CXジャーナル - 顧客と向き合うすべての人の“よりどころ“

ナレッジマネジメントが機能しない?考え方や手法を徹底解説 - CXジャーナル

作成者: CXジャーナル編集部|Jul 30, 2020 3:00:00 PM

従業員の知識や経験、ノウハウを企業の集合知にして業務効率化や組織力強化へ還元していくナレッジマネジメント。重要性や考え方は理解しているが実務の中で実現しきれていない、という企業は非常に多いです。
本記事では、ナレッジマネジメントの考え方をおさらいしながら、実務へ取り込む手法について解説していきます。

ナレッジマネジメントとは

そもそも“ナレッジ”とは、一般的には「知識」や「知見」といった意味の英語ですが、目に見えない知識やノウハウを見える化し、他者も利用できる状態に整えたものをナレッジと表現します。
そして、ナレッジの利活用・管理を通して組織力を向上させることを「ナレッジマネジメント」といいます。
ナレッジマネジメントとは、経験者の知識やベテランのノウハウ等、従来は個々人で保有していた「暗黙知」を企業内外で共有し、ノウハウの底上げや新たな気づき、改善を重ねることで、全体的な生産性の向上を図る管理手法です。
一橋大学 名誉教授の野中郁次郎氏が提唱した「知識経営」が基礎となっている考え方であり、言い換えれば、暗黙知を形式知化する手法ともいいます。

暗黙知とは

暗黙知とは、個々人の経験や勘に基づいた、言語化されていない知識のことをいいます。言葉や文章に落とし込んで表現をしなければ、「知識」として共有されにくい特徴があります。

形式知とは

形式知とは、明示的知識とも呼ばれ、文章や図表、数式などによって客観的かつ具体的に説明・表現できる知識のことをいいます。企業活動の中で取得される各種データ、さらには取得データから読み取れる事実情報は形式知といえます。

ナレッジマネジメントが普及した2つの背景

以下の市況が背景としてあり、ナレッジマネジメントの考え方が着目され普及するようになりました。

1. 雇用の流動化

雇用の流動化は、業務の属人化リスクが高まるため、ナレッジマネジメントを通した業務知識共有が求められます。
終身雇用制度の事実上の崩壊や生産年齢人口の減少など背景により、多くの業界業種で雇用の流動化が進むようになりました。この潮流は今後もより進んでいく傾向にあり、2019年4月からは国の行政でも働き方改革関連法案として取り組みを本格化しています。
このような雇用の流動化が進んでいく中で、各企業では従業員の離職リスクを鑑みた業務の仕組みが必要になり、その主たるものが“属人化の解消/業務の平準化”です。ナレッジマネジメントを機能させることができれば、従事者を問わず業務の再現性を一定担保することが可能になるため、離職による影響も最小限に留めることが見込めるのです。

2. 業務効率化の必要性

従業員のノウハウを標準化し底上げできるナレッジマネジメントは、業務効率化の面でも注目されるようになりました。
業務効率化は企業活動の中で常々議論される課題であり、様々なベンダーのツールを利活用することで効率化を図るのが一般的です。ただ、ツールはあくまでも道具/手段であるため、使いこなすためのナレッジが一定必要になってくるものです。「業務効率化のために導入したツールを使いこなせる人が限られている(≒属人化している)」という状況がしばしばありますが、前述の属人化リスクの意味でも、そうした状況は本末転倒といえます。
そのため、各企業の中でもナレッジマネジメントの取り組みが業務効率化を目的として意識されるようになりました。

2種類のナレッジの重要性

ナレッジは大きく2種類に分けられます。ナレッジマネジメントを取り組むうえで、なぜそれぞれのナレッジを必要とするのかを説明します。

「公開ナレッジ」の重要性

公開ナレッジは、顧客・ユーザーやパートナー企業などに向けて公開・共有するナレッジを指します。
インターネットやスマートフォンが普及した今日、B2C/B2Bを問わず、顧客・ユーザーは知りたい情報が生じた際、WebブラウザやSNS等での検索行動により自己解決を図ります
そこで求める情報が公開ナレッジとして用意されていなかった場合、顧客・ユーザーは、
カスタマーサポート/コールセンターへ電話で問い合わせる
もしくは
(面倒くさいから)情報収集を諦める/興味の熱が冷める
という方向へ向かってしまいます。
定型回答が可能な同じ問い合わせをカスタマーサポート部門で毎回対応することは、マネジメント上で効率的とはいえませんし、「(面倒くさいから)情報収集を諦める/興味の熱が冷める」という体験を提供してしまうことは言うまでもなく避けなくてはなりません。
そのため、カスタマーロイヤルティやマーケティングの意味合いでも、公開ナレッジは重要とされているのです。
また、公開ナレッジには以下2つのタイプがあります。それぞれのタイプでどのようなナレッジを用意できているか見直してみるといいでしょう。

① トラブルシューティング型

「製品が正常に機能しないが、どこを確認したら良いか分からない」
「事故に巻き込まれたが、保険会社のどこの窓口に問い合わせればいいか分からない」
というような、顧客・ユーザー視点で緊急度の高い問い合わせに対応するタイプのナレッジ。

② 事前回答型

「契約内容ってどうなっているのだろう?」
「このキャンペーンの景品はいつ頃届くのだろう?」
というような、顧客・ユーザー視点では比較的緊急度の低い、疑問や不安に回答するタイプのナレッジ。

「社内ナレッジ」の重要性

社内ナレッジは、前述で紹介した「雇用の流動化」や「業務効率化の必要性」 といった背景を理由に、属人化の解消業務効率化(ムダなコストの徹底削減)を目的に重要視されています。
具体的には、
・業務がブラックボックス化する
・業務フローでボトルネックができてしまう
・品質管理ができなくなる
・担当社員の退職で業務や業績が崩れる
などの属人化リスクを解消して業務効率化を図るうえで社内ナレッジの有効性が認められています。
 ▼参考記事


  属人化の原因とリスクとは?業務標準化の方法まで徹底解説
また、社内ナレッジにも以下2つのタイプが存在します。どのようなナレッジが社内に眠っているか、改めて洗い出してみるといいでしょう。

 

① ベストプラクティス共有型

・顧客からの問い合わせ対応フロー
・提案資料を作成する際のテンプレートやフレームワーク
など、効率的ないし効果的なベストプラクティスをナレッジ化して共有することで、社内での業務の質を底上げすることが見込めるナレッジ。

② 専門知識共有型

・開発技術やマーケティング手法のユースケース/ノウハウ
・各営業担当が実践している心理学等に基づいたコミュニケーション
など、ベストプラクティスにも繋がるような個々人のノウハウを所属チーム内外で共有することにより、新たな発見や更なるブラッシュアップを図ることができるナレッジ。

ナレッジマネジメントの基礎理論「SECIモデル」

「SECI(セキ)モデル」とは継続されていく知識創造のプロセスのことで、ダイナミックに4つの変換プロセスを経ることで、集団や組織の共有の集合知(≒形式知)が成り立つという考え方です。この理論はナレッジマネジメントの基礎的な理論として広く知られています。

※画像引用元:https://note.com/grapevinechip/n/n3592133c9e6a
SECIモデルでは、個人が持つ暗黙知を集団や組織の形式知へと変換するためには、「共同化」(Socialization)、「表出化」(Externalization)、「連結化」(Combination)、「内面化」(Internalization)という4つのプロセスが重要であるとされています。
ナレッジマネジメントに取り組むうえでは、この基礎理論の理解は必要不可欠です。

【共同化】 Socialization

共同化とは、同じ経験を共有することによって、暗黙知を創造するプロセスです。同じ経験をなんらかの形で共有しないがきり、他人の思考プロセスに入り込むことは難しいとされています。

【表出化】 Externalization

表出化とは、言葉や文章による言語化を通して、暗黙知を明確に表現していくプロセスです。表出化は、対話(ディスカッション)によるコミュニケーションで引き起こされるとされています。
このプロセスで暗黙知が形式知化されていきます。

【連結化】 Combination

連結化とは、形式知同士を組み合わせてひとつの知識体系を作り出すプロセスです。この知識変換モードは、異なった形式知を組み合わせて新たな形式知を作り出します。洗い出された形式知を体系的に整理することで、それぞれ形式知同士の関係に文脈を捉えることができます。

【内面化】 Internalization

内面化とは、形式知からまた暗黙知へと繋がるプロセスです。形式化されたナレッジが、新たな個人へと内面化されることで、その個人が形式知を使いこなしてまた新たな暗黙知が生まれてくるのです。

ナレッジマネジメントが機能しなくなる理由・原因

SECIモデルを理解していても、いざ実践となると、理論通りにナレッジマネジメントの取り組みを実現できている企業さんはまだ多くないでしょう。
ナレッジマネジメントの取り組みがうまく機能しなくなる主な原因は、「ナレッジが共有されない」「ナレッジが活用されない」という2点に大きく分けられます。

「ナレッジが“共有”されない…」でよくある理由

そもそものナレッジ共有がされないという状況では、以下のような心理的背景が隠れている可能性が高いでしょう。

・共有用のナレッジを作成するのが手間(面倒くさい)
・ナレッジを作成しても利用されているのか分からない
・ナレッジの伝え方(作成方法)がいまいち分からない
・自分のノウハウは共有せずに一人占めしたい

「ナレッジが“活用”されない…」でよくある理由

ナレッジの活用課題に関しては、以下のように、「一度利用を試みたが使い勝手がよくなかった」というケースが多いです。

・情報を見つけにくい
・欲しい情報がない
・閲覧したが古い情報だった

“FAQシステム”でナレッジマネジメントを効果的に

ナレッジが共有/活用されないという課題に直面している場合には、FAQシステムを導入ないし見直ししてみるといいでしょう。FAQシステムでは、前述でご紹介したそれぞれの課題を解決できます。

1. ナレッジの“作成”が容易

FAQシステムでは、ナレッジ作成にあたってのフォーマットがQ&A形式で設けられています。

・共有用のナレッジを作成するのが手間(面倒くさい)
・ナレッジの伝え方(作成方法)がいまいち分からない

テキストの入力からデザインの調整まで、HTML等の知識がないユーザーでも容易にナレッジ作成が可能になり、伝え方の部分に関しては、FAQ作成方法・運用方法のコツについて、システム提供ベンダーからトレーニングを受けることも可能です。

2. ナレッジへの“アクセス”が容易

FAQサイトでは検索機能やカテゴリー分け機能が実装されているため、求める情報へのアクセスが容易になります。

・情報を見つけにくい

また、FAQサイト上では、見てほしいナレッジを意図的にTOPページで露出度の高い位置へ配置するなどして導線を工夫することも可能です。

3. ナレッジの“利用度分析”が容易

FAQシステムでは、各ナレッジコンテンツの利用状況をアクセス解析をとして確認することが可能です。

・ナレッジを作成しても利用されているのか分からない
・自分のノウハウは共有せずに一人占めしたい

そのため、誰が作ったナレッジがどれだけ閲覧されてどれだけ役に立っているのか、ということも定量的にレビューすることが可能になります。
また併せて、社内でナレッジ共有に貢献した従業員を評価する仕組みを整えられれば、ノウハウ共有を拒む従業員のインセンティブになり得ます。

・欲しい情報がない
・閲覧したが古い情報だった

また、上記のような課題もFAQシステムを活用することで解決が可能です。
FAQサイトの定期分析の中で「0件ヒット」の検索ワードを抽出することができるため、不足しているナレッジコンテンツに気づき補充することが可能になります。
そして、経年劣化した古いナレッジに関しては、アンケート機能を利用して各FAQページごとに「解決できた/解決できなかった(情報が古かった)」等のフィードバックを受ける仕組みにしておけば、更新が必要なナレッジコンテンツもすぐに気づいて改修することができます。
 ▼参考記事


  【保存版】ナレッジマネジメントに基づく「FAQ運用のすすめ」

 

まとめ: FAQの利用状況から見直そう

ナレッジマネジメントに活用できるツールは何種類か存在しますが、公開ナレッジと社内ナレッジの双方の運用を考えた場合、FAQシステムは最適なナレッジマネジメントツールといえます。
既にFAQを活用されている場合は、現在の利用状況や改善点を一度見直してみるといいでしょう。
なお、OKBIZ.ではFAQシステムを無料でお試しいただいています。既にFAQシステムをご利用されている企業様も含め、使用感や機能等をお気軽にご確認いただけますと幸いです。
ご意向のある方は、下記リンク先ページの「フリートライアル」よりお問い合わせくださいませ。
 ▼【無料でお試し可】FAQの作成から管理機能までご確認いただけます。
 10年連続シェアNo.1のFAQシステム『OKBIZ. for FAQ』

この記事を読んだ方におすすめの資料

カスタマーハラスメントからオペレーターを守れ!

社内FAQで応対品質を上げ、離職を防ぐ方法

本資料の概要

  • 深刻化するカスタマーハラスメント、その要因とは?
  • カスタマーハラスメントから守るためには
  • オペレーターの応対品質とナレッジアップを同時に実現するFAQシステム

その問い合わせ、FAQページのせいかもしれません

お客様を迷わせないFAQ作成のポイント

本資料の概要

  • 顧客データからみるFAQページの課題
  • “自己解決できるFAQ”とは? 考慮すべき3つのポイント
  • FAQはシステム化する時代へ

そのサポート、IoT、サブスクリプション時代の顧客ニーズに対応できている?

利用者の声から分かるサポートコミュニティの新たな可能性

本資料の概要

  • コンタクトセンターが取り巻く課題
  • コンタクトセンターにおけるサポートコミュニティの活用
  • 利用者アンケートからみるサポートコミュニティの効果
  • サポートコミュニティを賢く利用するには