合ったシナリオを設計・設定する必要があります。例えば、製品情報を求めるユーザーが多い場合、製品の価格や購入方法などの情報を用意しましょう。
一方、AI型チャットボットはAI(人工知能)が質問内容を分析し、適切な回答を生成します。機械学習機能が備わっているツールでは、質問対応をこなすほど回答精度が上がり、ユーザーの要望に対して適切な回答ができるようになります。
チャットボットの8つの種類|特徴や仕組み、導入時の注意点
企業がシナリオ型のチャットボットを導入する際、シナリオはどのように構築すべきでしょうか。以下で7つのステップに分けてご紹介します。
まずは、チャットボットを導入する目的や解決したい課題、対応範囲を明確化しましょう。これは、シナリオの方向性を決め、適切に設計を行うために必要な作業です。
チャットボットによってどのような課題を解決し、どのような成果を得たいのか、社内の状況と照らし合わせて洗い出します。例えば、コールセンターへの呼量削減やカスタマーサポートの業務効率化、有人対応を減らすことによるオペレーターの負担軽減などが目的として挙げられます。
次に、チャットボットを利用すると予測されるターゲットやペルソナを設定しましょう。主要な利用者のターゲットやペルソナによって、提供すべき情報や適切な表現方法などに違いがあるためです。ターゲットはチャットボット利用者の年齢や属性などを想定したもので、ペルソナは性格やチャットボットを利用する理由など、ターゲットのキャラクターを詳細に表現したものです。
Step1と同様に、これらを詳しく設定しておくことで適切にシナリオを設計しやすくなります。
設定したペルソナの視点をもとに、顧客が知りたいと想定される質問と回答を洗い出します。最初は思いつくものや過去の問い合わせ内容をもとに、なるべく多くリストアップすることがおすすめです。例えば、製品・サービスの質問やサポート内容に関する質問が考えられます。
また、洗い出した質問と回答をカテゴリーごとに分けておくと、効率よくシナリオ設計を行えるでしょう。
洗い出した質問と回答からシナリオの骨組みを設計します。ユーザーとの対話の流れは、フローチャートを利用して可視化しましょう。
1つの質問への回答に対して、導かれる可能性のある質問を想定し、流れを明確化させます。例えば、製品の機能を質問したユーザーは、次に価格や購入方法を聞く可能性が高いといった内容です。
Step4で設計した骨組みに基づいて、具体的な質問と回答を作成しましょう。ターゲットやペルソナに合わせた言葉遣いを意識することがポイントです。
また、回答した情報は正確か確認しましょう。間違った情報を提供すると企業の信頼性にまで影響を及ぼす可能性があります。
使用するチャットボットにシナリオを登録します。ダッシュボードからのインポートや手動入力が一般的ですが、設定ミスに注意が必要です。チャットボットは専門知識不要で設定しやすいツールを選ぶと良いでしょう。
公開前にシナリオが想定通りに動くか、社内でテスト運用を実施し、必要に応じて修正を行います。最初は予期せぬ質問に、適切な回答ができない場合もあります。原因を分析したうえでシナリオの修正も実施しましょう。同時にシナリオのつながりにおかしい箇所はないかチェックすることで、チャットボットの精度は高まります。
チャットボットのシナリオ設計は顧客満足度に影響する要素です。わかりやすいチャットボットにするためには、シナリオ作成時に何に注意すべきでしょうか。
シナリオを作成する際は、想像ではなく実際の問い合わせ内容を洗い出して、質問を設定しましょう。過去の問い合わせやよくある質問をリストアップしたうえで、顧客が知りたい回答を先回りして掲載しておくのがポイントです。このとき、抜け漏れがないように質問を網羅することも大切であるため、フローチャートを効果的に活用しましょう。
フローチャートの分岐(選択肢)を増やしすぎると、ユーザーは混乱し離脱の原因になります。チャットボットを利用する顧客を悩ませないように、選択肢は5つ程度に抑えることがおすすめです。
会話のステップ(階層)数も可能な限り浅くします。ユーザーが最小限の作業で目的の情報に辿り着けるよう、シンプルで明確な回答を準備するようにしましょう。
長文で機械的な回答では、ユーザーは理解しにくいと感じる可能性があります。実際には質問と回答が一問一答形式になることは少ないため、言葉遣いや感情などの要素も含めて回答を作成することで自然な対話を実現してください。
シナリオは一度設定したら終わりではありません。実際のチャットデータをもとに定期的に修正するのが基本です。ユーザーの傾向は時間とともに変化し、新たな質問も増えるでしょう。加えて、ECサイトの送料のように製品・サービス情報が変更になった場合、誤った情報を提供し続けるリスクが生じます。
常に改良の姿勢を持ち続け、ユーザーにとっての有用性を高めることが大切です。
チャットボットは顧客からの質問や問い合わせに会話形式で応対し、自動で適切な回答を提示することができます。シナリオ作りは適切な回答を表示するために重要な作業となります。
チャットボットのシナリオを作成する手順は、まず目的や課題を明確にし、次にターゲットやペルソナを設定します。その後、質問と回答を洗い出し、シナリオの骨組みを設計します。具体的な質問と回答を作成し、最後にシナリオをチャットボットに登録します。テスト運用を実施し、必要な修正を行います。
シナリオ作成時の注意点としては、実際の問い合わせ内容を基に質問と回答を設定することが重要です。また、選択肢を増やしすぎずに適度に抑えることが望ましいです。さらに、会話が自然な流れになるように意識する必要があります。そして、運用後は定期的に分析や改良を行うことも大切です。
いずれにしても、大切なことはチャットボットの費用対効果を高めつつ、最初に設定した導入目的を達成することです。運用後の改良でシナリオの修正をして、業務効率化などの目的達成を目指しましょう。