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顧客体験(CX)や顧客満足度(CS)という視点がより重要になってきている昨今ですが、コールセンター/コンタクトセンターの現場では応対品質の管理方法やその指標などに悩まれることが多いのではないでしょうか?
本記事では、ITサポートサービスにおける世界最大のメンバーシップ団体「HDI-Japan」の評価視点を基にして、注視すべき内容をお伝えさせていただきます。
コールセンターの運営では、その品質管理をどのように行うか/基準をどのように設けるかが、非常に重要なテーマであり、その発祥から今日に至るまで常に取り上げられてきました。
コールセンターでの業務は本質的にサービス業(役務の提供)であり、運用方法(人/業務/環境などの管理や保全)次第で、品質や生産性が良い方向にも悪い方向にも転じやすいサービスであるといえます。
かつては明確な品質基準がないコールセンターも多く、現在もその基準については悩まれているセンターが多いでしょう。ただ近年はコールセンターを取り巻くITインフラの後押しもあって、様々な数値/実績値を取得できるようになり、品質管理の科学化/数値管理化が促進されるようになりました。
さて、ではどのような指標/KPIがよく話題として取り上げられるか、その代表例を挙げてみます。
これら数値は、「コールセンターが予定通りの稼働/実績を出せているか」「(着台させる人数や人員管理も含め)オペレーターがしっかり仕事ができているか」「対応業務の中でのボトルネックが存在していないか」など、端的に言えばオペレーションの優劣を測る値です。コールセンター業界では基礎的なKPIとして取り上げられますが、基礎であるが故に大変重要でもあります。なぜならば、もしこれらの値が悪い状態を放置すると、放棄呼率(オペレーターにつながる前に電話が切られてしまう割合)の悪化に直結してしまい、顧客にとって最悪の「電話をしても繋がらないコールセンター」ができあがってしまうわけです。
コールセンター業務が“究極の人員管理/生産性管理”とも言われるのは、
(1) 日々多量(対応という仕事の受発注が毎日発生)をこなす必要があり、
(2) ITによって精緻な業務管理(CTI/CRM等)が実現できるようになり、
(3) 提供する商品・サービスは「人の応対」である
といった、複数の要素が関連しているからですが、その結果、一般的なサービス業と比べて、高度に数値管理化が進んだ業種ともいえるでしょう。
HDI-Japan では、CPH等の各種KPIを“業務の「パフォーマンス」を測定するもの”と表現しています。コールセンターの管理者には、それらKPIの数値管理能力が必要スキルとして要求されるでしょう。
「最悪のコールセンター」の代名詞は、前述にもあったように「電話をしても繋がらないコールセンター」であることは今も昔もほぼ変わっていません。では、「常に電話が繋がる」を、達成できれば「最良のコールセンター」なのか?といえば、そうではないようです。
「最良の対応とは誰が決めるのか?それは顧客である」。つまり、ここに「顧客満足度」という考え方がコールセンターにも登場します。HDI-Japanでは、これをエンドユーザーである顧客から見た「クオリティ」と表現しています。
早速、コールセンターのクオリティを測るKPIとは何か、代表例を挙げてみます。
これらのKPIは、ここ10年来のコールセンターにおける大テーマ「コストセンターからプロフィットセンターへの脱却」という文脈において、重要な要素を含んでいます。オペレーションや業務に関して管理の高度化や合理化が進んだ一方、「コールセンターでなければならない理由」や「コールセンターが存在するべき必要性」、つまりそれはエンドユーザー/顧客に対する「付加価値」であったり経営に対する「プレゼンス」であったり等、コールセンターの貢献度をどのように表現するかが課題として表れるようになりました。コールセンター管理者には、その可視化と説明力が昔より一層に求められるようになりました。
では、CS(顧客満足度)等のKPIは具体的にどのような手法で取得されるのでしょうか。代表例を挙げてみます。
これらの調査は、やり方やチャネルの違いはあれ、エンドユーザー/顧客起点の評価を取得しようとする試みであることには変わりはありません。コールセンターが提供する商品・サービスが応対品質である限り、それを受けるエンドユーザー/顧客の評価を指標にすることは必定とも言えるでしょう。しかし具体化には、以下3つ要素を乗り越える必要があると感じます。
「満足度」とは、どこまで追求しても数値化することが大変困難な要素です。コールセンターにおいて「一日に何件の電話を取れたか」は、インフラ整備(IT化)で精緻な値を取得することが現実的に可能ですが、「その対応にどの程度満足しているか」といった値は、例えばその一顧客が、どのようなシーン/場所/内容で電話しているか一つをとっても簡単に乱降下します。
前述したNPS、CESといった評価の仕方は、それらのノイズを極力排除できるように工夫された手法ですが、コールセンターの品質評価にどのように利活用するかについて、まだ手探りの状況でもあることも伺えます。
顧客の満足とは、テーマとして抽象度が一段上がるだけでなく、具体的にどのように取得するかといった「取得方法の設計」が難しい点も考慮する必要があるでしょう。
パフォーマンスの測定に関してはITによる科学化が進んだ一方、満足度についてはアンケートといった取得方法が一般的で、全データの数値化は仕組み的にも予算的にも難しいのが実情です。(アンケートにおける全数調査の代表例が国勢調査です)また、コールセンター業務従事者は、これらの調査ノウハウについて不足することも多々あるため、ノウハウを持ったスタッフや部門、第三者の協力を仰ぐ可能性も出てくるでしょう。
パフォーマンスの測定は、例えば「電話を取る量を増やせれば、顧客が電話に繋がる確率が高くなる」「電話後の仕事が早く終われば、オペレーターの業務負荷が軽減される」など、実績を定量的に測れることに加え、成果/効果も実感を得やすいものです。
一方、顧客満足度のスコア向上等は、改善への実用を見出すことや即物的な成果/効果の実感が難しく、やり方を誤ると「机上の議論であり現場は努力目標として適当に感じておくもの」として、オペレーター側も、マネジメント側も匙を投げかねません。
先ほども話に挙げたHDI-Japanでは、「パフォーマンス指標」を「先行指標」、対になる「クオリティ指標」を「遅行指標」というキーワードでも表現しています。つまり、日々の現場業務における短期的な指標(先行指標)を尊重する一方で、コールセンターが提供するサービスや価値については顧客視点での評価軸(遅行指標)を中長期的に設計し、両輪で考えようというメッセージが含まれているのです。
上記の要素は、「顧客満足度」をコールセンターにおいて取り上げる場合、とくに見られる代表例ですが、これらは前回お届けした記事テーマ「VOC」と実は同じ要素を多分に含んでいます。従って捉えるべき視点、解決策にも似ているところがあります。
結論から言えば、コールセンターの品質管理においても、その高度化や価値化を考えるのであれば、「ビジネス/事業の本流とどのようにシンク(同調/同期)していくか?ということにかかっている」ということです。
▼【活用事例あり】コールセンターにおけるVOC収集・分析の課題と活用ポイントを解説
http://aisaas.pkshatech.com/cx-journal/article/how-to-voc/
コールセンターにおける「品質」には、
の2つがあり、どちらも重要ですが、それぞれが測っている/評価しているものは別であることを理解する必要があります。クオリティの向上にはパフォーマンスが必須ですが、パフォーマンスの向上だけでクオリティが担保されるわけではありません。
パフォーマンスがコールセンター対応を含むサービスの「数値的な遂行力/基本的な品質」を担保する要素である一方、クオリティはサービスの「感性的な魅力/付加価値的な品質」を担保する要素です。そして、その測り方や取り方には市場で絶対的なコンセンサスが取れているわけではなく、様々な手法が日夜試されている状況です。
コールセンターがクオリティの品質管理を打ち立てるには、日常的な業務実績評価とは異なる視点が必要になります。それには事業やビジネスの全体感とシンク(同調/同期)して落とし込まれたKPIの設計が必要です。
顧客満足からのKPI設計とは、抽象度が高くなりやすいテーマであり、得てして現場オペレーターの立場から見ると当事者感や臨場感が薄く「机上の空論」のように受け止められやすいでしょう。現場の納得感を得るためにも、企業全体としての合意形成ができていることは、とても大事になります。
一般的なコールセンター業務の世界では、(アウトバンド/営業架電等のケースを除き)コールセンターからの業績貢献として数字的なプロフィットを見出すことが難しいのが常です。そのため、何かしらのかたちで顧客満足が(遅行的であれ)業績貢献に還元されている模様を示すことができれば、最終の理想形といえるでしょう。
さて、では実際にコールセンターの品質管理にて2つの視点で実践している例はあるのでしょうか。私が実際に拝見したケースを元に印象深かった活動を挙げてみます。
ケーブルTVにてTV番組を持たれている企業。番組での商品紹介後はそのまま電話からの注文が殺到しているのはイメージ通り。
コールセンターは商品の販売チャネル=売上の源泉であることからも、価値化というよりは営業そのものである点は、他業種コールセンターとは異なるイメージがあるものの、管理するKPIは販売の成約数だけでなく、パフォーマンス面では呼量予測結果から常時「無理無駄」のないシフト割を実行しており、またクオリティ面では、ミステリーコールとモニタリングでCSスコアを定期的に確認していらっしゃいました。
更には、CS結果の良いオペレーターと成約数の多いオペレーターの対応傾向や関連性を見出しており、コールセンターの教育にフィードバックしているとのことでした。
顧客満足度(CSスコア)を指標として、全社調査に四半期ごとに取り組んでおり、コールセンターにも同じ指標でアンケート調査を架電者に対して毎月定数を定めて行っているとのこと。
ポイントは全社でのモノサシの一本化と、結果の全社共有であると感じます。このコールセンターでは自社内製のオペレーターと外注のオペレーターが混在しており、対応品質の評価にも定めた共通項目が必要とされる中、上記のCSスコアを元に合格不合格を定めているようです。
趣味性の高い「黒物系」製品が主製品のコールセンター。
問い合わせフォームと電話窓口では毎月一定数のサンプリングで対応評価の5項目、サービス全体評価5項目のCSアンケートを実施しており、結果はオペレーターへの成績反映だけでなく、不足情報のWEB化(FAQや商品ページへの情報追記等)と製品企画への共有を実施しているとのことでした。改善対応の中には、「梱包時の養生について補正をかけた」といったユニークな内容もあったそうです。
また、製品に関する部門をまとめたVOC定例会を開催して、社内にCSアンケートの結果を還流されているとのことです。
品質管理の取り組み事例として、最後には3社のご紹介をさせていただきましたが、いずれもコールセンターとしては大規模かつ運用歴も長い「ベテランセンター」の事例です。
昨今コールセンターの人員不足や採用難は顕在化して久しく、上記の事例企業もその影響はもちろん大きく受けています。ただそんな中、品質管理から得られるデータや結果を現職オペレーターの管理にだけでなく、新たなオペレーターへの「教育」という形や、エンドユーザー/顧客の体験を担うWEBチャネルに還元している模様は、いずれの企業も共通する「いまなせること/なすべきこと」として印象深く感じたことを覚えています。
なお、人員不足やITサービスの複雑化に対応したサポートチャネルについては、以下ダウンロード資料「そのサポート、IoT、サブスクリプション時代の顧客ニーズに対応できている?」にまとめていますので、もしよろしければご覧ください。
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