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公開日/2022.3.22
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チャットボットのメリットとデメリット|FAQとの連携ポイント

チャットボットのメリットとデメリット|FAQとの連携ポイント

 

Webサイトのお問い合わせページなどで、メッセージをやりとりしユーザーの疑問を解決してくれる「チャットボット」を目にする機会が増えつつあります。

チャットボットはユーザーのお問い合わせに24時間365日対応可能なうえ、やりとりを自動で行ってくれます。そのためカスタマーサポートや社内ヘルプデスクに導入すれば、スタッフの負担を軽減させたり人件費を抑えたりする効果が期待できます。その他、データの活用方法によっては、会社の課題の把握やサービス改善にもつなげることができるでしょう。

当記事では、「チャットボットとは何か?」という基本から、導入におけるメリットとデメリット、導入後にうまく活用するために重要なFAQシステムとの連携ポイントをご紹介します。

チャットボットとは?

チャットボットのメリットとデメリットについて紹介する前に、まず「チャットボットとは何か?」という仕組みや種類などの概要について解説します。

チャットボットはユーザーにとっての便利なお問い合わせシステムだけではなく、スタッフの負担軽減や人件費の削減など企業側にとっても頼もしいシステムです。

チャットボットとは、ユーザーと短いメッセージのやりとりを自動で行ってくれるロボットのことです。
「チャット」は短いメッセージのやりとりを指し、「ボット」は、ソフトウェアやシステム上では業務を自動化できるプログラムを指します。「チャット」と「ボット」を組み合わせた「自動会話プログラム」とも呼ばれます。

チャットボットは、コールセンターや社内のヘルプデスクとして社外・社内の連絡用として多くの場面で利用されています。

例えば、銀行のWebサイトや通販サイトを閲覧しているとき、「何かお困りのことはありますか?」と小さな画面が表示されたことはないでしょうか。オペレーターのイラストやマスコットキャラクターの質問に対し、ユーザーが回答を選択または文字を入力すると、抱えている悩みや疑問を解決に導いてくれます。最終的には課題や疑問点が解決される、または専用のスタッフにつながる電話番号を教えてくれます。
そのシステムが「チャットボット」です。

チャットボットの主な種類

チャットボットは大きく分けて「シナリオ型チャットボット」と「AI型チャットボット」の2種類があります。チャットボットの仕組みや用途はそれぞれ異なるため、導入を検討中の担当者は違いを理解することが必要です。

シナリオ(ルールベース)型チャットボット

「シナリオ型チャットボット」とは、あらかじめ企業側が設定したルールに従って回答するチャットボットです。ユーザーに対して選択肢を提示することで、質問内容を探る形式になっています。比較的導入コストを抑えられる点やサポートの品質を平準化できる点などがメリットです。
シナリオ設計の際はフローチャート構造を用いて、想定される質問とその回答を設定します。
質問内容がある程度決まっている商品説明や取り扱い説明書、ECサイトなどが導入に向いているといえるでしょう。

AI型チャットボット

「AI型チャットボット」はユーザーが入力した質問内容と意図をAI(人工知能)が分析し、適切な回答を表示するチャットシステムです。ユーザーとの膨大な対話の内容をデータとして蓄積し、自然言語処理によるディープラーニングによって質問に対する最適な答えを返す機能が備わっています。
言葉の表現の揺らぎや、多少異なる言い回しなども理解でき、雑談など幅広い対応が可能です。また、回答精度を高めることができれば、人的コストの削減が可能になるでしょう。
Apple製の機器に搭載されたAIアシスタントの「Siri」や会話型ロボットにも組み込まれています。

このように、チャットボットは大きく2種類に分けられますが、目的や仕組み別でさらに細かく分けることも可能です。以下のページでは、「ログ型」や「辞書型」など8種類に分けて特徴を紹介しているため、導入時の参考にしましょう。

チャットボットの8つの種類|特徴や仕組み、導入時の注意点

【目的別】チャットボットを導入するメリット

チャットボットはユーザーとのコミュニケーションを自動化でき、これまで有人対応が必要だった業務の一部を置き換えることが可能になります。そのことで企業にはさまざまなメリットがあるため、以下で詳しくご紹介します。

 

顧客対応にチャットボットを導入するメリット

①顧客満足度の向上につながる

  • 24時間365日の顧客対応
  • ユーザーの待ち時間の短縮

チャットボットはロボットのため、真夜中や早朝などの営業時間外にお問い合わせがあっても自動応答が可能です。つまりチャットボットを導入すれば、24時間365日いつでも顧客対応が可能になります。またチャットボットは、質問に対する回答をその場で返してくれます。これまでのお問い合わせでは、電話がつながるまでの時間やメールで回答を返信するまでの時間が長く、ユーザーをお待たせしていました。しかしチャットボットならこれらのメールや電話の待ち時間をゼロにでき、ユーザーは気軽に相談できます。

以上の2つの理由から、チャットボットの導入は顧客満足度の向上につながります。
特に「設定はどこから行えばいいの?」や「購入履歴を確認するにはどうすればいいの?」など簡単な疑問を解決したいユーザーに対して効果的です。

②コールセンター業務の負担軽減と生産性向上を期待できる

チャットボットは、コールセンターや社内ヘルプデスクの負担を軽減させ、人件費の削減と生産性向上に役立ちます。

同じ疑問や不明点を抱えた方が大勢いらっしゃる場合、一人ひとりに従業員が対応するより、チャットボットで質問と回答のやりとりを効率よく自動化しましょう。これまでコールセンターのスタッフが対応していたやりとりの一部をチャットボットが代行すれば、電話やメールなどの問い合わせ件数を大幅に減らせます。お問い合わせ対応の自動化は、多ければ多いほどコールセンターのスタッフの業務負担の軽減に直結します。

コールセンターの負担が減れば、どうしてもスタッフでなければ対応できないお問い合わせのみ丁寧に対応できますし、他の大切な「コア業務」に人員を集中させることもできます。このようにチャットボットの導入は、社員の働き方を改善し生産性向上にもつながります。

③コストの削減につながる

お問い合わせ対応を自動化すれば、本来必要だった人員が少なくて済みます。するとこれまでコールセンターの人員確保にかかっていた人件費、外注費、機材費などが減り、大幅なコスト削減につながります。

④属人化の防止と対応の品質の平準化を進められる

お問い合わせ対応は、どうしてもスタッフ個人の能力に依存しがちです。コールセンターやカスタマーサポートの経験が長い方がスムーズに対応できますし、顧客が納得できる回答を返せるでしょう。しかしチャットボットなら個人のスキルは関係ありません。どの顧客に対してもあらかじめ設定したシナリオ通りに回答してくれますから、個別に研修したり改善したりする必要がありません。

また、システムやサービスの内容に変更があった場合、その都度コールセンターのスタッフに業務の変更を伝達し研修をやり直す必要がありましたし、スタッフが退職すると、その後の引き継ぎや新たな人材の確保および業務研修が必要でした。その点も、チャットボットであれば、システムやサービスの変更があってもその都度データやシナリオをたった一回書き換えるだけで良いのです。コールセンターの運営負担が減り顧客からのボトムアップが図れるでしょう。チャットボットの導入は、これまで悩んでいた問い合わせ対応の属人化の解消につながります。

社内連携にチャットボットを導入するメリット

チャットボットが役に立つのは、コールセンターなど社外の方とのやりとりだけではありません。社内ヘルプデスクに活用できれば、やりとりの「見える化」ができるため、業務改善にもつながるのです。以下では社内で得られるメリットをご紹介します。

①ヘルプデスクの業務効率化につながる

「パソコンのWi-Fiがつながらない」や「ログインパスワードを忘れてしまった」など、従業員が抱える疑問に答える「社内ヘルプデスク」を設置している企業があります。社内ヘルプデスクもコールセンターと同様に、従業員からのお問い合わせ対応に都度ヘルプデスクのスタッフが対応します。

しかし複数の従業員が同じ疑問を抱えており、一人ひとりに同じ回答を返すのならば、チャットボットに業務を任せることでスタッフの負担を軽減できます。また、急ぎで回答が欲しい相手を待たせることもありませんから、質問者と回答者双方の業務効率化が図れます。

②社内ナレッジの見える化と蓄積ができる

社内ヘルプデスク業務を通話のみで行った場合、互いのやりとりを記録として残せません。電話に録音機能が付いていたとしても、後から録音内容を聞いたり解析したりするのは手間です。

しかしチャットボットであれば、質問者とのやりとりがデータとして自動で蓄積され、業務マニュアルの作成や業務改善に役立てられます。

例えば、質問が多いキーワードやシステムがあれば、よりわかりやすく業務が遂行できるよう改善したり新しいシステムを導入したりできます。
チャットボットから得られるデータは、社内の課題や社員が抱える悩みを「見える化」してくれます。「見える化」することでわかった社内の課題を解決すれば、質問が減少し社内ヘルプデスクの負担を減らせるでしょう。業務やシステムの改善は、社員の業務遂行に関わる弊害をなくし、業務全体の効率化と生産性の向上にもつながります。

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チャットボットを導入する際の注意点

チャットボットを導入し効果的に活用するためには、デメリットやできないことも把握することがポイントです。運用コストや工数はサービス選定時の重要な要素ですし、チャットボットが不得意な業務に関しては、既存のコールセンターに誘導するなど住み分けの工夫が必要になります。

運用にはコストと工数が発生する

チャットボットは、導入時も導入後もコストと工数が発生します。導入時には、導入するための初期費用がかかりますし、チャットボットにお任せしたい質問と回答の、膨大なシナリオ設計を入力する必要があります。

また導入後も、チャットボットの月額利用料金や定期メンテナンスの費用が発生する場合があります。シナリオ設計は初めに1回入力すれば終わりではなく、質問に対する回答の調節や設定の見直しが都度必要です。具体的にはチャットボットが集めたデータや会話履歴をもとに、FAQの更新・追加・削除を行います。

チャットボットは、定期的にFAQを見直しメンテナンスをしないと回答の精度が低下してしまいます。導入後も、チャットボットを活用するためにはある程度の工数が必要だと抑えておきましょう。

問い合わせ対応の全プロセスを自動化できるわけではない

シナリオ型もAI型も、チャットボットは万能ではありません。すべてのお問い合わせ対応をチャットボットにお任せしたいところですが、チャットボットにも得意分野と不得意分野があります。

例えばチャットボットが得意とするやりとりは、以下のような内容です。

  • 答えまでの道筋が決まっていること
  • 膨大なデータに基づいて答えを出すこと
  • 決まったルールに沿っていること

チャットボットは、人間のように臨機応変に対応できるわけではありませんから都度調整が必要です。
また、シナリオ設計が適切に行われていないと問題解決まで導けません。

一方で以下に当てはまるやりとりは、チャットボットにとって不得意であるため活用しにくいでしょう。

  • 専門的な言葉、日常的でない言葉が使われること
  • 例外的な要求

もしこれらの内容が起こる場合は、チャットボットにコールセンターのスタッフや社内ヘルプデスクの連絡先へ誘導してもらいましょう。このようにチャットボットで対応する領域とスタッフが対応する業務の明確化が大切です。

チャットボットを導入するための手順

チャットボットをスムーズに導入し効果的に活用するためには、導入前の準備から導入後の運用まで手順に沿って行うことがポイントです。以下で導入における5つのステップをご紹介します。

Step1.導入の目的を明確にする

まずは、自社の問い合わせ対応に関する課題を洗い出し、「なぜチャットボットが必要か」導入目的を明確にすることが必要です。
チャットボットにはツールごとに特徴があります。自社に合っていないツールを選んでしまうと、求めていた結果につながりにくくなってしまします。チャットボットの費用対効果を高めるためにも、導入の目的を明確にし自社に合ったシステムを選ぶようにしましょう。

Step2.チャットボットの導入方法を検討する

次に、チャットボットを自社で開発するか、既存のシステムを導入して利用するかを決める必要があります。昨今では、様々なチャットボットのパッケージ商品やソリューションが多く発売されており、導入のハードルも下がりました。

ただし、IT技術に精通しているエンジニアが社内にいて、自社ビジネス上で独自のチャットボットの活用が必要なケースであれば、自社開発が適しているといえるでしょう。チャットボットを自社開発する場合の流れやポイントは以下の記事で解説しています。

チャットボットは自作できる?作り方や自作するときのポイント

チャットボットの作り方は?作成ツールの活用・自社開発の流れ

Step3.社内の運用体制を整える

ある程度方針が決まれば担当者や部署が必要になってきます。チャットボットの導入時と運用時には以下のような業務がともないます。

導入時に必要な業務には以下が挙げられます。
  • 登録するFAQ(よくある質問をまとめたQ&A)の作成や情報の整理
  • 業者とのやりとり

運用時に必要な業務には以下があげられます。
  • 利用状況の分析
  • チャットボットが対応できないお問い合わせの対応


このように、チャットボットは導入から運用までさまざまな業務があるため、スムーズなサービスの運用には、事前に担当者を決めて運用に集中してもらうことが重要です。

Step4.初期設定やテストを行う

ユーザーのニーズに応えるために、機械学習の設定やシナリオ作成などの初期設定やテストが必要となります。チャットボットを導入しても、ユーザーが使う必要がないと感じてしまったら元も子もありません。

初期設定は、FAQや過去のお問い合わせ内容のデータを収集することから始まります。そのデータをもとに「想定される質問」を洗い出し、それに対する答えを複数パターン用意しシナリオ作成を行います。設定が完了したら実際に社内でテストを行い、受け答えに問題はないか確認しましょう。

Step5.運用を開始して改善を行う

チャットボットは導入をして終わりではありません。運用時に継続して行う必要があるのが改善です。ここまで準備してきても、完璧にユーザーのニーズに応えられることは難しいかもしれません。そのため、定期的に利用状況を分析する必要があります。

その結果ニーズと乖離があると判断される場合は、FAQの追加やシナリオの見直しも行い回答精度を改善していきます。このように、チャットボットは運用していくことでその後の業務効率化へつなげることが可能です。以下のページで導入効果や手順の詳細を紹介しています。

チャットボットの導入事例6選|導入効果や手順、費用も解説

チャットボットを活用するためのポイント

導入の手順を押さえること以外にも、チャットボットを効果的に活用するには、FAQの改善がポイントになります。良いFAQシステムにするために、オペレーターとの連携強化など以下で紹介する3つのポイントを意識して取り組むと良いでしょう

FAQやオペレーターとの連携を強化する

チャットボットを適切に導入し活用するために、まずはチャットボットとコールセンタースタッフとの連携を円滑にしましょう。

例えば、チャットボットで解決できない問題が発生した場合、「ユーザーをどこへ誘導するのか?」、「ユーザーが問い合わせるべき連絡先はどこか?」という疑問をあらかじめチャットボットに設定しておきます。
そうすることで、お悩み解決のために辿るべき道順をユーザーにテンポよく案内でき、ユーザーのストレス軽減につながります。

これまでユーザーは、Webサイトに記載されているお問い合わせ先へ電話をかけ、ようやくつながったと思ったら別の連絡先へ案内されるなど、ゴール地点がわからないケースがありました。同時に自身の担当ではない顧客まで対応するため、コールセンタースタッフの負担も大きいままでした。

しかし、チャットボットがユーザーの問題解決やかけるべき連絡先を示してくれれば、ユーザーもストレスを感じることはありませんし、コールセンタースタッフの負担も軽くなります。
またユーザーが辿るべき道順を途中まではチャットボットが案内してくれるため、スタッフが関わる範囲を限りなく少なくでき、業務効率化が実現できます。

呼量を削減するFAQとは?作り方を6つの手順で徹底解説

社内外からFAQの情報を収集する

チャットボットの有効的な活用に欠かせないのが良いFAQの存在です。
良いFAQとは、参照するだけでユーザーがコールセンタースタッフにお問い合わせをしなくても自己解決できるFAQです。

良いFAQを構築するためには、顧客と社内両方のFAQ情報をたくさん収集し分析できる環境を整えることが必要です。その環境を整えてくれるのが、データを自動で収集し分析しやすくしてくれるチャットボットです。チャットボットを導入後、常にデータを収集し分析すれば、社内外のFAQシステムの精度が向上し内容が充実します。

また、チャットボットで集めたデータだけではなくコールセンターや社内ヘルプデスクなど、現場スタッフの生の意見を取り入れることで、より早くFAQの精度を向上させることができるでしょう。例えば、「この回答に答えられるスタッフをもう少し増やしてほしい」「チャットボットに使われている専門用語がわかりにくいという声があった」などチャットボットのデータからでは読み取れない意見が聞けます。それらの意見をFAQシステムに組み込むことで、さらにチャットボットの実用性が高まることが期待できます。

収集したデータを活かして改善を行う

多量なデータを収集しても、それらを上手に活かしていかなければユーザーのニーズに合ったチャットボットは作ることはできません。収集した会話ログのデータは、商品やサービスに関する質問からクレームまで幅広いカテゴリに分けることができます。

これらの多彩なデータの活用方法は以下が挙げられます。
  • チャットボットの返答最適化
  • ユーザーの表ではわからないクレームや不満の把握
  • データの見える化

チャットボットはユーザーの質問に答えることが主な機能ですが、そこから得られるデータはチャットボットだけではなく、商品やサービスの改善、マーケティングまで活用できるでしょう。

社内体制を整えてチャットボットを導入するのがおすすめ

近年、SaaS型で手軽に導入できるソリューションも登場しているチャットボット。顧客接点の多い企業のみならずBtoB向けの会社でも活用シーンが増えており、人件費の削減やスタッフの負担軽減など社内にとって大きな効果をもたらします。24時間の顧客対応が可能になるだけでなく、最適な情報を素早く提供できるため、ユーザーの顧客満足度向上にもつながるでしょう。

導入の際は、目的の明確化やコールセンターとの連携、FAQシステムの改善など社内での対応も不可欠です。収集したデータをもとに運用改善なども必要になるため、体制を構築したうえで導入を実施し、メリットを自社の課題の解決に活かしましょう。

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