チャットボットとは、ユーザーの質問に自動対応するコミュニケーションツールのことです。WebサイトやSNSなどに設置され、ユーザーの自己解決をサポートします。運用方法には2種類あり、全ての質問にプログラムが返答する「無人チャットボット」、人間のオペレーターと連携する「有人チャットボット」に分かれます。
今回は有人チャットボットに着目し、そのメリット・デメリット、導入の流れを解説します。コールセンターやカスタマーサポート領域の担当者の方などは、ぜひご確認ください。
まずは有人チャットボットの定義と、通常のチャットボットとの違いについて解説します。
有人チャットボットとは、一般的にチャットボットによる無人対応とオペレーターによる有人対応を組み合わせた方法のことを指します。2種類のチャットを併用することから、「ハイブリッド型」とも呼ばれます。
有人チャットボットの特徴は、無人対応と有人対応を切り替えられる点です。定型的でシンプルな問い合わせにはチャットボットが無人で対応し、複雑な問い合わせに関してはオペレーターにつながる仕組みになっています。つまり、有人チャットボットを活用することで、オペレーターの業務を軽減しつつ、臨機応変な顧客対応も可能になります。
有人チャットボットと通常のチャットボットの違いは、オペレーターの有無です。有人チャットボットの場合、問い合わせに対応するオペレーターが存在します。問い合わせ直後はチャットボットが自動対応しますが、プログラムだけでは回答が困難な場合、会話の途中から人間が介入することができます。
一方、無人チャットボットの場合はオペレーターが存在しないので、全ての問い合わせにプログラムが自動で対応します。人的リソースの削減には有効ですが、チャットボットが回答できない場合には、利用者は再度メールや電話など別のチャネルで問い合わせをする必要があるため、顧客満足度が下がる可能性があります。
次に、有人チャットボットのメリットとデメリットを紹介します。自社の業務内容などを考慮しつつ、導入の可否を判断してみてください。
有人チャットボットの導入は、コールセンターの業務効率化に効果的であり、多くのメリットをもたらします。
問い合わせ対応の一部をチャットボットに任せられます。定型文で返答できるような簡単な問い合わせにはチャットボットが自動応答するので、オペレーターの時間と労力を節約することができます。
また、複雑な質問にのみオペレーターが対応する体制が構築でき、人件費削減にもつながります。
チャットボットは問い合わせに関する情報をデータベースに蓄積するので、ユーザーのニーズを効率的に把握することができます。定期的なチューニングは必要ですが、徐々に精度の高い回答ができるようになるでしょう。人の手が必要になる機会は少なくなり、業務効率化にもつながります。
また、複雑な質問には人間のオペレーターがリアルタイムで対応します。電話や電子メールのような待ち時間が少なく、迅速な問題解決が可能なので、顧客満足度の向上が期待できます。
有人チャットボットにはいくつかのデメリットも存在します。導入を検討する場合は、コストパフォーマンスなどを慎重に検討しましょう。
問い合わせ対応には人間のオペレーターを配置する必要があるので、24時間365日の有人対応は困難です。休日や早朝・深夜に働けるオペレーターを確保することも現実的ではなく、基本的には業務時間外に有人対応をすることはできません。
解決策として、オペレーターの業務時間外にチャットボットのみの対応に切り替える方法が有効です。ユーザーは好きなタイミングで気軽に問い合わせができるようになり、利便性が向上します。
無人のチャットボットと比較すると人件費がかかると言えます。チャットボットの導入により、問い合わせ対応にかかるコスト自体は削減できる可能性がありますが、業務時間内は常にオペレーターを配置しなければならないからです。メリットだけを享受するには、無人対応と有人対応を上手く組み合わせる必要があるでしょう。
最後に、有人チャットボットの導入方法を解説します。活用する目的を明確にして、適切な手順で導入しましょう。
有人チャットボットを導入する目的によって、必要となるシステムや問い合わせ対応の方法は異なります。そのため、まずは自社サービスの課題を洗い出し、有人チャットボットの活用方法を整理してください。活用方法の例としては、以下が挙げられます。
ただし、全ての課題を一度に解決することは難しいため、優先順位を設定して改善していくことが大切です。
自社のニーズと合致したチャットボットシステムを選びましょう。具体的には、以下のような要素を考慮することが重要です。
自社の課題を解決するために、どのレベルのチャットボットが必要かを判断し、費用対効果の高い製品を選ぶようにしましょう。
チャットボットを利用するには、事前にシナリオを準備する必要があります。FAQやCRMの情報を基にして、チャットボットの回答精度を高めておきましょう。なお、FAQはよくある質問のことで、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)は顧客と良好な関係を維持する経営手法のことです。
また、有人対応との連携も大切なので、社内でオペレーターの挨拶の仕方や会話の進め方も統一しておきましょう。サービス品質のバラツキが少なくなり、スムーズな対応が可能になります。
有人チャットボットを運用するにあたり、オペレーターの研修は必須です。チャット対応のスピードは顧客満足度に大きく影響するので、事前に問い合わせ対応の練習を行い、迅速かつ正確な返信ができるようにしましょう。具体的には、オペレーター同士で顧客対応のシミュレーションを行うことで、チャット対応に慣れてもらいます。
さらに、FAQに基づいてチャット対応用のテンプレートを準備しておけば、オペレーターの対応効率を高めることができます。
有人チャットボットは導入して終わりではありません。顧客満足度を向上させるためには、継続的に運用を改善する必要があるからです。ユーザーの評価や対応履歴を基に、FAQの改善やテンプレートの整備を行うようにしましょう。
また、最初のうちは問い合わせが少ない場所にチャット画面を設置するのがおすすめです。オペレーターはチャット対応の経験を着実に積むことができますし、はじめからメイン画面に設置するよりもリスクが少なくなるからです。
有人チャットボットを活用することで、より精度の高いユーザー対応が可能となり、顧客満足度向上が期待できます。無人対応のチャットボットと併用することで、限られた人的リソースを有効活用できるでしょう。
ただし、有人チャットボットを導入する際は、オペレーターの人件費やチャットシステムの運用コストなどを考慮しなければなりません。また、製品によって搭載している機能が異なるので、自社の課題に合わせて選定することが重要です。