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公開日/2020.4.17
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VOC収集・分析のコールセンター課題と活用ポイント

VOC収集・分析のコールセンター課題と活用ポイント

様々なITサービスが台頭し、あらゆるデータを取得・分析できるようになってきています。
コールセンター(コンタクトセンター)の現場でも、顧客の声「VOC」の収集・分析・活用がより求められています。

本記事では、VOC活用における動向から実務上の課題や活用のポイントまでお伝えします。

VOCとは「お客様の声」

VOCとは「Voice of Customer」の略、つまり「お客様の声」のことになります。お客様の声の取り方、その所在は様々です。

例えば、

● 営業活動や店頭接客など対面において直接聞いた顧客の声
● コールセンターに架電された顧客の声
● 企業が実施する顧客満足度(CS)調査等のアンケート結果
● 問い合わせメールやWEBで寄せられたリクエスト内容

などが代表例ですが、
SNSやブログなどインターネット上の口コミも、場合によっては含まれるでしょう。

どのようなチャネル・手法で取得されたものか?というやり方の違いはあれ、「顧客となる相手」から「抽出された意見、声」であるならばVOCということになるでしょう。

VOCという言葉は、一般消費者向け(BtoC)ビジネスの話題と感じられることが多いですが、顧客とする相手が、企業となれば、ビジネスパーソン(BtoB)のVOCとなりますし、自社の社員が相手となれば従業員(BtoE)のVOCということもできます。

カスタマーサポートにおけるVOC

コンタクトセンター/コールセンター等のカスタマーサポート分野においては、VOCはこの10年来、一大テーマとして取り扱われて久しいキーワードです。

テーマとして注目される背景には、

● CTIの発展(ITによる音声データの蓄積)
● CRMシステムの実現(顧客関係管理・問合せ管理等のIT化)
● テキストマイニングの実用化(テキストなど定性データからの分析を実現)

といった、テクノロジーの進歩とソリューションの具体化が前提にあるでしょう。

各種サポートチャネルは、顧客の声が非常に多く集まる接点であり、VOCを収集するチャネルとして本質的に適しているのです。
そしてVOCを企業活動に活かすことは、ビジネスにおける他社との差別化やサービス向上、あるいは、カスタマーサポート人材のプレゼンス向上や価値化など、様々な文脈によって期待が寄せられてきました。

近年、サブスクリプション型ビジネスの台頭により「顧客体験(カスタマーエクスペリエンス、CX)の向上」という表現も登場する中で、VOCは今後より注目されていく要素になるでしょう。

VOC活動の実情と3つの課題

さて、ここまでは教科書通りの一般論としてVOCの意味と市況感のおさらいでしたが、実務の現実として、実際はどうなのでしょうか?

残念ながら一筋縄ではいっていないことは、ビジネスの諸問題と同じのようです。

では、「VOC(顧客の声)の収集から企業活動への貢献」に至るまでの、よくある課題とはなんでしょうか?
カスタマーサポート部門におけるよくあるケースを取り上げましょう。

(1) 量が多くて捌ききれない

IT化はVOCのデータ化と蓄積を実現できるようになりました。その結果、VOCの量は従来とは比べ物にならないほど大量になったわけです。
当然、収集されたVOCを「使えるもの」にするためには、それらを仕分け、整理し、何が尊く何がノイズか?優先順位を付けたり、分析する必要があります。

しかし、VOCの仕分け・整理が上手くいかない、ノウハウがない、IT環境がない、という課題に直面する当事者の声は多いようです。
(とあるサポート部門の部長さんからは、「自社にもVOCは多種多量にあるけど、タンスの肥やしならぬ“エクセルの肥やし”状態で…」と言うコメントを頂いたことも。)

(2) 誰がやるのか?どこまでやるのか?

次に、やる人がいない。工数が足りない。つまり人的なリソース不足がよく話題に挙がります。
前述の「VOCの量の多さ」が「リソース不足で出来ません…!」を一層助長していることもあるようです。

カスタマーサポート分野・部門の実情として、VOC業務はサポート対応それ自体と平行して行われ、付帯業務の範囲に留まっているという点も、工数不足と判断されてしまう要素の一つでもあるようです。

またリソースには、ヒトに加え「カネ」という視点もあります。真面目にVOCの分析・活用を考えるほど、インフラ整備、ITソリューションの追加検討、あるいは分析業務外注の是非、つまり投資をどれだけ真剣に行うのか?という議論になるでしょう。

投資には投資対効果(ROI)が求められることになります。その規模感や金額によっては、顧客満足度の向上やCXの実現といった抽象的な議論で終えることなく、より具体的な目的設定、サービス・施策への反映、実益的な成果を要求されることもあるでしょう。
ヒト、カネ、どちらの話題においても、VOC活動に関する営みを企業活動においてどれだけシリアスに合意するか?(させるか?)がテーマになる、とも言えるでしょう。

(3) 「それは正しいのか?」という疑義

前述を含め合意形成の場においては、よくあるパターンとして、

● それ(VOC)は精緻なのか?データや分析は正しいのか?
● それ(VOC)は全体を表せているのか?サンプルに偏りはないのか?
● そもそも顧客は正しい声を表現できているのか?
● 顧客の声は将来を予測できないのではないか?

といった、VOCに対する疑義や不信、納得感の不足が、活動や進捗を滞らせることがあります。

上記のような議論について、拠り所となるべきデータの追求や精密さの担保はもちろん大切です。
ただし、VOC活用においてはデータや分析結果をアウトプットするだけではなく、社内のコンセンサスを取る、つまり一定の共通見解で合意を得る努力も必要になるでしょう。

Webサポートにおける2つの変化

さて、広義の意味でのVOCを取り上げてきましたが、FAQに代表されるようなWebサポートの世界においては、近年どんな現状があるでしょうか?

(1) “面倒くさくない”UIの重要性

直接対面あるいは電話応答と比べて、WEBチャネルはVOCの取得が難しいとよくいわれます。

例えば、この2020年現在、WEBでの買い物(EC)は日々多くの人々が体験していますが、ECにレビューや意見投稿を書く人は少数派なことは、誰もが納得できるでしょう。
Webでは不特定多数のVOCを一度に収集する可能性を秘めている一方、答えてもらえる割合つまり「回答率」は大きな課題になります。
Webユーザーの視点に立ってみれば、回答しないのは当然のことです。良し/悪しのたった一言のコメントですら、レビューを企業に無償で提出するメリットがユーザー側にはまず存在しません

また、電話のようにリアルタイムに応対する者がその場に居ない以上、ユーザーの感触をキャッチしてこちらから問いかけることもできません。
つまり、WEB上においてVOCを提供してもらう、答えてもらうには、それ相応のUI(見せ方)の工夫が必要とされるのです。

WebサービスではCES(カスタマーエフォートスコア)というキーワードが昨今注目されています。これは「いかに面倒くさくないか」という視点でWEBのUIを改善する思考です。この考えはWEBでのVOC取得においても適用できます。

例えば、サポートコンテンツへのユーザーアンケート一つを取っても、回答率を5%~10%向上させる事例は多々ありますが、それらは答えやすい、面倒くさくないUIによって実現されているケースがほとんどです。

(2) AI型チャットボットによるVOC収集

VOCを収集しづらいWEBサポート、というテーマにおいて、圧倒的に「答えてもらえる」手法が登場しました。
昨今注目の的となった、AIを含む自動応答系チャットソリューションです。VOCというテーマにおいては、既存のサポートコンテンツやFAQに比べて、圧倒的に様々なVOCを収集できる強みがこれらにはあります。

従来の「検索キーワード」に代表されるような顧客からのWeb入力データは、「誰が/いつ/何について/どのように」といった文脈が不鮮明あるいは限定的で、VOCとして活用するには情報の不足が課題になりました。しかし、チャット系ソリューションの登場は、顧客の多様な入力情報を取得できるきっかけを作り出しました。

また、今まで回答されないという課題が多かったWEB上のアンケートについても、チャットのUIによっては回答率が20%~30%上昇することも珍しくなく、劇的に改善していく傾向が見えています。
(これは近年「スタンプ文化」「いいね!文化」の醸成なども影響があるでしょう。)

ところが、これらを活かせている企業は、残念ながら大変限られているようです。なぜならば、サポート分野における自動応答系チャットの導入理由や目的のほとんどが省力化や人員削減であり、VOCの取得や利活用が主題となることはほぼ無いという実情があります。

企業が「不足だ、必要だ」と願っていたはずの多様多量なVOCの取得が、ITの進歩によって一層実現できるようになりつつある一方、企業活動や業務の現実から見た結果、活かせない(むしろ厄介な)状況として認識されてしまっている。そんなことすらあるようなのです。

VOC活用にはインタラクティブ性が求められる

VOCを取得(顧客の声を聴取)するからには、それに対して何かしらの対応・反応を顧客に返すことがあって然るべきです。つまり、「顧客に還元する、報いる」というインタラクティブ性(双方向な関係)がVOC活動を実践する企業には求められることになります。

「ユーザーがVOCを企業に無償で提供するメリットはない」と前述しましたが、ユーザーのメリットとは、即物的なインセンティブ(金銭、ポイント他、様々な意味での報酬)のことだけではなく、「発した声」がユーザーに返っていくこと(レスポンスされること)も含まれます。それは提供サービスの品質であったり、商品の改善であったり、あるいは顧客対応自体やWEBでの情報提供でもあるでしょう。

【VOC活用事例】キーワードは“コミュニティ”と“共創”

つまり顧客の声=VOCを考えるということは、「VOCを自社サービスや運用、業務設計といった “ビジネスの本流”にどこまで本気で取り入れるか」というテーマにもなりえるでしょう。

ある飲料の企業では、ユーザーと一緒に「飲み比べ会」をして、次期発売ドリンクの味や香りを決めてしまうといった営みが有名です。
会に参加したユーザーは、コミュニティサイトの記者としても活躍してもらうなど、顧客の声や体験を外にも発信するように設計されています。結果としてファンユーザーを醸成したり、新規顧客への魅力提供も促進することにもなるでしょう。

また、ある白物家電の企業では、故障に関する相談と、アウトレット製品の販売が一つの窓口で補完しあう形で運用されており、問い合わせのVOCを収集すると同時に、VOCに対応した顧客への提案が行われているそうです。つまり、買い替え需要をキャッチした時点で、再購買の機会をサポートチャネル上で醸成しているわけです。

その結果、WEB上の比較サイトや家電量販店でのショッピングといった、スイッチング(競合との比較)リスクを回避しつつ顧客の囲い込みを行っていることになります。
こうしたVOCからの優れた施策が取り上げられる企業に見られる要素は、「コミュニティ」「共創」というキーワードで表現することもできます。

VOCのサービスや実務への適用や、仕組み作りの具体的な最適解は、企業形態、ビジネスモデルによって色々なパターンがあるでしょうが、VOCの最終的なゴールがあるとすれば、「顧客とのコミュニケーションを、どのように設計し育むか」という視点に集約されると言え、それは顧客との共創(対話)を実現することである。と言えるでしょう。

VOC収集・分析の前にまず目的を

VOCの収集も分析も、あくまで手段であり目的ではありません。まずは経営や製品・サービスの現状課題に対して、“VOCをどのように活用すれば改善・向上できるか?”という視点で考えるのが本質的です。

対象とする課題や目的が定まれば、VOCを収集・分析するうえでの重要な指標を明確化することができ、また同時にVOC活動のROIも語りやすくなるため経営層含む全社の合意も得やすいでしょう。

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