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ノンボイス化の重要性とは?カスタマーサポートが理解すべきメリットと注意点 - CXジャーナル

作成者: CXジャーナル編集部|Sep 24, 2020 3:00:00 PM

スマートフォンやクラウドサービスが一般化していく中で、カスタマーサポート業界ではいわゆる「ノンボイス化」に向けた取り組みが注目されています。
本記事では、ノンボイス化が求められる背景となっている社会環境の変化から、取り組むメリットや注意点までを紹介します。

「ノンボイス化」とは?

「ノンボイス」とは、企業のカスタマーサポート部門が用意する顧客対応チャネルのうち、電話以外のチャネルのことを指します。
また「ノンボイス化」とは、電話窓口以外のWebサポート領域に投資を行うことを指します。例えば、Eメールや有人チャット対応、SMSといった非同期型のコミュニケーションチャネルへの投資や、FAQやチャットボット、サポートコミュニティといったセルフサービス/自己解決チャネルへの投資が代表的です。
非同期型コミュニケーションとは、Eメールのように、相手方の即時対応を前提としないコミュニケーションを意味します。一方で、同期型コミュニケーションは電話のように相手方の即時対応を前提としています。
カスタマーサポートの文脈でいうと、「緊急度が高い」かつ「個別具体的なお問い合わせ」に関しては電話対応による同期型コミュニケーションが必須になりますが、それ以外のお問い合わせは非同期型コミュニケーションでも対応が可能といえます。

「ノンボイス化」が求められる社会環境の変化

企業のノンボイス化への取り組みは、社会環境の変化に対応する点で必要不可欠です。
顧客や企業を取り巻く社会環境の変化を一つずつ見ていきましょう。

(1) 情報取得行動の変化<顧客側>

最も重大な変化として挙げられるのは、スマートフォンの普及に伴う情報取得行動の変化です。インターネットに繋がる機器をいつでも手元に持っている顧客は、調べたいことや疑問が生じた際、人に聞いたりすることなく自分で情報を調べることが可能になりました。
GoogleやSafariなどのブラウザ検索はもちろん、TwitterやInstagramのハッシュタグ検索といった新しい情報取得の行動も注目されています。

(2) コミュニケーション手段の変化<顧客側>

2番目に挙げられる変化は、コミュニケーション手段の変化です。LINEに代表されるメッセージングアプリでは、友人同士でのチャットによるテキスト/画像/動画のやり取りや音声をインターネット上でやり取りできるVoIPによる通話を無料で行えるため、従来型の「電話」をプライベートで利用する機会が圧倒的に減少しています。
このような検索行動/コミュニケーション手段の変化により、顧客は電話での問い合わせを行う前にまず自分で疑問や問題を解決しようと取り組むほか、チャットやEメール・SMSといった電話以外のチャネルでの問い合わせを好む傾向にあります。
顧客の自己解決に関しては、「コールセンター白書2019」でも、顧客の約7割は電話をする前に何かしらの手段で自己解決を試みている、という調査データが挙げられています。

また、KDDIエボルバ社の調査「企業とお客さまとのコミュニケーション実態 2020年度版」では、企業に対して期待するチャネルとして「チャット(チャットボット)」を挙げる顧客が「電話」と比較して増加傾向にあることも見て取れます。

(3) 働き方の変化<企業側>

一方で、企業のカスタマーサポート部門を取り巻く環境の変化はどうでしょうか?
従来、コールセンターでは平均処理時間や稼働率の改善などの対応業務の効率化をおこなってきましたが、ここ数年はオペレーターの採用・育成難が深刻化し、直近では新型コロナウイルス感染拡大を契機とした在宅センター化等のニューノーマルな働き方の推進など、人材や働き方を中心に検討すべき課題が山積しています。
ただ、そのような市況の中で、電話自動応答システムやAIチャットボットといった新たなテクノロジーの台頭もあり、オンラインシフト/やノンボイス化に向けた外部環境も同時に整い始めています。こうした状況からも、サービスの最適化や業務効率化など、様々な文脈でノンボイス化への取り組みはいよいよ避けて通ることのできない課題となってきています。
また、ノンボイス化が進んでいくと必要な人材リソースの最適化や働き方の多様化に繋がるため、深刻化しているオペレーターの採用・育成問題にも改善の兆しが見えてくるでしょう。

「ノンボイス化」のメリットとは?

ノンボイス化を推進するメリットについて、顧客側と企業側の双方の視点から見ていきましょう。

顧客メリット: 自身のタイミングに合わせられる

最も重要な視点は、、顧客が自分の好きな時間・タイミングで問題解決を図れるようになる点です。
Eメールや有人チャット対応、SMSなどの非同期型コミュニケーションチャネルは、その他の用事を中断することなく行える点で、電話での問い合わせとは大きく異なります。ライフスタイルや娯楽コンテンツの多様化により、自分の意志で自由に使える「可処分時間」が減少している中、好きな時間・タイミングで問題解決が図れるというのはとても重要な視点になります。
また、FAQ・チャットボット・コミュニティといったセルフサービス/自己解決チャネルは、24時間365日いつでも利用することができるチャネルとして、より一層利用されるチャネルになることでしょう。

企業側メリット: 固定コストの削減

企業においては、ノンボイス化を推進することにより、受電の減少による問い合わせ対応コストの削減が見込めます。顧客へ多様な問い合わせチャネルや自己解決チャネルを提供することにより、電話対応の比率が減少し、人員やインフラなどの固定コストの削減に繋がります。

「ノンボイス化」での注意点とは?

ノンボイス化の推進は、対応できるチャネルを闇雲に増やすだけで達成できるわけではありません。重要な視点は、顧客の特性を理解することと、チャネル毎の特性を理解し、自社に合ったノンボイス化を進めていくことです。

顧客の特性を理解するためには、ターゲットとなる顧客の年齢層/職業/ライフスタイル/コールリーズン等の情報を整理し、問い合わせをする際にどのような行動をとり得るのかを整理します。そうして整理した情報から、最も注力すべきチャネルを選定し、改善活動を行うことがノンボイス化成功への最も近道となるでしょう。

まとめ: 顧客も自社もメリットを享受するために

顧客や企業を取り巻く社会環境の変化を避けることはできません。ただ同時に、こうした変容は企業にとってアップデートの機会でもあります。ノンボイス化に向けた各社サービスソリューションが展開されている中で、自社に不足している部分を理解し、適切かつ迅速に導入・仕組み化ができる企業は、ユーザビリティやカスタマーサポートの面で他社と差別化されるでしょう。
あくまで重要なのは、自社の顧客が問題解決できるノンボイス化を推進するという視点です。目的と手段が入れ替わってしまうことがしばしばありますが、「誰のために」というポイントを忘れずにノンボイス化へ取り組むことができれば、企業側はコスト削減だけでなく顧客満足(CS)や顧客ロイヤリティなどのメリットを享受できることになるでしょう。