時代の変化とともにサポートセンターもその役割や機能も大きく変わってきたと言えるでしょう。電話だけだったものがWebフォームからの問い合わせやメールへの対応、そして昨今はチャット対応するところも増えてきました。しかしながら、90年代に入っても企業の中でのサポートセンターのポジショニングが変わったわけではありませんでした。今でこそテレビショッピングや通販に代表されるように直接売り上げに結びつくようなセンターも増えていますが、多くはコストセンターと呼ばれどちらかというとスポットライトを浴びるような部署ではありませんでした。そうした中で、HDIではメンバーの方々から「何とかセンターのステータスを上げられないか」「センターで働くことのモチベーションを上げられないか」という意見を多数いただくようになってきました。
考えた末にまずはいろんな方から注目してもらえる存在になること、特に社内のトップクラスの方々に注目してもらうことが一番ではないかと考え、「問い合わせ窓口調査」をスタートしました。
開始当初は調査対象となった企業から様々なご意見ご質問をいただきました。中には「勝手に評価されては困る」といった声もいただきました。しかし、回を重ねていく中でその趣旨に賛同し、むしろ調査して欲しいという企業が増えてきています。
その一番大きな理由は、この格付け調査が「顧客視点」だということです。審査にあたってもらっているのは一般の方々です。その人たちが実際に聞きたいこと知りたいことを調べていただき、実際に感じたことを評価していただいています。
この調査も、今年で14年目を迎えます。2006年にスタートし当初は電話窓口だけの調査でしたが、2010年からWebページでのセルフサポートについても合わせて評価を始めました。
評価の仕方や調査方法、調査結果の詳細はHDIのホームページを参照してください。
電話窓口評価についてですが「クオリティ」と「パフォーマンス」の二つの項目それぞれ5つの要素と10の要素で評価しています。
Webの評価は以下の5つの要素で評価しています。
パフォーマンス評価は数値化しやすい項目です。時間やコストをはかることでどれだけ効率よく電話を処理することができるのかを見ることができます。しかし、品質については数値化することが難しく、これといった決まった指標はありません。
「花がきれいですね」というのは何をもってきれいなのか。ある人はピンクのバラがきれいと思っても、ある人は嫌いかもしれない。同じように電話対応で同じ人が10人対応して10人ともにすばらしい対応だと思ってもらうことは難しいことです。 とはいっても、なんでもいいかというわけにもいきませんのでセンターとしては様々な基準を作り、それをクリアーすることで一定の品質水準を保とうとしているわけです。話すスピード、声のトーン、活舌の程度、挨拶、あいづち、クッション言葉などなどです。
しかし、これらも人により感じ方は様々です。メリハリのあるスピード感のある話し方を好む方もいれば、落ち着いたゆったりした話し方を好む方もいます。また、あまり過度な敬語や丁寧すぎることを嫌う人もいます。かといって、フレンドリーな話し言葉を好まず失礼な話し方だと思う人もいるでしょう。Webについても同様です。色やデザインはもっと好みが判れるところだと思います。つまり、「品質は顧客が決める」こととして、この調査ではそうした「顧客視点」を重要視し反映させるために、一般の方に審査していただいています。
この調査に限らず、言葉上「あー、なるほど判りました。じゃ、今度お願いしますね。ありがとうございました」といって、一見納得し、満足したような受け答えでクローズしたとしても、果たして本当に満足したのでしょうか。 電話対応に限らず普段の生活でもこういうことは起きます。初見の方と接する時と何度かあったことがある方、さらに友人知人と会話をするときの感情は全く違いますね。つまりその時の状況や相手に対する感情の持ち方ひとつで基準は変わってくるということです。
言い方を変えると、期待値ということではないでしょうか。つまり、きっとこの人は私に対してこういうことを言ってくれる、はたまたこうしたことをやってくれるのではないか。という暗黙のうちに持つ期待感です。個人ではなく企業に対しても同じことがいえると思います。テレビコマーシャルなどで抜群の知名度を誇る企業に対しては、当然この企業ならこんなことあんなこともやってくれるだろうと勝手に思い込んでしまうブランドイメージのひとつとしてできあがっていきます。
その期待感や価値観がここ数年で明らかに変わってきているという実感があります。それは、先に示した各要素の評価結果推移や一般審査員の方々のコメントを見ているとそう思わざるを得ません。
なにかを調べたり、知りたいと思うと電話で聞くというよりネットで検索するのが一般的になってきています。それに応えて企業のホームページも情報が充実し豊富になっており大概の事は解決するようになってきています。さらに、それに加えサポートセンターとホームページの関係も改善され「センターとの連携度」の評価が格段に良くなってきています。
ところが、逆に当初は高い評価だったのに最近なかなか高い評価を得られないというものに「見つけやすく・使いやすい」「解決度・役立ち度」の二つがあります。思うに、前述した期待値や利便性といったものに対する意識が明らかに変わってきているからだと思います。
今や、顧客はネットを通じ、欲しい情報を探しネットでのサービスを通じてその利便性を享受しています。Amazonや楽天を代表にメルカリ、インスタグラム、YouTube、Facebookなどなど枚挙にいとまがありませんが、加えてスマホでのPayPay、LINEpay、楽天ペイ・・・などのキャッシュレス決済サービスなど新しいWebサービスが生活の中に入ってきています。
こうした、サービスの利便性を享受している人たちが企業から提供されるWebサービスやコンテンツを見聞きし使ったときの使用感などを当然比較対象としてみた時にその差を感じ、“使いにくく、見つけにくく”“解決しない・役に立たない”と思ってしまう。という結果になっているのではないかと思います。
こうしたサービスはスマホのアプリを通して利用されることが多いかと思いますが、スマホのアプリがなぜ便利なのか、アプリが重宝される理由はなんなのか私なりにまとめ考えたのが以下4つの「S」です。
これら、4つのSを備えたサービスやサポートを提供することが、これからはより重要になっていくのではないかと考えています。特に、セルフは単なる企業側のコスト削減の目的を前面に出したセルフサービスはきっと受け入れられないでしょう。そうではなく、顧客が利便性やスピードを求めるが故にセルフツールを選択し、結果としてコスト削減につながると同時に顧客満足度も上がるという図式にならなければなりません。
つまり、顧客はセルフツールやセルフチャネルを求めているわけではなく、簡単に早く目的を達成させたいと思いそれができる利便性を求めているわけです。企業が求める目的と顧客が求める目的との間にギャップこそあれフィットしません。これをフィットさせられない限り企業は目的を達成することは難しいと言わざるを得ないのです。
冒頭に書きましたがAIやロボットを介してのコミュニケーションが一般的な社会の手段となり、電話に代わるサポートの手段となりうるかもしれない世界はやってくるでしょうが、少なくとも数十年はかかると言われており今すぐというわけではありません。
すぐに、電話でのコミュニケーションはなくなるわけではありませんが、LINEやチャットといったテキストでのコミュニケーションが主流で友人や知人はたまた家族同士ですら電話ではなくテキストでのコミュニケーションをとる時代になっています。
まさに社会そのものが文化、価値観といったものが変わっていくことに間違いありません。そんな時代だからこそ、今を理解しこの先どこがどのように変わっていくのかしっかり見極め「最後は結局”人”だね」という安易な結論ではなく、中長期にわたる戦略や戦術をしっかり持っていくことが大切ではないでしょうか。自分の業務が社会にどういう影響があるのかを考え、どんなサポートスタイルがこれからの社会や人に求められ望まれるのかをメンバーの皆さんと共に議論しながら考え、少しでもお役に立てればと思っています。